⚡ 30秒でわかる答え

  • 海鳥の保全とは、アホウドリのように回復した種を守り続けつつ、プラごみ・混獲・外来種という脅威を減らす取り組みです。
  • アホウドリは1951年の再発見から長年の保全で回復し、鳥島の推定個体数は9,500羽を超えたと報告されています。
  • 世界の海鳥の約90%がプラスチックを飲み込んだ経験があると推定されています。
  • 暮らしの中のプラごみ削減や持続可能な水産物選びが、海鳥を守る行動につながります。
1951年
鳥島でアホウドリ約10羽が再発見された年
約90%
プラスチックを飲み込んだ経験がある海鳥の推定割合
17/22種
絶滅危惧に位置づけられるアホウドリ類の種数

海を渡る大きな翼のアホウドリは、かつて「絶滅した」と報告されながら、再発見と長年の保全で復活した鳥です。その物語は、人が自然を取り戻せる希望を示します。

けれども海鳥の世界には、プラスチックごみの誤飲、漁具による混獲、島への外来種侵入といった課題が山積しています。海鳥は海の健康状態を映す「指標」でもあり、その苦境は私たちの海の状態を伝えています。

この記事では、アホウドリの回復の歴史から海鳥を取り巻く脅威、そして私たちにできる行動までを、公的機関や研究論文の情報をもとに整理します。

この記事で学べること

  • アホウドリが絶滅の危機から回復した道のり
  • 海鳥が直面する4つの脅威(プラごみ・混獲・外来種・気候変動)
  • 海鳥が海の健康を映す指標になる理由
  • 新繁殖地づくりの取り組み
  • 私たちにできる身近な行動

海鳥とは何か:海と陸をつなぐ生きものたち

海鳥の定義と生活スタイル

海鳥とは、一生のうち大半を海で過ごし、海の生きものを餌にする鳥の総称です。アホウドリ、ミズナギドリ、ウミガラス、ウミスズメ、カツオドリ、ウミネコなどが含まれ、世界におよそ数百種が知られています。多くの種は繁殖のときだけ陸地、とくに外敵の少ない離島に上陸し、残りの期間は外洋を数千キロ単位で移動します。

アホウドリ類は翼を広げると2メートルを超える種もあり、風をとらえて羽ばたかずに何時間も滑空できます。この省エネの飛び方のおかげで、広い海から点在する餌を探し出せるのです。一方で、一度に産む卵は基本的に1個、子育てに半年近くかかる種もあり、増えるスピードは非常にゆっくりです。

「長生き・少産」という特徴が弱点になる

海鳥の多くは寿命が長く、成熟するまでに数年から十年近くかかります。毎年たくさんの子を残す戦略ではなく、少ない子を大切に育てて長く繁殖する戦略をとるため、成鳥が偶発的に死ぬ影響が個体群全体に大きく響きます。後述する混獲や外来種の被害が深刻になりやすいのはこのためです。

海鳥の基本ポイント

  • 一生の大半を海で過ごし、繁殖期だけ島に上陸する
  • 1回の繁殖で育てるヒナは基本1羽と少なく、個体数の回復が遅い
  • 広い海を移動するため、1か国だけの保護では守りきれない

海と陸をつなぐ「栄養の運び屋」

海鳥は海で得た餌を島に持ち帰り、糞や吐き戻し、死骸を通じて窒素やリンを陸に供給します。海鳥の繁殖地では植物がよく育ち、昆虫や土壌生物も豊かになることが各地の研究で報告されています。海の栄養が陸の生態系を支えるという、見えにくいつながりの担い手でもあるのです。

海鳥の主なグループ

海鳥はいくつかの大きなグループに分けて理解すると整理しやすくなります。アホウドリ・ミズナギドリ・ウミツバメの仲間は「ミズナギドリ目」にまとめられ、外洋で暮らし、においで餌を探す能力に優れています。カモメやアジサシの仲間は沿岸で見かけることが多く、日本の港でもおなじみです。ウミガラスやウミスズメの仲間は、翼を使って水中を泳ぎ、魚を追います。ペンギンも広い意味では海鳥の一員で、飛ぶ代わりに潜水能力を発達させました。

