91.9%
日本のPETボトル回収率(2024年度)
約60%
旗艦製品を100%リサイクルPETへ切替した際のCO2削減率(1本あたり)
2030年
全PETボトルを100%サステナブル素材にする目標年

コンビニやスーパーで手に取る「コカ・コーラ」や「い・ろ・は・す 天然水」のペットボトル。実はその多くが、使用済みのペットボトルを再びペットボトルに生まれ変わらせる「ボトルtoボトル」というリサイクル技術でできていることをご存じだろうか。

日本コカ・コーラとコカ・コーラボトラーズジャパンは2018年に「容器の2030年ビジョン」を発表し、2030年までにすべてのペットボトルを100%サステナブル素材(リサイクルPET+植物由来素材)に切り替える目標を掲げている。すでに「コカ・コーラ」「コカ・コーラ ゼロ」「ジョージア」などの主要銘柄で100%リサイクルPETボトルの採用が進んでいる。

この記事では、ボトルtoボトルの技術的な仕組み、CO2削減効果の具体的な数字、そして陸で使われるペットボトルが海洋プラスチック問題とどう関係しているのかを、公式発表と業界統計をもとに解説する。

この記事で学べること

  • 「容器の2030年ビジョン」でコカ・コーラが掲げる目標と現在地
  • ボトルtoボトル(メカニカルリサイクル・ケミカルリサイクル)の仕組み
  • い・ろ・は・す天然水やコカ・コーラでの導入実績と切り替えの歴史
  • 100%リサイクルPET化によるCO2排出量・新規プラスチック削減の効果
  • 日本のPETボトル回収率91.9%・リサイクル率85.1%という世界トップ水準の実態
  • 海洋プラスチック問題を防ぐために消費者ができる正しい分別方法

コカ・コーラが掲げる「容器の2030年ビジョン」とは

日本コカ・コーラは2018年1月、廃棄物ゼロ社会の実現を目指し「容器の2030年ビジョン」を発表した。柱は大きく2つ、2030年までにすべてのペットボトルを100%サステナブル素材(リサイクルPETまたは植物由来素材)に切り替えることと、販売した容器と同量の容器を回収・リサイクルすることである。

なぜ飲料メーカーが容器の設計から見直すのか

この目標は日本コカ・コーラ1社だけの取り組みではない。日本国内でコカ・コーラ製品の製造・販売を担うコカ・コーラボトラーズジャパンをはじめとするボトラー各社、原料メーカー、リサイクル事業者が一体となって進める「コカ・コーラシステム」全体の目標として位置づけられている。原料調達から容器設計、回収・リサイクルまでのサプライチェーン全体を見直す必要があるため、単年度の施策ではなく2018年から2030年までの長期ロードマップとして公表された。

コカ・コーラシステムは世界最大級の飲料メーカーであり、販売量に比例して使用するペットボトルの量も膨大になる。原料調達の段階で新規の石油由来プラスチックへの依存を減らすことは、CO2排出量の削減と資源循環の両面で効果が大きい。日本では2025年までに全PETボトル製品にサステナブル素材を導入し、2030年までに100%化する工程表が示されている。

容器の2030年ビジョン 主なマイルストーン

  • 2018年1月:ビジョン発表
  • 2020年3月:い・ろ・は・す天然水で100%リサイクルPETボトルを全国発売
  • 2021年5月:コカ・コーラ、ジョージアなど主要銘柄で100%リサイクルPET導入
  • 2025年5月:ラベルレスボトル500mlにも100%リサイクルPETを採用
  • 2030年:全PETボトルを100%サステナブル素材へ(目標)

「回収と同量のリサイクル」というもう一つの柱

容器の2030年ビジョンには、素材の切り替えだけでなく「販売した容器の量と同等量を回収・リサイクルする」という目標も含まれている。これは単に環境配慮素材を使うだけでなく、市場に出したプラスチックを最終的に社会全体で回収しきる、という循環の完結を目指すものだ。素材面の目標が注目されがちだが、この回収面の目標が達成されなければ、いくら再生PETの比率を上げても新規のプラスチックごみが積み上がる構造は変わらない。両輪で進める必要がある点に、このビジョンの本質がある。

