⚡ この記事の要点
日本生活協同組合連合会(コープ)は2007年からMSC認証水産物の取り扱いを始め、2030年までに認証水産物の供給構成比を50%以上へ引き上げる目標を掲げる。CO・OP商品の具体例とともに、生協が水産資源を守る仕組みを解説する。
スーパーや宅配カタログで魚のパッケージに小さな青い魚のマークやターコイズ色のロゴを見たことはないだろうか。それがMSC認証・ASC認証の「海のエコラベル」で、乱獲や環境破壊を伴わない方法で獲られた・育てられた水産物である証だ。
日本生活協同組合連合会(日本生協連、以下コープ)は、この認証水産物の取り扱いを2007年から始め、全国の組合員に届く「CO・OP商品」を通じて持続可能な調達を広げてきた。単なる商品ラインナップの一つではなく、「コープ商品の2030年目標」の中核施策として位置づけられている。
この記事では、コープがMSC・ASC認証にどう取り組んできたのか、代表商品であるCO・OPフィッシュソーセージの事例、日本国内の水産エコラベルの現状、そして世界と日本の水産資源が置かれている状況まで、一次情報をもとに整理する。認証の仕組みだけでなく、価格や供給量といった実際の課題にも触れながら、家庭でできる選び方まで見ていく。
この記事で学べること
- MSC認証とASC認証がそれぞれ何を保証する制度なのか
- コープが2007年から水産物の認証調達を進めてきた歩みと2030年目標
- 「コープサステナブル」シリーズが対象とする水産エコラベルの種類
- CO・OPフィッシュソーセージに見るアラスカ産スケトウダラのトレーサビリティ
- 世界の水産資源が直面する乱獲の実態とFAOの統計
- 家庭で認証水産物を選ぶときの見分け方
MSC認証・ASC認証とは何か
水産物の「海のエコラベル」には主に2種類ある。MSC認証(Marine Stewardship Council、海洋管理協議会)は天然の漁業を対象に、資源を獲り尽くさない漁獲量管理や海洋生態系への影響配慮を審査する国際認証。ASC認証(Aquaculture Stewardship Council、水産養殖管理協議会)は養殖業を対象に、環境負荷の少ない養殖方法や労働環境、地域社会への配慮を審査する認証だ。
天然物のMSCと養殖物のASC
サバやスケトウダラなど天然の海で獲る魚にはMSC認証、サーモンやエビなど養殖される水産物にはASC認証が主に使われる。どちらも第三者機関による厳格な審査を経て認証され、認証された漁業・養殖場から加工・流通・販売までを一貫して追跡できる「CoC認証(Chain of Custody、加工流通過程の管理)」も併せて取得することで、店頭のパッケージに認証ラベルを表示できる。
同じ魚種であっても、獲れた海域や漁法によって認証を取得している場合とそうでない場合が混在する。例えば同じサバでも、ノルウェー産の一部漁業はMSC認証を取得している一方、他の海域・漁法のサバは認証を取得していない、といったことが起こりうる。したがって「サバ=すべて持続可能」あるいは「サバ=すべて危険」と単純化はできず、パッケージの認証マークの有無を個別に確認する必要がある。
国際的な水産エコラベルの成り立ち
MSCは1997年、世界自然保護基金(WWF)と当時の大手食品企業ユニリーバの協働により設立された。乱獲が深刻化していた北大西洋のタラ漁業の崩壊などを背景に、「魚を獲り続けられる海」を市場の力で守る仕組みとして生まれた組織だ。ASCはその養殖版として2010年にWWFとオランダの持続可能な貿易を推進する団体IDHによって設立され、天然・養殖の両面から水産物の持続可能性を担保する枠組みが整った。
なぜ生協が認証水産物に力を入れるのか
日本は世界有数の水産物消費国でありながら、消費者が「その魚がどこでどう獲られたか」を意識する機会は少ない。コープは組合員の食卓を支える立場から、資源の持続可能性を商品選びの基準に組み込むことで、消費行動を通じて水産資源を守る仕組みづくりに取り組んでいる。
