約800万t
毎年海に流れ込む世界のプラスチックごみ(推計・中間値)
46%
太平洋ごみベルトの海洋プラに占める漁網の割合
100%
REMAREの板材が使うリサイクル素材の割合

海に浮かぶプラスチックごみを見て、多くの人は「汚い」「悲しい」と感じます。ところが、それを一目見て「最高の素材だ」と思った人がいました。三重県鳥羽市で生まれた株式会社REMARE(リマーレ)の創業者・間瀬雅介さんです。REMAREは、海洋プラスチックや使い終わった漁具など、これまで燃やすか埋めるしかなかった海のごみを、石のような質感と唯一無二のマーブル模様を持つ板材へと蘇らせる素材メーカーです。

世界では毎年およそ800万トンものプラスチックが海へ流れ込み、このままでは2050年に海のプラスチックの重さが魚の重さを超えるとも予測されています。一方で、そのごみを「資源」として捉え直し、家具やインテリア、空間デザインの素材に変えていく動きが少しずつ広がっています。REMAREは、その最前線に立つ日本発のスタートアップのひとつです。

この記事では、REMAREがどんな会社で、海のごみをどうやって美しい素材に変えているのか、その製品や仕組み、そして私たちがどう関われるのかを、環境省やWWFなど信頼できる情報源のデータと合わせて、やさしく丁寧に紹介していきます。

この記事で学べること

  • 海洋プラスチックごみが世界と日本でどれほど深刻かを、環境省やWWFの数値で理解できる
  • 株式会社REMARE(リマーレ)がどんな会社で、なぜ三重県鳥羽市から生まれたのかがわかる
  • 海のごみが石のような質感の板材に生まれ変わる、アップサイクルの製造プロセスを知れる
  • 廃棄漁具を再生した素材『GYOG』とゴーストギア問題のつながりを理解できる
  • 産業廃棄物費用の削減やCO2排出の抑制など、循環型ビジネスの仕組みを学べる
  • REMAREの製品をどこで見て、どう暮らしに取り入れられるかがイメージできる

REMARE(リマーレ)とは?海のごみを『資源』に変える三重発の素材メーカー

株式会社REMARE(リマーレ)は、2021年に設立された、廃棄プラスチックを循環型の資源へと再生するアップサイクル企業です。もともとは三重県鳥羽市に工場を構え、海洋プラスチックや工場から出る廃プラを原料に、デザイン性の高い板材を製造してきました。現在は本社機能を愛知県名古屋市へ移し、鳥羽の旧工場を閉じて三重県伊勢市の「三重工場」に集約・拡張して稼働させています(鳥羽には支店を設置)。

社名の由来がこの会社の思想をよく表しています。「RE」はリサイクル(Recycle)、「MARE」はイタリア語で「海」を意味します。つまりREMAREとは、「海を、もう一度」という願いを込めた造語なのです。海のごみを厄介者として処分するのではなく、もう一度価値ある素材として社会に戻していく。その姿勢が、名前そのものに刻まれています。

三重県鳥羽の海と、海辺に集められた回収プラスチックごみ
牡蠣養殖で知られる三重県鳥羽。REMAREはこの海辺の町から生まれた。

きっかけは、フィリピン海に浮かぶ大量のごみ

REMAREを創業した間瀬雅介(ませ・ただすけ)さんは、1993年生まれ、愛知県の出身です。もともとは船の航海士・機関士として、日本海沿岸から南極海までを航行していました。転機は、フィリピン海沖を航海していたときのこと。海面いっぱいに浮かぶプラスチックごみを目にして、多くの人が抱く「なんとかしなければ」という感覚とは別に、間瀬さんは「これは最高の素材になるのではないか」と直感したといいます。

船上の自由時間に樹脂を溶かして遊んでいた経験も、この発想を後押ししました。「世界的な課題である海洋プラスチック問題は、自分の遊びとかけ合わせれば解決できるかもしれない」。そんな一見突飛な思いつきが、REMAREという事業の出発点になりました。深刻な社会課題を、悲壮感ではなく好奇心と創造性から解こうとするところに、この会社らしさがあります。

『燃やす・埋める』に次ぐ、第三の選択肢を

日本で回収されたプラスチックの多くは、これまで焼却(燃やす)か埋め立て(埋める)で処理されてきました。とくに複数の素材が混ざった「複合プラスチック」や、海水や砂で汚れた海洋ごみは、きれいに分別してリサイクルするのが難しく、資源化されずに処分されがちでした。

