スーパーやコンビニの棚に、いつの間にかラベルのないペットボトルが増えていることに気づいただろうか。アサヒ飲料が2018年に業界へ先駆けて売り出したラベルレスボトルは、いまや清涼飲料の定番になりつつある。
ラベルをなくすだけでプラスチックがどこまで減るのか、そして2026年7月に経済産業省が施行した省令改正は何を変えるのか。数字と一次情報にもとづいて確かめていく。
この記事では、アサヒ飲料の取り組みを軸に、コカ・コーラやサントリーなど他社の動き、消費者の分別行動への影響までを整理する。
この記事で学べること
- ラベルレスボトルがどんな仕組みでプラスチック使用量を減らしているか
- アサヒ飲料が2018年から積み重ねてきた販売実績と削減量
- コカ・コーラやサントリーなど他社の取り組みとの共通点・違い
- 2026年7月の経産省令改正でばら売り・自販機販売が解禁された背景
- 消費者が分別や購入の場面で気をつけたいポイント
ラベルレスボトルとは何か
「ラベルレスボトル」とは、飲料名や成分表示を印刷した収縮フィルムラベルを巻かずに販売するPETボトル飲料のことだ。中身や製法が変わるわけではなく、ボトルの周りに貼られていたプラスチック製のラベルを取り除いた、あるいは最初から巻かない、という違いだけである。見た目はシンプルな透明ボトルになり、店頭で並んだときの印象もがらりと変わる。
そもそもラベルは何のためにあったのか
ラベルには、商品名やブランドロゴを目立たせる販促機能、原材料名・栄養成分表示・賞味期限・製造者情報といった食品表示法上の必須情報を伝える機能、そして識別マークなどリサイクルのための材質表示という、複数の役割が詰め込まれてきた。特に単品で棚に並べて売る「小売」の場面では、遠くからでも銘柄を識別できるラベルが欠かせない存在だった。ラベルレス化が長らく「ケース販売限定」にとどまっていたのは、この販促・識別の機能をどう代替するかという課題があったためだ。
ラベルをなくして減らせるもの
一般的なペットボトルのラベルは、ボトル本体と同じPET樹脂、またはポリスチレン系・ポリプロピレン系の収縮フィルムでできている。ラベルをなくせば、その分のプラスチック使用量がそのまま減る。あわせて、リサイクルに出す際に「ラベルを剥がしてから捨てる」という手間もなくなる。小さな違いに見えるが、家庭ごみとして毎日大量に排出されるペットボトルにおいては、積み重なると無視できない量になる。
- ラベル分のプラスチック樹脂使用量そのものが減る
- ラベルを剥がして分別する手間がなくなり、分別のハードルが下がる
- ラベルの接着剤・インクなど異素材の混入リスクが減り、再生材の品質向上につながる
- 印刷工程が減ることで、製造時のインク・エネルギー使用量も抑えられる

識別マークとラベルレス化の関係
日本では「資源の有効な利用の促進に関する法律(資源有効利用促進法)」にもとづき、PETボトルには識別マーク(材質表示)を付ける義務がある。これまではラベル面に印刷することが一般的だったため、ラベルを完全になくすには、識別マークをボトル本体の刻印やキャップ、あるいは小さなタックシールに移す必要があった。この「識別マークをどこに表示するか」という技術的・制度的な工夫こそが、ラベルレス化の実現を左右してきた。
識別表示制度の歴史
PETボトルへの識別表示義務は1993年6月に始まった。当初はPETボトル単体が対象だったが、2001年4月には資源有効利用促進法の改正により、プラスチック製容器包装や紙製容器包装にも対象が広がった。識別マークの目的は、消費者がごみを出すときに分別をしやすくし、市区町村の分別収集を後押しすることにある。ラベルレス化は、この「分別しやすくする」という制度の本来の目的を、ラベルそのものをなくすことでさらに一歩進めた形といえる。
基礎知識:識別表示制度とは
- 資源有効利用促進法にもとづき、容器包装の材質を消費者に知らせる制度
- PETボトルには「PET」マークの表示が義務づけられている
- 従来はラベルに印刷するのが一般的だったが、キャップ・ボトル本体への表示も認められてきた
