約7割
PFASを使わない生地に切り替え済みのモンベル製品の割合(モンベル公式)
130台分
日本で1日に焼却・埋立される服の量(大型トラック換算・環境省)
約35%
海に流出する一次マイクロプラスチックのうち合成繊維の洗濯に由来する割合(IUCN報告書)

アウトドアウェアを選ぶとき、「環境にやさしいかどうか」を基準にする人が増えています。日本を代表するアウトドアブランド・モンベル(mont-bell)は、リサイクルポリエステルを使ったフリース素材の採用、有機フッ素化合物(PFAS)を使わない生地への切り替え、使い終わった寝袋の回収&再生、そして充実した修理サービスと、「作る責任」と「長く使う文化」の両面から環境負荷の低減に取り組んでいます。

衣類と環境の問題は、実は海と深くつながっています。環境省によると、日本では1日に大型トラック約130台分もの服が焼却・埋立処分されています。さらに、フリースなどの化学繊維は洗濯のたびに微細な繊維くず(マイクロファイバー)となって排水から海へ流れ出し、IUCN(国際自然保護連合)の報告書では、海に流出する一次マイクロプラスチックの約35%が合成繊維の洗濯に由来すると推計されています。

この記事では、モンベルの公式情報や環境省などの一次情報をもとに、リサイクル素材ウェアの実際、PFASフリー化の進み具合、回収・再生の仕組み、修理サービスまでを整理し、私たちがウェアを選ぶ・使うときにできることを考えます。

この記事で学べること

  • モンベルのリサイクル素材ウェア(再生ポリエステル使用のフリース「クリマエア」)の実際
  • 全商品の約7割まで進んだPFASフリー化の経緯と、はっ水剤が海の環境に関わる理由
  • スリーピングバッグの回収&再生プロジェクトとリサイクルプロダクツの仕組み
  • 修理して長く使う「リペアサービス」の使い方と、買い替えより修理が環境負荷を減らす理由
  • 衣類と海洋汚染(マイクロファイバー)のつながりと家庭でできる対策
  • 環境に配慮したアウトドアウェアを選ぶときのチェックポイント

モンベルとはどんなブランドか:機能美と自然保護の理念

モンベル(mont-bell)は、1975年に登山家の辰野勇氏が大阪で創業した日本のアウトドア総合ブランドです。登山用ウェアや寝袋、テントからカヤック・パックラフトといった水辺の道具まで幅広く手がけ、国内アウトドア用品メーカーとして最大級の規模に成長しました。ブランド名はフランス語で「美しい山」を意味します。

登山家がつくった「使う人目線」のメーカー

創業者の辰野勇氏は、若くしてアルプス三大北壁のひとつアイガー北壁の登攀に成功した登山家として知られます。「自分たちが本当に使いたい道具を自分たちの手で作る」という出発点は、いまもモンベルのものづくりに引き継がれています。極限の環境で使われる道具には、軽さ・丈夫さ・修理のしやすさが不可欠であり、その積み重ねが結果として「長く使える製品」につながっています。

また、モンベルは製品づくりにとどまらず、災害時にアウトドア用品と社員のスキルを活かして被災地を支援する「アウトドア義援隊」の活動や、自然体験の機会づくりなど、フィールドと社会をつなぐ活動を続けてきました。自然の恵みの上に成り立つ事業だからこそ、自然を守る側に立つ——この姿勢が同社の環境対応の土台にあります。

「Function is Beauty」と「Light & Fast」

モンベルのものづくりの根幹には、「Function is Beauty(機能美)」と「Light & Fast(軽量と迅速)」というコンセプトがあります。過剰な装飾を省き、必要十分な機能を最小限の材料で実現するという思想は、結果として資源の使用量を抑えることにつながります。軽く、丈夫で、修理しながら長く使える製品づくりそのものが、環境負荷を減らす設計になっているのです。