REMAREが目指すのは、この焼却・埋め立てに次ぐ「第三の選択肢」です。混ざったままの廃プラを、あえて選別しすぎずに素材として活かす独自の方法で、板材や製品へと生まれ変わらせる。処分にかかっていた費用をなくし、焼却で出るはずだった二酸化炭素も抑えられる。ごみ処理を「コスト」から「価値づくり」へと反転させる発想が、REMAREの核にあります。

REMAREは、単なるリサイクル工場ではありません。機械やプラントの開発、建築デザイン、プロダクトの製造まで、幅広く手がけるクリエイター集団という側面を持っています。素材のリサーチから、実験・研究を経てマテリアルの開発にいたるまでを自分たちで担い、パートナーとなる企業やブランド、行政とともに、新しい『資源』の可能性を追い求める。技術とデザインの両方を持つからこそ、ごみを『捨てるもの』から『使いたくなるもの』へと引き上げられるのです。

REMAREを一言で言うと

  • 海洋プラや廃漁具など『混ざったごみ』を、選別しすぎずに素材化する会社
  • 石のような質感とマーブル模様を持つ、100%リサイクルの板材をつくる
  • 処分費用とCO2を減らし、ごみを『資源』へ反転させることを目指す
  • 技術とデザインを併せ持つクリエイター集団でもある

なぜ海洋プラスチックごみは、これほど深刻な問題なのか

REMAREの挑戦を理解するには、まず「海のプラスチックごみ」がどれほど大きな問題なのかを知っておく必要があります。数字で見ると、その深刻さがはっきりと浮かび上がってきます。

毎年およそ800万トンが海へ

世界では、陸から海へ流れ込むプラスチックごみが、2010年時点の推計で年間およそ480万〜1270万トン、その中間値でおよそ800万トンにのぼるとされています。これは、ジャンボジェット機で数万機分に相当する重さです。しかもプラスチックは自然界でほとんど分解されず、細かく砕けて「マイクロプラスチック」となり、海の生きものの体内や、めぐりめぐって私たちの食卓にまで入り込みます。

エレン・マッカーサー財団と世界経済フォーラムの報告書(2016年)では、このままのペースで生産と廃棄が続けば、2050年には海に存在するプラスチックの重さが、魚の重さを上回るとも予測されています。海の環境変化は水温上昇とも重なり合っており、こうした複合的な負荷は海水温の上昇と漁業への影響とも無関係ではありません。

海面に大量に漂う色とりどりのプラスチックごみ
外洋には、ごみが集まって帯状になる『ごみベルト』も形成されている。

日本から流れ出るごみも、決して他人事ではない

「海洋プラスチックは外国のごみが多いのでは」と思われがちですが、日本も無関係ではありません。環境省の令和6年度(2024年度)の検討結果によれば、日本国内から海へ流出するプラスチックごみは、発生源・品目別に積み上げた推計で年間およそ1万3000〜3万1000トンと見積もられています。数値には幅がありますが、私たちの暮らしから出るごみも、確かに海へ流れ込んでいるのです。

海に流れ出たごみは、生態系にも影響します。プラスチックを餌と間違えて食べる海鳥や魚、漁網に絡まって命を落とすウミガメや海獣。こうした被害は、日本の海の生物多様性そのものを少しずつ削り取っていきます。

観点おおよその規模出典の目安
世界で毎年海へ流出するプラごみ約800万トン(中間値・2010年推計)国際的な研究・WWF等
2050年の海の姿(予測)プラの重さが魚の重さを超える可能性エレン・マッカーサー財団・世界経済フォーラム(2016年報告書)
日本から海へ流出するプラごみ年間 約1.3万〜3.1万トン環境省(令和6年度検討結果)
海洋プラスチックごみに関する主な数値(幅のある推計値を含む)。

なぜプラスチックは『分解されない』のか

プラスチックが海で厄介なのは、その丈夫さゆえです。自然界の微生物は、プラスチックをうまく分解できません。そのため海に出たプラスチックは、腐って土に還ることなく、波や紫外線によって細かく砕けていくだけです。5ミリ以下になったものをマイクロプラスチックと呼び、これはもはや回収がほとんど不可能になります。だからこそ、海に流れ出す前に、あるいは流れ出したものを早い段階で回収し、素材として循環に戻すことが決定的に重要なのです。