日本は南北に長く、黒潮と親潮という二つの大きな海流が交わる位置にあります。そのため、北方系のウミガラス類から亜熱帯のカツオドリ類まで、多様な海鳥が見られる国です。離島の繁殖地は国の天然記念物や国立公園に指定されている場所も多く、保全の最前線になっています。

世界の海鳥はいま

BirdLife Internationalなどの評価では、海鳥は鳥類全体の中でも絶滅の危機にある割合が高いグループとされています。理由は、長寿・少産という生活史に加えて、繁殖地(島)と採餌場(外洋)の両方で人間活動の影響を受けるからです。陸の鳥は生息地の保全に注力すれば守れる場合が多いのに対し、海鳥は国境を越えて移動するため、国際協力が欠かせません。アホウドリ・ミズナギドリ類の保全のための国際協定ACAPがつくられたのも、そうした背景があります。

アホウドリ復活の物語:羽毛採取から再発見、そして回復へ

明治以降の乱獲と「絶滅」宣言

日本のアホウドリの主要な繁殖地は、伊豆諸島の鳥島でした。明治期以降、羽毛を海外へ輸出する目的で大量に捕獲され、数百万羽規模ともいわれる犠牲が出たと推定されています。1939年には鳥島の火山噴火も重なり、1949年には「絶滅した可能性が高い」と報告される事態に至りました。

1951年の再発見と長谷川博さんの42年

ところが1951年、鳥島で約10羽が再発見されます。ここから日本の保全活動が始まりました。1976年からは、のちに東邦大学名誉教授となる長谷川博さんが山階鳥類研究所のもとで調査・保全に取り組み、2018年11〜12月の第125回調査で区切りを迎えるまで、じつに42年間にわたって活動を続けました。

鳥島の斜面で営巣するアホウドリの親子のイメージ図
火山島・鳥島はアホウドリ最大の繁殖地(イメージ図)

回復期・発展期・拡大期という3つの段階

保全活動は大きく3段階に整理されています。1976〜1991年の「回復期」は、従来の繁殖地の斜面を改善して営巣を安定させた時期。1992〜2007年の「発展期」は、より安全な場所に新しいコロニーをつくり、若鳥を誘引してつがいを増やした時期。2008年以降の「拡大期」は、鳥島で生まれたヒナを小笠原諸島へ移して育てるなど、分布を広げる取り組みです。

時期段階主な取り組み
1976〜1991年回復期従来コロニーの斜面改善・営巣環境の安定化
1992〜2007年発展期新コロニーへ若鳥を誘引しつがいを増やす
2008年〜拡大期ヒナを小笠原諸島へ移して人工飼育・新繁殖地形成
アホウドリ保全の3つの段階(山階鳥類研究所の整理による)

個体数はどこまで回復したか

推定個体数は2012年に3,000羽を超え、その後も増加を続けています。2024〜25年の繁殖期には、鳥島で約1,300羽のヒナが巣立ち、鳥島の推定個体数は9,500羽を超えたと報告されています。かつて「絶滅」とまで言われた鳥が、人の手による長期の保全で数千羽規模まで戻った、世界的にも注目される成功例です。

数字に幅がある理由

アホウドリの総数は、「鳥島のみ」「尖閣諸島を含む」「繁殖つがい数」「全個体数」など、数える範囲により資料ごとに数字が異なります。引用するときは、いつの・どの範囲の数字かを確認しましょう。

ヒナの成長と親鳥の子育て

アホウドリのヒナは、親鳥が海で集めた餌を吐き戻して与えることで育ちます。親は数日から長いときは数週間かけて遠く離れた海へ餌を探しに行き、交代で巣に戻ります。ヒナが巣立つまでには約半年かかり、巣立ったあとの若鳥は数年間、陸に戻らず海を漂って過ごします。この長い未成熟期間を耐え抜いて、ようやく繁殖に参加できる個体が増えていくため、個体数の回復には時間が必要です。

デコイと音声による誘引

新しい繁殖地を作る際、保全チームはアホウドリの模型(デコイ)を並べ、鳴き声を流して、若鳥に「ここは安全な繁殖地だ」と伝える手法を使ってきました。鳥は仲間のいる場所に集まる性質があるため、この工夫はコロニー形成を後押しします。この方法は、世界各地の海鳥保全でも取り入れられている手法です。

