38%
日本の食料自給率(カロリーベース・令和5年度)
56%
食用魚介類の自給率(令和4年度概算値)
約9000億t・km
日本の総フードマイレージ(2001年試算)

スーパーの棚には一年中同じ野菜や魚が並び、今が何の「旬」なのか意識する機会は少なくなった。だが冷蔵・輸送技術が発達する前、人は季節ごとに獲れるものを食べるしかなく、その食材は栄養価が最も高まり、収穫量が増えて価格も下がる時期でもあった。旬を食べることは、自然のリズムに合わせた合理的な選択だったのだ。

一方で、私たちの食卓は今、遠くから運ばれてきた食材に支えられている。その輸送に伴う環境負荷を数値化する指標が「フードマイレージ」だ。日本は食料自給率が主要先進国の中でも低く、輸入に依存する構造ゆえに、1人当たりのフードマイレージで世界有数の水準にあることが分かっている。

この記事では、「旬」がなぜ体にも環境にもよいとされるのかを整理したうえで、フードマイレージという指標の仕組みと日本の実態、そして海の恵みである魚介類における「旬」と自給率の関係を、水産庁・農林水産省の統計や学術研究に基づいて読み解く。あわせて、フードマイレージという指標だけでは見えてこない、環境負荷の全体像についても学術研究をもとに考えていきたい。

この記事で学べること

  • 「旬」の食材は栄養価が高まり、収穫量が増えて価格も下がるという、自然の理にかなった選び方であること
  • フードマイレージは「輸送量×輸送距離」というシンプルな指標で、日本は1人当たりで世界最大級の“フードマイレージ大国”であること
  • 食用魚介類の自給率は56%まで持ち直した一方、消費量は年々減り、地元で獲れた魚を食べる機会も減っていること
  • 食べ物のCO2排出は輸送より生産段階の方が影響が大きいという研究もあり、フードマイレージだけで環境負荷を判断しないバランス感覚が大切なこと
  • 旬のもの・地のものを選ぶことは、環境負荷の低減だけでなく、鮮度や価格、地域経済にもつながる選択であること
  • 海水温の上昇でブリやサワラなど魚の分布が北へ動いており、地域ごとの「旬のカレンダー」自体が変わりつつあること

「旬」とは何か——自然のリズムが教えてくれること

「旬」とは、自然の中で無理なく育った野菜や果物が収穫の最盛期を迎える時期、また魚介類がその年で最もよく獲れ、味がのる時期のことを指す。農林水産省の食育ページでも「いちばんおいしくて栄養もたっぷり」な時期として紹介されている。ハウス栽培や冷凍・輸入技術が発達した現在、多くの食材は一年中手に入るようになったが、それでも旬の時期の食材には、他の時期にはない優位性がある。

旬には「出始め」「盛り」「名残」の3段階がある

和食の世界では、旬をさらに3つの時期に分けて捉える考え方がある。出回り始めでまだ量が少ない「走り(出始め)」、最も味がよく収穫量も多い「盛り」、そしてシーズンの終わりに味わう「名残」だ。この3段階を意識することで、同じ食材でも時期によって異なる表情を楽しむという、季節感を重視する食文化が育まれてきた。

旬の食材は栄養価が高く、価格も手頃になる

旬の野菜は、そうでない時期に比べて栄養価が高くなる傾向が知られている。露地栽培で太陽の光を十分に浴びて育つため光合成が活発になり、ビタミンやミネラルなどの含有量が増えるためだ。また、旬の時期は同じ作物の生産量が全国的に増えるため、市場に出回る量が多くなり、需給バランスから価格が下がりやすいという経済的なメリットもある。夏野菜のトマトやきゅうりには体を冷やす働き、冬の根菜類には体を温める働きがあるとされるなど、旬の食材にはその季節に体が必要とする性質が備わっているとも言われる。

旬を意識する3つのメリット

  • 栄養価が高まりやすい(光合成が活発になる露地栽培の最盛期)
  • 価格が下がりやすい(収穫量が増え、需給バランスが緩む)
  • 季節に合った働きが期待できる(夏野菜は体を冷やす、根菜は体を温める、など)