100%リサイクルPETボトルの仕組み:ボトルtoボトルとは

「ボトルtoボトル」とは、使用済みのペットボトルを回収・洗浄・粉砕して「再生フレーク」にしたうえで、再びペットボトル用の樹脂として成形する水平リサイクルの仕組みだ。ペットボトルが服やトレーなど別の製品になる「ダウンサイクル」とは異なり、同じ用途で何度も再生できる点が特徴である。

使用済みペットボトルが回収・粉砕・再生樹脂化を経て新しいペットボトルへ再生される工程図解

メカニカルリサイクルとケミカルリサイクルの違い

ボトルtoボトルには大きく2つの方式がある。PETボトルリサイクル推進協議会によると、メカニカルリサイクル(物理的再生法)は樹脂を高温・減圧下で処理し溶融ろ過で汚染物質を除去する方法で、設備投資が比較的小さく環境負荷も低い。一方ケミカルリサイクル(化学的再生法)は使用済みPETを分子レベルまで分解して原料に戻すため純度が高く、汚染の心配が少ない反面、大型設備が必要でコストがかかる。

方式仕組みメリット課題
メカニカルリサイクル高温・減圧下で処理し溶融ろ過で汚染物質を除去設備・コストが比較的小さい、環境負荷が低い汚れや異物の混入に弱い
ケミカルリサイクル分子レベルまで分解し樹脂原料に再生純度が高く食品用途にも安定して使える大型設備が必要でコストが高い
出典:PETボトルリサイクル推進協議会「ボトルtoボトル」解説をもとに作成

コカ・コーラボトラーズジャパンは台湾の遠東新世紀(Far Eastern New Century)と提携し、ケミカルリサイクルによる再生PET原料を使った製品化の共同プロジェクトも進めており、メカニカル・ケミカル双方の技術を組み合わせて再生PETの調達量を増やす方針を取っている。水平リサイクルという考え方自体は業界共通で広がっており、たとえばサントリー天然水のボトルtoボトルでも同様の技術が採用されている。

なぜ「同じ用途に戻す」ことが重要なのか

プラスチックのリサイクルには、ペットボトルを繊維やトレーなど別の製品に作り替える「ダウンサイクル」もある。ダウンサイクルは有効な資源活用ではあるが、多くの場合そこで循環が止まってしまい、その製品自体は再びペットボトルには戻らない。一方でボトルtoボトルは、ペットボトルという同じ用途に何度も戻せる水平リサイクルであるため、理論上は同じ資源を半永久的に循環させ続けられる可能性を持つ。プラスチック資源循環の観点では、この「用途を落とさずに回し続けられるかどうか」が重要な評価軸になる。

ただし実際には、リサイクルを重ねるたびに樹脂の劣化(色味の変化や強度低下)が起こりうるため、無限に同じ品質で回し続けられるわけではない。劣化した再生樹脂には新しいバージン樹脂やケミカルリサイクル由来の高純度樹脂を一定割合ブレンドすることで品質を保っており、「100%リサイクル」といっても背後には緻密な品質管理の工程がある。

世界的に広がる「拡大生産者責任」の考え方

ボトルtoボトルのような水平リサイクルが各国で推進される背景には、「拡大生産者責任(EPR:Extended Producer Responsibility)」という考え方の広がりがある。これは、製品を製造・販売する企業が、廃棄・リサイクル段階まで一定の責任を負うべきだという原則で、欧州連合(EU)ではすでにペットボトルへの再生プラスチック含有率の義務化が段階的に進められている。日本ではEUのような法的義務化は現時点でないものの、業界の自主目標としてコカ・コーラをはじめ多くの企業が同様の方向性で動いており、国際的な規制強化の流れを見据えた先行投資という側面も持つ。

