150億本
サントリーの100%リサイクルペットボトル商品の累計販売本数(2024年5月末時点)
約60%
ボトルtoボトル(メカニカルリサイクル)で削減できるCO2排出量(化石由来原料と比較)
12,000ha超
水源を守る「サントリー 天然水の森」の面積(16都府県27カ所・2026年時点)

コンビニで買った「サントリー天然水」を飲み干したあと、その空きボトルがどこへ行くのか、考えたことはあるだろうか。多くの人にとって、ペットボトルは飲み終えれば「ごみ」だ。しかしいま、その1本を「ごみ」ではなく「資源」として何度もめぐらせる仕組みが動き始めている。使用済みのペットボトルを、繊維やトレイではなく、もう一度まっさらなペットボトルへと生まれ変わらせる――それが「ボトルtoボトル」と呼ばれる水平リサイクルだ。

サントリーは、この技術を2011年に国内の飲料業界で初めて確立し、翌2012年に実用化した。新しく石油からつくる場合と比べてCO2を約60%も減らしながら、100%リサイクル素材のペットボトルを世に送り出してきた。その累計販売本数は2024年5月末時点で150億本を突破している。さらにサントリーは、ボトルを循環させるだけでなく、そのボトルに詰める「水」そのものを守るために、全国12,000ヘクタールを超える「天然水の森」で水源を育て続けている。

この記事では、環境省やサントリーの公式情報、PETボトルリサイクル推進協議会などの一次データをもとに、ボトルtoボトル水平リサイクルの仕組みと成果、そして水源保全「天然水の森」の取り組みをたどっていく。ペットボトル1本の循環が、なぜ遠い海を守ることにつながるのか。海洋メディア『海LAB』らしく、数字と事実に立って、水のめぐりを見つめてみたい。

この記事で学べること

  • 使い終わったペットボトルを再びペットボトルに戻す「ボトルtoボトル(水平リサイクル)」の仕組みと、繊維やトレイになる従来のリサイクルとの違い
  • サントリーが2011年に国内飲料業界で初めて技術を確立し、CO2を約60%削減しながら循環させてきた歩み
  • メカニカル・FtoPダイレクト・ケミカルという三段構えのリサイクル技術と、2030年「ペットボトル100%サステナブル化」目標の中身
  • 採る水と同じだけの水を森で育てる「天然水の森」12,000haの水源涵養活動と、生物多様性の再生
  • ペットボトルの循環と水源保全が、海洋プラスチック問題や豊かな海の未来とどうつながっているのか

なぜペットボトルの「水平リサイクル」が海を守るのか

この記事のポイント

  • 毎年約800万トンのプラスチックごみが海へ流れ込み、その約8割は陸から来ている
  • 「ボトルtoボトル」は使用済みペットを再びペットボトルに戻す水平リサイクル
  • サントリーは2011年に国内飲料業界で初めて技術を確立、CO2を約60%削減
  • 100%リサイクルペットボトルは累計150億本を突破(2024年5月末)
  • 採る水と同じだけの水を育てる「天然水の森」は12,000haを超える

私たちの暮らしは、ペットボトルなしには成り立たないほどプラスチックに囲まれている。軽くて丈夫で、清潔に飲み物を運べるペットボトルは、まぎれもなく便利な発明だ。しかしその便利さの裏側で、適切に回収・処理されなかったプラスチックが世界中の海を汚し続けている。国連環境計画などの試算によれば、毎年およそ800万トンものプラスチックごみが海に流れ込んでいるとされる。しかもその約8割は、船や漁業からではなく、私たちが暮らす陸からやってくる。街でポイ捨てされた容器が、雨や風で排水溝に入り、川をつたって海へ届いてしまうのだ。

海に出たプラスチックは、簡単には消えない。紫外線や波の力で細かく砕けても、素材そのものは何百年も自然界に残り続ける。その過程については海洋プラスチックごみの分解過程の記事で詳しく解説しているが、要点はシンプルだ――プラスチックは「消える」のではなく「見えなくなるだけ」で、5mm以下のマイクロプラスチックとなって海の生きものや、めぐりめぐって私たちの体にまで入り込んでいく。世界経済フォーラムに提出されたある報告書は、このままいけば2050年には海のプラスチックの重量が魚の重量を上回る、とまで警告した。

