⚡ 30秒でわかる答え
- 学校給食の食べ残しは、環境省の調査で平均残食率6.9%、児童・生徒1人あたり年間約17.2kgの食品廃棄物が出ていた(調査は平成27年)。
- 残る理由は、食べる時間の短さ、量と食欲の不一致、味やにおい、食べにくさ、教室の環境の5つが中心。
- 地場産物や魚食を活かす工夫と、残食の見える化・食育が削減の鍵で、目的は「完食の強制」ではなく感謝と自己管理の力を育てること。
学校給食の食べ残しは、日本の食品ロスの現場の一つであり、子どもが「食べ物を残す・残さない」を毎日体験する教育の場でもあります。この記事では、公的な調査の数字を手がかりに、なぜ残るのか、どう減らせるのかを整理します。
環境省の調査によると、給食の食べ残しの割合(残食率)を把握していた市区町村の平均は6.9%。児童・生徒1人あたり年間約17.2kgの食品廃棄物が出ていました。ただ、残食率を測っていた自治体は約3割にとどまり、「測る」ことが大きな課題として見えてきます。
地産地消や魚食の工夫、食育・環境教育、現場の削減アイデアまでを順に紹介し、最後に家庭・地域でできることをまとめます。無理な完食指導ではなく、食べ物への感謝と自分に合った量を考える力を育てる視点で読み進めてください。
この記事で学べること
- 学校給食の食べ残しの実態(残食率6.9%、1人年間約17.2kg)
- 食べ残しが生まれる5つの理由と、完食指導の注意点
- 調理残さ・配膳ロス・リサイクルなど給食のロスが出る場所
- 地場産物・魚食給食(愛媛県今治市の例)の工夫
- 食育・環境教育や現場の削減アイデア
- 家庭や地域でできること
学校給食の食べ残しは、数字で見るとどれくらいなのか
日本全体の食品ロスの中に、給食も含まれている
環境省と農林水産省の推計によると、2023年度(令和5年度)の日本の食品ロスは約464万トンで、内訳は家庭から出るものが約233万トン、事業活動から出るものが約231万トンでした。前年度の約472万トンからは約8万トン減っていますが、政府が掲げる2030年度の削減目標(家庭系は2000年度比で50%減、事業系は60%減)には、まだ距離があります。
この事業系食品ロスの一部に、学校給食が含まれます。給食は「毎日、決まった時刻に、大量の食事を一度につくる」という、家庭とも飲食店とも違う仕組みで動いています。そのため、食べ残しの出方にも給食ならではの特徴があります。本記事では、学校給食の食べ残しの実態を公的な調査の数字で確認し、なぜ残るのか、どう減らせるのかを、地産地消や魚食(さかな給食)の視点も交えて整理します。
「残食率」とは何を測った数字か
給食の食べ残しを語るときによく使われるのが残食率です。これは、出席した児童・生徒の人数分として用意した給食の量に対して、食べられずに残った量がどれだけあったかを示す割合です。たとえば、100人分のご飯を用意して6人分が残れば、ご飯の残食率は6%になります。
ここで注意したいのは、残食率は「品目ごと」「日ごと」に大きく変わる数字だということです。人気の高いカレーや揚げ物の日は低く、汁物や和え物、魚料理の日は高くなりがちだと、多くの学校・自治体の報告で指摘されています。学期全体の平均値だけを見ると、こうした日ごとの波が見えなくなる点には注意が必要です。
環境省の調査が示した数字
環境省は、文部科学省の協力のもと、全国の市区町村教育委員会に学校給食から発生する食品ロス等の状況を尋ねる調査を行い、その結果を公表しています。調査は平成27年1月に実施され、回答率は約80%でした。次の数字は、この調査結果から読み取れる主なものです。
| 項目 | 調査結果の目安 |
|---|---|
| 児童・生徒1人当たりの食品廃棄物の年間発生量 | 約17.2kg(平成25年度) |
| 食べ残しの割合(残食率)を把握していた市区町村 | 約3割 |
| 把握していた市区町村の平均残食率 | 約6.9% |
| 食品廃棄物のリサイクル率 | 約59%(肥料化が約4割、飼料化が約18%) |