しかも、いったんごみとして焼却されれば、そこからは二酸化炭素が排出されます。ごみを減らすことは、海を守るだけでなく、気候変動対策にも直結しています。海の環境と気候は切り離せない関係にあり、水温上昇による漁業への影響や、海の炭素吸収力の低下といった問題とも深くつながっています。REMAREの取り組みは、この二つの課題に同時に効く点でも意義があります。

ポイント

数字には必ず幅があり、確定値ではありません。それでも「規模の大きさ」と「日本も当事者である」という事実は、どの推計からも共通して読み取れます。海に出たプラスチックは回収が難しくなるため、『流れ出す前・早い段階での資源化』が鍵になります。

海のごみが板材になるまで:REMAREの製造プロセス

では、実際に海のごみはどうやって美しい素材に生まれ変わるのでしょうか。REMAREのものづくりの最大の特徴は、「混ざったまま活かす」という発想にあります。

選別しすぎない、という逆転の発想

一般的なプラスチックリサイクルでは、素材の種類ごとにきれいに選り分けることが重要とされます。種類が混ざると品質が安定せず、再生しにくいからです。しかしREMAREは逆に、ペットボトルのキャップ、青いブイ、ブルーシート、漁網など、さまざまな種類・色のプラスチックをあえて選別しすぎずに混ぜて成形します。

その結果生まれるのが、二つとして同じものがないマーブル模様です。人の手ではデザインできない偶然の色の重なりが、そのまま素材の個性になります。「均一で完璧」を目指す工業製品とは真逆の、ごみだからこそ生まれる美しさ。ここにREMAREの独自性があります。

青と白のマーブル模様が美しい再生プラスチックの板材のクローズアップ
二つとして同じ模様がない、REMARE素材ならではのマーブル。

粉砕・洗浄・溶融・プレス——一貫した工程

製造の基本的な流れはシンプルです。回収したプラスチックを洗浄し、細かく粉砕し、一度溶かしてからプレスして平らな板材に成形します。素材ごとに溶ける温度や速さが違うため、粉砕する大きさや板材の厚みを細かく調整するノウハウが品質を左右します。回収から洗浄・粉砕・成形・加工までを自社内で一貫して行える点も、REMAREの強みです。

対応できるのは、PVC(塩化ビニル)を除く「熱可塑性樹脂」と呼ばれる、熱を加えると柔らかくなるタイプのプラスチック。この範囲であれば、多種多様な廃プラを独自の素材へと変えられます。海洋ごみのように汚れて劣化した素材でも、長い年月を経たからこその独特の風合いとして活かしてしまうのが、この会社の面白いところです。

  1. 回収:海洋プラや工場の廃プラ、廃棄漁具などを集める
  2. 洗浄:海水・砂・汚れを落とす
  3. 粉砕:素材に合わせた大きさに細かく砕く
  4. 溶融・成形:熱で溶かし、プレスして板材にする
  5. 加工:切削や研磨で、家具・内装・製品へ仕上げる

石のように見えて、木のように加工できる

できあがった板材は、見た目は大理石のような重厚感がありながら、実際はプラスチックなので軽く、木材のように切ったり削ったりできるのが特長です。この「石のような質感」と「木のような加工性」の両立が、家具やインテリア、店舗の内装など幅広い用途を可能にしています。素材そのものが100%リサイクル由来である点も、環境価値として大きな意味を持ちます。

海洋ごみを素材にするうえで、最大の敵は「汚れ」と「劣化」です。海水の塩分や砂、長い年月による色あせは、ふつうのリサイクルでは品質を落とす原因になります。REMAREは、この汚れや劣化さえも『味』として受け入れ、洗浄と成形の工夫でむしろ表情の豊かさに変えてしまいます。均一な新品素材にはない、時間と海の記憶を刻んだ質感。それは、バージン素材(新品の原料)では決して真似のできない価値です。

この工程のキモ

  • 混ぜることを『欠点』ではなく『個性』に変える発想
  • 回収から加工まで自社一貫で品質と表情をコントロール
  • 汚れ・劣化さえ『味』に変える洗浄と成形の工夫
  • 石の質感 × 木の加工性 × 100%リサイクルの三拍子

廃棄漁具から生まれる素材『GYOG』とゴーストギア問題

REMAREの取り組みの中でも、とりわけ海と深く結びついているのが、使い終わった漁具を再生した素材「GYOG(ギョグ)」です。これは「漁具(ぎょぐ)」から名付けられた、REMAREを象徴するマテリアルのひとつです。海の現場から出る素材だからこそ、GYOGにはREMAREの原点である『海を、もう一度』という思想がもっとも色濃く表れています。