こうした国際動向を踏まえると、企業のリサイクル素材切り替えは単なる環境イメージ戦略にとどまらず、将来の規制対応や原料調達の安定確保という経営リスク管理の一環でもあることがわかる。

陸のペットボトルが海洋プラスチック問題と関わる理由

ペットボトルは海で使われる容器ではないが、正しく回収・リサイクルされなければ、ポイ捨てや不適切な廃棄を通じて河川から海へ流出するプラスチックごみの一部になりうる。環境省の調査でも、川から海へ流れ出すプラスチックごみの調査でもペットボトルやキャップは繰り返し上位に挙がる品目であり、陸域での資源循環を強化することが、結果的に海洋プラスチック問題の予防策になる。

「リサイクルPET=海洋プラスチック回収」ではない

誤解されやすい点だが、コカ・コーラの「ボトルtoボトル」は海に流出したプラスチックごみを回収して作られているわけではない。原料は陸上で分別回収された使用済みペットボトルであり、海洋プラスチックを再生利用する取り組みとは別のプロジェクトである(海洋プラスチックの再生利用は別途、漁網リサイクルなどの分野で進んでいる)。ここを混同すると、企業の取り組みを実態以上・実態以下に評価してしまう。

とはいえ、新規の石油由来プラスチック生産量を減らし、既存のペットボトルを高い品質で回し続ける仕組みを社会に定着させることは、長期的にプラスチックごみの発生総量を抑え、海への流出リスクを下げる土台になる。

陸域から海への流出経路

海洋プラスチックごみの多くは、海上で発生するのではなく、陸上で発生したごみが河川や排水路を通じて海に流れ込むことで生じるとされる。ポイ捨てされたペットボトルや、収集日を過ぎて放置されたごみ、不法投棄などが雨や風によって水路に入り込み、最終的に海へ到達する。つまりペットボトルのリサイクル率を高め、街中や河川敷にごみとして残る量そのものを減らすことは、海洋プラスチック対策の「入り口」を絞ることに直結する。

覚えておきたい視点

  • 海洋プラスチックごみの発生源の多くは陸上活動に由来する
  • ペットボトルの正しい分別・回収は、海への流出を未然に防ぐ「予防策」にあたる
  • 企業のリサイクル施策と、行政の回収インフラ、個人の分別行動はそれぞれ別の歯車として機能している

海洋プラスチック問題の解決には、発生源対策(陸上でのごみ削減・分別徹底)、流出防止(河川や排水路での回収)、そして既に海に流出したごみの回収(海岸清掃・漂着ごみ調査)という3段階のアプローチが必要とされる。コカ・コーラのボトルtoボトルは、このうち発生源対策にあたる取り組みであり、海岸清掃活動のような直接的な海洋ごみ回収とは役割が異なる。両方が組み合わさって初めて、海洋プラスチック問題への包括的な対応になる。

商品ラインナップでの切り替え実績

日本コカ・コーラは2020年3月、まず「い・ろ・は・す 天然水」で100%リサイクルPETボトルを全国発売した。軽量化と再生PET化を両立させた「次世代ペットボトル」として展開されたこの取り組みが、その後の主要銘柄への横展開の起点となっている。

主要銘柄への展開スケジュール

  • 2020年3月:「い・ろ・は・す 天然水」で100%リサイクルPETボトルを全国発売
  • 2021年5月:「コカ・コーラ」「ジョージア 日本のクラフトマン」など旗艦製品で100%リサイクルPETを導入
  • 2022年4月:「コカ・コーラ」「コカ・コーラ ゼロシュガー」の100%リサイクルPET使用ラベルレスボトルをオンライン限定で発売
  • 2023年9月:パッケージ表面に「100%リサイクルペットボトル」と明記した新デザインを全国発売
  • 2025年5月:500mlのラベルレスボトルにも100%リサイクルPETを採用し対象商品を拡大

パッケージに「100%リサイクルペットボトル」の文字を明記する取り組みは、消費者が購入時点でリサイクル素材の使用を認識できるようにする狙いがあり、企業の環境訴求としてもわかりやすい形になっている。

