⚡ 30秒でわかる答え
- AI発注の導入でコンビニの廃棄ロスは最大23%減少している。
- 恵方巻の予約販売率を上げることで廃棄額を前年比25%改善した企業もある。
- 食品ロスの一部はエコフィードとして養殖魚のエサに再利用され、天然魚への依存を減らす。
コンビニで毎日並ぶおにぎりやお弁当。売れ残れば大半が廃棄され、大手コンビニだけで年間2,692億円相当の食品が失われていると推計されている。
背景には「欠品を出さない」ための多め発注という構造的な課題がある。近年はAIによる需要予測発注や、恵方巻・クリスマスケーキなど季節商品の予約制、フードシェアリングアプリの活用が進み、廃棄削減の実績が積み上がってきた。
コンビニのおにぎりや水産惣菜の廃棄は、水産資源の使い方や海洋環境にも間接的に関わる。この記事ではコンビニ業界の食品ロス対策の最新動向と、海とのつながりを整理する。
全国に5万店以上あるコンビニは、私たちの生活に最も近い小売業態のひとつだ。だからこそ、その1店舗ごとの小さな改善の積み重ねが、日本全体の食品ロス削減において大きな意味を持つ。
この記事で学べること
- コンビニの食品ロスがなぜ構造的に発生しやすいのか
- AI発注システムが廃棄と欠品を同時に減らす仕組み
- 恵方巻など季節商品の予約制がどれだけ効果を上げているか
- フードシェアリングアプリの仕組みと利用状況
- コンビニのおにぎり・水産惣菜のロスが海や漁業資源とどう関わるか
コンビニの食品ロスはどれくらい発生しているのか
環境省の推計によると、日本全体の食品ロスは令和5年度で464万トン。うち事業系が231万トン、家庭系が233万トンとほぼ半々を占める。コンビニは事業系食品ロスの中でも、鮮度が命の弁当・おにぎり・惣菜を大量に扱うため廃棄率が高い業態のひとつとされる。
事業系食品ロスは製造・流通・外食・小売の各段階で発生するが、コンビニは製造から店頭陳列、販売終了までの時間が極めて短い点が特徴だ。弁当やおにぎりの多くは製造から消費期限まで1〜2日程度しかなく、需要を1日でも読み誤ると即座に廃棄につながる。さらに24時間営業を前提に、閉店直前まで商品棚を満たしておく必要があるため、「欠品ゼロ」を目指す文化そのものが廃棄と表裏一体になっているという構造的な難しさがある。
1店舗あたりの廃棄額
報道によれば1店舗あたりの廃棄額は年間で数百万円規模に達し、フランチャイズ店の経営を圧迫する要因にもなっている。大手コンビニ全体で見ると、年間の食品廃棄額は2,692億円にのぼるとの推計もある(1店舗あたりの廃棄額調査結果に店舗数を掛けて算出された推計値であり、企業の公式発表額ではない)。これは中堅企業の年間売上高に匹敵する規模だ。廃棄コストの一部を本部が補填する仕組みを取る企業もあるが、補填は経営上の緩和策にすぎず、廃棄そのものを減らす取り組みが本質的な対策になる。
また、廃棄された弁当やおにぎりの多くは自治体の「事業系一般廃棄物」として収集・焼却される。日本全体の一般廃棄物処理費は2兆円を超える規模で推移しており、食品ロスはごみ処理コストという形でも社会全体に負担をかけている。米不足や原材料価格の高騰が続く時期には、廃棄されるおにぎりや弁当がニュースで取り上げられることも増え、店舗スタッフの心理的な負担になっているという証言も報じられている。
実際に、あるコンビニ店舗では1店舗で年間468万円分の食品を廃棄していたという証言が報道され、店員が「捨てるのがつらかった」と語ったことも話題になった。同じ報道では、廃棄業務の心理的な負担が退職理由の一つになったと答えた退職者が4割に上ったことも紹介されており、食品ロスは経営面だけでなく、現場で働く人のモチベーションにも影響を及ぼしている問題であることがわかる。
米不足・価格高騰との関係
近年は米の供給が不安定な時期があり、コンビニのおにぎりや弁当に使う米の調達コストも上昇した。米が貴重になっている状況下でおにぎりが大量に廃棄されている様子が報じられると、消費者からの反発も強まりやすい。こうした社会的な視線の高まりも、コンビニ各社が食品ロス対策を加速させる一因になっている。

廃棄が環境に与える負荷