旬と行事食のつながり

日本の年中行事には、旬の食材を使った料理が数多く根付いている。春は桜の開花に合わせて桜鯛や筍を、夏は土用の丑の日にうなぎを、秋は月見にすすきと一緒に里芋や栗を、冬は正月におせち料理として黒豆や数の子を食べる。これらは単なる習慣ではなく、その時期に最も味がよく、体調管理にも役立つ食材を暦に組み込んだ知恵だと考えられている。旬を意識することは、季節の移ろいを暮らしの中で実感する手がかりにもなる。

また、日本は南北に長い地形のため、同じ食材でも産地によって旬の時期が数か月単位でずれることがある。例えば鰹の初鰹は、九州南部では4月頃から、三陸沖では7月頃からと、黒潮の北上に合わせて旬の時期が北へ移動していく。旬は全国一律の暦ではなく、地域ごとの気候や海流によって形づくられているという点も、押さえておきたい特徴だ。

四季それぞれの旬の野菜と魚が並ぶ食卓のイラスト
行事食にも、その季節ならではの旬の食材が息づいている。

フードマイレージという物差し

旬を食べることのもう一つの意味を理解するために欠かせないのが「フードマイレージ」という指標だ。これは、食料の輸送が環境に与える負荷を「量」と「距離」の掛け算で数値化したもので、2001年にイギリスの「フードマイルズ(food miles)」という考え方を参考に、当時の農林水産政策研究所に在籍していた中田哲也氏が日本向けに算出したのが始まりとされる。

イギリス発、市民運動から生まれた考え方

フードマイレージの原型となる「フードマイルズ(food miles)」は、1994年にイギリスの食料政策研究者で、シティ大学ロンドン教授のティム・ラング氏が提唱した概念だ。ラング氏が関わったイギリスのNGO「サステイン」を中心に、「食品の重量×輸送距離」を意識し、できるだけ生産地に近い場所で消費することで環境負荷を減らそうという市民運動として広まった。中田氏はこの考え方を日本に紹介し、日本の食料輸入構造を数値で可視化する試算を行った。

計算式は「輸送量×輸送距離」

フードマイレージの計算方法自体はシンプルで、食料の輸送量(トン)×輸送距離(キロメートル)で算出され、単位は「トン・キロメートル(t・km)」となる。例えばある食品を1トン、2,000km離れた場所から輸送した場合のフードマイレージは2,000t・kmになる、という具合だ。加工食品の場合は完成品だけでなく、原材料の輸入段階までさかのぼって計算されることが多く、原料の輸送距離が長い商品ほど数値が大きくなる。

日本は世界有数の“フードマイレージ大国”

中田氏の試算によれば、日本の総フードマイレージは約9,000億t・kmにのぼり、韓国やアメリカの約3倍、イギリス・ドイツの約4.5倍、フランスの約9倍という、他の先進国と比べても突出した数値になっている。人口1人当たりで見ても、日本は世界で最も高い水準にある。品目別では、飼料や原料として大量に輸入されるとうもろこしなどの穀物類が全体の5割以上、大豆などの油糧種子が2割以上を占め、輸送距離の長い北米・南米からの輸入が数値を押し上げている。

農林水産省のページを見る旬を食べよう(農林水産省)「旬」の意味と、季節の食材を食べることの大切さを紹介する食育ページ。🔗 maff.go.jp

なぜ日本のフードマイレージは突出して高いのか

日本のフードマイレージが世界的に見て高い最大の理由は、食料自給率の低さにある。農林水産省が2024年8月に公表した「令和5年度食料自給率・食料自給力指標」によれば、供給熱量(カロリー)ベースの総合食料自給率は38%で、前年度並みの水準にとどまった。つまり私たちが食べる食料のエネルギー量のうち、6割以上を海外からの輸入に頼っているということになる。