陸で捨てられたペットボトルが川を伝って海へ流れ込む経路を示したフラット図解
海洋プラスチックの約8割は陸から。街で捨てられた1本が、川を伝って海へ届いてしまう。

「捨てない」ためのいちばんの近道は「めぐらせる」こと

では、海へのプラスチック流出を防ぐには何が必要か。答えは大きく二つある。ひとつは「そもそも使う量を減らす」こと。もうひとつは「使ったものを確実に回収し、資源として何度もめぐらせる」ことだ。前者はマイボトルの普及などで進みつつあるが、飲料そのものを完全に容器なしで届けるのは難しい。だからこそ後者、つまり「使い終わったペットボトルを、ごみにせず資源として回し続ける」仕組みが決定的に重要になる。回収されて循環に乗ったボトルは、海に流れ出ることがないからだ。

ここで鍵を握るのが、この記事の主役である「ボトルtoボトル」水平リサイクルだ。使い終わったペットボトルを、また新しいペットボトルへと戻す。この輪がしっかり回れば、1本のペットボトルは何度も生まれ変わり、新しく石油を掘る量も、燃やされて出るCO2も、そして海に流れ出るリスクも減っていく。ペットボトルの循環と海の保全は、一見遠いテーマのようでいて、実は同じ一本の線でつながっている。

「容器の循環」と「水源の保全」――水の会社の二つの責任

そしてもうひとつ、飲料メーカーには「水そのもの」への責任がある。とりわけ地下水を汲み上げて「天然水」として売る会社にとって、その水を育む森が荒れれば、商品の源が枯れてしまう。豊かな森があってこそ、雨は土にしみ込み、長い時間をかけてろ過され、良質な地下水になる。つまり水の会社には、「使い終わった容器をめぐらせる責任」と「商品の源である水源を守る責任」という、二つの循環への責任がある。この記事の後半では、サントリーがその両方にどう向き合ってきたのかを見ていく。

用語ミニ解説:水平リサイクルとカスケードリサイクル

同じ製品に何度も生まれ変わらせるリサイクルを「水平リサイクル」(ボトル→ボトル)という。一方、ペットボトルが繊維やトレイなど別の(多くは品質の低い)製品になり、その先はリサイクルしにくくなる流れを「カスケード(滝を落ちる)リサイクル」と呼ぶ。水平リサイクルは資源を同じ土俵で回し続けられる点で、循環型社会の理想により近い。

「ボトルtoボトル」とは何か――水平リサイクルの仕組み

「ボトルtoボトル」という言葉は近年よく耳にするようになったが、その中身を正確に説明できる人は多くないだろう。まずは、使い終わったペットボトルがどんな工程を経て、また新しいボトルに戻るのかを順にたどってみよう。

回収からプリフォームまで――再生の6ステップ

ペットボトルの水平リサイクルは、ざっくり言えば「集めて」「きれいにして」「素材に戻して」「また成形する」という流れだ。もう少し細かく分けると、(1)使用済みボトルを家庭やオフィス、店頭で分別回収し、(2)ラベルやキャップを取り除いて選別、(3)細かく砕いて「フレーク」にし、(4)徹底的に洗浄・除染して、(5)飲料容器に使えるレベルのPET樹脂に再生、(6)それを高温で溶かして「プリフォーム」と呼ばれるボトルの原型(試験管のような形)をつくる。あとはこのプリフォームを金型のなかで空気の力でふくらませれば、見慣れたペットボトルの完成だ。

  1. 使用済みペットボトルを家庭・店頭・自治体などで分別回収する
  2. ラベルとキャップを取り除き、色や異物を選別する
  3. ボトルを細かく砕いて「フレーク」にする
  4. フレークを洗浄・除染し、汚れや異物を徹底的に取り除く
  5. 飲料容器に再び使える高い純度のPET樹脂へ再生する
  6. 樹脂を溶かして「プリフォーム」を成形し、ふくらませて新しいボトルにする

ここで重要なのは、飲み物を入れる容器として使う以上、再生された樹脂には食品衛生上きわめて高い安全性と純度が求められるという点だ。だからこそ「洗浄・除染」の工程が肝になる。汚れや前の中身のにおいが残っていては、飲料容器には使えない。この難しさこそが、ペットボトルの水平リサイクルが長らく「言うは易く行うは難し」だった理由であり、それを乗り越える技術を確立できるかどうかが、各社の分かれ目になってきた。

使用済みペットボトルが回収・粉砕・洗浄・再生・成形を経て新しいボトルになる循環図
使用済みボトルは6つの工程を経て、また新しいボトルへ。輪が一周するたびに資源が再生する。