- 印刷・ラベルでの表示は一辺6mm以上、刻印での表示は8mm以上という大きさの基準がある
- 2026年7月の省令改正で、ボトル本体への刻印のみでも表示要件を満たせる範囲が広がった
海外では逆に表示を増やす動きも
海外に目を向けると、日本とは逆方向の規制も進んでいる。EUでは2026年8月から新しい包装・包装廃棄物規則(PPWR)の適用が始まり、容器の材質構成を示すピクトグラム表示は2028年8月から、再利用可能性の表示は2029年2月からと、2028〜2029年にかけて段階的に、むしろ新たな表示義務が加わっていく。「表示を減らして分別を楽にする」日本と、「表示を増やして分別の精度を高める」EUとでは、アプローチが対照的だ。どちらも消費者の分別行動を後押しし、リサイクル率を高めることが目的である点は共通している。
アサヒ飲料が切り拓いたラベルレス化の8年
国内でラベルレスボトルの流れをつくったのがアサヒ飲料である。サーキュラーエコノミーの考え方が飲料業界に広く浸透する以前の2018年から、地道に取り組みを積み重ねてきた。
2018年、ケース販売専用商品としてスタート
アサヒ飲料は2018年から、業界に先駆けてケース販売専用の「ラベルレス商品」を展開してきた。単品での棚陳列を前提とせず、箱買い・通販向けに限定することで、店頭での商品識別に必要な情報表示の制約をクリアしたかたちだ。通販サイトでは商品ページ自体に商品名や成分表示を掲載できるため、ボトル本体にすべての情報を印刷する必要がない、という販路の特性をうまく活用した格好である。
2020年、完全ラベルレスを実現
2020年、識別表示に関する制度の運用が見直されたことを受け、「アサヒ おいしい水 天然水 ラベルレスボトル」2品でラベルを完全になくすことに成功した。識別マークはキャップやボトル本体側に集約し、ラベル由来のプラスチック使用量をゼロにしている。水は原材料名や栄養成分表示の項目が少ないため、他の加工飲料に先駆けて完全ラベルレス化を実現しやすい商品だったといえる。
| 時期 | 販売実績 | 前年比 |
|---|---|---|
| 2020年1〜8月 | 約130万箱 | 217% |
| 2020年通年 | 約223万箱 | 2.1倍 |
コロナ禍の巣ごもり需要でケース買い・通販利用が増えたことも追い風となり、ラベルレス商品の販売量は急拡大した。外出を控えて飲料をまとめ買いする生活スタイルが広がったタイミングと、ラベルレス商品の拡充が重なったことが、初期の急成長を後押ししたと見られる。
アサヒ飲料のラベルレスボトルを見るラベルでできちゃうラク&エコ|アサヒ飲料アサヒ飲料のラベルレスボトル特集ページ。対象商品や「はがす手間がいらない」仕組みを写真つきで紹介。🔗 asahiinryo.co.jp2021年、「シンプルecoラベル」でバラ売りに先鞭
2021年4月13日、アサヒ飲料は「アサヒ おいしい水 天然水 シンプルecoラベル」PET585mlを、東日本の一部エリア限定で店頭・一部自動販売機にてテスト販売した。それまでのラベルレス商品はケース販売中心だったが、識別マークを極小のタックシールにまとめることで、単品でのバラ売りを可能にした点が画期的だった。タックシールの面積を最小化したことで、ラベルに使う素材由来のCO2排出量は約58%削減されたという。今回2026年に経済産業省が全国で解禁したばら売り・自販機販売は、この2021年の限定テストが先取りしていた形といえる。
十六茶で並行した2つの技術挑戦
2021年12月21日には、さらに踏み込んだ商品がAmazon.co.jp限定・1,200箱限定でテスト販売された。リコーのレーザーマーキング技術を採用した「アサヒ 十六茶」ダイレクトマーキングボトルだ。ペットボトルのごく表面にレーザーで直接描画する方式で、タックシールやネックリンガーといった表示材料を一切使わない。インクなど異物が加わらないためリサイクル性を保ちやすく、食品業界で初めてこの技術を採用した商品として注目された。ただしこちらは少量のテスト販売にとどまり、全国展開には至っていない。