自然のフィールドがあってこそ成り立つ事業

アウトドアメーカーにとって、山や海、川といった自然のフィールドは事業の基盤そのものです。モンベルは公式サイトで自然保護活動のページを設け、はっ水成分の切り替えやリサイクルプロダクツ、寝袋の回収&再生プロジェクトなどの取り組みを公開しています。環境対応を「宣伝」ではなく「ものづくりの前提」として位置づけている点が特徴です。

モンベルの取り組みを見るモンベル|自然保護活動はっ水成分の切り替え、リサイクルプロダクツ、回収&再生プロジェクトなど、モンベルの環境への取り組みの公式ページ。🔗 about.montbell.jp

この記事で扱う「環境配慮」の4つの柱

  • 素材:リサイクルポリエステルなど再生素材の採用
  • 化学物質:PFAS(有機フッ素化合物)を使わない生地への切り替え
  • 循環:使用済み寝袋の回収&再生、端切れの再利用
  • 長寿命化:修理サービスとメンテナンスで1着を長く使う

なぜアウトドアウェアに環境配慮が求められるのか

そもそも、なぜ衣類、とりわけアウトドアウェアで環境配慮が重要視されるようになったのでしょうか。背景には「大量廃棄」「海洋汚染」「化学物質」という3つの問題があります。

日本では1日に大型トラック約130台分の服が捨てられている

環境省の「サステナブルファッション」に関する調査によると、日本国内では家庭などから手放された服の多くが再利用されず、1日あたり大型トラック約130台分に相当する服が焼却・埋立処分されています。国内で1年間に新たに供給される衣類は約82万トンにのぼる一方、リサイクルに回る量はその一部にとどまっており、「作って、着て、捨てる」一方通行の流れが続いています。

衣類の大量廃棄と海洋への繊維流出を表した概念図
大量廃棄と洗濯由来のマイクロファイバー流出。衣類の環境問題は陸から海へつながっている

環境省の同じ調査からは、手放された服のうちリユース(古着として再利用)やリサイクル(資源として再生)に回る割合がまだ限られていることも分かっています。国内の年間供給量約82万トンに対し、リサイクルされる量は約12万トン程度にとどまるとされ、大半は焼却・埋立に向かいます。服を燃やせばCO2が発生し、埋め立てれば化学繊維は長期間分解されずに残ります。

ファッション産業は世界的にも環境負荷の大きい産業

衣類の環境負荷は日本だけの問題ではありません。国連環境計画(UNEP)などの国際機関は、ファッション産業を水の大量消費・化学物質の使用・温室効果ガスの排出の面で環境負荷の大きい産業のひとつに挙げています。衣類のライフサイクルで見ると、CO2排出の9割以上は原材料調達から製造までの段階で発生するとされ、「作る量そのものを減らす」「1着を長く使う」ことが最も効果的な対策だと指摘されています。

洗濯のたびに海へ流れ出すマイクロファイバー

フリースをはじめとする化学繊維のウェアは、洗濯のたびに目に見えないほど細かい繊維くず(マイクロファイバー)を放出します。IUCN(国際自然保護連合)が2017年に公表した報告書では、海に流出する一次マイクロプラスチックのうち約35%が合成繊維の洗濯に由来すると推計されており、発生源として最大級の割合を占めます。流れ出た繊維は下水処理で完全には取り除けず、川を経て海に達し、プランクトンから魚介類まで幅広い生物に取り込まれることが確認されています。家庭では洗濯ネットの使用、洗濯回数の見直し、繊維を捕集するフィルター製品の活用などで流出量を減らせます。詳しくは関連記事「洗濯で流れ出るマイクロファイバーとは」で解説しています。

高機能ウェアを支えてきた化学物質の問題

レインウェアなどの高いはっ水性は、長らくPFAS(ペルフルオロアルキル化合物およびポリフルオロアルキル化合物)と呼ばれる有機フッ素化合物によって実現されてきました。PFASは自然界でほとんど分解されないため「永遠の化学物質(forever chemicals)」とも呼ばれ、河川や海洋、生物の体内への蓄積が世界的な問題となり、各国で規制が進んでいます。高機能と環境負荷低減をどう両立するかは、アウトドア業界全体の課題です。