- 食品ロスは重量の8割以上が水分で、燃えにくいものを燃やすため多くのエネルギーを消費する
- 焼却や輸送の過程でCO2が発生し、生産・処分の両段階で温室効果ガスの排出につながる
欠品を出さない文化の裏側
コンビニ業界では「品切れを出さない」ことが長年のサービス品質の指標とされてきた。深夜に立ち寄った客が欲しい商品を買えなければ、その客は二度と来店しないかもしれない、という考え方が根強く、店舗もこれを恐れて発注量を増やす傾向がある。この「欠品への恐怖」と「廃棄への慣れ」が同時に存在してきたことが、コンビニの食品ロス問題を長年解決しづらくしてきた要因のひとつだ。
近年は消費者側の意識も変わりつつある。欠品よりも廃棄の少ない店舗を評価する声や、SDGsへの取り組みを重視して店舗を選ぶ消費者も増えており、企業側にも「廃棄を減らすこと自体がブランド価値になる」という認識が広がっている。この意識の変化が、AI発注や予約制といった新しい取り組みを後押しする土台になっている。
AI発注が変える廃棄と欠品のバランス
コンビニの発注は長年、店舗スタッフの経験と直感に依存してきた。ベテラン店長は天候や近隣の学校行事まで考慮して発注数を決めていたが、経験の浅いスタッフや人手不足の店舗では精度がぶれやすい。欠品を避けようとすると発注量が増え、廃棄も増える。この矛盾を解決する手段として広がっているのがAI発注システムだ。
セブン-イレブンの取り組み
セブン‑イレブン・ジャパンは約2,800品目を対象に、過去の販売データ・天候・曜日・近隣イベントなどを分析するAI発注システムを導入し、店舗ごとに最適な発注推奨数を提示している。導入店舗では廃棄ロスが23%削減されたと報告されており、店舗側の発注業務の負担も最大4割減っているという。従来はスタッフが数十分かけて行っていた発注作業を、AIが提示する推奨数をもとに短時間で確定できるようになったことで、廃棄削減と省人化を同時に実現している点も評価されている。
AIによる需要予測は、単純な過去データの平均ではなく、直近の売れ行きの変化や気温の推移、周辺での催事の有無といった複数の変数を組み合わせて算出される。たとえば猛暑日が続くとおにぎりより冷やし中華やアイスの需要が伸びる、雨天が続くと来店客数自体が落ちるといった細かなパターンをAIが学習し、発注数量の補正に反映する。これにより「多めに発注して売り切れを防ぐ」という従来の安全策から、「必要な分だけ発注して欠品と廃棄を両方減らす」という発想への転換が進んでいる。

- 過去の販売実績・天候・曜日・周辺イベントなど多様なデータを分析
- 時間帯別の需要を予測し発注推奨数を提示
- 店舗負担の軽減と廃棄削減を同時に実現
| 項目 | AI発注導入前 | AI発注導入後 |
|---|---|---|
| 発注の判断基準 | スタッフの経験・直感 | 販売データ・天候・イベント等の分析結果 |
| 発注業務にかかる時間 | 長時間(属人化) | 最大4割の負担軽減 |
| 廃棄ロス | 欠品回避のため過剰発注になりやすい | 導入店舗で約23%削減 |

AI発注のポイント
AI発注は「発注を減らす」だけの仕組みではなく、欠品による販売機会の損失と廃棄の両方を最小化しようとする点が特徴。データの精度が上がるほど効果も大きくなる。
ローソン・ファミリーマートの事例
ローソンは全国約1万4000店に「セミオート発注システム」を展開し、販売実績データに基づく精緻な需要予測によって発注時間を約44分短縮し、1店舗当たりの廃棄高を前年比で約1割削減したと報告されている。さらにおにぎりやサンドイッチなど日配品を対象にAIによる仕入れ数予測を導入し、需要との誤差を3割程度改善する見通しを示している。食品製造工場での食材調達にもAIを活用し、過去の発注実績から数カ月先までの必要量を予測する取り組みも進めている。
ファミリーマートは店長の業務をサポートする人型AIアシスタントを導入し、売上や来店客数などのデータを分析して発注や売り場作りのアドバイスを行う仕組みを取り入れている。各社アプローチは異なるものの、「データに基づいて発注量を最適化する」という方向性は共通しており、コンビニ業界全体でAI活用が標準的な取り組みになりつつある。