レーザーマーキング版とは別に、翌2022年6月7日には、タックシール方式の「アサヒ 十六茶 シンプルecoラベル」PET630mlが全国で発売された。通常ラベルをタックシールに変更したことで、1本あたりのCO2排出量は約53%削減され、年間のCO2排出量削減効果は約16.7トンと見込まれている。レーザーマーキングという先端技術の実証実験と、タックシールという実用化しやすい技術での全国展開を並行して進めた点に、アサヒ飲料の技術選択の柔軟さがうかがえる。2023年7月18日には、容量を660mlに変更した後継版がセブン-イレブン限定で発売され、プラスチック使用量約33%削減・CO2排出量約46%削減を実現している。
ラインナップは天然水から炭酸飲料へ
当初は「アサヒ おいしい水 天然水」など水系商品が中心だったラベルレス展開は、その後、お茶・炭酸飲料にも広がった。たとえば「三ツ矢サイダー」のラベルレスボトルは2023年4月からAmazon.co.jpで数量限定発売され、500mlペットボトル24本入りという通販らしいまとめ買い仕様で提供されている。定番ブランドにまでラベルレス化が及んだことは、消費者の受け入れが進んだことの表れでもある。
プラスチック削減の具体的な数字
樹脂量90〜100%削減の中身
アサヒ飲料によると、識別マークをタックシールやキャップの印刷に置き換えた通常のラベルレス商品では、ラベル1枚あたりのプラスチック樹脂量を90%削減できる。さらに完全ラベルレスを実現した天然水2品では、ラベルに由来するプラスチック使用量を100%削減している。90%と100%の差は、識別マークをごく小さなタックシールとして残すか、キャップ・ボトル本体の刻印だけで完結させるかという表示方法の違いによるものだ。前述のレーザーマーキング技術は、素材そのものを追加しない究極の100%削減手法として位置づけられる。
年間約20トンとPETボトル全体の規模感
アサヒ飲料は「ラベルレスボトル」シリーズ全体で、年間約20トンのプラスチック資源削減を見込んでいるとしている。この数字はアサヒ飲料の一部シリーズに限った推計であり、飲料業界全体の削減量ではない点には注意したい。参考までに、日本国内で流通する指定PETボトルの年間販売量は、2024年度で約65.2万トンにのぼる(PETボトルリサイクル推進協議会調べ)。1社の1シリーズによる削減量としては、業界全体の流通量に比べれば小さな数字だが、他社の取り組みが積み重なることで削減効果は着実に広がっていく。
この20トンという推計は、天然水シリーズを含む複数のラベルレス商品の年間出荷本数に、ラベル1本あたりの削減量を掛け合わせて算出されたものとみられる。三ツ矢サイダーや十六茶など対象ブランドが増えるほど、この削減量は今後さらに積み上がっていく可能性がある。
消費者はどう受け止めているか
民間調査会社が実施した消費者アンケートによれば、ラベルレス飲料を購入した経験がある人の購入理由は「ラベルを剥がす手間が省ける」が40.9%でトップとなり、「目新しさ」(28.2%)、「エコ意識」(22.8%)が続いた。同じ商品であればラベルレス版を「購入したい」と答えた人は62.3%にのぼり、実用面の利便性と環境配慮の両方が選ばれる理由になっていることがうかがえる。一度購入した人のリピート購入率も51.1%と半数を超えており、一過性のブームではなく定着しつつある様子がわかる。
一方で、ペットボトル購入者全体のうちラベルレス商品を認知している人は53.0%にとどまり、実際に購入した経験がある人は21.7%と、認知度と購入経験の間にはまだ差がある。購入チャネルはコンビニエンスストアが53.0%、スーパーが35.9%、ネット通販が26.5%の順で多く、店頭でも一定の存在感を持つようになってきている。

他社も追随:コカ・コーラとサントリーの動き
ラベルレス化はアサヒ飲料だけの取り組みではない。コカ・コーラやサントリーなど大手飲料メーカーも相次いで参入している。