生協はもともと産地の生産者と直接つながる「産直」を強みとしてきた組織であり、原料の由来を追跡し、消費者に開示するという発想自体は目新しいものではない。認証水産物への取り組みは、この産直の考え方を国際基準の認証制度と接続させたものと位置づけられる。
また、生協は株式会社と異なり、出資者である組合員自身が利用者でもあるという組織構造を持つ。四半期ごとの株価や短期的な収益よりも、組合員から長期にわたって支持され続けることが経営の前提になるため、資源の枯渇によって将来的に商品自体を供給できなくなるリスクを、他の小売以上に重く受け止めやすい構造がある。認証水産物への継続的な投資は、この長期志向とも整合的な取り組みといえる。
審査から認証までのプロセス
MSC認証を取得するには、まず漁業者や漁業組合が独立した審査機関に審査を申請し、資源状態・漁業が生態系に与える影響・管理体制の3つの観点から評価が行われる。本審査には世界中からの意見公募(パブリックコメント)を含めて平均12カ月(8〜18カ月)ほどかかり、環境団体や競合する漁業関係者が異議を申し立てられる仕組みも用意されている。認証の有効期間は5年で、その間は毎年の監査(サーベイランス)を受け、5年以内に更新審査を受けなければ認証は失効する。ASC認証も同様に、独立審査機関による現地調査と継続的なモニタリングを前提とした制度設計になっている。
MSC認証とASC認証の違い
- MSC認証:天然漁業が対象。漁獲量管理・生態系への影響を審査
- ASC認証:養殖業が対象。環境負荷・労働環境・地域社会への配慮を審査
- 共通点:第三者審査+CoC認証でパッケージにラベル表示が可能
コープの認証水産物の歩み:2007年からの取り組み
日本生協連がMSC認証商品の販売を始めたのは2007年。最初に手がけたのはノルウェー産さばを使った商品だった。当時、国内でMSC認証水産物を扱う小売・生協はまだ少なく、コープの取り組みは先駆的なものだった。
このページを見るコープ商品サイト|MSC認証コープが取り扱うMSC認証水産物の紹介ページ🔗 goods.jccu.coop取扱品目の拡大
サバから始まった認証水産物の取り扱いは、その後、生鮮・加工品・冷凍食品へと魚種・品数ともに拡大してきた。CO・OP商品サイトでは現在、MSC認証・ASC認証それぞれの特設ページで対象商品が紹介されている。当初はノルウェー産の輸入原料が中心だったが、その後、加工品を通じてアラスカ産などにも取り扱いが広がっている。
この拡大を後押ししたのが、国内でCoC認証を取得する加工・流通事業者の増加だ。原料が認証漁業由来であっても、加工・包装・流通の各段階でCoC認証を持つ事業者を経由しなければ、最終製品にMSC・ASCのラベルを表示することはできない。コープが継続的に認証原料の調達量を増やせた背景には、取引先の加工工場や物流拠点がCoC認証の取得を進めてきたという、目立ちにくいサプライチェーン側の変化がある。
「コープ商品の2030年目標」で構成比50%以上へ
日本生協連は「コープ商品の2030年目標」の中で、水産物のコープ商品における認証製品(MSC・ASC)の供給高構成比を50%以上とする目標を掲げている。2021年時点では水産製品の10%以上がMSC認証製品となったと公表されており、認証品への切り替えを段階的に進めている状況だ。
この目標が意味するのは、単に認証商品のラインナップを増やすことではなく、コープ商品全体の「供給高」、つまり売上ベースで半分以上を認証品にするという踏み込んだ設定である点だ。組合員の需要と価格のバランスを取りながら段階的に切り替えていく必要があり、達成には仕入れ先の漁業・養殖業側の認証取得拡大も欠かせない。