「メカニカル」と「ケミカル」――二つのリサイクル手法

ボトルtoボトルを実現する技術には、大きく二つの系統がある。ひとつはメカニカルリサイクル。これは使用済みボトルを物理的に砕き・洗い・溶かして再生する方法で、化学的に分解しないぶんエネルギー効率が高く、CO2排出も抑えられるのが利点だ。もうひとつはケミカルリサイクルで、こちらはPETを化学的にいったん原料レベル(分子)まで分解し、まっさらな石油由来品と同じ状態に戻してからつくり直す。汚れや異物への耐性が高く、繰り返しリサイクルしても品質が落ちにくい一方、工程が複雑でコストとエネルギーがかかりやすい。

項目メカニカルリサイクルケミカルリサイクル
再生の考え方物理的に砕き・洗い・溶かして再生化学的に分子レベルまで分解して再合成
長所エネルギー効率が高くCO2を抑えやすい品質が落ちにくく汚れに強い
短所汚れの多い原料は扱いにくい工程が複雑でコスト・エネルギーが大きい
サントリーの位置づけ2012年から実用化の主力(約60%CO2削減)アールプラスジャパンで2027年実用化を目指す
メカニカルとケミカルは対立ではなく補完関係。原料の状態や目的で使い分けられる。

どちらか一方が絶対的に優れているわけではない。きれいに回収された良質な使用済みボトルはメカニカルで効率よく回し、汚れや異物が多くメカニカルでは扱いにくいものはケミカルで原料に戻す――そんな役割分担が理想とされる。ペットボトルに限らず、漁網など海に関わるプラスチックの再生でも同じ考え方が使われる。使用済み漁網を再生ナイロンに戻す取り組みは使用済み漁網リサイクルの記事で、海洋プラを製品に変える幅広い事例は海洋プラスチックのリサイクル製品の記事で扱っている。

「水平」であることの価値

ペットボトルはもともと繊維やトレイなど別の製品にリサイクルされることが多かった。それも立派な再利用だが、その先でまたリサイクルするのは難しく、いずれは焼却や廃棄に向かいやすい。ボトル→ボトルの水平リサイクルなら、理論上は同じ土俵で何度も回し続けられる。だからこそ「水平」であることに大きな価値がある。

サントリーの技術進化――メカニカル・FtoP・ケミカルの三段構え

ボトルtoボトルの仕組みがわかったところで、サントリーがこの技術をどう育ててきたのかを見ていこう。特筆すべきは、一つの技術に安住せず、より効率的な方法へと段階的に進化させてきた点だ。サントリーの取り組みは、大きく三つの技術が重なり合っている。

第一段階:国内飲料業界で初めての「水平リサイクル」確立(2011〜2012年)

サントリーは、ペットボトルのリサイクルを手がける協栄産業(株)と協働し、使用済みペットボトルから新たなペットボトルをつくるメカニカルリサイクルによる「ボトルtoボトル」水平リサイクル技術を、2011年に国内の飲料業界で初めて確立し、翌2012年に実用化した。まだ「水平リサイクル」という言葉すら一般的でなかった時代のことだ。この技術によって、新たに化石由来原料からペットボトルをつくる場合と比べて、CO2排出量を約60%削減できるようになった。

この「約60%削減」という数字は、決して小さくない。ペットボトルの原料であるPETは石油からつくられるため、新品を製造するたびに石油の採掘・精製・重合という工程で大量のエネルギーを消費し、CO2を排出する。使用済みボトルを再生して使えば、その上流工程の多くを飛ばせる。つまり水平リサイクルは、単に「ごみを減らす」だけでなく、気候変動対策としての意味も大きい取り組みなのだ。海の温暖化がもたらす影響についてはブルーカーボン生態系の記事もあわせて読むと、CO2を減らす意義が立体的に見えてくる。

石油から新品を作る場合とリサイクルする場合のCO2排出量を棒グラフ風に比較した図解
水平リサイクルなら、新品を石油からつくる場合と比べCO2を約60%削減。気候対策としての意味も大きい。

第二段階:世界初の「FtoPダイレクトリサイクル技術」(2018年〜)

サントリーは、ここで立ち止まらなかった。2018年、協栄産業やイタリアのSIPA社、オーストリアのEREMA社とともに、世界で初めて「FtoP(Flake to Preform)ダイレクトリサイクル技術」を開発したと発表した。従来のメカニカルリサイクルでは、粉砕・洗浄したフレークをいったん「ペレット(粒)」に溶かし固め、それをまた溶かしてプリフォームにする――つまり2回の溶融が必要だった。FtoPは、フレークを高温・真空下で処理して不純物を取り除き、ペレットを経ずに直接プリフォームを成形してしまう。溶融の回数を2回から1回に減らせるのが最大の特徴だ。