コカ・コーラ、100%リサイクルPETのラベルレス化
日本コカ・コーラは2022年4月から350mlサイズで、2025年5月からは500mlサイズで、100%リサイクルPETボトルを使用した「コカ・コーラ」「コカ・コーラ ゼロ」のラベルレスボトルをオンライン限定で販売している。ラベルをなくすだけでなく、ボトル自体を再生PET由来にすることで、資源循環をさらに一段進めた形だ。「ラベルをなくす」取り組みと「ボトル自体を再生材でつくる」取り組みは別の施策だが、両方を組み合わせることで削減効果は掛け算になる。
コカ・コーラのラベルレスボトルを見る100%リサイクルPETを使用したラベルレスボトル発売|日本コカ・コーラ「コカ・コーラ」「コカ・コーラ ゼロ」500mlのラベルレスボトルを2025年5月に発売した際のニュースリリース。🔗 coca-cola.comコカ・コーラシステムは世界共通の目標として「World Without Waste(廃棄物ゼロ社会)」を掲げ、2030年までに自社が販売するペットボトル・缶と同量を回収・リサイクルすることを目指している。日本国内でも同水準の目標を掲げ、2030年には「ボトルtoボトル」の比率を90%まで高める計画だ。ラベルレス化は、この大きな目標を支える個別施策の一つと位置づけられる。
サントリー「氷雪ピュアボトル」の店頭展開
サントリー食品インターナショナルは2021年10月、Amazonやアスクルなど通販チャネルで「サントリー天然水」のラベルレス商品の販売を開始。好評を受けて2022年7月5日には、ラベルレス専用ボトル「氷雪ピュアボトル」を使った商品をコンビニ店頭でも数量限定発売した。通販限定にとどまらず、店頭の単品販売にまで広げた点が特徴で、当時としては珍しい先行事例だった。ボトルの循環という切り口では、サントリー天然水のボトルtoボトル水平リサイクルの取り組みともつながっている。
| 企業 | 主な取り組み | 販路 |
|---|---|---|
| アサヒ飲料 | 2018年からケース限定→2020年完全ラベルレス | 通販・ケース販売中心 |
| 日本コカ・コーラ | 100%リサイクルPETのラベルレスボトル | オンライン限定 |
| サントリー食品 | ラベルレス専用ボトル「氷雪ピュアボトル」 | 通販+コンビニ店頭(数量限定) |
3社を比べると、着手の早さではアサヒ飲料が先行し、コカ・コーラは「ボトル自体を再生材にする」施策との組み合わせで独自色を出し、サントリーは通販から店頭単品へと販路を広げた点に特徴がある。いずれも2018〜2022年ごろに取り組みを本格化させており、コロナ禍の巣ごもり需要とEC利用の拡大が、複数のメーカーで足並みをそろえてラベルレス化を後押しした時期と重なる。
2026年、経産省がばら売り・自販機販売を解禁
省令改正の内容
2026年7月30日、経済産業省はラベルレスPETボトルの対象を拡大する省令を公布・施行した。従来、ラベルを完全に省略できるのはケース単位のばら売りに限られ、単品での小売や自動販売機での販売は想定されていなかった。今回の改正により、水など表示項目の少ない商品を対象に、単品でもラベルレスでの販売が可能になった。
PETマーク刻印だけで足りる理由
改正の背景には、ボトルの底面や側面にPETマークを刻印するだけでも、消費者はこれまでと同様のリサイクル行動(分別・排出)をとれることが確認されたという判断がある。食品表示など他の法令で求められる表示をボトル側面に付けない場合に限り、側面のラベルや印刷を省略できるようになった。JANコードの読み取りが不要な自動販売機から、こうした商品の普及が進むとみられている。
これまで単品販売が限られていた理由
小売店の単品棚では、価格表示やPOSレジでの商品識別のために外装への印刷情報が欠かせない場面が多い。一方、自動販売機は購入前に商品を手に取って確認できる上、価格や商品名は機体側の表示で代替できるため、ボトル本体の表示要件を緩めやすい販路だった。今回の省令改正が自動販売機での普及を優先的に見込んでいるのは、こうした販路ごとの事情を踏まえたものだ。