「2030年、すべてのペットボトルを100%サステナブル素材に」

― 日本コカ・コーラ サステナビリティー戦略発表会

「い・ろ・は・す」が先行導入された理由

主要銘柄の中でも「い・ろ・は・す 天然水」が先行して100%リサイクルPETボトルを導入した背景には、同ブランドがもともと「しぼれるボトル」という軽量化コンセプトで環境配慮を打ち出してきた経緯がある。軽量化技術と再生PET技術を組み合わせることで、ブランドイメージと実際の環境負荷低減の両方を強化できると判断されたとみられる。天然水ブランドという性質上、水源地の保全など「水」との親和性が高いことも、環境配慮素材への切り替えを進めやすい土壌になったと考えられる。

「ラベルレスボトル」との組み合わせ

2022年以降に拡大したラベルレスボトルは、ラベルという別素材の部材自体をなくすことで分別の手間を減らし、プラスチック使用量そのものも削減する取り組みだ。100%リサイクルPETとラベルレス化を組み合わせることで、「素材を再生する」施策と「そもそも使う資材を減らす」施策を同時に進めている点が、近年のパッケージ戦略の特徴といえる。オンライン限定販売から始まり、対象商品・容量を段階的に広げてきた経緯からも、企業側が需要と生産体制を見ながら慎重に展開していることがうかがえる。

缶コーヒーブランド「ジョージア」でも同時展開

ペットボトル入りのコーヒー飲料を展開する「ジョージア」でも、2021年5月の主要銘柄一斉導入のタイミングで100%リサイクルPETボトルが採用された。缶コーヒーのイメージが強いブランドだが、ペットボトル入り商品も一定の販売量を持つため、炭酸飲料・水・コーヒーという異なるカテゴリーで足並みをそろえて切り替えを進めたことは、コカ・コーラシステムがブランド横断で容器戦略を統一的に管理していることを示している。

CO2削減効果と新規プラスチック削減の数字

100%リサイクルPETボトルへの切り替えは、数値としても明確な環境効果が示されている。日本コカ・コーラの公表によると、100%リサイクルPETは石油由来100%のペットボトルと比較してCO2排出量を約49%削減する。さらに旗艦製品を従来の一般的なペットボトルから100%リサイクルPETへ切り替えることで、1本あたり約60%のCO2排出量削減、コカ・コーラシステム全体では年間約3万5000トンのCO2排出量削減が見込まれている。

この記事の要点となる3つの数字をまとめた図版
数字で見る:本文で扱う3つの指標

あわせて、新たに石油由来原料から製造されるプラスチックの使用量を年間約3万トン削減できる見込みだという。これは原料調達の段階から化石資源への依存度を下げる取り組みであり、単なる「リサイクルの数字」以上に、プラスチック生産量そのものの抑制につながる点が重要だ。

削減効果の数字を読むときの注意点

「49%削減」と「60%削減」という2つの数字が併記されているのは、比較対象が異なるためだ。前者は100%リサイクルPET全般と石油由来100%PETの比較、後者は実際に旗艦製品が切り替わったことによる1本単位の効果を指す。企業が発表するCO2削減効果を見るときは、何と何を比較しているのかを確認することが誤読を防ぐポイントになる。

なぜ再生PETはCO2排出量が少ないのか

石油由来のバージンPET樹脂を製造する場合、原油の採掘・精製からナフサ分解、重合といった多段階の化学プロセスを経る必要があり、各工程でエネルギーを消費しCO2を排出する。一方、再生PETは既存のペットボトルという「すでに樹脂化されている資源」を出発点にするため、原料調達段階のエネルギー消費を大きく省略できる。これが再生PETのCO2排出量が石油由来品より少なくなる主な理由である。ケミカルリサイクルは分子まで分解する分エネルギーを要するが、それでも新規原油からの一貫製造よりは省エネルギーになるとされる。