乱獲の歴史が教えること

アホウドリが激減した歴史は、経済的価値だけを見て資源を使い切ることの危うさを示しています。羽毛という一時的な利益のために、数百万羽が失われました。そして、一度失った個体数を取り戻すには、数十年にわたる地道な努力が必要でした。この教訓は、現代の漁業資源や森林資源の利用にも通じるものです。

押さえておきたい用語

  • コロニー:海鳥が集団で繁殖する場所
  • 回帰性:生まれた場所に戻って繁殖する性質
  • デコイ:鳥を誘引するための模型

小笠原・聟島の新繁殖地づくり:噴火リスクへの備え

なぜ鳥島だけでは危ないのか

鳥島は活火山で、噴火が起きればコロニーが壊滅しかねません。繁殖地が一か所に集中している状態は、種にとって大きなリスクです。そこで、安全な別の島に第二の繁殖地を作る計画が進められました。

ヒナの移送と人工飼育

2008年から2012年にかけ、鳥島で生まれたヒナを小笠原諸島の聟島(むこじま)へ移し、人の手で育てる事業が行われました。ヒナは生まれた場所に戻る習性(回帰性)が強いため、巣立った場所を「ふるさと」と覚えさせることが狙いです。

8年越しに実った自然繁殖

移送開始から8年後の2016年、聟島で自然に生まれた最初のヒナが確認されました。直近でも2年連続で3羽の巣立ちが確認されており、新しい繁殖地は少しずつ根づきつつあります。ただし数はまだ少なく、安定した個体群になるには長い時間が必要です。

この記事の要点となる3つの数字をまとめた図版
数字で見る:本文で扱う3つの指標

保全から学べること

  • 長期の継続した調査と担い手の存在が成功の鍵だった
  • リスク分散のため繁殖地を複数に増やす発想が重要
  • 回復には数十年単位の時間がかかる

新繁殖地が持つ意味

聟島のような新しい繁殖地は、鳥島の噴火などで一度に全てを失うリスクを下げる「保険」の役割を果たします。さらに、複数の島に分散して繁殖することで、感染症や極端な気象の影響も分散されます。遺伝的な多様性を保つ観点からも、繁殖地が増えることは重要です。

小笠原諸島と海鳥

小笠原諸島は、世界自然遺産にも登録された貴重な島々で、固有の動植物とともに多くの海鳥が繁殖しています。外来種の対策や、観光客の立ち入りルールの整備など、島全体で自然を守る取り組みが続けられています。アホウドリの新繁殖地づくりは、こうした島の環境保全の一部として位置づけられています。

課題:まだ数は少ない

聟島での巣立ちは、直近の記録で年に数羽にとどまっています。鳥島の1,000羽以上と比べれば小さな数字ですが、自然繁殖が成り立ったこと自体が大きな前進です。今後は、繁殖つがいの数を増やし、安定した個体群に育てていくことが課題になります。

海洋プラスチックごみの誤飲:9割の海鳥が口にしている

世界規模の研究が示した数字

2015年に米国科学アカデミー紀要(PNAS)に発表されたウィルコックスらの研究は、世界の海鳥の現状に衝撃を与えました。この研究によると、現在生きている海鳥の約90%がプラスチックを飲み込んだ経験があると推定され、種のレベルでは約60%でプラスチックの摂取が確認されています。さらに、現在の傾向が続けば、2050年には99%の種で摂取が起きると予測されました。

1960年には個体の5%未満だった摂取率が、2010年には約80%に達したとされ、プラスチック生産量の増加と軌を一にして急増したことがわかります。

なぜ餌と間違えるのか

海鳥はプラスチック片を餌と取り違えるだけでなく、においにも誘われると指摘されています。海面で長く漂ったプラスチックには藻類が付着し、それが発する硫黄化合物(ジメチルスルフィド)のにおいが、餌の存在を示す手がかりになってしまうという説です。とくに、においで餌を探すミズナギドリの仲間で摂取率が高い傾向が報告されています。

海面に浮かぶプラスチック片と海鳥のイメージ図
海面を漂うプラスチック片を餌と取り違える海鳥(イメージ図)