「コープサステナブル」シリーズが担う役割
日本生協連は2021年2月より、環境や社会に配慮した主原料を使った商品に共通ロゴマークを付けてシリーズ化する「コープサステナブル」を本格展開した。水産物を対象とする「海の資源を守る」テーマでは、主原料の水産物がすべて持続可能な漁業・養殖で得られたものであることを条件としている。
対象となる認証の種類
- MSC認証(天然水産物)
- ASC認証(養殖水産物)
- マリン・エコラベル・ジャパン(MEL、日本発の水産エコラベル)
- BAP(Best Aquaculture Practices、水産養殖の国際認証)
水産物以外にも広がるシリーズ設計
「コープサステナブル」は水産物専用の枠組みではなく、森林認証紙(FSC認証)、コーヒー・カカオ(レインフォレスト・アライアンス認証等)、パーム油(RSPO認証)など、複数の原料テーマを横断するシリーズとして設計されている。例えばFSC認証を取得した「CO・OP未晒し原料を再利用したトイレットペーパー」のように紙製品にも対象が広がっており、水産物の「海の資源を守る」テーマはそのうちの一つという位置づけだ。
組合員から見える「選びやすさ」
共通ロゴマークをつけることで、組合員はカタログや店頭で「どれが持続可能な商品か」を一目で判別できるようになる。認証の種類を個別に理解していなくても、ロゴを目印に選べる仕組みは、専門知識がなくても行動を変えられる工夫といえる。同様の取り組みは他の小売でも進んでおり、生協以外の売り場でも認証品の拡大が広がっている。
複数の認証を横断するシリーズとしてまとめる手法には、企業側のメリットもある。原料ごとに個別の認証ロゴを説明するのではなく、「コープサステナブル」という一つのブランドで統一的に伝えることで、組合員の理解コストを下げつつ、商品開発部門にとっても調達方針を一貫させやすくなる。ロゴマーク自体が浸透すれば、個々の認証の詳細を知らない組合員でも「このマークがついていれば安心」という判断基準を持てるようになる。
CO・OPフィッシュソーセージに見るトレーサビリティ
コープの認証水産物の代表例が「CO・OPフィッシュソーセージ」だ。常温保存が可能で遠足やおやつにも使われるロングセラー商品だが、原料に使われるアラスカ産スケトウダラのすり身についてMSC認証に基づいた流通管理が行われていることが公開されている。
商品ページを見るCO・OPフィッシュソーセージMSC認証のアラスカ産スケトウダラを使用した商品ページ🔗 goods.jccu.coop
中層トロール漁法とオブザーバー制度
アラスカ産スケトウダラ漁業では、海底の生態系への影響を抑える中層トロール漁法が採用されている。工場への搬入時にはオブザーバーが立ち会い、目的外の魚種が混じっていないか(混獲)を確認する体制がとられており、漁獲から加工までの過程が記録される。
底引き網などの漁法が海底の岩礁や底生生物を傷つけやすいのに対し、中層トロールは水深の中間層を狙って網を引くため、海底の生態系への物理的な影響を抑えられる。これに加えて漁獲量そのものを科学的根拠に基づいて厳格に管理することで、単一の漁法の工夫だけでなく、資源管理の仕組み全体として持続可能性を担保しているのがアラスカ産スケトウダラ漁業の特徴だ。
「元の漁業までたどれる」という保証
MSCエコラベルの核心は、店頭の製品パッケージから遡って「どの漁業で獲られた魚か」を確実にたどれる点にある。アラスカのスケトウダラ漁業は世界最大規模かつ最も持続可能性の高い漁業の一つとして評価されており、CO・OPフィッシュソーセージはその仕組みを消費者の日常に橋渡しする商品といえる。
この「たどれる」という機能は、資源管理そのものと同じくらい重要な意味を持つ。仮に優れた資源管理をしている漁業があっても、加工・流通の途中で非認証の原料と混ざってしまえば、最終製品が本当にその漁業由来かどうかは分からなくなる。CoC認証によって各段階での分別管理を徹底することで初めて、消費者が手にする商品まで一貫した保証が成立する。