| 食べ残しを減らす対策(調理方法の改善・献立の工夫)を実施 | 約7割の市区町村 |
| 食べ残し削減を目的とした食育・環境教育を実施 | 約65%の市区町村 |
この数字で目を引くのは、残食率を把握していた市区町村が約3割にとどまっていた点です。測っていなければ、減ったのか増えたのかも分かりません。削減の第一歩は、まず「見える化」だということを、この調査結果は教えてくれます。
調査の年代に注意
ここで紹介した環境省の調査は平成27年(2015年)のものです。その後、各地で給食の食品ロス削減の取り組みが広がり、文部科学省も令和5年(2023年)3月に「学校給食における食品ロス削減に関する調査研究」報告書を公表しています。最新の数字は、文部科学省の報告書や、お住まいの自治体・教育委員会の公表資料で確認してください。
食べ残しだけが「給食のロス」ではない
学校給食から出る食品廃棄物には、児童・生徒が残した食べ残しのほかに、調理の過程で出る調理残さ(野菜の皮やヘタ、魚の骨や皮など)、配膳の余りといったものも含まれます。文部科学省が示した推計では、給食における食品ロスは年間で数万トン規模とされ、その中で食べ残しはおよそ4割を占める、という整理が紹介されることが多くあります。つまり、食べ残しだけに注目しても、給食のロスの半分ほどしか見えていません。
次の章以降では、まず食べ残しがなぜ生まれるのかを整理し、続いて調理段階のロス、地場産物や魚食の工夫、食育の取り組み、そして家庭でできることへと話を進めます。
なぜ給食は残るのか:食べ残しが生まれる5つの理由
理由1:食べる時間が短い
給食の時間は、配膳と片付けを含めても、多くの学校で40分前後に収まっています。実際に食べられる時間は、その半分ほどになることもあります。話しながらゆっくり食べる子や、食べるのが遅い子にとって、時間が足りないことは最も直接的な食べ残しの原因です。給食の残量を調べた研究や自治体の報告でも、食べる時間の確保が残食を左右する要素の一つとして挙げられています。
時間が足りない日は、汁物や副菜が手つかずのまま返ってくることが少なくありません。一口ずつ食べる量が多い主食やおかずから先に手をつけ、最後に残った品目が食べきれなくなる、という流れです。
理由2:量と本人の食欲が合っていない
給食の量は、学年ごとの栄養の基準にもとづいて決められています。ただ、同じ学年でも体格や運動量、その日の体調には大きな個人差があります。運動部に入っていて大盛りが欲しい子もいれば、朝食を食べていなくて食欲がない子も、小食な子もいます。全員に同じ量を配ると、どうしても「多すぎる子」と「足りない子」が同時に出ます。
理由3:味・食感・においが苦手
子どもが苦手とする食材は、野菜の苦味、魚のにおいや骨、独特の食感のもの(ひじき、こんにゃくなど)に偏るといわれます。味の好みは経験によっても変わるため、食べ慣れない料理が出たとき、あるいは家庭であまり食卓に上がらない食材が出たときに、残る量が増えます。
理由4:献立の組み合わせと食べやすさ
同じ食材でも、調理法や盛り付け、汁気の多さによって食べやすさは変わります。たとえば、骨のある焼き魚は食べ方が難しく、骨を取る時間もかかります。汁物にとろみがなく具だくさんだと、スプーンで食べにくいといった細かい要素も、残食に影響します。献立を立てる栄養教諭・学校栄養職員や調理員は、こうした「食べやすさ」を日々工夫しています。
理由5:教室の雰囲気と、食事に向き合う習慣
食事の前に体を動かしていたか、教室が落ち着いているか、先生が一緒に食べているか。こうした環境も残食に影響します。給食は「勉強の時間の合間」ではなく、食を学ぶ時間として位置づけることで、食事への向き合い方は変わる、という報告もあります。
| 理由 | 主な現れ方 | 有効とされる対応の方向 |
|---|---|---|
| 時間が短い | 汁物・副菜が残る | 食べる時間の確保、配膳の効率化 |
| 量が合わない | 主食・主菜が残る、または足りない | 食べる前に量を調整できる仕組み |