体の中で何が起きるか

飲み込まれたプラスチックは消化されず、胃に溜まって満腹感を与え、餌を食べる量を減らしてしまいます。胃や腸を傷つけたり詰まらせたりするほか、親鳥が吐き戻しでヒナに与えることで、ヒナにも蓄積します。長期的にはプラスチック由来の化学物質の影響や、体の栄養状態の悪化が懸念されています。詳しい病態は、当サイトの海鳥のプラスチック誤食問題の記事で解説しています。

ヒナへの影響

親鳥が海で集めた餌には、プラスチック片が混ざっていることがあります。巣立ち前のヒナの胃から大量のプラスチックが見つかる例が、世界各地の繁殖地で報告されています。

日本周辺では

日本近海も世界的にマイクロプラスチックの濃度が高い海域とされ、海岸に漂着するごみの量も多い国のひとつです。使い捨てプラスチックの削減や、河川・海岸でのごみ回収は、海鳥を守る取り組みでもあります。海でプラスチックがどのように細かくなるかは海洋プラスチックの分解の記事も参考になります。

マイクロプラスチックと化学物質

海に流れ出たプラスチックは紫外線や波で細かく砕かれ、5ミリ以下のマイクロプラスチックになります。小さくなるほど、海鳥だけでなく魚や動物プランクトンにも取り込まれ、食物連鎖を通じて上位の捕食者に集まる可能性があります。また、プラスチックは海中の有機汚染物質を吸着しやすく、摂取した生きものの体内でこうした物質が放出される可能性も研究されています。

繁殖地での調査

世界各地の繁殖地では、研究者が海鳥の吐き戻しや死骸の胃内容物を調べ、プラスチックの量や種類を記録しています。その結果は、海のごみの状況を知る手がかりとして国際的に共有されています。ある種の海鳥は、国や地域の「海洋ごみの指標」として公式に使われている例もあります。

対策の方向性

根本的な解決は、プラスチックが海に流れ込む量を減らすことです。国際的にはプラスチック汚染に関する条約づくりの議論が進められ、日本でもレジ袋の有料化やプラスチック資源循環法など、削減とリサイクルの制度が整えられてきました。個人の行動と制度の両輪で、流出量を減らし続けることが求められます。

今日からできる3つのこと

  • マイバッグ・マイボトルを持ち歩く
  • 使い捨てのストローやカトラリーを断る
  • ペットボトルや包装を分別して出す

混獲:漁業との共存という難問

混獲とは何か

混獲(こんかく)とは、漁業で狙っていない生きものが漁具にかかってしまうことです。海鳥の場合、延縄(はえなわ)漁で、餌のついた針を海鳥が食べに来て針にかかり、そのまま沈んで溺れてしまう事故が典型的です。刺網やトロール漁でも起こります。

数字で見る混獲の影響

世界のアホウドリ22種のうち17種が、IUCN(国際自然保護連合)のレッドリストで絶滅危惧のカテゴリー(危急・絶滅危惧・近絶滅)に位置づけられており、漁業による偶発的な死亡が最も広く見られる減少要因だとされています。外洋の延縄漁だけでも、毎年数万羽規模の海鳥が死んでいるとの推計があります。

対策内容期待される効果
トリライン(鳥よけ紐)船尾から長い紐を引き、海鳥を針に近づけない餌取りの鳥の接近を抑える
夜間投縄海鳥の活動が少ない夜に針を投入昼行性の海鳥の混獲を減らす
加重ライン縄に重りを付けて針を素早く沈める針が水面近くにある時間を短縮
餌の工夫・投棄管理廃棄物の船外投棄を避ける船への海鳥の誘引を抑える
代表的な海鳥混獲の緩和策(BirdLifeやACAPなどが推奨する対策の例)

日本の漁業と対策

日本の遠洋マグロ延縄漁船などでは、国際的な漁業管理機関の求めに応じ、トリラインなどの混獲回避措置の導入が進められてきました。対策は低コストで効果があるものも多く、漁業者の協力と技術の普及が鍵になります。漁業の持続可能性を考える視点では、乱獲と資源崩壊や混獲魚の食用利用の記事もあわせてご覧ください。