他のCO・OP商品への広がり
MSC・ASC認証原料を使う商品はフィッシュソーセージだけにとどまらない。冷凍食品やちくわなどの練り製品、缶詰、サーモンなど、CO・OP商品サイトのMSC・ASC特設ページには複数カテゴリーの商品が並んでいる。共通するのは、パッケージにMSC・ASCのロゴが表示され、原料の由来を消費者が確認できる設計になっている点だ。
CO・OPフィッシュソーセージのように、原料の資源管理体制まで具体的に開示している商品は、認証水産物の中でも消費者にとって理解しやすい部類に入る。一般的な水産加工品では「どこの海で獲れた何という魚を、どんな漁法で獲ったか」まで公開されることは少ないため、こうした情報開示自体がコープの調達方針の透明性を示す材料になっている。
CO・OPフィッシュソーセージの認証ポイント
- 原料はアラスカ産スケトウダラのすり身(MSC認証)
- 中層トロール漁法で海底生態系への影響を抑制
- オブザーバー立会いで混獲を確認・記録
- パッケージから漁業まで遡って追跡できるCoC体制
日本の水産エコラベルと資源管理の現状
水産庁は国内における国際的に通用する水産エコラベル(MSC・ASC・MEL)の生産段階認証数を、2025年度までに225件とする目標を掲げている。2021年度末時点では新たに90件(MSC15件、ASC14件、MEL61件)が認証されるなど、認証取得の裾野は徐々に広がっている。
MEL・MSC・ASCそれぞれの位置づけ
| 認証 | 対象 | 特徴 |
|---|---|---|
| MSC | 天然漁業 | 国際的に最も普及した水産エコラベル。世界約60カ国572漁業が取得(2024年3月末時点)、うち日本12漁業 |
| ASC | 養殖業 | 環境負荷・労働環境・地域社会への配慮を審査 |
| MEL | 天然・養殖両方 | 日本発の水産エコラベル。アジアで唯一GSSI(世界水産物持続可能性イニシアチブ)承認を取得 |
MSC認証を取得した漁業による漁獲量は、世界の天然魚介類総漁獲量の16.5%を占めるとされる。MSCラベル付き製品は2023年度時点で世界約70カ国・2万品目超が販売され、重量にして127万トン、卸売販売金額は約1.5兆円規模に達した。日本国内でもMSC CoC認証(加工流通過程の管理認証)を取得した事業者数は400を突破し、中国・アメリカに次ぐ世界3位の水準にあるとされる。コープのような小売・生協がCoC認証を取得し、認証原料を扱う体制を整えていることも、この事業者数の広がりを支える一因になっている。
資源管理制度の後押し:改正漁業法とTAC
国内の資源管理を支える制度面の動きとして、2020年12月に70年ぶりとされる抜本改正となる改正漁業法が施行された点も見逃せない。改正後は、科学的根拠に基づいて漁獲量の上限を定めるTAC(漁獲可能量)制度による管理を基本とし、対象魚種も順次拡大されている。水産庁は遠洋漁業や国際管理魚種などを除く海面漁業生産量の80%をTACで管理する状態を目指すとしており、認証取得の土台となる資源管理の仕組みそのものも強化が進められている。
日本近海の資源状況
水産庁が公表した令和4年度の資源評価では、36魚種50系群を対象に「高位・中位・低位」の3区分で評価した結果、資源水準が高位のものは11系群(22%)、中位が11系群(22%)にとどまり、低位が28系群(56%)を占めた。つまり評価対象の半数以上が、まだ資源量が十分に回復していない状態にあるということだ。コープが扱うMSC認証原料の多くがノルウェー産さばやアラスカ産スケトウダラなど輸入水産物である背景には、こうした国内漁業の認証取得の遅れも影響していると考えられる。
