⚡ 30秒でわかる答え
- Karün(カルン)はチリ発のアイウェアブランドで、2015年に漁網100%再生のOcean Collectionを発表した。
- 素材は海岸で回収された漁網のほか、再生金属などで、パタゴニアの200人超の回収者が支えているとされる。
- 再生素材は「何を・誰が・どこで」を追えるかが信頼の分かれ目になる。
海辺に打ち上げられた古い漁網が、サングラスのフレームに生まれ変わる。チリ・パタゴニア発のアイウェアブランドKarün(カルン)は、この発想を製品として形にしたブランドです。
漁網は丈夫な合成繊維でできており、海に流出すると生き物に絡まったり、長く漂い続けたりします。こうした廃棄された漁具は「ゴーストギア」と呼ばれ、世界の海洋環境問題の一つです。
この記事では、Karünが公表している情報をもとに、素材、回収の仕組み、生産の流れを整理します。あわせて、再生素材の製品を選ぶ側が確認したいポイントも考えます。なお、数値の多くはブランド側の説明であり、第三者による検証とは区別して読んでください。
この記事で学べること
- Karünが廃棄漁網をサングラスにするまでの流れ
- なぜ漁網が海のごみ問題で特に重いのか
- 回収者・再生工場・生産国をつなぐ「トレーサビリティ」の考え方
- 再生素材の製品を選ぶときに確認したいポイント
- 個人にできる、漁具ごみを減らす行動
Karünとは:パタゴニア発のアイウェアブランド
名前に込められた意味
Karün(カルン)という名前は、チリ南部の先住民マプチェの言語(マプドゥングン)で「私たちは自然」を意味するとされています。ブランドは自らを、廃棄物を素材にして高品質なアイウェアをつくる会社として位置づけています。
デザインはチリの首都サンティアゴで行われ、フレームの生産はイタリアの工場で行われると紹介されています。つまり「素材はチリの海岸、製造は欧州の専門工場」という、国をまたぐ分業モデルです。
Ocean Collectionの誕生
ブランドの転機は2015年です。クラウドファンディングのKickstarterで、チリ沿岸で回収した漁網を100%再生した世界初のサングラスとして「Ocean Collection」を発表しました。ブランドの公式ブログによると、キャンペーンの支援総額は18万ドル、支援者は20か国から約1,300人、30日間で約1,800本が売れたとされています。
この数字は、「海のごみを素材にした製品」に消費者の関心があることを示す一例です。一方で、これはブランド側が公表した数値であり、販売後の実績や環境への効果を示すものではない点には注意が必要です。
Karünの基本情報(公表内容)
- 発祥:チリ(パタゴニアの地域コミュニティと連携)
- デザイン:サンティアゴ
- 生産:イタリアの工場
- 代表的コレクション:Ocean Collection(2015年〜)
- 名前の意味:マプドゥングンで「私たちは自然」

なぜ「漁網」が海のごみ問題で重いのか
ゴーストギアという問題
漁具は本来、魚を捕らえるための道具です。そのため、網は絡まりやすく、切れにくく、水中で長持ちするように作られています。この性質が、海に流出した後には問題になります。
捨てられたり失われたりした漁具は「ゴーストギア」と呼ばれ、人が操作しなくても魚や海鳥、海ガメ、海生哺乳類を絡め取り続けることがあります。世界的には、ゴーストギアに取り組む国際的な枠組みも作られています。
詳しくは、当サイトのゴーストギア漁業の記事で解説しています。
漁網が海洋プラスチックに占める割合
Karünは、漁網が海洋汚染の約10%を占めると説明しています。ただし、この種の割合は、何を母数にするか(重量か、個数か、海面か海底か)で大きく変わります。数字は目安として受け止め、一次資料で定義を確認するのが望ましいでしょう。
| 観点 | 漁網の特徴 | 海での影響 |
|---|---|---|
| 素材 | ナイロンなどの合成繊維 | 分解しにくく、長期間残る |
| 形状 | 網目で絡まりやすい | 生き物が絡まる・混獲が続く |
| サイズ | 大きく重い | 海底や岩礁を傷つけることがある |
| 劣化 | 紫外線で細かくなる | マイクロプラスチックの発生源になりうる |
ポイント
漁網は「丈夫で長持ち」だからこそ、海に出ると問題が長引きます。素材として回収・再生する意義は、この性質を逆手に取る点にあります。
素材と回収の仕組み
使われる素材
Ocean Collectionでは、チリ沿岸で回収された漁網を100%再生したものが使われると説明されています。それ以外のコレクションでは、ロープやナイロン、再生金属、再生ナイロンのECONYLなどが使われるとされています。コレクションごとに素材が違うため、購入時は商品ページの素材表記を確認することが大切です。
- 廃棄漁網(ナイロンなど)
- ロープ・ナイロン類
- 再生金属(金属フレーム用)
- 再生ナイロンのECONYL(コラボレーション商品)
- レンズ:ポリカーボネート(リサイクル可能と紹介)
回収者のネットワーク
Karünは、パタゴニアの200人を超える地域住民を「Karün Collectors(回収者)」としてネットワーク化しているとされています。回収者は、自宅近くの海岸や自然地域でごみを集め、ブランドに直接販売することで副収入を得ます。
この仕組みには、環境の清掃と地域の収入づくりを同時に進めるねらいがあります。ブランドはこの考え方を「Karün Conscious Development Model」と呼んでいます。
再生までのおおまかな流れ
- 回収者が海岸などで廃棄物を収集
- 再生パートナーが選別・洗浄
- 漁網やナイロンを粉砕してペレット(粒状)に加工
- イタリアの工場でフレームを成形・組み立て