食料自給率とフードマイレージは表裏一体

輸入量が多いほど、輸送に伴うフードマイレージは大きくなりやすい。加えて日本は島国であり、主な輸入相手国であるアメリカ・オーストラリア・カナダなどとの距離が遠いことも、数値を押し上げる要因になっている。自給率の低さと輸送距離の長さという2つの要素が重なることで、日本のフードマイレージは世界でも際立って高い水準になっているのだ。

自給率はこの60年でどう変わったか

カロリーベースの食料自給率は、1965年度の73%から2023年度の38%へと、60年足らずで35ポイントも低下した。主な要因として農林水産省は、米の1人当たり年間消費量が1965年の約112kgから2023年には約51kgへと半分以下に減った一方で、畜産物や油脂類の消費が大きく増えたことを挙げている。米は国内でほぼ自給できる作物である一方、畜産物の飼料や油脂の原料となる穀物・油糧種子の多くは輸入に頼らざるを得ないため、食生活の変化がそのまま自給率の低下、ひいてはフードマイレージの増加に直結してきたことになる。なお、金額で見る「生産額ベース」の自給率は86%から64%への低下(22ポイント減)にとどまっており、カロリーベースほど低下幅が大きくない点も特徴だ。

年度カロリーベース自給率生産額ベース自給率米の1人当たり年間消費量
1965年度73%86%約112kg
2023年度(令和5年度)38%64%約51kg
農林水産省の食料自給率統計をもとにした比較

品目によって自給率は大きく違う

全体の自給率38%という数字の内側を見ると、品目ごとの差は非常に大きい。農林水産省の品目別自給率データによれば、米はほぼ国産でまかなえる98%である一方、小麦は17%、大豆は7%にとどまり、家畜の飼料として使われる濃厚飼料の多くも輸入に頼っている(飼料自給率は令和5年度で27%)。野菜は76%と比較的高いが、これは重量ベースで計算されるためで、種や苗まで含めた実質的な自給率はさらに下がるとされる。私たちが日常的に口にするパンや麺類、卵・肉・牛乳といった畜産物の多くが、輸入穀物という「見えないフードマイレージ」を積み重ねた上に成り立っているのだ。

品目別に見る輸入依存の構造

品目群フードマイレージに占める割合の傾向主な輸入元
とうもろこし等の穀物類全体の5割超北米・南米
大豆等の油糧種子全体の2割超北米・南米
食肉・畜産物距離の長い輸送が中心オーストラリア・北米
魚介類(一部)養殖用飼料・輸入原料を含むアジア・南米ほか
農林水産政策研究所の試算をもとにした品目別の傾向(中田哲也氏の分析より)
この記事の要点となる3つの数字をまとめた図版
数字で見る:本文で扱う3つの指標

海の「旬」——魚介類のフードマイレージと自給率

海LABの読者にとって特に関心が深いのが、魚介類における「旬」と自給率の関係だろう。水産庁が2024年6月に公表した「令和5年度水産白書」によれば、令和4(2022)年度における食用魚介類の自給率(概算値)は56%だった。これは、昭和39(1964)年度の113%をピークに低下し、平成12〜14(2000〜2002)年度に53%という最低水準まで落ち込んだあと、微増から横ばい傾向で推移している数字だ。

魚を食べる量そのものが減っている

自給率が持ち直している背景には、輸入量の減少に加えて、そもそも魚介類の消費量自体が減っているという事情もある。食用魚介類の1人1年当たりの消費量(純食料ベース)は、平成13(2001)年度の40.2kgをピークに減少を続け、令和4(2022)年度には22.0kgとなった。平成23(2011)年度以降は、肉類の消費量を下回る状態が続いている。生鮮魚介類の1人1年当たりの購入量も、令和5(2023)年には前年より5%減の18.5kgとなった。