| 味・食感が苦手 | 野菜・魚・和え物が残る | 少量から慣れる、調理法の工夫 |
| 食べにくい | 骨のある魚、具だくさんの汁 | 骨なし加工、盛り付けの工夫 |
| 環境・習慣 | 日によって残量が大きく変わる | 食育、声かけ、一緒に食べる大人の存在 |

「完食しなさい」の指導は、本当に良いのか
食品ロスを減らしたいからといって、児童・生徒に「全部食べなさい」と強く求めることには、慎重な意見もあります。食べたくても食べきれない子、アレルギーや体調不良のある子、食への不安を抱える子にとっては、完食の強要が苦痛になり、食事そのものが嫌になる場合もあるからです。
文部科学省が示す食育の考え方でも、目指すのは「無理に食べさせること」ではなく、食べ物への感謝を育て、自分に合った量を判断して食べられる力をつけることです。食べ残しを減らす取り組みは、子どもの心身の健康を守ることと、必ず両立させる必要があります。
食品ロス削減は「完食の強制」ではない
- アレルギーのある子・体調が悪い子には無理に食べさせない
- 苦手な食材は、少量から慣れる工夫を重視する
- 量を減らして食べきる経験を、残さない喜びにつなげる
- 残食率の数字だけで、子どもや学級を評価しない
給食のロスが生まれる場所:調理・配膳・リサイクル
調理残さ:野菜の皮から魚の骨まで
給食室では、毎日数百人から千人以上の食事を一度につくります。野菜の皮やヘタ、根の切れ端、魚の骨や皮、卵の殻などの調理残さは、量が多くなりがちです。最近では、大根の皮やブロッコリーの茎をきんぴらや汁物に活用するなど、以前は捨てていた部位を使い切る工夫が、多くの学校給食センターで取り入れられています。
調理残さの多くは、食材の可食部を無駄にしないことで減らせます。ただし、衛生管理の観点から、傷んだ部分や食べられない部位まで無理に使うことはできません。使い切りと安全のバランスが求められます。
配膳・提供のロス:欠席・行事・数量の読み違い
給食は、朝の時点で人数分を確定して調理します。当日の欠席や早退、学級閉鎖、学校行事による変更などで、つくった食事が余ることがあります。調理を始めてからでは数量を調整しにくいため、余りをどう扱うかが課題になります。
余った給食は、衛生管理の面から、児童・生徒への再配膳や持ち帰りが認められない場合が一般的です。これは食中毒を防ぐための重要なルールで、食品ロスを減らす目的であっても、衛生上のリスクを優先する必要があります。一部の自治体は、事前の予定変更を早めに調理場へ伝える仕組みや、食材の発注量を細かく調整する運用を導入しています。
食べ残しの行き先:リサイクルと廃棄
環境省の調査結果では、学校給食から出る食品廃棄物のリサイクル率は約59%で、その中では肥料化(堆肥化)が約4割、飼料化が約18%でした。残りは焼却などの処理に回っていると考えられます。堆肥化された給食残さを学校の花壇や地域の農地で使い、育った野菜が再び給食に登場する「食品循環」を実践している自治体もあります。
ただ、リサイクルは食品ロスの「出口」に過ぎません。そもそも食べ残しや調理残さが出ないようにする発生抑制(リデュース)が、食品ロス削減の最優先の考え方です。環境省も、食品ロス削減の優先順位として、まず発生抑制、次に再利用、最後に再生利用(肥料・飼料化)という考え方を示しています。
食品廃棄物への対応の優先順位(食品リサイクル法の考え方)
- 1. 発生抑制:つくりすぎない、食べきれる量にする
- 2. 再生利用:肥料・飼料などとして循環させる
- 3. 熱回収・減量:どうしても残るものへの最後の対応

食品ロス全体の推計でも、家庭と事業活動の双方で毎年数百万トンが発生していることは、冒頭で見たとおりです。日本の食品ロスの現状は、環境省の「食品ロスの削減・食品廃棄物等の発生抑制」のページ、消費者庁の推計値公表ページで確認できます。給食はその中の一つの現場にすぎませんが、子どもたちが日常的に「食べ物を残す・残さない」を体験する場所であるという点で、教育的な意味の大きい現場です。