プラスチック資源循環政策の流れの中で
今回の改正は、単発の規制緩和ではなく、日本のプラスチック資源循環政策の延長線上にある。2022年4月には「プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律(プラ新法)」が施行され、海洋プラスチックごみ問題や地球温暖化への対応を背景に、プラスチック製品全体の排出抑制・回収・リサイクル促進が国の方針として掲げられてきた。飲料容器のラベルレス化は、この大きな政策の流れの中で、消費者に最も身近な形で資源循環を実感できる取り組みの一つに位置づけられる。

消費者の分別行動・リサイクル品質への影響
ラベルを剥がす手間がなくなる
ラベルレスボトルの利点は、プラスチック使用量の削減だけではない。従来はキャップとラベルをそれぞれ分別してから容器包装プラスチックとして排出する必要があったが、ラベルがなければその工程がまるごと不要になる。忙しい日常の中で分別のハードルが下がることは、リサイクル率の底上げにもつながる。実際、別の調査でも「無駄が少ない・ごみが減らせる」(76.8%)、「ラベルを剥がして捨てる手間が省ける」(63.9%)が支持理由の上位に挙がっており、環境配慮と生活の利便性がセットで評価されている様子がわかる。
自治体の分別ルールでは、ペットボトルは「キャップ・ラベルを外し、中をすすいでからつぶして出す」のが基本とされている。ラベルレスボトルであれば、この手順から「ラベルを外す」という一手間がまるごと省ける。特に高齢者や忙しい世帯にとっては、こうした小さな手間の削減が分別の継続しやすさに直結する。
ボトルtoボトル水平リサイクルとの関係
ラベルに使われる接着剤や異素材は、使用済みPETボトルを再びボトルへ再生する「ボトルtoボトル」水平リサイクルにおいて、再生材の品質を左右する異物混入の一因とされてきた。リサイクル工場では回収したPETボトルを粉砕・洗浄する工程で、ラベルやキャップの素材を選別・除去する必要がある。ラベルの枚数が減れば、この選別工程の負荷も下がり、より高品質な再生PETを安定して確保しやすくなると期待されている。

日本のPETボトルリサイクル率は世界的にも高水準
日本の使用済みPETボトルのリサイクル率は2024年度で85.1%と、目標である85%以上を維持し、世界的に見ても高い水準にある。PETボトルリサイクル推進協議会が公表する日米欧比較によれば、2021年時点で米国のリサイクル率は19.6%、回収率も29%にとどまっており、94%前後の回収率を維持する日本との差は大きい。ただし、この85.1%という数字には海外での再資源化分も含まれており、国内でボトルからボトルへ再生される「水平リサイクル」の比率をどこまで高められるかが次の課題とされる。サーキュラーエコノミーの観点からは、量的なリサイクル率だけでなく質を高めていくことが重要であり、ラベルレス化はその一つの答えといえる。
普及の課題とこれから
表示義務が多い商品では難しい面
今回の規制緩和の対象は、水などもともと表示項目が少ない商品が中心だ。原材料名やアレルギー表示、栄養成分表示などが多い加工飲料では、側面の表示を完全に省略することは難しく、ラベルレス化がすぐに全商品へ広がるわけではない。炭酸飲料や乳性飲料でラベルレス化が進んでいるのも、通販という「商品ページに情報を掲載できる」販路に限定されているためで、店頭単品販売への拡大にはまだハードルが残る。
自動販売機からの普及シナリオ
JANコードの読み取りが不要な自動販売機は、単品販売でありながら表示制約が比較的緩い販路として注目されている。今後は自動販売機向けの水・お茶などから、ラベルレス商品が段階的に広がっていくとみられる。コンビニや小売店の単品棚への展開は、POSシステムや価格表示の運用面での調整が必要になるため、もう一段階先の課題として残っている。
認知と購入のあいだにあるギャップ