令和元年度の評価では77系群中、高位18系群・中位25系群・低位34系群という結果も公表されており、年度や対象系群の入れ替わりはあるものの、低位水準の系群が全体の4割超〜5割超で推移してきた状況が続いている。国内漁業がMSC・MEL等の認証を取得するには、こうした資源水準の評価自体を高位・中位へ改善する努力が前提になるため、輸入水産物に比べて認証取得のハードルが高くなりやすい面がある。
小売・生協が果たす役割
漁業者が認証を取得しても、小売や生協が店頭で扱わなければ消費者には届かない。コープのように継続的に認証商品を仕入れ、シリーズ化して分かりやすく提示する取り組みは、認証取得漁業の経営を支える需要側の後押しになっている。認証マーク自体の見方についてはMSC海のエコラベル認証とは?持続可能な水産物をスーパーで見分ける方法で詳しく解説している。
世界の水産資源が直面する課題
認証水産物が重視される背景には、世界の水産資源の悪化がある。FAO(国連食糧農業機関)の「世界漁業・水産養殖白書(SOFIA)」によると、生物学的に持続可能な水準にある水産資源の割合は、2021年の64.5%から2023年には62.4%へと低下した。裏を返せば、資源の3分の1以上が過剰漁獲の状態にあるということだ。
この統計が示しているのは、個別の漁業が一つずつ崩壊していくというよりも、世界全体でじわじわと資源の余力が失われていくプロセスだ。ある系群が過剰漁獲の状態になっても、すぐに漁獲量がゼロになるわけではなく、しばらくは獲れ続けるため、資源悪化の実感は消費者にも生産者にも遅れて訪れる。認証制度は、こうした「気づいたときには手遅れ」というリスクを、漁獲データの継続的なモニタリングによって未然に防ごうとする仕組みでもある。

1974年からの長期的な悪化傾向
FAOの統計では、持続不可能な水準で漁獲されている資源の割合は1974年時点の約10%から一貫して増加を続けており、2021年には37.7%に達したと報告されている。半世紀にわたる乱獲の積み重ねが、現在の水産資源の状況を作り出している。一方で、漁獲量ベースで重み付けすると、生物学的に持続可能な資源が2021年の水揚げ量の76.9%を占めるという評価もあり、大規模で管理の行き届いた漁業からの漁獲が全体の数字を下支えしている面もある。
日本の魚食文化と資源の関係
日本は一人当たりの魚介類消費量が世界的に見ても高い水準にある国の一つで、刺身・寿司・煮魚など多様な調理法で魚を日常的に食べる文化を持つ。その一方で、水産物の多くを輸入に頼っている実態もあり、国内で消費される魚が世界のどの海域でどう獲られているかは、消費者から見えにくい。認証制度は、こうした「見えにくさ」を可視化する数少ない手がかりの一つになっている。
消費者の選択が持つ意味
個々の消費者が魚を選ぶ行動だけで資源状況がすぐに好転するわけではない。しかし、認証水産物への需要が増えれば、認証取得漁業が経済的に成り立ちやすくなり、持続可能な漁業への転換を後押しする力になる。コープのような大規模な購買力を持つ組織が認証品の構成比目標を掲げることの意味はここにある。缶詰など身近な商品での選び方はMSC・ASC認証の缶詰の選び方|ツナ缶・サバ缶で始める持続可能な買い物も参考になる。
組合員と広げる普及活動
コープの取り組みは商品棚に並べるだけにとどまらない。宅配カタログや店舗での表示、産直・提携生産者との情報共有を通じて、組合員が水産資源の状況を知る機会を作っている。
カタログ・店頭での情報発信
「コープサステナブル」の共通ロゴマークは、カタログ誌面や店頭ポップに掲載され、組合員が特別な知識がなくても持続可能な商品を選べるよう工夫されている。CO・OP商品サイトでは認証ごとの特設ページも設けられ、取り組みの背景や対象商品がまとめて紹介されている。
組合員参加型の学習機会