地産地消と給食:地元の食材は、食べ残しを変えるのか
学校給食の地場産物・国産食材、その現状
学校給食に地元でとれた食材(地場産物)や国産食材を使う取り組みは、農林水産省と文部科学省が連携して進めています。第4次食育推進基本計画では、学校給食における地場産物・国産食材の使用割合(金額ベース)を、令和元年度の数値から維持・向上した都道府県の割合を90%以上にすることが目標とされました。令和元年度の全国平均は、金額ベースで地場産物が約52.7%、国産食材が約87%とされています。
文部科学省はこの状況を毎年調べており、令和4年度は6月と11月の第3週の各5日間を対象にした調査が行われました。なお、使用割合の算出方法は、以前の食材数ベースから、生産者や学校給食関係者の努力をより適切に反映できる金額ベースに見直されています。
「生きた教材」としての地場産物
農林水産省が公開している学校給食での地場産物活用の手引きは、地場産物を食に関する指導の「生きた教材」と位置づけています。地域の文化や産業への理解を深めると同時に、地域の生産者との交流を通じて、生産者の努力や食への感謝の気持ちを育てる効果が期待されています。
地場産物を給食に使う主なねらい
- 食に関する指導の「生きた教材」として使える
- 地域の文化・産業への理解が深まる
- 生産者との交流で、食べ物への感謝の気持ちが育つ
- 地域の生産者・事業者の販路になり、地域経済に貢献する
- 輸送距離が短くなり、環境負荷の低減につながる可能性がある
農林水産省は、こうした取り組みを始めるためのガイドブック(「小さな一歩から始める学校給食での地場産物活用」)と、全国12地域の事例、実務で使える計算ツールを公開しています。導入のハードルが高いと感じる学校や自治体でも、まず「月に1回、地元の食材を使う日」をつくるところから始められるように設計されています。
地元の魚を使った給食:愛媛県今治市の例
愛媛県今治市では、地元漁協の協力のもと、平成21年度から地魚の使用量を増やしてきました。水産物加工場で切り身などに加工して冷凍保存することで、大量に供給できる体制を整え、天然マダイを使った給食を市内の全小中学生に年3回程度出す取り組みを行っています。
この事例が示すのは、魚を給食に入れる上での最大の壁が「数」と「加工」にあり、それを地域の漁協・加工業者・調理場が連携して解決した、という点です。一度に何千食もの魚料理を用意するには、大きさのそろった切り身、骨の処理、冷凍保存、衛生管理といった条件がそろう必要があります。
課題:衛生管理・規格・安定供給・時間
地場産物の活用には課題もあります。農林水産省は、衛生管理、食材の規格、調理や配送の時間的な制約、農産物の安定的な生産・供給を主な課題として挙げています。天候不順で野菜がとれない、規格外の形で調理機械に合わない、といった現実的な問題があります。これらを解消するには、教育関係者だけでなく、地域の生産者や流通業者と話し合いながら、一つずつ工夫していくことが必要とされています。
地場産物を使えば残食が必ず減る、というわけではありません。ただ、生産者の顔が見える食材、地元の海でとれた魚を使った日には、「この野菜はどこの畑のもの?」「この魚はどこの海でとれたの?」と関心を持つきっかけが生まれ、食べ物への向き合い方が変わる、という声は多くの学校から寄せられています。
魚食給食の工夫:においと骨の壁を越える
なぜ魚は給食で残りやすいのか
魚は栄養面で優れた食材です。良質なたんぱく質に加え、青魚にはDHAやEPAといった脂質が含まれ、カルシウムやビタミンDも摂れます。一方で、給食では肉料理に比べて魚料理の残食が多くなりやすいと言われています。理由は主に次の三つです。
- におい:加熱した魚のにおいを苦手とする子どもが一定数いる
- 骨:小骨が残っていると食べにくく、喉に刺さる不安もある
- 食べ慣れていない:家庭で魚を食べる機会が減り、味や食感に慣れていない