消費される魚が「地のもの」から「全国流通のもの」へ

水産白書はもう一つ興味深い変化を指摘している。平成元(1989)年頃の生鮮魚介類の消費は、イカやエビが上位を占めていた。しかし近年は、サケ・マグロ・ブリが購入量の上位を占めるようになった。かつては地域ごとにその土地で獲れる魚が食卓の中心だったが、流通・冷蔵技術の発達により、以前はあまり流通していなかった地域でもサケ・マグロ・ブリが手に入りやすくなり、これらの魚が全国的に均質に消費されるようになったのだ。特にサケは、ノルウェーやチリからの養殖サーモンの輸入量が平成期に大幅に増加した影響もあり、地域による消費の差が小さくなっている。加えて次章で見るように、海水温の上昇によって魚の分布そのものが変わり始めており、「地元の旬の魚」の顔ぶれ自体が動きつつある地域も出てきている。

水産庁「令和5年度水産白書」が示す数字

  • 食用魚介類の自給率:56%(令和4年度概算値、ピークは昭和39年度の113%)
  • 1人1年当たり消費量:22.0kg(令和4年度、ピークは平成13年度の40.2kg)
  • 生鮮魚介類の1人1年当たり購入量:18.5kg(令和5年、前年比5%減)
  • よく消費される魚種:イカ・エビ中心(平成元年頃)→サケ・マグロ・ブリ中心(近年)

輸入される魚介類はどこから来るのか

自給できない4割超の魚介類は、海外から輸入されている。水産庁の資料によれば、サケ・マス類は主にチリやノルウェー、カツオ・マグロ類は台湾・中国・韓国、エビはインド・ベトナム・インドネシアなど、品目ごとに輸入相手国が偏っている傾向があり、サケ・マス類やエビ、カニ、タラ、イカなどは上位3か国だけで輸入量の6〜9割を占めるものも多い。日本の食卓を支えるサーモンやエビの多くが、地球の反対側に近い国から運ばれてきているという事実は、フードマイレージの観点からも見過ごせない。

国内で獲れる魚介類についても、天然と養殖という違いがある。天然魚は漁の状況によって水揚げ量が日々変動し、旬の時期に集中して獲れる一方、養殖業は水温や餌の管理によって、ある程度計画的に出荷時期を調整できる。ブリやマダイ、カキなど養殖が盛んな魚種では、天然の旬と養殖の出荷時期がずれることもあり、「旬」の感じ方が天然物と養殖物で変わってくる点も、魚介類ならではの特徴だ。

漁港で水揚げされたばかりの魚を選ぶ漁師と魚屋のイラスト
水揚げ量は天候や漁模様に左右され、地魚を安定して届けるのは簡単ではない。
水産庁の資料を見る令和5年度水産白書 水産物消費の状況(水産庁)魚介類の消費量・購入量の推移と、消費される魚種の変化を解説する水産庁の公式資料。🔗 jfa.maff.go.jp

気候変動で「旬」そのものが動き始めている

旬を考えるうえで、近年見過ごせなくなっているのが気候変動の影響だ。旬は本来、海水温や気候といった自然条件によって決まるものだが、その自然条件自体が変わりつつある。気象庁の観測によれば、令和元(2019)年までのおよそ100年間で、日本近海の海域平均海面水温は+1.14℃/100年というペースで上昇しており、これは世界全体の海面水温の上昇率より大きいとされる。

北海道でブリが獲れる時代に

水産庁の白書では、海水温の上昇によってブリやサワラなどの分布域が北上していることが指摘されている。かつては関東以西で多く水揚げされていたブリは、近年は北海道での漁獲量が増加している。温暖な海を好むサワラも、もともと九州や瀬戸内海の魚だったが、日本海側で水温が上がったことでより北の地域での漁獲が増えている。産卵場や索餌場、回遊経路が変化することで、魚がとれる場所・時期そのものが変わり始めているのだ。

「旬のカレンダー」も更新され続ける

瀬戸内海では、南方系の魚であるナルトビエイの分布が広がり、アサリを食べてしまう食害が増えているという報告もある。九州沿岸では、海藻が減少する「磯焼け」の拡大によって、イセエビやアワビといった磯根資源が減る地域も出てきた。こうした変化は、これまで「常識」とされてきた地域ごとの旬のカレンダーが、今後見直しを迫られる可能性を示している。旬を楽しむということは、固定された知識を覚えることではなく、変わりゆく自然の状態を毎年アップデートしながら向き合うことでもある。