生協は各地域の組合員組織を通じて、産地見学や学習会など、生産現場と消費者をつなぐ活動を行ってきた歴史を持つ。水産物の認証についても、こうした既存の組合員参加の仕組みを通じて理解を広げる余地がある。
産直運動から続く「顔の見える関係」
日本の生協は戦後、産地の農家・漁業者と組合員を直接結びつける「産直」運動を発展させてきた歴史がある。生産者を訪ねる交流会や、産地の状況を伝えるカタログの誌面づくりは、その延長線上にある活動だ。国際認証という新しい枠組みも、こうした「作り手の顔が見える」関係づくりの文脈の中に置かれることで、組合員にとって身近なものになりやすい。
次世代への継承という視点
組合員の中心層が世代交代していく中で、水産資源の持続可能性という課題は、子育て世代・若い世代に伝えていく必要のあるテーマでもある。宅配カタログや店頭ポップだけでなく、学校給食や食育の現場と連携した情報発信は、認証水産物という選択肢を次の世代の「当たり前」にしていく上で重要な接点になる。生協の組合員組織が担ってきた食育活動と、認証水産物の普及活動は本来相性の良いテーマといえる。
認証水産物が抱える課題
認証水産物の広がりには、まだ乗り越えるべき課題も残っている。良い点ばかりを強調せず、実際の制約も押さえておきたい。
認証コストと価格への影響
MSC・ASC認証の取得・維持には、漁業者・養殖業者側の審査費用や、加工・流通段階でのCoC認証取得コストがかかる。これらのコストは最終的に商品価格へ反映されることが多く、認証品が慣行品よりも割高になりやすい一因となっている。コープが2030年に構成比50%以上という目標を掲げていること自体、価格差を吸収しながら普及させる難しさの裏返しともいえる。
特に小規模な沿岸漁業者にとって、審査費用や書類対応の負担は大きな参入障壁になりうる。日本発のMEL認証が国際的なMSCと並立して整備されてきた背景には、こうした国内の漁業構造に合わせた、より取り組みやすい認証の選択肢を用意する狙いもあったとみられる。大規模漁業も小規模漁業も含めて、どう資源管理の輪を広げていくかは、日本の水産業全体にとって続く課題だ。
対象魚種・供給量の限界
認証を取得している漁業・養殖場はまだ世界の漁獲量全体からみれば一部にとどまる。特定の魚種(サバ・スケトウダラ・サーモンなど)に認証取得が偏る傾向があり、消費者が「好きな魚を選んだら認証品だった」という状況にはまだ遠い。供給が追いつかなければ、認証マークのついた商品は特定の売り場や特定の商品ラインに限られたままになる。
水産エコラベルの「乱立」という別の課題
世界にはMSC・ASC・MEL以外にも140以上ともいわれる水産エコラベル・認証スキームが存在するとされ、生産者・流通業者・消費者それぞれに混乱を招いているという指摘がある。この状況を受けて2013年に設立されたGSSI(世界水産物持続可能性イニシアチブ)は、乱立するラベルの信頼性を審査・承認する枠組みとして機能しており、2023年7月時点で世界9種類の認証スキームを承認、その中にアジアで唯一、日本発のMELが含まれている。「聞いたことのないラベル」がすべて信頼できないわけではないが、GSSI承認の有無は一つの判断材料になる。
「グリーンウォッシュ」批判への向き合い方
水産エコラベル制度に対しては、審査基準が緩い、更新後も資源状態の改善が確認できないまま認証が維持される事例があるといった批判も国際的に存在する。第三者認証だからといって無条件に信頼するのではなく、認証機関の審査プロセスや、企業がどの範囲の商品を対象にしているかまで確認する視点も必要だ。
こうした批判をふまえると、コープが公表しているような「構成比◯%以上」という定量目標や、CO・OPフィッシュソーセージのように漁法・オブザーバー制度まで具体的に開示する事例は、外部から進捗を検証しやすい点で評価できる。逆に、目標や仕組みを開示していない企業の「エコラベル使用」には、消費者の側も一定の注意を払う必要がある。