生産から手元に届くまで
再生プラスチックができるまで
回収した漁網は、塩や砂、海藻、金属片などを多く含みます。そのため選別と洗浄が重要な工程になります。きれいにした網を細かく砕き、溶かしてペレットにすることで、射出成形など通常のプラスチック加工に使える原料になります。
漁網を原料にしたプラスチック製品は、スケートボードやアパレル、バッグなど、アイウェア以外にも広がっています。ブランド公式ブログによると、Ocean CollectionにはBureoという、同じく漁網の再生に取り組むB Corp認証企業との協働も紹介されています。
日本でも漁網の再生が進んでおり、当サイトの再生漁網を使った製品の記事で国内の動向を紹介しています。
生産国と距離の問題
素材はチリで集め、生産はイタリアで行うと、輸送に伴う温室効果ガスが気になる方もいるでしょう。ブランドは事業の排出をオフセット(相殺)してカーボンニュートラルとしていると紹介されていますが、具体的な算定方法や対象範囲は、購入前に公式の情報で確認すると安心です。
読むときの注意
「再生素材」「カーボンニュートラル」といった表現は、範囲や算定方法によって意味が変わります。ブランドの説明と第三者認証を分けて読みましょう。

トレーサビリティを考える
「どこから来たか」を追えるか
再生素材の製品では、素材がどこで・誰によって集められ・どの工場で加工されたかを追える状態を「トレーサビリティ」と呼びます。Karünが回収者との直接取引を強調する背景には、この追跡可能性を信頼の土台にしたい考えがあると読めます。
追跡に使える情報
- 回収地域(国・地域名、海岸など)
- 回収の担い手(個人・団体・企業)
- 再生工程(洗浄・粉砕・ペレット化の事業者)
- 生産地(フレームを成形した工場)
- 第三者認証や監査の有無
これらがどこまで公開されているかは、ブランドや商品によって異なります。公開されている範囲と、公開されていない範囲を分けて理解することが重要です。
| 確認項目 | 見るポイント | 公式情報の探し方 |
|---|---|---|
| 素材の割合 | 100%再生か、一部か | 商品ページの素材表記 |
| 回収の仕組み | 誰が・どこで集めるか | サステナビリティページ |
| 生産地 | どの国で製造するか | ブランド紹介・会社情報 |
| 第三者認証 | 認証や監査があるか | 認証機関の公開リスト |
選ぶときに確認したいこと
グリーンウォッシュを避ける
環境配慮をうたう製品の中には、根拠の薄い表現で印象だけを良くしているものもあります。こうした行為はグリーンウォッシュと呼ばれます。海の再生素材製品でも、「海洋プラスチック」と書いてあるだけでは、海で回収されたのか、海へ流出する前の陸上で回収されたのか判断できないことがあります。
購入前のチェックリスト
- 再生素材の割合が具体的な数字で書かれているか
- 回収場所と回収の担い手が説明されているか
- コレクションごとの素材の違いが明示されているか
- 認証・監査など第三者の確認があるか
- 修理や長く使える設計になっているか
買う前に考えたいこと
再生素材だから環境に良い、とは限りません。もっとも環境負荷が小さいのは、すでに持っているものを長く使うことです。必要かどうかを考えたうえで、買うなら長く使えるものを選ぶという順序が基本になります。
漁網の再生製品については、パタゴニアのNetPlus製品の記事も参考になります。

この事例から見える循環の課題
再生品だけでは追いつかない
アイウェアは1人が使う量の素材が小さいため、1本あたりに使える漁網の量も限られます。製品として売れる数と、海に流出する漁具の量には大きな差があり、再生だけで問題が解決することはありません。
大切なのは、再生製品を「問題を知るきっかけ」にすることです。漁具の流出を防ぐ仕組み、回収を支援する制度、漁業者の取り組みと合わせて考える必要があります。
日本の漁具の課題
日本でも、漁具の適正処理と回収が課題になっています。当サイトの漁具の拡大生産者責任の記事では、制度面からの見方を紹介しています。
まとめ
- Karünは2015年に漁網100%再生のOcean Collectionで注目を集めた
- パタゴニアの200人超の回収者と連携する仕組みを持つとされる
- 再生素材の評価では、数値より「追跡できる情報」が重要
- 最も環境負荷の小さい選択は、今あるものを長く使うこと

私たちにできること
日常でできる行動
- 海岸清掃に参加する(漁具の漂着を見つけたら自治体や管理者へ連絡)
- 再生素材の製品を選ぶ際に、素材表記と説明を確認する
- 釣り糸・仕掛けを現地に残さず持ち帰る
- 使わなくなった製品は修理・譲渡・回収を検討する
情報を読み解く習慣
ブランドの説明は、取り組みを理解する大切な入口です。そのうえで、数値の出どころ、第三者による確認の有無、そしてどこまでが「事実」でどこからが「ブランドの主張」かを分けて読む習慣が、これからますます重要になります。
参考文献・出典
- Karün(公式)— The first sunglasses made with 100% recycled fishing nets – Ocean Collectionの発表と支援実績
- Field Mag — Karün Recycled Eyewear Supports Patagonia – 素材と回収者ネットワークの紹介
- WWD — Karün Offers Sustainable Eyewear – ブランド紹介記事
- Contxto — Chilean startup Karun raises US$2.82 million – 資金調達に関する報道
- Global Ghost Gear Initiative – ゴーストギア対策の国際的な枠組み
- 水産庁 – 漁業・漁具に関する政策
- 環境省 – 海洋ごみ・プラスチック資源循環政策
※ 信頼性の高い順に配列:政府機関・学術機関 > 査読済み論文 > 専門機関 > 信頼できるメディア