消費者としてできること

  • MSCなどの認証を受けた水産物を選ぶ
  • 混獲対策に取り組む漁業を応援する
  • どの海でどう獲られた魚かに関心を持つ

国際協力の枠組み

海鳥の混獲は国境を越える問題のため、国際的な枠組みで対策が進められています。アホウドリ・ミズナギドリ類の保全に関する協定(ACAP)や、地域漁業管理機関(RFMO)が、混獲回避措置の導入を加盟国に求めています。日本もマグロ類の漁業管理機関などを通じて、こうした措置に関わっています。

技術の進歩

海鳥に小型の発信器を付けて行動を追跡すると、どの海域で漁船と重なるかがわかります。この情報をもとに、混獲リスクが高い海域や時期を特定して、重点的に対策を行うことができます。また、船上のカメラで混獲の状況を記録し、AIで解析する試みも始まっています。

漁業者とともに守る

混獲対策は漁業者に負担をかけるだけでは続きません。針を早く沈めることは、餌の取られ損を減らし、漁獲効率の向上にもつながる場合があります。漁業者と研究者が協力して、無理のない方法を探ることが、保全と漁業の両立につながります。

繁殖地への外来種侵入:島のネズミ・ネコ・ヤギ

地上で営巣する鳥は無防備

海鳥の多くは、天敵のいない島で地面や穴に営巣するよう進化してきました。そのため、人間が持ち込んだネズミ、ネコ、ブタ、ヤギなどの外来哺乳類に対して、ほとんど防御手段をもちません。卵やヒナが捕食されるだけでなく、ヤギが植生を食べ尽くして巣穴を壊す被害も起こります。

ネズミが占める絶滅要因

島の外来種研究では、ネズミ類が海鳥の絶滅・絶滅危機の最大要因のひとつで、海鳥の絶滅の約60%にネズミが関わるとの推計が示されています。クマネズミ、ドブネズミ、ポリネシアネズミの3種が、とくに被害の大きい外来ネズミとされます。

島の巣穴を守るため外来ネズミを駆除する保全活動のイメージ図
外来種対策で守られる海鳥の繁殖地(イメージ図)

駆除と回復の事例

世界各地で、島からネズミやネコを取り除く「根絶事業」が行われ、その後に海鳥の繁殖数が回復した例が数多く報告されています。日本でも、離島での外来哺乳類対策が進められています。外来種問題の全体像は外来海洋生物の記事でも解説しています。

私たちが気をつけたいこと

  • 離島や海鳥の繁殖地を訪れるときは、荷物や靴に生きものや種子を付けない
  • ペットや植物を島へ持ち込まない
  • 現地のルールとガイドに従う

ネコ・ヤギなど他の外来種

ネズミだけでなく、野生化したネコは、離島の海鳥に大きな被害を与えてきた外来種として知られています。小笠原諸島や奄美大島などでは、ノネコ対策が進められています。ヤギは植生を食べ尽くして地面を不安定にし、ウミツバメ類などの巣穴を崩してしまうことがあります。

根絶事業のむずかしさ

島から外来種を根絶するには、広い面積に対して徹底した作業が必要で、コストも大きくなります。それでも、一度成功すれば、効果は長く続きます。世界では、数百の島で外来哺乳類の根絶が成功しており、多くの場所で海鳥の回復が確認されています。

バイオセキュリティという考え方

根絶した後に再び侵入されては意味がありません。そのため、船や荷物からネズミなどが上陸しないよう、侵入防止の仕組み(バイオセキュリティ)が重要になります。島に渡る前に荷物を点検する、船にネズミ返しをつけるなど、基本的な対策が有効です。

海洋環境の指標種としての役割

なぜ「指標」になるのか

海鳥は海の食物連鎖の上位にいて、魚やイカ、動物プランクトンなどを食べます。そのため、餌となる生きものの量や分布が変わると、繁殖の成否や体の状態にすぐ現れます。さらに、繁殖地で巣の数やヒナの数を数えれば、広い海の状態を比較的低いコストで継続的に把握できるのです。

モニタリングの例

海鳥の繁殖成績の長期観測は、海水温の上昇や漁獲による餌資源の変化、海洋汚染を知る手がかりとして世界で使われています。胃の内容物や羽の化学分析から、プラスチックの量や重金属、有機汚染物質の蓄積を調べる研究も行われています。