衣類×海の3つの問題

  • 大量廃棄:日本では1日に大型トラック約130台分の服が焼却・埋立処分(環境省)
  • マイクロファイバー:海に流出する一次マイクロプラスチックの約35%が洗濯由来(IUCN・2017年)
  • 化学物質:はっ水加工に使われてきたPFASは分解されにくく、水環境に残留する

モンベルのリサイクル素材ウェア:再生ポリエステルの実際

モンベルは二酸化炭素の排出量を減らす取り組みとして、石油由来の素材から、リサイクルポリエステルなど環境負荷の少ない素材への切り替えを進めています。ここでは公式情報で確認できる代表例を見てみましょう。

フリース素材「クリマエア」はリサイクルポリエステルを一部使用

モンベルの公式サイトによると、フリース素材「クリマエア(CLIMAAIR)」はリサイクルポリエステルを一部使用しています。クリマエアは繊維の目を粗めに編むことで軽量化しながら、長い毛足に多くの空気を蓄えて高い保温性を実現した、モンベルの代表的なフリース素材のひとつです。ジャケットやベストなど幅広い製品に使われており、「環境配慮のために性能を犠牲にする」のではなく、主力素材に再生原料を組み込んでいる点がポイントです。

この記事の要点となる3つの数字をまとめた図版
数字で見る:本文で扱う3つの指標

フリースはもともと、保温着の定番だったウールに代わる軽量素材として広まったポリエステル起毛素材です。軽くて乾きやすく、濡れても保温力が落ちにくいため登山からタウンユースまで幅広く使われますが、原料は石油由来。ここに再生原料を組み込めば、使い慣れた定番素材のまま、資源の新規採掘とCO2排出を減らせることになります。

報道が伝えるモンベルの素材切り替えの方向性

アウトドア誌BE-PALの記事では、モンベルがCO2排出量を減らすため、石油由来の素材から植物由来のバイオ素材やリサイクルポリエステルを使った素材への切り替えを進めていることが紹介されています。素材の転換は染色や耐久性の再検証を伴う地道な作業であり、一気にすべてを置き換えるのではなく、品質を確認しながら製品ごとに段階的に進めるのがモンベル流です。

再生ポリエステルはどうやって作られるのか

リサイクルポリエステル(再生ポリエステル)の多くは、回収された使用済みPETボトルなどを原料とします。製造の流れはおおむね次のとおりです。

  1. 使用済みPETボトルを回収し、ラベルやキャップを除いて洗浄する
  2. 細かく砕いてフレーク状にし、汚れを取り除く
  3. 溶かしてペレット(粒)にし、糸として紡ぎ直す
  4. 紡いだ糸を編み立て、フリースなどの生地に加工する

経済産業省の「繊維製品の環境配慮設計に関する事例集」でも、再生ポリエステルは石油由来のバージンポリエステルと比べて資源の新規採掘を減らし、CO2排出量の削減につながる素材として紹介されています。ペットボトルの循環については「サントリー天然水のリサイクルPET」の記事でも詳しく解説しています。

再生素材のメリットと限界を正しく知る

  • メリット:石油の新規使用を減らせる/廃棄物の有効活用になる/品質は用途に応じてバージン材とほぼ同等にできる
  • 限界①:再生ポリエステルでも、洗濯すればマイクロファイバーは発生する
  • 限界②:衣類から衣類への「水平リサイクル」はまだ発展途上で、多くはボトル由来
  • 限界③:リサイクル素材を使うこと自体より、1着を長く使うことの環境効果が大きい場面も多い

つまり再生素材は万能薬ではなく、「長く使う」「適切に洗う」「使い終わったら循環に戻す」という行動とセットになって初めて効果を発揮します。モンベルの取り組みが素材だけでなく回収や修理にまで広がっているのは、この点で合理的といえます。