溶かす回数が減れば、それだけエネルギーも輸送も減る。FtoPダイレクトリサイクルによって、輸送・製造にかかるCO2排出量をさらに約25%削減できるようになった。この技術は経済産業省が後援する「令和元年度 資源循環技術・システム表彰」で奨励賞・コラボレーション賞を受賞し、2019年にはこの技術を用いた製造ラインの増設も決定されている。第一段階のメカニカルリサイクルを土台に、その効率をさらに一段引き上げたのがこのFtoPだといえる。

技術確立・発表主な特徴CO2削減効果
ボトルtoボトル(メカニカル)2011年確立/2012年実用化国内飲料業界で初。物理的に再生化石由来原料比 約60%削減
FtoPダイレクトリサイクル2018年開発(世界初)フレークから直接プリフォーム。溶融2回→1回従来比 さらに約25%削減
ケミカルリサイクル2027年実用化を目標分子レベルに分解し再合成。汚れに強い回収困難な資源も循環へ
サントリーの三段構え。より少ないエネルギーで、より多くのボトルをめぐらせる方向へ進化してきた。

第三段階:ケミカルリサイクルへの挑戦「アールプラスジャパン」(2020年〜)

そして三つ目が、ケミカルリサイクルへの挑戦だ。2020年6月、サントリーホールディングスは業界の垣根を越えた企業とともに、使用済みプラスチックの再資源化に取り組む新会社「株式会社アールプラスジャパン」を設立した。設立時は12社の共同出資だったが、その後参画企業は業種を超えて広がり、40社を超える規模に拡大している。飲料メーカー1社の取り組みが、素材・容器・小売など多くの企業を巻き込む「業界を超えた運動」へと育っているのだ。

アールプラスジャパンが狙うのは、米国のバイオ化学ベンチャー「アネロテック社」の技術を使い、使用済みプラスチックを分解して、プラスチックの原料となる基礎化学品(ベンゼンやトルエンなど)に戻すケミカルリサイクルだ。従来のケミカルリサイクルより少ない工程で原料化できると期待されており、2027年の実用化を目指している。メカニカルでは扱いにくかった汚れの多いプラスチックまで循環に取り込めれば、ボトルtoボトルの輪はさらに大きく、確かなものになる。

2011年に国内飲料業界で初めてボトルtoボトルの水平リサイクル技術を確立して以来、私たちはより少ない資源とエネルギーで循環を回すために、技術を一段ずつ進化させてきました。

― サントリー(ボトルtoボトルの取り組みより要約)

三つの技術が示す「あきらめない循環」

  • まず物理的な再生(メカニカル)で、効率よくCO2を約60%削減
  • 次に工程を短縮(FtoP)して、さらに約25%のCO2を削減
  • そして化学的な再生(ケミカル)で、回収困難な資源まで循環へ
  • 一つの技術に安住せず、循環できる範囲を広げ続けている

数字で見る成果――150億本と2030年「100%サステナブル化」目標

技術の話が続いたので、ここでその成果を「数字」で確認しておこう。理念や技術がどれだけ立派でも、実際にどれだけのボトルが循環しているかが伴わなければ意味がない。サントリーの取り組みは、着実に規模を拡大している。

100%リサイクルペットボトル、累計150億本

サントリーの100%リサイクルペットボトル商品の累計販売本数は、2024年5月末時点で150億本を突破した。150億本という数は、あまりに大きくてかえって実感しにくいが、これは「一度は使い終わって捨てられるはずだったペットボトルが、150億本ぶん、新しいボトルとして生まれ変わって店頭に並んだ」ということを意味する。それだけの石油の新規採掘とCO2排出が回避された、と言い換えてもいい。「サントリー天然水」をはじめ、私たちが日常的に手に取る飲料の多くが、すでにこの循環の輪のなかにある。

累計150億本のリサイクルペットボトルの規模感を象徴するフラットなインフォグラフィック
捨てられるはずだった150億本が、また新しいボトルへ。循環の規模は年々大きくなっている。