コカ・コーラシステム全体で見込まれる年間約3万5000トンのCO2削減量、そして新規石油由来プラスチック約3万トンの削減量は、飲料1社の容器切り替えだけでこれだけの規模の資源・排出削減効果が生まれることを示しており、飲料業界における素材転換の影響の大きさがうかがえる。

容器素材によるCO2排出量の違い(目安)

容器素材特徴CO2排出の傾向
石油由来バージンPET原油から一貫製造原料調達段階の排出が大きい
100%リサイクルPET(メカニカル)使用済みPETを物理的に再生バージンPET比で排出量が少ない
100%リサイクルPET(ケミカル)分子レベルまで分解し再生工程は複雑だが高純度、バージン比で削減効果あり
アルミ缶ボーキサイトから製錬、リサイクルも活発初回製造の排出は大きいが再生時は少エネルギー
ガラスびん砂・ソーダ灰等から製造重量があり輸送段階の排出が相対的に大きい
各種公開情報をもとに作成した目安。実際の排出量は生産方式・輸送距離により変動する

この比較からわかるのは、容器素材の環境負荷は「何でできているか」だけでなく「どう作られ、どう運ばれるか」によっても変わるということだ。ペットボトルは軽量で輸送効率が良い一方、石油由来である点が課題であり、リサイクル素材化はその弱点を補う有効な手段の一つといえる。

日本のPETボトルリサイクル率は世界トップ水準

コカ・コーラ1社の取り組みだけでなく、日本全体のPETボトルリサイクルの基盤も押さえておきたい。PETボトルリサイクル推進協議会の年次報告書2024によると、2024年度の日本のPETボトル回収率は91.9%、リサイクル率は85.1%で、いずれも前年度に続き目標の85%以上を維持している。熱回収まで含めた有効利用率は98.6%と推定されており、欧米諸国と比較しても高い水準にある。

分別回収されたペットボトルが選別・圧縮されリサイクル施設へ運ばれる様子

軽量化(リデュース)も同時に進んでいる

2023年度のPETボトル軽量化率(リデュース率)は28.4%で、目標を達成した。ボトルそのものを軽くすることで、製造・輸送段階のCO2排出も抑えられる。リサイクル(Recycle)と軽量化(Reduce)を同時に進める点が、日本のPETボトル業界の特徴といえる。こうして回収された再生PETの一部は、海洋プラスチックのリサイクル製品とは異なる用途系統ながら、資源循環という同じ方向性を持つ取り組みとして位置づけられる。

世界と比べた日本の位置づけ

PETボトルのリサイクル率は国によって集計方法が異なるため単純比較は難しいが、一般に日本の85%前後という数値は、欧州主要国やアメリカと比較しても高水準とされる。背景には、自治体による分別収集の徹底、清涼飲料メーカー・小売業・自治体・リサイクル事業者が協働する仕組み、そして消費者の分別協力という3つの要素が組み合わさっていることがある。特に自動販売機横の回収ボックスや、スーパー・コンビニ店頭での店頭回収など、日常生活の中にリサイクル動線が組み込まれている点は、日本のPETボトル回収率の高さを支える基盤になっている。

指定PETボトルとその他PET製品の違い

PETボトルリサイクル推進協議会の統計でいう「指定PETボトル」とは、しょうゆ・飲料・酒類など主に食品用途で使われるペットボトルを指す。食品トレーや文房具など別用途のPET製品は集計の対象が異なるため、ニュースで見る「PETボトルのリサイクル率」がどの範囲を指しているかを確認することも、数字を正しく読むうえで役立つ。

容器包装リサイクル法という法的な枠組み

日本のPETボトルリサイクルの高い回収率は、1995年に制定された容器包装リサイクル法(容リ法)による分別収集・再商品化の仕組みが土台になっている。市区町村が家庭からペットボトルを分別収集し、事業者が再商品化(リサイクル)の費用を負担するという役割分担が法律で定められており、行政・事業者・消費者それぞれの責任が明確化されている点が、日本のリサイクル制度の特徴だ。コカ・コーラのような飲料メーカーの自主的な目標は、この法的な枠組みの上に、さらに一歩踏み込んだ取り組みとして積み上げられている。