季節商品の予約制でロスを減らす
恵方巻やクリスマスケーキ、土用の丑の日のうなぎなど季節商品は、通常商品よりもさらに需要の予測が難しく、大量廃棄が起きやすい代表例として長年問題視されてきた。年に1度しか売れない商品のため店舗側にデータの蓄積が少なく、天候や曜日の巡り合わせによって売れ行きが大きく変動する。近年は予約販売の推進によって、需要を事前に把握してから生産量を決める方式へ移行が進んでいる。
予約制のメリットは、店舗側が「作ってから売る」のではなく「売れる分だけ作る」体制に切り替えられる点にある。予約数が確定した段階で本部・工場が生産計画を立てられるため、原材料の調達量そのものを絞り込める。恵方巻であれば米・海苔・かんぴょうなどの原材料、クリスマスケーキであればスポンジ・クリーム・果物といった原材料の使用量が需要と直結するようになり、サプライチェーン全体でのロス削減効果も期待できる。
恵方巻の具材には、玉子・きゅうり・かんぴょうといった定番のほか、海老やツナ、穴子といった水産物を使ったバリエーションも多い。季節商品は通常商品よりも高単価・高付加価値な具材を使うことが多く、廃棄が発生した際の原材料損失も相対的に大きくなりやすい。予約制によって生産数量を絞り込むことは、こうした高付加価値な水産原材料の無駄を減らすという意味でも効果が大きい。
予約制導入の実例
| 企業 | 取り組み | 効果・特徴 |
|---|---|---|
| セブン-イレブン・ジャパン | 恵方巻の予約販売率向上、PR資材活用、店舗別の計画数量調整 | 予約構成比15.7%で廃棄額が前年比約25%改善 |
| ローソン | 催事商品を原則予約販売に切り替え | 「作りすぎない」前提で需要を事前把握する仕組みに転換 |
| ファミリーマート | 公式アプリ「ファミペイ」で事前予約を推奨、早期予約に値引き特典 | アプリ経由での需要の見える化 |
ただし予約制だけで廃棄がゼロになるわけではない。当日販売分を残す店舗が多いため、予約と当日販売の比率をどう設計するかが今後の課題として指摘されている。予約をしていない客が「当日買えないかもしれない」という不安から複数個をまとめ買いし、結局食べきれずに家庭で廃棄してしまうケースも報告されており、店舗での廃棄削減が家庭での廃棄に転嫁されないよう、需要予測の精度と当日販売分のバランスを見極める必要がある。
予約制がうまく機能する条件
- 予約特典(値引き・ポイント付与)で予約への動機付けを行う
- 予約数量に基づいて生産・原材料調達量を柔軟に調整できる体制がある
- 当日販売分を必要最小限に抑えつつ、来店客の不満を招かない説明を行う
フードシェアリングアプリという新しい受け皿
発注や予約制で廃棄量そのものを減らす取り組みに加え、それでも出てしまう余剰食品を消費者につなぐ仕組みも広がっている。代表例が食品ロス削減アプリ「TABETE」だ。パン店・ホテル・飲食店・スーパーなど幅広い業態がすでに導入しており、コンビニも試験的に参加を始めている。
従来、コンビニでは消費期限が近づいた商品を見切り値下げすると「安く買えるなら定価では買わない」という客の行動が定着してしまうリスクが懸念され、値下げ販売に慎重な姿勢を取る企業が多かった。フードシェアリングアプリはこの課題を一定程度回避できる。アプリ上でのみ値下げ情報が表示されるため、店頭の通常価格帯を崩さずに、廃棄予定の商品だけを別チャネルで消費者に届けられるからだ。
TABETEとコンビニの連携
TABETEは2018年にリリースされ、2025年1月時点で2,900店以上と提携し、推計280万トン以上の食品をレスキューしてきたとされる。仕組みはシンプルで、店舗が売れ残りそうな商品をアプリ上に登録し、利用者が事前決済で予約・取り置きするというもの。店舗は廃棄コストを回避しながら売上の一部を回収でき、利用者は通常より安く商品を入手できる。都内のセブン‑イレブン店舗ではTABETE経由で値下げ商品を事前決済・取り置きできる試験導入も行われ、利用促進のためのキャンペーンも実施された。