サステナブル素材の使用比率は58%まで拡大

サントリーグループは2019年に「プラスチック基本方針」を策定し、リサイクル素材や植物由来素材への切り替えを進めてきた。その結果、2024年には国内清涼飲料事業で使うペットボトルのうち、サステナブル素材(リサイクル素材あるいは植物由来素材等)の使用比率が58%にまで拡大した。つまり、日本国内で売られるサントリーのペットボトル飲料の半分以上が、すでに石油由来の新品ではない素材でつくられている計算になる。ほんの十数年前には難しかったことが、いまや「あたりまえ」に近づきつつあるのだ。

指標数値時点・出典
100%リサイクルペットボトルの累計販売本数150億本突破2024年5月末(サントリー)
国内清涼飲料事業のサステナブル素材使用比率58%2024年(サントリー)
水平リサイクルによるCO2削減率約60%化石由来原料比(サントリー)
「天然水の森」の面積12,000ha超16都府県27カ所(2026年時点)
技術は数字となって表れている。循環の規模と、それがもたらす削減効果。

2030年、すべてのペットボトルを100%サステナブルに

サントリーが掲げる目標は明快だ。2030年までに、グローバルで使用するすべてのペットボトルを、リサイクル素材あるいは植物由来素材等100%に切り替え、化石由来原料の新規使用をゼロにする。これはグループ全体、しかも世界規模での約束だ。新しく石油を掘ってペットボトルをつくることをやめる、という宣言にほかならない。この目標があるからこそ、メカニカル・FtoP・ケミカルという三段構えの技術開発にも一貫した方向性が生まれている。

こうした目標は、社会全体の底上げにもつながる。日本のペットボトル全体で見ても、PETボトルリサイクル推進協議会によれば2023年度のリサイクル率は85.0%と高い水準にあり、そのうちボトルからボトルへ戻す「ボトルtoボトル率」は33.7%と、前年度の29.0%から着実に上昇している。先頭を走る企業が需要と技術をつくることで、社会全体の循環の質そのものが高まっていく。

成果を数字で押さえる

  • 100%リサイクルペットボトルは累計150億本を突破(2024年5月末)
  • 国内清涼飲料のサステナブル素材比率は58%に到達(2024年)
  • 水平リサイクルで化石由来原料比CO2を約60%削減
  • 2030年までに全ペットボトルを100%サステナブル化・化石由来新規ゼロへ
  • 国全体のボトルtoボトル率も33.7%へ上昇(2023年度)

もう一つの水の物語――「天然水の森」と水源保全

ここまではペットボトルという「容器」の循環を見てきた。だが、水の会社の責任はそれだけでは終わらない。ボトルに詰める「水」そのものを、未来にわたって守り育てる責任がある。それがサントリーの「天然水の森」だ。容器を循環させる取り組みと、水源を守る取り組み――この二つがそろって初めて、「水と生きる」という言葉は本物になる。

採る水の「2倍以上」を森で育てるという発想

サントリーは、国内の工場で汲み上げる地下水量の2倍以上の水を、工場の水源となるエリアの森で育むことを目指している。これは驚くべき発想だ。ふつう、企業が地下水を汲み上げれば、それは一方的に「使う」だけの行為になる。しかしサントリーは、使う量以上の水を森に蓄えられる状態をつくることで、地域の水循環をむしろ豊かにしようとしている。「採ったら採りっぱなし」ではなく、「採る以上に育てる」。この考え方こそが、天然水の森の根っこにある。

ここで鍵になるのが「涵養(かんよう)」という言葉だ。涵養とは、地表に降った雨水などがゆっくりと土壌にしみ込み、時間をかけて地下の帯水層に地下水として蓄えられていくプロセスを指す。豊かな森の土は、スポンジのように雨水を受け止め、少しずつ地中へ通していく。逆に森が荒れて土がむき出しになれば、雨は表面を一気に流れ去り、地下水は育たず、土砂崩れや濁りの原因にもなる。良質な地下水は、健全な森があって初めて生まれるのだ。

豊かな森の土に雨水がしみ込み地下水として蓄えられる涵養の仕組みを断面で示した図解
雨は豊かな森の土にしみ込み、長い時間をかけて地下水になる。これが「涵養」だ。

2003年、阿蘇から始まった森づくり

「天然水の森」の活動が始まったのは2003年、熊本県・阿蘇からだった。同じ年、サントリーは「水科学研究所」を設立し、研究者とともに、どの森がどの工場の水源になっているのかを科学的に突き止める水文(すいもん)調査に乗り出している。「なんとなく森は大事」という精神論ではなく、地質や地下水の流れを調べ、「この工場の水は、この森が育てている」という因果関係を科学的に特定したうえで、その森を守りにいく。この徹底した科学的アプローチが、天然水の森の大きな特徴だ。