前章で見たとおり、ラベルレス商品の認知度(53.0%)と購入経験率(21.7%)の間には開きがある。消費者からは「購入する機会がない」「店頭で商品を見たことがない」といった声が挙がっており、単品での取り扱い店舗がまだ少ないことが普及のボトルネックになっているとみられる。今回の省令改正で単品・自動販売機での販売が可能になったことは、こうした流通面の制約を緩める一歩といえる。
また、依然としてラベル付き商品を選ぶ消費者も多い。ラベルのある商品を選ぶ理由として「何の飲料かひと目でわかりやすいから」を挙げる人が76.3%にのぼるという調査結果もあり、パッと見て銘柄がわかる安心感は根強い。ラベルレス化を進める側にとっては、ボトルの形状や色でブランドを識別できる工夫など、表示以外での見分けやすさが今後の課題になりそうだ。
| 課題 | 現状 | 対応の方向性 |
|---|---|---|
| 表示義務の多さ | 加工飲料は原材料名等を省略しにくい | 水・お茶など表示項目の少ない商品から先行 |
| 認知と購入機会のギャップ | 認知53.0%に対し購入経験21.7% | 単品販売店舗・自動販売機の拡大 |
| ブランドの見分けやすさ | ラベル選好者の76.3%が「わかりやすさ」重視 | ボトル形状・キャップ色での差別化 |
今日からできること
- ケース買い・通販でラベルレス商品を見かけたら選んでみる
- ラベルがない商品でも、キャップの識別マークを確認して正しく分別する
- 自動販売機でラベルレス商品を見かけたら、変化のサインとして意識してみる
- ペットボトルを捨てる前に、キャップとボトルを分けて分別する習慣を続ける

ラベル1枚をなくすという小さな変更が、プラスチックの削減、分別の手軽さ、そしてリサイクル材の品質向上という複数の効果につながっている。2026年の規制緩和を機に、次にコンビニやスーパーの単品棚でラベルレス商品を見かけたときは、その裏側にある8年越しの積み重ねを思い出してみてほしい。
参考文献・出典
- 環境省 プラスチック・スマート「アサヒ飲料㈱ラベルレスシリーズ」事例 – 削減実績90〜100%
- アサヒグループホールディングス「ラベルレス化による環境負荷低減への取り組み」 – 年間約20tのプラスチック資源削減見込み
- アサヒ飲料「ラベルをタックシールに変更し、CO2排出量約58%削減」ニュースリリース – シンプルecoラベルのテスト販売(2021年)
- 経済産業省「ラベルレスPETボトルの対象拡大に関する省令が公布・施行されました」 – 2026年7月30日
- 日本コカ・コーラ「100%リサイクルPETを使用したラベルレスボトル」ニュースリリース – 2025年4月21日
- サントリー食品インターナショナル「当社初!ラベルレス専用ボトル『氷雪ピュアボトル』」
- PETボトルリサイクル推進協議会 2025年次報告書 – 2024年度リサイクル率・販売量
- MD next「ラベルレス飲料、販路広がるも『購入あり』が伸び悩み」 – 消費者調査データ
- PETボトルリサイクル推進協議会「日米欧のリサイクル状況比較」
- BCN+R「アサヒ十六茶、リコーのレーザーマーキング技術で完全ラベルレスに」 – 2021年11月22日・Amazon限定1,200箱のテスト販売
- アサヒ飲料「『アサヒ 十六茶 シンプルecoラベル』6月7日発売」ニュースリリース – 2022年5月11日発表・全国発売・CO2約53%削減
- ビジネスインサイダージャパン「アサヒ十六茶シンプルecoラベル版」 – 2023年7月18日・セブン-イレブン限定660ml・プラ33%減/CO2 46%減
- European Commission「Facts about the new EU rules on packaging and packaging waste」 – PPWRの表示義務
- 日本コカ・コーラ「World Without Waste(廃棄物ゼロ社会)を目指して」
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