家庭でできる持続可能な水産物の選び方
最後に、日々の買い物で意識できるポイントを整理する。特別な知識がなくても、パッケージの表示を確認する習慣があれば十分に実践できる。
重要なのは「認証品しか買わない」という極端な行動ではなく、選べる場面で認証品を選択肢に入れることを続けることだ。認証水産物は非認証品より高価な場合が多いため、家計の負担にならない範囲で、缶詰や冷凍食品などの日常的な品目から取り入れるのが現実的な始め方になる。
コープの組合員であれば、宅配カタログの検索機能や店舗の売り場表示を通じて認証品を探しやすい環境がすでに整っている。組合員でない場合も、CO・OP商品サイトのMSC・ASC特設ページやスーパーの水産物売り場で、同様のロゴマークを手がかりに探すことができる。まずは自宅の冷凍庫や食品棚にある水産加工品のパッケージを確認するところから始めてみるとよい。
エコラベルの見分け方
- MSCラベル:青色の魚をかたどったマーク(天然水産物)
- ASCラベル:緑を基調としたマーク(養殖水産物)
- MELマーク:日本発の水産エコラベル
- 「コープサステナブル」ロゴ:コープ独自の共通シリーズマーク
今日からできること
- 買い物の際にパッケージ裏面・側面の認証マークを確認する
- 同じ種類の魚でも認証ラベル付きの商品を選択肢に入れる
- 宅配カタログで「コープサステナブル」表示の商品をチェックする
- 子どもと一緒に魚の資源状況について話す機会を作る
外食・給食にも広がる選択肢
認証水産物は家庭の買い物だけの話ではない。航空会社の機内食や外食チェーン、社員食堂・学校給食などでもMSC・ASC認証原料への切り替えが進む事例が報告されている。家庭で認証品を選ぶ習慣は、こうした企業・団体の調達判断を後押しする「見えない一票」としても機能する。外食・機内食での取り組みについては機内食から海を変える|MSC・ASC認証水産物と航空会社・外食の調達改革を解説で紹介している。
まとめ
- MSC=天然漁業、ASC=養殖業を対象にした国際認証
- コープは2007年から認証水産物を扱い、2030年に構成比50%以上を目標
- CO・OPフィッシュソーセージはアラスカ産スケトウダラ(MSC認証)が原料
- 世界の水産資源の62.4%のみが持続可能な水準(2023年・FAO)
- パッケージの認証マークを確認することが家庭でできる第一歩
参考文献・出典
- 日本生活協同組合連合会 コープ商品サイト|MSC認証 – コープのMSC認証の取り組みと対象商品
- 日本生活協同組合連合会 コープ商品サイト|ASC認証 – コープのASC認証の取り組みと対象商品
- 日本生協連|SDGsの取り組み – 日本生協連のSDGs全体方針
- コープネット事業連合|商品政策6つの柱 – 持続可能な社会に向けた商品政策
- 水産庁|水産エコラベルをめぐる状況について – 国内の水産エコラベル認証数・目標に関する資料(PDF)
- FAO|The State of World Fisheries and Aquaculture (SOFIA 2024) – 世界の水産資源の状態に関する統計
- MSCジャパン|アラスカのスケトウダラ漁業が再認証を取得 – アラスカ産スケトウダラ漁業のMSC認証に関するプレスリリース
- CO・OPフィッシュソーセージ|コープ商品サイト – MSC認証原料を使った商品ページ
- 日本のMSC CoC認証取得事業者が400社を突破 – MSCジャパン発表・日本国内の認証取得事業者数に関する報道
- 水産庁|我が国の資源管理(改正漁業法・TAC制度) – 改正漁業法とTAC管理の対象拡大に関する資料
※ 信頼性の高い順に配列:政府機関・学術機関 > 査読済み論文 > 専門機関 > 信頼できるメディア