フードマイレージだけでは測れないもの

ここまでフードマイレージという指標を軸に日本の食料輸入の構造を見てきたが、この指標には限界もあることを押さえておきたい。輸送距離が長い=環境に悪い、と単純に結び付けるのは早計だという指摘が、学術研究からなされている。

「どこから来たか」より「何を食べるか」

アメリカのカーネギーメロン大学のクリストファー・ウェーバー氏とH・スコット・マシューズ氏が2008年に環境科学の学術誌に発表した研究では、食品のライフサイクル全体の温室効果ガス排出量のうち、生産段階が平均83%を占めるのに対し、輸送全体が占める割合は11%、生産者から小売までの「最終配送」に限れば、わずか4%にとどまるという結果が示された。つまり、食べ物の環境負荷を左右する最大の要因は「どれだけ遠くから運ばれてきたか」ではなく、「何を、どのように生産されたものを食べるか」だという結論である。

輸送手段によっても環境負荷は大きく異なる

同じ「輸送距離」でも、手段によって環境負荷は大きく違う。研究機関Our World in Dataの分析によれば、1トンの荷物を1km運ぶ際の温室効果ガス排出量は、航空輸送が約1.13kg-CO2換算であるのに対し、海上輸送は約0.023kg-CO2換算と、実に約50倍の差がある。ただし世界の食料輸送の大半は船で行われており、航空輸送が占める割合はトンキロベースでわずか0.16%にとどまる。つまり「遠くから運ばれてきた」こと自体よりも、「どの手段で運ばれてきたか」の方が、実際の環境負荷への影響は大きい。生鮮度を保つために空輸される高級果物などは例外的に負荷が高くなるが、大半を占める船便の魚介類・穀物は、距離のわりに輸送1回あたりの環境負荷は比較的小さい。

数字を鵜呑みにしない読み方

これらの研究はいずれもアメリカやヨーロッパを中心とした食料システムを対象にしたものであり、島国で輸送距離が長い日本にそのまま当てはめられるわけではない。また、地産地消には輸送に伴うCO2排出の削減以外にも、鮮度の高さや地域経済への貢献、旬を通じた食文化の継承といった価値がある。フードマイレージは「輸送」という一つの側面を可視化する分かりやすい指標だが、それだけで食べ物全体の環境負荷を判断するのではなく、生産方法や輸送手段、食品ロスの削減なども合わせて考える視点が大切だ。

フードマイレージを読むときの注意点

  • t・km(トン・キロメートル)はCO2排出量そのものではなく、輸送に伴う負荷の「代理指標」であること
  • 同じ距離でも輸送手段(船・トラック・航空機)によって環境負荷は大きく異なること
  • 生産段階(肥料・飼料・エネルギー使用など)の負荷の方が大きい食品も多いこと
  • 「輸入品だから環境に悪い」「国産だから環境に良い」と単純化しすぎないこと

食品由来の温室効果ガス排出において、生産段階が平均83%を占める一方、輸送全体は11%、最終配送はわずか4%にとどまる。

― Weber & Matthews (2008) “Food-Miles and the Relative Climate Impacts of Food Choices in the United States”

旬を食べる、地のものを食べるという選択

フードマイレージだけが判断基準ではないとしても、旬のもの・地のものを選ぶことには、輸送に伴う環境負荷の低減以外にも複数のメリットがある。

地産地消がもたらす複数のメリット

  • 輸送距離が短い分、収穫・水揚げから食卓に届くまでの時間が短く、鮮度が高い状態で味わえる
  • 中間流通のコストが抑えられ、生産者の手取りが増えやすい
  • 地域内でお金が循環し、地元の農業・漁業の担い手を支えることにつながる
  • 旬の食材を通じて、地域の食文化や調理の知恵が次の世代に受け継がれる