森づくりといっても、ただ木を植えればいいわけではない。人工林が放置されて過密になれば、地面に光が届かず下草が育たず、かえって土がやせて水を蓄えにくくなる。天然水の森では、間伐で光を入れ、多様な木々や下草が育つ環境を整え、シカの食害から若木を守り、荒れた斜面を修復する――といった地道な手入れを、地域の森林所有者や行政、専門家と協力しながら長期にわたって続けている。一朝一夕には結果の出ない、何十年という時間軸の仕事だ。

間伐で光が差し込み下草が育つ健全な森と、放置され暗く荒れた森を左右で対比した図解
手入れされた森と放置された森。水を育む力は、日々の地道な手入れで大きく変わる。

16都府県27カ所、12,000ヘクタールへ

阿蘇から始まった森づくりは、いまや全国に広がっている。「サントリー 天然水の森」は16都府県27カ所、あわせて12,000ヘクタールを超える規模(2026年時点)にまで拡大した。12,000ヘクタールといえば、東京都の区部(23区)の面積のおよそ2割に相当する広さだ。これだけの森を、単に「所有」するのではなく「育てる」ために手をかけ続けているというのは、企業の環境活動としては群を抜いた規模といえる。

そしてこの活動は、水を育てるだけにとどまらない。多様な木々や下草が茂り、健全な土がよみがえった森には、昆虫や鳥、動物たちが戻ってくる。天然水の森は、水源涵養と同時に生物多様性の再生の場にもなっているのだ。森が育む水は、やがて川となって里へ流れ、田畑をうるおし、最後は海へと注ぐ。豊かな森は、豊かな海の出発点でもある。人の手が入ることで自然が豊かになるという考え方は、里海の思想とも深く響き合っている。

天然水の4つの水源と、森から海までつながる水のめぐり

「サントリー天然水」と一口にいっても、実は全国で4つの異なる水源から採水されているのをご存じだろうか。その一つひとつに、育む森があり、守るべき水源がある。ここでは水源の多様性と、森から海へと続く水のめぐりを見ていこう。

南アルプス・阿蘇・奥大山・北アルプス――4つの水源

「サントリー天然水」の水源は、出荷開始の古い順に、山梨県北杜市白州町の南アルプス(1991年〜)、熊本県上益城郡嘉島町の阿蘇(2003年〜)、鳥取県日野郡江府町の奥大山(2008年〜)、そして長野県大町市の北アルプス(2021年〜)の4つがある。需要の高まりに合わせて水源を増やしてきた結果であり、それぞれの土地の地質や環境によって、水の硬度や口当たりにも個性が生まれる。同じ「天然水」でも、東日本では南アルプス、西日本では奥大山、九州では阿蘇と、地域ごとに近い水源のものが届けられている。

水源採水地出荷開始主な販売エリア
南アルプス山梨県北杜市白州町1991年東日本中心
阿蘇熊本県上益城郡嘉島町2003年九州
奥大山鳥取県日野郡江府町2008年西日本中心
北アルプス長野県大町市2021年長野・新潟・東海・北陸中心
「サントリー天然水」の4つの水源。それぞれの土地の森が、その水を育てている。
日本地図上に南アルプス・阿蘇・奥大山・北アルプスの4つの水源を配置したフラット図解
全国4つの水源。それぞれに育む森があり、守るべき水のふるさとがある。

水源が複数あることの意味

水源が複数に分かれていることには、単に需要をまかなうという以上の意味がある。ひとつの水源に頼りきれば、その土地の環境変化や災害の影響をまともに受けてしまう。水源が分散していれば、それぞれの地域の森を守りながら、リスクにも強くなる。そして何より、それぞれの土地で森づくりを続けることは、その地域の水循環と生態系そのものを豊かにすることにつながる。天然水の森が16都府県27カ所という広がりを持つのは、こうした複数水源を一つひとつ守ってきた結果でもある。

森を守ることは、海を守ること

「森の水」と「海」は、遠いようでいてひとつながりだ。森で涵養された地下水や湧き水は、やがて川となって流れ下り、途中で田畑や暮らしをうるおしながら、最後は海に注ぐ。健全な森から流れる水は、適度な栄養分(ミネラル)を運び、河口や沿岸の生きものを育てる。逆に、森が荒れて土砂が流れ出したり、生活排水で栄養が過剰になったりすると、沿岸では干潟の環境が乱れ、赤潮のような問題も起きやすくなる。森・川・海は、水を介してひとつの大きな循環でつながっている。