近年は家庭での魚の消費が減少傾向にあると言われ、給食が子どもたちにとって魚と出会う数少ない機会になっている地域もあります。だからこそ、魚を給食に出す意味と、食べやすくする工夫の両方が重要になります。
食べやすくするための調理・加工の工夫
一般社団法人大日本水産会が運営する魚食普及推進センターは、学校給食向けの魚レシピを公開しています。骨の処理や味付け、調理法の工夫といった、現場で使える実践的な情報が集められています。代表的な工夫を整理すると、次のようになります。
| 課題 | 工夫の例 | 期待される効果 |
|---|---|---|
| においが気になる | 生姜・ねぎ・味噌などで下味をつける、揚げる・カレーやシチューに使う | においが和らぎ、食べやすくなる |
| 骨が気になる | 骨取り加工された切り身を使う、すり身やつみれにする | 骨の心配が減り、安全に食べられる |
| 食感が苦手 | フライやナゲット、ハンバーグ状にする | 魚に慣れていない子でも入りやすい |
| 食べ慣れない | 少量から始める、行事食や郷土料理として出す | 魚の味に触れる機会が増える |
「魚が苦手」は調理と経験で変わる
魚のにおいや骨が苦手でも、揚げ物や煮込み料理、すり身にするなど調理法を変えると、食べられる子が増えることは多くの現場で報告されています。まずは食べやすい形で「おいしかった」という経験を重ねることが、魚に慣れる近道です。
魚食の効果:生産者との交流と「サカナ嫌い」の減少
地元の農林水産物を積極的に給食に取り入れる自治体では、生産者と子どもたちの交流が生まれ、子どもの「サカナ嫌い」が減るといった多面的な効果が報告されています。漁師や漁協の職員が学校を訪れ、魚のとれる様子や仕事の苦労を話したり、魚をさばく実演を見せたりすることで、子どもたちは魚を「食材」から「海のいのち」として捉えるようになります。

水産物のロスと、海のつながり
給食で魚を使うことは、水産物の食品ロスとも関わります。漁獲された魚には、サイズが小さい、形が不ぞろいといった理由で市場に出にくいものがあります。こうした未利用・低利用の魚を加工して給食に活用する試みは、各地で行われています。水産物のロスの全体像は、水産物のフードロスを減らすの記事で詳しく整理しています。
また、東日本大震災からの復興の中で、三陸の水産業は養殖や加工の再建に取り組んできました。その歩みは、三陸の水産復興の歩みで紹介しています。地元の海の恵みを子どもたちの食卓に届ける取り組みは、こうした水産業の復興や持続可能な漁業とも深くつながっています。
給食の魚を「残さず食べる」ことは、海から命をいただく漁業や、その資源を守る取り組みへの敬意にもなります。魚を一匹丸ごと使い切ることは、資源の有限な海を守る第一歩でもあります。
食育・環境教育で、意識と行動を変える
食育は「食べ物の旅」を知ることから
環境省の調査では、約65%の市区町村が、食べ残し削減を目的とした食育・環境教育を実施していました。給食の食べ残しを減らすうえで、単に「残さず食べましょう」と呼びかけるだけでは限界があり、子どもたち自身が「なぜ残さないほうがいいのか」を理解することが大切だと考えられています。
学校で行われている取り組みには、次のようなものがあります。
- 残食量の見える化:学級ごと・日ごとの残量を量り、グラフにして教室に掲示する
- 食べ物の旅を学ぶ授業:畑や海から給食室まで、食材がどう届くかを学ぶ
- 生産者・調理員との交流:つくった人の顔と思いを知る
- 栄養教諭による給食の解説:その日の献立に含まれる栄養と、体の関係を伝える
- 環境学習との連携:食品ロスと温室効果ガス、ごみ処理の関係を考える
残食を「量る」と、子どもの行動が変わる
給食の残食量を、学級単位で毎日量って記録し、その日の献立や食べる時間との関係を子どもたちが自分で考える、という取り組みが各地で行われています。数字にして見せると、「今日は魚料理の日だから残りが多い」「時間が短かった日は汁物が残る」といった傾向を、子どもたち自身が見つけられるようになります。