学校給食での地場産活用が抱える課題

農林水産省が2021年3月に策定した「第4次食育推進基本計画」では、学校給食における地場産物の使用割合について、都道府県単位で現状(令和元年度)以上に維持・向上させることを目標に掲げている。水産庁の資料では、地場の魚介類を学校給食で使おうとしても、水揚げ量が天候や漁模様に左右されて不安定になりやすく、決まった日に一定の規格で安定供給することが難しいという課題が指摘されている。地産地消は「地元のものを食べたい」という気持ちだけでは実現しにくく、供給側の体制づくりも欠かせないテーマだ。規格外や小型で市場に出回りにくい未利用魚を給食や加工品に活用する取り組みも、地元の水産物を無駄なく食卓に届ける手段として広がりつつある。

直売所・道の駅という身近な入り口

地産地消を実践する場として身近なのが、地元の農産物・水産物を扱う直売所や「道の駅」だ。国土交通省の登録制度で始まった道の駅は全国に1,200カ所以上あり、その多くが地元でとれた野菜や魚介類を扱う直売コーナーを備えている。生産者の顔が見える形で並ぶ旬の食材は、スーパーの一般的な棚に比べて、その日の水揚げ・収穫の様子が直接伝わりやすいという特徴もある。旅行や買い物のついでに立ち寄ってみるだけでも、その地域の「今の旬」を知る手がかりになる。

漁協や生産者団体が主体となって、規格外品や未利用魚を加工品にする「6次産業化」の取り組みも各地で広がっている。とれたての魚介類をそのまま売るだけでなく、干物や加工品、レストランでの提供まで地域内で完結させることで、輸送に伴う環境負荷を抑えながら、生産者の収入も安定させやすくなる。旬の恵みを無駄なく活かす仕組みづくりは、地産地消をより持続可能なものにする土台になっている。

こうした取り組みは、生産者だけで完結するものではない。消費者が「地元でとれたもの」を選び続けることで初めて、直売所や6次産業化の仕組みは維持される。旬の食材を選ぶという日々の小さな消費行動が、結果として地域の生産基盤を支える循環を作り出している点も、地産地消の重要な側面だ。

この記事のポイントを箇条書きでまとめた図版
この記事のポイント。詳しくは各章で解説している

季節の食材カレンダーを持つ——魚と野菜の旬を知る

旬を意識した食生活を送るための第一歩は、季節ごとの代表的な食材を知ることだ。魚は種類が多く、地域によっても旬の時期が異なるが、全国的な目安として次のような食材が挙げられる。

季節代表的な魚代表的な野菜・果物
春(3〜5月)サワラ、メバル、シラウオたけのこ、菜の花、いちご
夏(6〜8月)アジ、カツオ(初鰹)、アユトマト、きゅうり、とうもろこし
秋(9〜11月)サンマ、カツオ(戻り鰹)、サバきのこ類、さつまいも、柿
冬(12〜2月)ブリ、タラ、カキ大根、白菜、みかん
全国的な目安の一例(地域や漁の状況により前後する。詳細は自治体等の旬カレンダーを参照)
春夏秋冬の旬の魚と野菜を円形カレンダーのように配置したイラスト
旬は全国一律ではなく、地域の気候や海流によって時期がずれる。

同じ魚でも「初物」と「戻り」で旬が変わる

カツオは代表的な例で、春から初夏にかけて黒潮に乗って北上する「初鰹(のぼりがつお)」と、秋に脂を蓄えて南下する「戻り鰹(もどりがつお)」の年2回、旬を迎える。同じ魚種でも時期によって脂の乗り方や味わいが大きく変わるため、季節ごとの食べ比べも旬を楽しむ醍醐味の一つだ。

迷ったら地元の直売所・魚屋に聞く

旬の目安は地域や年による漁模様の違いで前後する。確実に「今が旬」のものを知りたいときは、地元の直売所や鮮魚店、漁協の直売コーナーなどで、その日に並んでいるものを聞くのが早い。多くの自治体や漁協が、地域版の「旬の魚カレンダー」を公式サイトで公開している。

貝類・海藻も旬を持つ

旬があるのは魚だけではない。アサリやハマグリは産卵前に身が肥える春が最盛期とされ、カキは水温が下がり菌類のリスクが減る冬が「Rのつく月がおいしい」と言われる代表格だ。ワカメやコンブなどの海藻類も、水温が下がり始める晩秋から初春にかけて収穫が盛んになる。魚介類だけでなく、貝や海藻も含めて季節ごとの顔ぶれを知っておくと、旬を楽しむ幅がさらに広がる。