リサイクル素材の製品を見分けるには

店頭やオンラインストアで再生素材の製品を探すときは、製品ページの素材欄や特徴欄に「リサイクルポリエステル使用」などの記載があるかを確認しましょう。繊維業界では、再生原料の含有を第三者が認証するGRS(グローバル・リサイクルド・スタンダード)のような国際認証も普及しつつあります。表示がない製品について「リサイクル素材のはず」と思い込まないことも、正確な情報にもとづく買い物の基本です。

PFASフリーへの転換:はっ水剤切り替えの年表

モンベルの環境対応の中で特に進んでいるのが、はっ水剤の切り替えです。公式サイトの自然保護活動ページに、その経緯が明記されています。

2015年のC8からC6へ、2020年からはPFASフリーへ

モンベルは2015年に、環境残留性が特に問題視されたC8(炭素数8)系のフッ素化合物を使ったはっ水剤からC6系へ切り替えました。さらに2020年からはPFASを一切使用しない生地への転換を開始。公式サイトによると、トレッキングパンツや保温材入りウエア、スリーピングバッグなどを含め、現在では全商品の約7割がPFASを使用していない生地になっています。

取り組み
2015年はっ水成分をC8系からより残留性の低いC6系へ切り替え
2020年PFASを使用しない生地への切り替えを開始
2024年表地・防水透湿メンブレン・裏地までPFCフリーの生地を用いたレインウェアの開発が報じられる
現在全商品の約7割がPFAS非含有の生地に(モンベル公式)
モンベルのはっ水剤・生地切り替えの歩み(出典:モンベル公式サイト、WWDJAPAN)
レインウェアの表面で水滴が玉になってはじかれている様子
はっ水性能は快適さの要。それを「永遠の化学物質」に頼らず実現する挑戦が進む

PFASはなぜ世界中で規制されるのか

PFASのうち代表的なPFOS(ペルフルオロオクタンスルホン酸)は2009年、PFOA(ペルフルオロオクタン酸)は2019年に、残留性有機汚染物質を規制する国際条約「ストックホルム条約」の対象に追加され、製造・使用が原則廃止されました。これらの物質は水や土壌中で分解されにくく、食物連鎖を通じて魚や海鳥、人の体内にも蓄積することが確認されています。はっ水加工されたウェアそのものが直ちに危険というわけではありませんが、製造工程や廃棄後に環境へ放出されるPFASが、巡り巡って川や海の生態系に残り続けることが問題視されているのです。

防水透湿ウェアの「脱フッ素」はなぜ難しいのか

フッ素系化合物は水も油もはじく特異な性質を持ち、少量で高いはっ水性を長期間保てるため、代替は簡単ではありません。非フッ素系のはっ水剤は油汚れに弱く、はっ水性の持続性でも課題があるとされてきました。それでも業界全体で切り替えが進むのは、PFASの環境残留性・生物蓄積性への懸念と各国の規制強化があるためです。ファッション誌WWDJAPANは2024年、モンベルが表地・防水透湿メンブレン・裏地までPFC(有機フッ素化合物)フリーを実現した生地を用いたレインウェアを開発したと報じています。

ユーザーの側で知っておきたいのは、非フッ素系のはっ水加工は油分や汚れの影響を受けやすいという性質です。皮脂や泥が付いたままだとはっ水性が早く落ちるため、PFASフリーのウェアほど「こまめに洗って清潔に保つ」ことが性能維持のコツになります。環境にやさしい素材への移行は、使い手のメンテナンス習慣とセットで完成するのです。

ここがポイント

  • はっ水剤のPFAS問題は「着る人の快適さ」と「水環境の保全」のトレードオフだった
  • モンベルは2015年→2020年と段階的に切り替え、全商品の約7割をPFAS非含有に
  • ユーザー側も、はっ水機能の回復メンテナンスで買い替えを減らせる(後述)