このようなフードシェアリングの仕組みは、コンビニ側の廃棄データをそのまま需要予測の改善にも活用できる可能性を持つ。どの時間帯・どの商品がレスキュー対象になりやすいかを分析すれば、AI発注の精度向上にもフィードバックできるためだ。廃棄削減の取り組みが単独で終わらず、発注・予約・シェアリングが互いに補完し合う関係になっていくことが今後の理想像といえる。
TABETEを見るTABETE(タベテ)まだ食べられる食品をお得にレスキューできるフードシェアリングサービス🔗 tabete.me利用する際のポイント
フードシェアリングアプリを利用する際は、受け取り時間が指定されている場合が多いため、決済後に必ず受け取りに行くことが前提になる。予約したのに受け取りに行かない「無断キャンセル」は店舗側の負担を増やし、サービス自体の持続性を損なう。アプリ側もキャンセルポリシーやレビュー機能を設けて、利用者・店舗双方が安心して使える仕組みづくりを進めている。
また、店舗にとってはフードシェアリングアプリへの登録作業自体が新たな手間になる面もある。スタッフが忙しい時間帯に商品情報を入力する余裕がない場合、結局レスキュー対象として登録されずに廃棄されてしまうケースもある。POSシステムと連携して自動的に値下げ・レスキュー対象を登録できる仕組みが整えば、こうした運用面のハードルはさらに下がると期待されている。
フードシェアリングアプリの普及は、消費者側の「もったいない」という意識を可視化し、行動に変える手段としても注目されている。値下げ商品を探して購入するという行為自体が、食品ロス問題への関心を日常的に持続させるきっかけになる。単発のキャンペーンでは意識が長続きしにくいが、アプリを日常的に使う習慣が根付けば、食品ロスへの関心そのものが社会に定着していくことが期待される。

消費者としてできること
- フードレスキューアプリで近隣店舗の値下げ商品を確認する
- 賞味期限が近い手前の商品から選ぶ「てまえどり」を意識する
- 季節商品は可能であれば予約で購入する
コンビニの水産惣菜ロスと海のつながり
コンビニの弁当やおにぎりには鮭・ツナ・海老など水産物を使った商品が多く含まれる。ツナマヨおにぎりや鮭弁当、海老天サンドといった定番商品は年間を通じて安定した売上があるが、売れ残れば当然廃棄の対象になる。これらが廃棄される際、原材料として使われた水産資源も同時に無駄になっている点は見過ごされがちだ。
水産物は漁獲・加工・輸送のいずれの段階でも環境負荷を伴う。冷凍・解凍を繰り返す加工工程にはエネルギーが必要で、輸送には冷蔵・冷凍のためのコールドチェーンが不可欠だ。コンビニの店頭で1個のおにぎりが廃棄されるということは、その背後にある漁業・加工・輸送のすべての工程で使われた資源とエネルギーが無駄になっていることを意味する。
エコフィードが天然魚への依存を下げる
廃棄された食品の一部は「エコフィード」と呼ばれる飼料に再利用され、畜産や養殖の現場で活用されている。食品工場やスーパーから持ち込まれた食品残さに乳酸菌を添加して発酵させる液体発酵飼料など、配合飼料よりコストを抑えられる生産方式も広がっている。養殖業では魚粉(天然の小魚を原料とする飼料)の使用比率を下げる研究が進み、マダイでは魚粉配合率を40〜50%から30%程度まで下げても遜色ない成長結果が得られた実証例もある。食品残さの飼料化が広がれば、天然の小型魚を大量に漁獲して魚粉にする圧力を下げることにもつながる。
魚粉の原料になるカタクチイワシなどの小型魚は、養殖魚だけでなく海鳥や大型の捕食魚のエサとしても重要な位置を占める生態系の基盤だ。魚粉需要が拡大し続けると、これらの小型魚の漁獲圧が高まり、海洋生態系全体のバランスに影響を及ぼす懸念がある。コンビニの食品ロス削減とエコフィードの活用拡大は、直接的ではないものの、こうした海洋生態系への負荷を和らげる一つの経路になり得る。
世界的に養殖業は拡大を続けており、天然漁獲だけでは増え続ける水産物需要を満たせなくなっている。養殖の拡大には飼料の確保が不可欠だが、魚粉の生産量には天然資源の制約があるため、価格が上昇しやすい構造にある。エコフィードのように食品残さを飼料原料として活用できれば、魚粉の供給不足を緩和しつつ、廃棄物の資源化という副次的な効果も得られる。コンビニの廃棄食品がこうした飼料原料の一部として活用される仕組みが広がれば、廃棄物処理と養殖業の課題を同時に解決する可能性がある。