北と南で旬がずれる日本列島

日本は南北に長いため、同じ季節でも地域によって旬の顔ぶれは異なる。冬が旬とされるカキも、広島や宮城など寒流の影響を受ける産地では厳冬期がピークになる一方、沖縄など温暖な地域では冬でも比較的過ごしやすい気候のため、旬を迎える食材の種類そのものが本州と大きく違う。全国一律の「旬カレンダー」を鵜呑みにせず、自分が暮らす地域の気候や漁模様に合わせて捉え直すことも、旬をより身近に感じるコツだ。

今日からできる「旬を選ぶ」暮らし方

旬を意識した食生活は、大きな行動変容を必要とするものではない。日々の買い物や外食の中で、少し意識を向けるだけで実践できる。

買い物でできること

  • スーパーの「本日のおすすめ」「地元産」コーナーをまず確認する
  • 産地表示を見て、輸送距離が短いものを選ぶ選択肢があれば選ぶ
  • 旬の食材が並ぶ直売所や漁協の直売所を定期的に利用する
  • 同じ食材でも「走り」「盛り」「名残」の時期による味の違いを楽しんでみる

調理でできること

  • 旬の魚は脂がのっているものが多く、刺身や塩焼きなどシンプルな調理で持ち味を活かす
  • 走りの時期はさっぱりと、盛りの時期は脂の乗りを楽しむ調理法に変えてみる
  • 旬で安く手に入った食材は、下処理して冷凍・干物にすれば長く楽しめる
  • 地元の漁協・直売所のレシピカードや自治体の食育サイトを参考にする

外食・給食・企業の取り組みに目を向ける

個人の買い物だけでなく、外食産業や学校給食、企業の調達方針も、旬や地場産の活用を後押しする力を持つ。水産庁は「さかなの日」の取り組みなどを通じて、消費者が日々の消費の中で国産の水産物を選ぶきっかけづくりを進めている。旬のものを食べきれる量だけ選ぶ意識は、家庭から出る食品ロスを減らすことにもつながる。旬を選ぶという小さな習慣の積み重ねが、地域の漁業・農業を支え、フードマイレージを抑える社会全体の動きにもつながっていく。

この記事のまとめ

  • 旬の食材は栄養価が高く、価格も手頃になりやすい、自然の理にかなった選び方
  • フードマイレージ(輸送量×輸送距離)で見ると、日本は世界有数の輸入依存国
  • 食用魚介類の自給率は56%まで持ち直したが、消費量そのものが減少している
  • 環境負荷は輸送だけでなく生産段階の影響も大きく、数字を多面的に読む視点が必要
  • 旬・地のものを選ぶことは、環境負荷だけでなく鮮度や地域経済にもつながる選択

参考文献・出典

  1. 旬を食べよう – 農林水産省
  2. 食べ物と日本の四季のつながりを見てみよう – 農林水産省
  3. 令和5年度食料自給率・食料自給力指標について – 農林水産省
  4. フード・マイレージ資料室 – 中田哲也氏によるフードマイレージ研究の情報サイト
  5. 農林水産政策研究所レビュー No.11 – 農林水産政策研究所
  6. 令和5年度水産白書 第1章(1)水産物需給の動向 – 水産庁
  7. 令和5年度水産白書 第1章(2)水産物消費の状況 – 水産庁
  8. Food-Miles and the Relative Climate Impacts of Food Choices in the United States – Weber & Matthews (2008), Environmental Science & Technology/PubMed
  9. 水産物旬のカレンダー – 浜松市
  10. 令和5年度水産白書 第1章(4)水産物貿易の動向 – 水産庁
  11. Very little of global food is transported by air; this greatly reduces the climate benefits of eating local – Our World in Data
  12. 海洋の健康診断表 海面水温の長期変化傾向(日本近海) – 気象庁

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