消費者ができる正しい分別のポイント

ボトルtoボトルの質を左右するのは、実は企業の技術だけでなく、家庭での分別の丁寧さでもある。異物や汚れが混入すると再生PETの品質が下がり、食品用途に回せなくなることがある。

ペットボトルのキャップを外しラベルを剥がして中をすすいでから分別する手順のイラスト

家庭でできる4つの分別ステップ

  • キャップを外す(キャップは別素材のためプラスチック分別へ)
  • ラベルを剥がす(ラベルも別素材。剥がしにくい場合は自治体ルールを確認)
  • 中をさっとすすいで汚れ・液体を落とす(洗剤でごしごし洗う必要はない)
  • 軽くつぶして口を上にした状態で資源ごみとして出す

この一手間が、再生PETを「食品用途にも使える高品質な資源」として循環させられるかどうかを左右する。日本の回収率91.9%という数字も、こうした家庭ごとの分別の積み重ねの上に成り立っている。

自治体ごとのルールの違いに注意

基本的な分別手順は共通だが、ラベルを剥がさなくてよい自治体や、キャップを一緒に出せる自治体など、細かいルールは市区町村によって異なる場合がある。迷ったときは自治体の公式サイトやごみ分別アプリで確認するのが確実だ。「よかれと思って丁寧に洗いすぎる」ことも、実は水資源の使い過ぎにつながるため、汚れを軽く落とす程度で十分とされている。

よくある分別の誤解

  • 「完全にきれいに洗わないとリサイクルできない」→ 軽くすすぐ程度で十分
  • 「ラベルはどの自治体でも剥がさなくてよい」→ 自治体により対応が異なるため要確認
  • 「つぶさなくても回収してもらえる」→ つぶすことで輸送効率が上がりCO2削減にもつながる

企業側も分別のしやすさを設計している

近年のラベルレスボトルやミシン目つきラベルの採用は、消費者が分別で迷わないようにする「易分別性設計(デザイン・フォー・リサイクル)」の一環でもある。容器を作る段階から、剥がしやすいラベル・外しやすいキャップ・単一素材化を意識することで、家庭での分別のハードルを下げ、結果的に再生PETの品質を高める。消費者の努力と企業の設計努力は、どちらか一方だけでは成り立たない相互補完の関係にある。

今後の課題と2030年に向けたロードマップ

2030年までにすべてのPETボトルを100%サステナブル素材にするという目標に対し、現時点での課題として、①再生PET原料の安定確保、②ケミカルリサイクル設備の拡大とコスト低減、③消費者の分別協力の維持向上、の3点が挙げられる。とくに再生PET原料は世界的に需要が高まっており、良質な使用済みペットボトルの確保競争が今後さらに激しくなると見られている。

自社回収した空き容器の水平リサイクル率にも目標がある

コカ・コーラボトラーズジャパンは、自動販売機併設のリサイクルボックスなどで自社回収した使用済みPETボトル・缶について、原料化して新たな容器に再利用する「水平リサイクル率」を2030年に50%、2035年に100%にする目標を掲げている。これは市場全体の回収率(91.9%)とは別に、自社が直接回収する経路に限定した、より踏み込んだ独自目標である。

この記事のポイントを箇条書きでまとめた図版
この記事のポイント。詳しくは各章で解説している

再生PET原料の争奪という業界横断の課題

100%リサイクルPETへの切り替えを掲げているのはコカ・コーラだけではなく、他の飲料メーカーや日用品メーカーも同様の目標を打ち出している。その結果、良質な使用済みペットボトル(再生原料)の確保競争が業界横断で激しくなっており、原料価格の上昇や、リサイクル事業者との長期契約の重要性が増している。企業単独の努力だけでなく、業界団体や行政を巻き込んだ回収インフラの底上げが、今後の目標達成を左右する鍵になる。