回収&再生プロジェクト:使い終わった寝袋が資源に変わる

素材の切り替えと並ぶもうひとつの柱が、製品を使い終わったあとの「循環」です。モンベルは自社が製造・販売した製品の回収と再生に取り組んでいます。

スリーピングバッグ回収&再生プロジェクトの仕組み

モンベルは、自社が製造・販売した化学繊維わたのスリーピングバッグ(寝袋)を回収し、再生するプロジェクトを実施しています。対象は化繊わたモデルすべてで、ダウン製品は対象外。洗濯済みであれば、破れなどの破損があっても受け付けてもらえます。全国のモンベルストアやステッカーを掲示した協力店に持参するか、石川県羽咋市の(株)北陸モンベルへ発送する(送料は利用者負担)ことで回収に参加できます。

回収に出す前の洗濯方法も公式ページで案内されています。中性洗剤を使って大きめの浴槽で押し洗いし(大型の洗濯機なら弱水流で可)、脱水機は使えますが乾燥機は使用不可です。ひと手間かかりますが、この一連の流れ自体が「道具を最後まで大切に扱う」体験になっています。

回収された寝袋はどこへ行くのか

回収された化繊わたは、保温・保冷材やクッションの中わた、マット類などへの再利用が研究開発されています。寝袋はかさばるうえ自治体によっては処分方法に迷う製品です。メーカー自身が引き取りの受け皿を用意することは、廃棄物を減らすと同時に「作った製品に最後まで責任を持つ」姿勢の表れといえます。

こうした取り組みは、製品の廃棄段階まで作り手が関与する「拡大生産者責任」の考え方を、メーカーが自主的に実践している例といえます。売って終わりではなく、回収の受け皿までを製品設計の一部と捉える発想は、循環型社会への移行に欠かせません。

フリースの端切れがぬいぐるみになる「リサイクルプロダクツ」

モンベルはフリース製品の製造時に出る端切れを使って、クマのぬいぐるみやクッションなどを製作し、「リサイクルプロダクツ」として販売しています。これまで産業廃棄物として処分されてきた端切れを再利用する取り組みで、製作は社会福祉法人青葉仁会(あおはにかい)の授産施設と協力して行われており、環境への配慮と福祉支援を同時に実現しています。

廃棄物の削減が障がいのある人の仕事づくりにつながるこの仕組みは、環境(SDGs目標12「つくる責任 つかう責任」)と社会(目標8「働きがいも経済成長も」)を横断する取り組みの好例です。端切れという「ごみ」に新しい価値を与える発想は、家庭での不用品活用のヒントにもなるでしょう。

リサイクルプロダクツを見るモンベル|リサイクルプロダクツフリース製造時の端切れから作られるぬいぐるみやクッションなどの公式オンラインストア一覧。🔗 webshop.montbell.jp

回収&再生プロジェクトの利用方法(要点)

  • 対象:モンベル製の化学繊維わたスリーピングバッグ(ダウンは対象外)
  • 条件:洗濯済みであること(破れなどの破損はあってもよい)
  • 持ち込み先:全国のモンベルストア/協力店、または(株)北陸モンベルへ発送
  • 再生先:保温・保冷材、クッション中わた、マット類など(研究開発中)

「長く使う」が最大の環境配慮:モンベルの修理サービス

環境省の調査では、1人が1年間に手放す服の量に対して、修理して着続ける服はごくわずかにとどまります。「直して長く使う」文化を支える仕組みとして、モンベルの修理サービスは重要な役割を果たしています。

修理サービスで何ができるのか

モンベルのカスタマーサービスでは、ウエアやバッグの生地の破れ補修、ファスナー交換、登山靴のソール張り替えなど、幅広い修理を受け付けています。公式FAQによると、修理は受付から納品までおおむね4〜6週間(修理箇所の数や季節により変動)。夏山シーズンはテント・レインウェア・登山靴、冬はダウンウェアの依頼が集中するとされています。