焼却によるCO2排出と気候変動
廃棄食品の多くは事業系一般廃棄物として収集・焼却され、その過程でCO2が発生する。さらに廃棄食品の8割以上を占める水分を燃やすためには余分な燃料が必要になり、焼却効率も下がる。食品ロス由来の温室効果ガス排出は気候変動を通じて海水温上昇や海洋酸性化にも影響する要因の一つであり、コンビニの廃棄削減は海洋環境の保全とも無関係ではない。
世界的にも食料システム全体からの温室効果ガス排出は、化石燃料に次ぐ規模とされることが多く、食品ロスの削減は気候変動対策の中でも比較的取り組みやすい分野として位置づけられている。コンビニのように毎日膨大な量の食品を扱う業態が廃棄を減らせば、その効果は個々の店舗の努力を超えて、サプライチェーン全体・社会全体のCO2排出削減につながっていく。
海水温の上昇は魚の分布域の変化を招き、これまで獲れていた海域で漁獲量が減る一方、これまで獲れなかった海域で新たに漁獲される魚種が増えるといった変化がすでに各地で報告されている。海洋酸性化は貝類やサンゴなど炭酸カルシウムの骨格・殻を持つ生物の成長を阻害する可能性が指摘され、長期的には漁業資源全体にも影響を及ぼしうる。コンビニの食品ロス削減は、こうした海洋環境の変化に対する直接的な解決策ではないが、気候変動という大きな課題に対して消費者や事業者が日常の中で関与できる数少ない接点のひとつだ。
この章のまとめ
- コンビニの水産惣菜の廃棄は原材料となった水産資源の無駄にもつながる
- 食品ロスのエコフィード化は天然魚への依存低減に寄与しうる
- 廃棄食品の焼却によるCO2排出は気候変動を通じて海にも影響する
水産加工残さの再利用との共通点
水産業界では、魚を加工する際に出る「アラ」(頭・骨・内臓など)を有効利用する技術が進んでいる。年間232万トンにも及ぶとされる水産加工残さのうち、コラーゲンや魚醤、飼料・肥料への加工など多様な用途で資源化する取り組みが広がっており、かつては廃棄されるだけだった部位に新たな価値が生まれている。コンビニの惣菜廃棄をエコフィードとして再利用する動きは、この水産加工残さの資源化と発想の根が同じだ。「一度は使い道がないと判断されたものを、別の用途で活かす」というアップサイクルの考え方が、食品ロス対策全体に共通する重要な視点になっている。
ただし、コンビニの廃棄食品は複数の食材が調理・加工された状態のものが多く、単一素材の水産加工残さに比べて分別や再利用のハードルが高い場合がある。ご飯・海苔・具材が一体になったおにぎりや、複数の食材を使った弁当は、飼料化の前に分別処理が必要になることもあり、再利用のコストと手間をどう抑えるかが実務上の課題として残っている。
包装容器を自動で分離する設備や、異物混入を検知するセンサー技術の進歩によって、こうした分別コストは徐々に下がりつつある。今後、コンビニの廃棄食品をエコフィードや堆肥として再利用する取り組みが本格的に広がるかどうかは、こうした分別・処理技術のコスト低下と、店舗・工場側の受け入れ体制の整備が鍵を握っている。
他業態の取り組みと比較する
食品ロス対策はコンビニだけの課題ではない。スーパーではAI発注や「てまえどり」の啓発が進み、水産業界では未利用魚の活用や魚のアラのアップサイクルが広がっている。関連する取り組みは以下の記事でも紹介している。
コンビニ・スーパー・家庭それぞれの対策が積み重なることで、食品ロス全体の削減につながっていく。特にスーパーとコンビニは同じ小売業として発注ノウハウを共有しやすく、AI発注システムの開発企業が複数の業態に技術を提供している例も少なくない。業態を超えた知見の共有は、食品ロス対策全体のスピードを上げる要因になっている。
水産業界側の取り組みとの接点
水産業界では、規格外や未利用魚を給食や加工品、ふるさと納税の返礼品として活用する取り組みが広がっている。こうした「もったいない魚」を商品化する流れと、コンビニが水産惣菜の廃棄を減らす流れは、どちらも「本来食べられるのに市場に出にくい水産資源を無駄にしない」という共通の目的を持つ。コンビニの水産惣菜がAI発注や予約制で無駄なく販売されるようになれば、その分だけ上流の漁業・加工の現場でも計画的な生産がしやすくなる可能性がある。