こうした状況を踏まえ、コカ・コーラボトラーズジャパンは前述のケミカルリサイクル技術への投資や、海外の再生PET原料メーカーとの提携など、原料調達ルートの多様化を進めている。単一の技術・単一の調達先に依存しない体制づくりが、2030年目標の達成確度を高める取り組みとして位置づけられる。

同業他社・他業種の動きとの関係

サントリー食品インターナショナルも「天然水」ブランドなどで独自のボトルtoボトル体制を構築しており、飲料業界全体で再生PET比率を高める競争と協調が同時に進んでいる。競合関係にある企業同士でも、使用済みPETボトルの回収・リサイクルインフラという「社会基盤」の部分では協力関係を築く必要があり、業界団体を通じた情報共有や技術標準化の議論も活発になっている。消費者から見れば、どのブランドを選んでもリサイクルPETが当たり前になっていく状況は、個社の努力を超えた社会全体の資源循環力の底上げにつながる。

今後は、リサイクルPETの「量」を増やすだけでなく、可能な限り透明性の高いトレーサビリティ(どの回収拠点から集まったPETが、どの工程を経て製品になったか)を示すことも、消費者の信頼を得るうえで重要になっていくと考えられる。

まとめ:企業の取り組みと家庭の分別がつながって海を守る

この記事のポイント

  • コカ・コーラは「容器の2030年ビジョン」で2030年までに全PETボトルを100%サステナブル素材化する目標を掲げている
  • ボトルtoボトルはメカニカル・ケミカル2方式で使用済みPETを新しいPETボトルへ再生する仕組み
  • 100%リサイクルPETへの切り替えでCO2排出量を1本あたり約60%削減できる見込み
  • 日本のPETボトル回収率91.9%・リサイクル率85.1%は世界トップ水準
  • リサイクルPETは海洋プラスチックの回収とは別の取り組みだが、新規プラ生産の抑制を通じて海への流出リスクを下げる土台になる
  • 家庭での正しい分別(キャップ・ラベルを外し、すすいでからつぶす)が高品質な再生PETを支えている

ペットボトルのリサイクルは、企業の技術・行政の回収インフラ・家庭での分別という3つの歯車がかみ合って初めて成り立つ。次にペットボトル飲料を手に取るときは、キャップとラベルを外して軽くすすぐという一手間が、海の資源循環の一部になっていることを思い出してほしい。

参考文献・出典

  1. 日本コカ・コーラ株式会社「サステナブルな容器へ」 – 容器の2030年ビジョンと取り組み概要
  2. 日本コカ・コーラ「廃棄物ゼロ社会を目指して。『容器の2030年ビジョン』を発表」 – 2018年1月のビジョン発表プレスリリース
  3. コカ・コーラ ボトラーズジャパン「ボトルtoボトルとは」 – メカニカル・ケミカルリサイクルの解説
  4. コカ・コーラ ボトラーズジャパン「設計|サステナビリティ」 – CO2削減効果・新規プラスチック削減見込みの数値
  5. PETボトルリサイクル推進協議会「PETボトルリサイクル年次報告書2024」 – 2024年度の回収率91.9%・リサイクル率85.1%の統計
  6. PETボトルリサイクル推進協議会「Section6 ボトルtoボトル」 – ボトルtoボトルの定義・仕組みQ&A
  7. 日本コカ・コーラ「『い・ろ・は・す 天然水』100%リサイクルペットボトル発売」 – 2020年3月の全国発売プレスリリース
  8. 日本コカ・コーラ「100%リサイクルPETを使用した新ラベルレスボトル」 – 2022年4月のオンライン限定発売リリース
  9. 日本コカ・コーラ「『コカ・コーラ』新パッケージデザイン」 – 2023年9月の全国発売リリース、表示明記の経緯
  10. Sustainable Brands Japan「日本コカ・コーラ、旗艦製品で100%リサイクルのペットボトル採用」 – CO2削減率49%・切替効果の報道
  11. Sustainable Brands Japan「コカ・コーラ、2030までに容器100%回収リサイクル」 – 自社回収した空き容器の水平リサイクル率2030年50%・2035年100%の目標

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