作業台でアウトドアジャケットを丁寧に修理する職人の手元
破れたら捨てるのではなく直す。修理サービスは「長く使う文化」のインフラだ

買い替えより修理が環境負荷を減らす理由

衣類のライフサイクルで排出されるCO2の大部分は、原材料の調達と製造の段階で発生します。つまりすでに手元にある1着を長く着ることは、新しい1着の製造に伴う排出をまるごと先送り・削減することを意味します。環境省もサステナブルファッションの取り組みとして「今持っている服を長く着る」ことを最初の一歩に挙げています。丈夫に作り、修理の受け皿を用意するモンベルの姿勢は、この考え方と合致します。

環境省の調査でも、1人が1年間に修理して着続ける服はわずかにとどまる一方、まだ着られるのに手放される服は多いことが示されています。「直せる場所がある」「直した経験がある」ことは、次の買い物でも長く使える製品を選ぶ動機になります。修理サービスは単なるアフターサービスではなく、消費のあり方を変える仕組みなのです。

はっ水回復とメンテナンスで寿命はさらに延びる

レインウェアの「水が染みるようになった」という症状の多くは、防水層の劣化ではなくはっ水性の低下が原因です。洗濯で汚れを落とし、熱処理(当て布をしてアイロンなど)やはっ水剤で処理すればはっ水性が回復し、買い替えずに使い続けられるケースが少なくありません。モンベルは公式サイトではっ水性を維持するメンテナンス方法を公開しています。

具体的には、専用洗剤か中性洗剤でのこまめな洗濯、すすぎを十分に行うこと、洗濯後に低温の乾燥機や当て布をしたアイロンで熱を加えてはっ水基を立ち上がらせること、それでも回復しなければ市販のはっ水剤で再処理すること、といった手順が紹介されています。ダウン製品や寝袋も、正しい洗濯と保管(圧縮したまま長期保管しない等)でロフト(かさ高)を保てば、保温力を長く維持できます。

修理サービスを見るモンベル|修理サービスのご案内ウエアやバッグの生地補修、登山靴のソール張り替えなど。長く使うための公式リペアサービス。🔗 support.montbell.jp

今日からできる「長く使う」アクション

  • 破れ・ファスナー故障は捨てる前に修理サービスへ相談する
  • レインウェアは定期的に洗濯し、はっ水性を回復させる
  • 化繊ウェアの洗濯は洗濯ネットを使い、マイクロファイバーの流出を減らす
  • 使わなくなったモンベルの化繊寝袋は回収&再生プロジェクトへ

他ブランドと比べて分かるモンベルの立ち位置

アウトドア業界では各社が環境対応を競っています。代表的なブランドの取り組みと比べると、モンベルの特徴がよく見えてきます。

ブランド代表的な取り組み特徴
モンベル(日本)リサイクルポリエステルの採用、PFASフリー化(全商品の約7割)、寝袋回収&再生、修理サービス「機能美」思想のもと、長寿命設計と修理・回収の仕組みづくりに強み
パタゴニア(米国)廃漁網を再生した素材「NetPlus」、リサイクル素材の広範な採用、修理サービス「Worn Wear」環境活動への発信力が強く、再生素材の採用比率が高い
アディダス(独国)海洋プラスチックを再生した「adidas×Parley」シリーズスポーツ用品への海洋プラ活用の先駆け
アウトドア・スポーツブランドの環境対応の例(各社公式情報・報道をもとに作成)

海外勢は「素材の転換」、モンベルは「長く使う仕組み」に強み

パタゴニアの廃漁網再生素材については「パタゴニアNetPlus徹底解説」で、海洋プラスチックを使った製品の可能性と課題は「海洋プラスチックのリサイクル製品とは」で詳しく紹介しています。海外ブランドが再生素材の採用比率やストーリー性で先行する一方、モンベルは修理サービスや回収の受け皿といった「長く使うためのインフラ」を国内に張り巡らせている点に独自性があります。

環境配慮ウェアを選ぶときのチェックポイント

  1. 素材表示を見る:リサイクルポリエステルなど再生素材の使用が明記されているか
  2. はっ水加工を確認する:PFASフリー(フッ素フリー)の記載があるか
  3. 修理体制を調べる:メーカーが修理サービスを提供しているか、パーツ供給はあるか
  4. 回収の仕組みを確認する:使い終わった製品の回収プログラムがあるか
  5. 本当に必要かを考える:最も環境負荷が小さいのは「買わずに済む買い物」