「森は海の恋人」という言葉があるように、豊かな海は豊かな森から始まる。牡蠣の養殖を守るために漁師が山に木を植える運動が各地にあるのは、まさにこの森・川・海のつながりを漁業者が肌で知っているからだ。サントリーが水源の森を守ることは、その水が最後にたどり着く海の環境を守ることでもある。日本の海がなぜこれほど豊かなのかは日本の海の生物多様性の記事で扱っているが、その豊かさの源のひとつは、間違いなく山と森にある。

森・川・海はひとつの循環

森で涵養された水は地下水や川となって流れ、栄養を運びながら海へ注ぐ。森が荒れれば土砂や濁りが増え、沿岸の生態系にも影響が及ぶ。水源の森を守ることは、めぐりめぐって海の豊かさを守ることにつながる。ペットボトルの容器を循環させる話と、水源の森を守る話は、どちらも『水を汚さず、めぐらせる』という同じ思想の上にある。

水平リサイクルの課題と、私たちにできること

ここまで前向きな話を続けてきたが、ボトルtoボトルは万能の魔法ではない。良い面だけを見て「これで安心」と考えるのは早い。残された課題を冷静に確認したうえで、では私たち一人ひとりに何ができるのかを考えてみよう。

課題1:きれいに分別されなければ、循環は回らない

水平リサイクルの大前提は、「良質な使用済みボトルが、きれいに回収されること」だ。ラベルやキャップが付いたまま、中身が残ったまま、たばこの吸い殻などの異物が混ざったまま――そんな状態で捨てられたペットボトルは、選別や洗浄の負担を大きくし、リサイクルの品質を下げてしまう。飲料容器として再生するには高い純度が必要なぶん、入り口の分別の質がそのまま循環の質を決める。つまり、この仕組みの成否は、実は最後に私たち消費者の手にかかっている。

課題2:エネルギーとコスト、そして「回収されないもの」

リサイクルにも当然エネルギーとコストがかかる。とりわけケミカルリサイクルは工程が複雑で、実用化とコスト低減には時間が必要だ。また、どれだけ技術が進んでも、そもそも回収ルートに乗らず、ポイ捨てされたり自然界に流出したりするボトルは循環に入れない。日本のペットボトルリサイクル率は85.0%と世界的にも高いが、裏を返せば残りは回収されていない。海に流れ出るプラスチックを本当にゼロに近づけるには、リサイクル技術だけでなく、回収の仕組みと一人ひとりの行動の両方が欠かせない。

ラベルをはがしキャップを外し中をすすいで分別する正しいペットボトルの捨て方を示した図解
循環は入り口で決まる。キャップとラベルを外し、軽くすすいで分別する――その一手間が資源を守る。

課題3:リサイクルは「減らす・使い切る」とセットで

そして忘れてはならないのが、リサイクルはあくまで「3R」の一部だということだ。優先順位でいえば、まずリデュース(減らす)、次にリユース(繰り返し使う)、そしてリサイクル(再生する)の順になる。マイボトルを使って容器そのものを減らすことは、リサイクルよりさらに上流の対策だ。ボトルtoボトルは素晴らしい仕組みだが、それに甘えて使い捨てを増やしていいわけではない。「減らせるものは減らし、使ったものはきれいに回す」――この両輪でこそ、海へのプラスチック流出は本当に減っていく。海の資源を無駄なく使い切る視点は、水産物のフードロスの記事とも通じるものがある。

私たちにできる、身近な5つのアクション

  • ペットボトルはキャップとラベルを外し、中を軽くすすいでから分別回収に出す
  • 外出時はマイボトルを持ち歩き、そもそもの使い捨てを減らす
  • 買い物のとき「リサイクル素材使用」などの表示を意識して選ぶ
  • ポイ捨てをしない・見かけたら拾う。海へのプラ流出の8割は陸から
  • 森と海がつながっていることを、家族や友人と話題にしてみる

企業がどれだけ立派な技術や目標を掲げても、最後にペットボトルを手に取り、飲み終えて捨てるのは私たち一人ひとりだ。分別という小さな一手間が、150億本の循環を支える土台になる。逆に言えば、その一手間を省いてしまえば、どんな高度な技術も生きてこない。海を守る大きな話は、実は台所やごみ箱の前という、いちばん身近な場所から始まっている。海洋プラスチックを製品に変える各社の取り組みはアディダス×ParleyパタゴニアNetPlusの記事でも紹介しているので、あわせて読んでほしい。