大切なのは、数字を学級の競争にしないことです。残食が多い学級を責めるのではなく、「どうすれば食べやすくなるか」「どんな工夫ができるか」を一緒に考える材料として使うのが、成功している学校に共通する点です。
調理員・栄養教諭との対話が、献立を変える
児童・生徒が、調理員さんや栄養教諭にメッセージやリクエストを送り、それを受けて献立や味付けが改善される、という双方向の取り組みも広がっています。子どもたちにとっては、自分の声が給食に反映される経験になり、給食に対する当事者意識が高まります。調理側にとっても、現場の声から食べにくさの原因が具体的に分かり、改善の手がかりになります。
学校で始めやすい取り組みの例
- 一週間だけ、学級ごとの残食量を量って掲示する
- 「苦手な食材ランキング」を作り、調理の工夫を子どもと一緒に考える
- 給食の時間を少し延ばせないか、時間割から見直す
- 地元の生産者や漁協を招いた交流授業を年1回でも開く
- 食べ残しを堆肥にして花壇や畑で使い、循環を体験する
海とのつながりを教える
食育の中でも、海とのつながりを扱うことには特別な意味があります。私たちが食べる魚や海藻は、海の生態系と、それを支える漁業者の営みの上に成り立っています。給食で出る魚の名前や産地、獲り方を子どもたちが知るだけでも、食べ物を残さない意識につながります。地域の海が近い学校では、海岸清掃や漁業体験を給食の学びと組み合わせる例もあります。
食べ物と自然のつながりを考える入り口として、旬の食材を知ることも役立ちます。季節の食材と自然のリズムについては、旬を食べるとは?の記事も参考にしてください。
現場の削減アイデア集:献立・配膳・時間・仕組み
量の調整:自分で「加減」できる仕組み
全員に同じ量を配るのではなく、配膳の前に自分で量を調整できるようにする方法は、多くの学校で取り入れられています。たとえば、主食やおかずを盛り付ける際に「多め・ふつう・少なめ」を選べるようにしたり、食べる前に減らす時間を設けたりします。食べ終わった後で増量するおかわりの仕組みと組み合わせれば、足りない子も満たされます。
大切なのは「減らすことは悪いことではない」というメッセージを、先生が繰り返し伝えることです。食べられる量を自分で見積もる力は、大人になってからの食品ロス削減にも直結します。
献立:残りやすい品目を工夫する
残食率のデータを品目ごとに記録すると、残りやすい献立の傾向が見えてきます。傾向が分かれば、味付けを変える、切り方を小さくする、人気の料理と組み合わせる、といった対策が取れます。地元の食材や旬の食材を使うと、味の良さから残食が減ったという報告もあります。
| 場面 | 工夫の例 | ポイント |
|---|---|---|
| 献立づくり | 残食の多い品目の味付け・調理法を見直す | 記録を取って傾向をつかむ |
| 配膳 | 量を「多め・ふつう・少なめ」から選べる | 減らすことを認める雰囲気づくり |
| 食事の時間 | 食べる時間を確保する(配膳の効率化) | 時間割の工夫が効くことも |
| 調理 | 野菜の皮・茎まで使うレシピを取り入れる | 衛生管理を前提に使い切る |
| 予定変更 | 欠席・行事の変更を早めに調理場へ連絡 | つくる量の調整に直結する |
| 振り返り | 残食量を量って掲示し、傾向を共有する | 競争ではなく改善の材料として使う |

地域の仕組み:堆肥化と食品循環
食べ残しや調理残さを堆肥にして、地域の農家や学校の畑で使う仕組みをつくっている自治体があります。こうした食品循環は、廃棄物を減らすだけでなく、子どもたちが「自分たちの残した食べ物が、次の作物の栄養になる」ことを体感できる教材にもなります。ただし、堆肥化にはにおいや虫、収集・運搬の費用といった課題があり、地域の農業者や事業者との連携が欠かせません。
データの活用:残食を「測る」から「使う」へ
文部科学省の令和5年3月の調査研究報告書は、学校給食における食品ロスの削減事例を集めています。全国の取り組みから、自校に合うものを選ぶ際のヒントが得られます。残食量のデータを毎日つけ、月ごと・学期ごとの推移を確認することで、取り組みの効果を確かめ、続ける意欲にもつながります。