重要なのは、特定のブランドを「正解」と決めることではなく、素材・化学物質・循環・長寿命化という複数の視点で製品を見比べる習慣を持つことです。環境対応の情報は各社の公式サイトで年々更新されるため、購入前に最新の情報を確認することもポイントです。

「高いから買えない」への現実的な答え

環境配慮型の製品は割高になりがちですが、アウトドアウェアは「価格÷着用年数」で考えるのが合理的です。修理しながら10年使える1着は、2〜3年で買い替える安価な服より、1年あたりのコストも環境負荷も小さくなり得ます。モンベルのように修理体制が整ったブランドを選ぶことは、家計にとっても長期的には合理的な選択になります。中古市場やアウトドア用品のリユースショップを活用するのも、新規製造を減らすという意味で立派な環境行動です。

まとめ:1着を長く使うことが、海を守ることにつながる

モンベルのリサイクル素材ウェアと環境への取り組みを見てきました。派手なキャンペーンよりも、素材の切り替え、修理、回収という地道な仕組みづくりを積み重ねるスタイルは、「Function is Beauty」の理念そのものといえます。

この記事のポイントを箇条書きでまとめた図版
この記事のポイント。詳しくは各章で解説している

私たちにできる3つのこと

第一に、買うときに素材とはっ水加工の表示を確認すること。第二に、持っているウェアを手入れ・修理しながら長く使うこと。第三に、使い終わった製品を回収の仕組みに戻すことです。日本では1日に大型トラック約130台分の服が処分され、洗濯由来のマイクロファイバーは海のマイクロプラスチック汚染の大きな発生源になっています。1着を長く大切に使うという身近な行動が、廃棄物の削減と海の保全に直結します。

海の環境問題と聞くとレジ袋やストローが思い浮かびますが、クローゼットの中のフリースやレインウェアも、選び方と使い方しだいで海への負荷を増やしも減らしもします。山の道具を作り続けてきたモンベルの取り組みは、「良いものを、直しながら、長く使う」というシンプルな原則が、最も確かな環境行動であることを教えてくれます。次にウェアを買うとき、あるいは手放すとき、この記事で紹介した仕組みをぜひ思い出してください。

この記事のまとめ

  • モンベルはフリース素材「クリマエア」でリサイクルポリエステルを一部使用している
  • はっ水剤は2015年にC8→C6、2020年からPFASフリー化を進め、全商品の約7割がPFAS非含有に
  • 化繊わたの寝袋を回収して保温材などへ再生するプロジェクトと、端切れを活用したリサイクルプロダクツを展開
  • 修理サービス(受付から約4〜6週間)とメンテナンス情報で「長く使う文化」を支えている
  • 衣類の大量廃棄とマイクロファイバーは海の環境問題に直結。長く使うことが最大の環境配慮になる

参考文献・出典

  1. モンベル – 自然保護活動(はっ水成分の切り替え・リサイクルプロダクツほか)
  2. モンベル – 回収&再生プロジェクト(スリーピングバッグ)
  3. モンベル – 軽くて暖かく、柔らかな着心地のフリースウエア(クリマエアの素材解説)
  4. モンベル – 修理サービスのご案内
  5. モンベル オンラインストア – リサイクルプロダクツ
  6. 環境省 – サステナブルファッション(衣類の廃棄・循環に関する調査)
  7. IUCN(国際自然保護連合) – Primary Microplastics in the Oceans(2017年・海洋一次マイクロプラスチックの発生源推計)
  8. 経済産業省 – 繊維製品の環境配慮設計に関する事例集(2023年4月)
  9. WWDJAPAN – 「モンベル」がPFCフリーの生地を用いたレインウエアを開発

※ 信頼性の高い順に配列:政府機関・学術機関 > 査読済み論文 > 専門機関 > 信頼できるメディア