この記事のポイントを箇条書きでまとめた図版
この記事のポイント。詳しくは各章で解説している

気候変動との関係

海水温の変化は餌となる魚の分布を動かし、海鳥の繁殖に影響を与えます。また、海面上昇や高波は、低い島の営巣地を浸水させる危険もあります。海の温暖化については海洋温暖化と海流の変化の記事もご覧ください。

日本の海鳥と指標

日本の離島では、ウミネコ、オオミズナギドリ、ウトウなどが、大規模なコロニーで繁殖しています。これらの繁殖状況を長期間観察することで、周辺海域の餌環境の変化を推測できます。たとえば、餌の魚が不足する年には、ヒナの成長が悪くなったり、繁殖を放棄する親が増えたりします。

市民科学の可能性

海鳥のモニタリングは、研究者だけでなく市民の協力でも進められています。海岸に打ち上げられた海鳥の死骸(漂着鳥)を数える調査や、バードウォッチングの記録の共有は、広い海岸線の状況を知る貴重なデータになります。観察記録を投稿するだけでも、保全に役立つ場合があります。

30by30と海鳥

2030年までに陸と海の30%を保全する国際目標(30by30)では、海鳥の繁殖地や採餌場が重要な保全対象の候補です。海鳥の行動範囲をもとに、重要な海域を保護区に含めていく考え方が広がっています。

私たちにできること:海鳥を守る5つの行動

暮らしの中から

  1. 使い捨てプラスチックを減らし、ごみを正しく分別する
  2. 海岸や川辺のごみ拾いに参加する
  3. 認証を受けた持続可能な水産物を選ぶ
  4. 海鳥観察はルールとマナーを守り、営巣地に近づきすぎない
  5. 海鳥の保全団体や研究機関の活動に関心を持ち、情報を共有する

観察を楽しむときのマナー

海鳥の観察は、フェリーや観察船、海岸などで手軽に楽しめます。繁殖地では、親鳥が驚いて巣を離れると、卵やヒナが捕食者に狙われたり、低温にさらされたりします。ルールを守り、距離をとって静かに観察することが大切です。

学校や地域での取り組み

海岸清掃と海鳥の観察を組み合わせた学習は、子どもたちが海のつながりを実感する良い機会になります。拾ったごみを種類ごとに数え、記録することで、地域の海岸の状況を調べる科学の学習にもなります。

次の世代へ

アホウドリの復活は、保全が実を結ぶことを示しています。同時に、その成功が一人の研究者の42年間の努力に支えられたことは、継続の大切さも教えてくれます。次の世代が海の鳥たちと共に生きる未来のため、いま私たちが知り、選び、行動することが問われています。

学びを広げる

アホウドリの保全は、一人の研究者の情熱から始まり、行政・研究機関・地域が支え合って数千羽規模まで回復させた事例です。同時に、プラスチック、混獲、外来種、気候変動という複数の脅威は、いまも世界の海鳥に重くのしかかっています。個々の行動は小さくても、海を共有する一人として知ること、選ぶこと、伝えることが力になります。

この記事のまとめ

  • アホウドリは再発見から長年の保全で数千羽規模まで回復した
  • 海鳥の約9割がプラスチックを飲み込んだ経験があると推定される
  • 混獲と外来種は繁殖の遅い海鳥にとって深刻な脅威
  • 海鳥は海の健康状態を映す指標でもある

参考文献・出典

  1. 山階鳥類研究所 アホウドリ ニュースレター No.1 – アホウドリ保全活動の経緯
  2. 山階鳥類研究所 プレスリリース(2024年6月) – アホウドリの繁殖状況
  3. 山階鳥類研究所 – アホウドリ保全に関する情報
  4. Wilcox et al. (2015) PNAS – 海鳥のプラスチック摂取の世界的な予測
  5. ACAP(アホウドリ・ミズナギドリ類保全協定) – プラスチック摂取に関するニュース
  6. ACAP 熱帯の島でのネズミの影響に関するレビュー – 外来ネズミと海鳥
  7. IUCN レッドリスト – アホウドリ類の保全状況
  8. BirdLife International – 海鳥の混獲対策
  9. 環境省 – 自然環境・希少種保全

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