給食の食品ロス削減:現場の要点
- まず残食量と品目ごとの傾向を「測る」
- 量を自分で調整できる仕組みで、多すぎる・足りないを減らす
- 食べやすさを工夫し、地場産物や魚食で関心を高める
- 食育・環境教育で、なぜ残さないかを子ども自身が考える
- 完食の強制ではなく、感謝と自己管理の力を育てる
家庭・地域でできること:給食のロスを「自分ごと」にする
家庭でできること:苦手を責めず、食卓で「おいしい」を増やす
給食の食べ残しは、家庭での食習慣とも関係しています。家庭で魚や野菜を食べる機会が少ないと、給食で出たときに食べ慣れておらず、残しやすくなります。かといって、「残さず食べなさい」と叱るだけでは逆効果になりがちです。家庭では次のようなことから始められます。
- 休日に、魚をさばいたり焼いたりする様子を親子で見る
- 旬の魚や地元の野菜を食卓に出し、産地や季節の話をする
- 苦手な食材は、少量・調理法を変えて何度か試す
- 給食の献立表を一緒に見て、その日の食材について話す
- 子どもが「食べきれない」と言ったときは、量を調整することを認める
家庭の食品ロスの実態と削減の具体策は、家庭の食品ロス年間236万トンの実態で詳しく紹介しています。
地域でできること:生産者・漁協・学校をつなぐ
地域の生産者や漁協、農協、食品加工業者と学校をつなぐ役割は、行政やPTA、地域のNPOも担えます。地元の食材を給食に届ける窓口をつくる、生産者を学校に招く、給食の食材を使った料理教室を開く、といった取り組みは、地域の食文化を守ることにもなります。
食品ロスは、学校だけの問題ではありません。コンビニエンスストアや小売店でも、賞味期限の管理や需要予測を工夫した削減の取り組みが進んでいます。事業者側の取り組みについては、コンビニの食品ロスの記事も参考になります。

まとめ:給食の食べ残しを「減らす」と「育てる」を両立させる
学校給食の食べ残しは、日本全体の食品ロスの中では大きな割合を占めるわけではありません。しかし、子どもたちが毎日、食べ物と向き合う場であるという点で、教育的な影響は非常に大きいといえます。食べ残しを減らす取り組みが目指すのは、「完食させること」ではなく、食べ物への感謝と、自分に合った量を考える力を育てることです。
地元の食材や魚を給食に取り入れ、生産者との交流を通じて食べ物の背景を学ぶことは、食品ロスの削減だけでなく、地域の産業や海の環境を考えるきっかけにもなります。給食の一皿から、私たちの食と海、そして未来のつながりを考えてみてはいかがでしょうか。
参考文献・出典
- 環境省 学校給食から発生する食品ロス等の状況に関する調査結果について – 平均残食率約6.9%、1人年間約17.2kgなど
- 文部科学省 学校給食における食品ロス削減に関する調査研究(令和5年3月) – 食品ロス削減の調査研究報告書と取組事例
- 環境省 我が国の食品ロスの発生量の推計値(令和5年度)の公表について – 2023年度の食品ロス約464万トンの内訳
- 消費者庁 2023(令和5)年度食品ロス量推計値の公表について – 食品ロス量推計値と削減目標
- 環境省 食品ロスの削減・食品廃棄物等の発生抑制 – 食品ロス削減の政策と優先順位の考え方
- 農林水産省 学校給食での地場産物等の活用 – 地場産物活用の手引き・12地域の事例
- 文部科学省 令和4年度学校給食における地場産物・国産食材の使用状況調査 – 地場産物・国産食材の使用割合調査
- 厚生労働省 第4次食育推進基本計画 – 学校給食の地場産物・国産食材の使用割合の目標
- 魚食普及推進センター(大日本水産会) 学校給食の魚レシピ – 学校給食向けの魚料理レシピ
- 今治市 学校給食での地産地消 – 天然マダイの給食など地魚活用の取り組み
※ 信頼性の高い順に配列:政府機関・学術機関 > 査読済み論文 > 専門機関 > 信頼できるメディア