コンビニのおにぎりや惣菜に使われる水産物の多くは、コンビニ本部と契約した加工工場を経由して仕入れられる。工場側は店舗からの発注予測に基づいて原材料の漁獲・調達量を決めているため、コンビニ側の発注精度が上がれば、水産物の調達計画も無駄なく立てやすくなる。逆に発注量の急な変動が続けば、加工工場は欠品を避けるために余裕を持った原材料調達をせざるを得ず、結果的に上流でも過剰な仕入れや廃棄が発生しやすくなる。コンビニの需要予測の精度向上は、店頭の廃棄だけでなく、サプライチェーン全体の資源利用の効率化にもつながる取り組みだといえる。
今後の課題と展望
AI発注や予約制の効果は数値として見えてきたが、日本全体の事業系食品ロスを大きく減らすにはまだ道半ばだ。政府は2030年度までに食品ロスを2000年度比で半減させる目標を掲げており、コンビニ業界にはさらなる取り組みの深化が求められている。
食品ロス削減推進法が施行されてから数年が経ち、企業側の対策は着実に進んできた一方で、消費者側の意識改革も同時に必要とされている。「てまえどり」の呼びかけや、賞味期限と消費期限の違いの周知など、地道な啓発活動の積み重ねが、AI発注や予約制といったシステム側の対策と組み合わさることで、初めて廃棄削減の効果が最大化される。企業の努力だけに委ねるのではなく、消費者一人ひとりの購買行動が変わることも、コンビニの食品ロス削減を後押しする重要な要素だ。
また、AI発注の精度向上には、店舗側が販売データを正確に記録し続けることが前提になる。値下げ販売や廃棄の記録が不十分だと、AIが学習するデータそのものの質が下がり、予測精度も伸び悩む。今後は店舗のPOSデータだけでなく、フードシェアリングアプリの利用状況や気象データ、SNS上の話題性など、より多様なデータをAIに取り込むことで、季節商品を含めた需要予測の精度がさらに高まっていくと見込まれている。
今後の方向性
- AI発注の対象品目・店舗をさらに拡大する
- 季節商品の予約比率を高めるインセンティブ設計
- フードシェアリングアプリの提携店舗拡大
- 水産惣菜を含む食品残さのエコフィード化の推進
これらの取り組みを実効性のあるものにするためには、企業ごとに異なる廃棄削減の指標や集計方法を統一し、業界全体・社会全体で進捗を比較・検証できる仕組みも求められる。個々の企業が独自の数値を発表するだけでは、コンビニ業界全体としてどれだけ食品ロスが減っているのかを外部から評価しづらい。国や業界団体が主導して共通の測定基準を整備することも、今後の課題のひとつになるだろう。
注意したい視点
- 予約制は消費者の行動変化が前提のため、周知や利便性向上が欠かせない
- 廃棄削減の数値は企業ごとの集計方法が異なる場合があり、単純比較には注意が必要
フランチャイズ加盟店との関係
コンビニ業界の食品ロス対策を考える際には、フランチャイズ契約の仕組みも避けて通れない論点だ。多くのコンビニチェーンでは加盟店が廃棄コストの一部または全部を負担する契約形態が取られており、本部が主導するAI発注や予約制の効果が加盟店の収益に直結する。廃棄削減の技術やノウハウを本部がどこまで加盟店に共有し、負担のバランスをどう設計するかは、単純な技術導入だけでは解決しない経営上の課題として残っている。
一部の企業では、廃棄が発生した際の本部負担分を増やす、あるいは見切り販売を行った場合のペナルティをなくすといった契約見直しも進められてきた。加盟店が廃棄削減の努力をしやすい環境を整えることは、AI発注や予約制の効果を最大限に引き出すためにも欠かせない基盤になる。
加盟店の店主にとって、AI発注はこれまで自分の経験と勘に頼っていた発注業務を機械に委ねることへの心理的なハードルもある。実際には最終的な発注量を確定する権限は店舗側に残されており、AIの推奨数はあくまで参考値として提示される運用が一般的だ。長年の経験を持つ店主ほど、AIの提示する数値と自分の判断を比較しながら徐々に信頼を築いていく過程が必要になる。