「リサイクルできるから大丈夫」で止まらない

水平リサイクルは強力な仕組みだが、それを免罪符に使い捨てを増やしてしまえば本末転倒だ。回収されずに自然界へ出たプラスチックは循環に入れず、海を汚し続ける。まず減らし、使ったものはきれいに分別して回す。技術と行動の両輪がそろって初めて、循環は本当に機能する。

まとめ――ペットボトル1本から始まる、水と海のめぐり

森・川・ペットボトルの循環・海がひとつの大きな輪でつながる希望に満ちたフラットイラスト
容器をめぐらせ、水源を育てる。森・川・ボトル・海は、ひとつの大きな輪でつながっている。

飲み終えたペットボトル1本が、また新しいペットボトルへ生まれ変わる。サントリーは、この「ボトルtoボトル」水平リサイクルを2011年に国内飲料業界で初めて確立し、CO2を約60%削減しながら、100%リサイクルペットボトルを累計150億本まで届けてきた。メカニカルからFtoP、そしてケミカルへと技術を進化させ、2030年にはすべてのペットボトルを100%サステナブル化し、化石由来原料の新規使用をゼロにするという目標を掲げている。容器を「ごみ」から「めぐる資源」へと変える挑戦は、着実に前へ進んでいる。

そしてその一方で、ボトルに詰める水そのものを守るために、サントリーは16都府県27カ所・12,000ヘクタールを超える「天然水の森」で、採る水の2倍以上を育て、生物多様性を再生し続けている。森で涵養された水は川となり、里をうるおし、やがて海へと注ぐ。容器の循環も、水源の保全も、根っこにあるのは『水を汚さず、めぐらせる』という同じ思想だ。ペットボトルの循環と海の未来は、遠いようでいて、確かに一本の線でつながっている。

その循環を最後に完成させるのは、私たち一人ひとりの小さな行動だ。キャップとラベルを外して分別する。マイボトルで使い捨てを減らす。ポイ捨てをしない。そのどれもが、150億本の輪を支え、海へのプラスチック流出を防ぐ確かな一歩になる。次にあなたが「サントリー天然水」を飲み干したとき、その空きボトルをどう手放すか――その選択が、森と海の未来につながっている。

この記事のまとめ

  • 海洋プラスチックの約8割は陸から。使ったボトルを確実に「めぐらせる」ことが流出を防ぐ
  • 「ボトルtoボトル」は使用済みペットを再びボトルに戻す水平リサイクル。繊維やトレイになる従来型と違い何度も循環できる
  • サントリーは2011年に国内飲料業界で初めて技術を確立し、化石由来原料比でCO2を約60%削減
  • メカニカル→FtoP(世界初)→ケミカル(2027年実用化目標)と技術を進化させ、2030年に全ペットを100%サステナブル化へ
  • 100%リサイクルペットは累計150億本を突破、国内サステナブル素材比率は58%に到達
  • 「天然水の森」は12,000ha超。採る水の2倍以上を育て、水源涵養と生物多様性を再生している
  • 容器の循環も水源保全も『水を汚さずめぐらせる』同じ思想。最後の一手間は私たちの分別にかかっている

参考文献・出典

  1. サントリーグループ – Recycle:「ボトルtoボトル」水平リサイクルの推進(サステナビリティ・資源循環)
  2. サントリー ニュースリリース – 飲料用PETプリフォーム製造における「FtoPダイレクトリサイクル技術」を開発(2018年)
  3. サントリーホールディングス – 使用済みプラスチックの再資源化事業に取り組む新会社「株式会社アールプラスジャパン」設立(2020年)
  4. サントリービバレッジ&フード – 100%リサイクルペットボトルの販売本数が累計150億本突破(ニュースリリース)
  5. サントリーグループ – 「サントリー 天然水の森」(水源涵養/生物多様性の再生)
  6. サントリー天然水 – サントリー天然水とは(4つの水源・採水地の紹介)
  7. PETボトルリサイクル推進協議会 – PETボトルリサイクル年次報告書2024(2023年度リサイクル率85.0%・ボトルtoボトル率33.7%)
  8. 環境省 – 令和元年版 環境・循環型社会・生物多様性白書(プラスチックを取り巻く国内外の状況・海洋プラスチック年間約800万トン)
  9. 協栄産業株式会社 – FtoPダイレクトリサイクル技術の解説

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