漁具は、漁業という営みに欠かせない道具です。しかし丈夫で長持ちするがゆえに、いざ役目を終えると処分に困る『重い荷物』にもなります。海に流れ出せば生きものを傷つけ、陸で処理すれば費用がかかる。使う人にとっても、捨てる人にとっても悩ましい存在でした。GYOGは、その悩みの塊を、新しい価値を持つ素材へと解きほぐす試みなのです。

ゴーストギアとは何か

海に流出したり放置されたりした漁網・ロープ・釣り糸などの漁具を、「ゴーストギア(幽霊漁具)」と呼びます。持ち主を離れても海の中で魚やウミガメを絡め取り続けることから、「幽霊漁業(ゴーストフィッシング)」とも言われ、生きものに深刻な被害を与えます。WWFなどによれば、ゴーストギアは海洋プラスチックごみの少なくとも1割を占め、世界では年間およそ50万〜115万トンもの漁具が海に流出していると推定されています。

とくに外洋にごみが集まってできる「太平洋ごみベルト」では、漂うプラスチックのおよそ46%が漁網だったという調査結果もあります。漁具は丈夫でかさばり、素材も複合的なため、リサイクルが難しい代表格でした。海の生きものへの影響という点では、生物多様性を守るうえでも見過ごせない問題です。

海中に放置され、生きものを絡め取る漁網(ゴーストギア)のイメージ
持ち主を離れても魚を捕らえ続ける『ゴーストギア』。世界的な課題だ。

『価値の低いごみ』を『価値ある素材』へ

REMAREは、この扱いにくい廃棄漁具を単なるごみとしてではなく、素材として捉え直します。長い年月を海で過ごした漁具は、人工的には作り出せない独特の色合いや風合いを帯びており、それがGYOGの表情の豊かさにつながっています。回収・洗浄・粉砕・成形・加工までを自社で一貫して行うことで、扱いの難しい漁具を建材や内装材、家具などへと生まれ変わらせています。

2025年には漁具専用の処理機械を導入し、漁具のアップサイクルを本格化させました。三陸をはじめ各地の漁業地域が抱える廃棄物の課題とも通じるテーマであり、三陸の水産業の再生のような地域の取り組みとも響き合う動きです。

漁師と組む——フィッシャーマン・ジャパンとの提携

2024年10月、REMAREは若手漁師の集団「フィッシャーマン・ジャパン」と業務提携を結びました。海の現場で漁具を使い、そして廃棄する当事者である漁師たちと直接組むことで、質の良い廃漁具を安定して集め、持続可能な漁業と環境保護の両立を目指す取り組みです。ごみを出す側と、素材に変える側が手を組む。この座組みそのものが、循環型社会のひとつのかたちを示しています。

漁具のリサイクルがこれまで進まなかったのには、理由があります。漁網はナイロンやポリエチレンなど複数の素材が組み合わさっていることが多く、丈夫でかさばり、選別も難しい。処理コストに見合う出口(使い道)がなかったのです。REMAREの『選別しすぎずに素材化する』技術は、まさにこの弱点を強みに変えるものでした。扱いにくさの代名詞だった漁具が、デザイン性の高い建材や家具の原料になる——それは漁業地域にとって、ごみ処理の悩みが希望に変わる出来事です。

数字で見るゴーストギア

  • 海洋プラごみの少なくとも約10%が漁具由来
  • 太平洋ごみベルトでは漂うプラの約46%が漁網
  • 世界で年間およそ50万〜115万トンの漁具が海へ流出(推計)
  • 漁業由来のプラは海洋プラごみ全体の約9.4%、年間約115万トンにのぼるとの試算も

牡蠣の町・鳥羽が育てた、地域資源循環という発想

REMAREが最初の拠点に選んだ三重県鳥羽市は、牡蠣の養殖で知られる海の町です。この「牡蠣の町」で事業を始めたことは、REMAREの思想に地域資源循環という深い視点を与えました。

素材が生まれる場所の近くで作る

間瀬さんが鳥羽を選んだ理由のひとつは、とても実際的なものでした。ごみを遠くまで運べば、その分の輸送コストとCO2がかかります。ならば素材が発生する現場の近くで作る方が合理的だ——という考え方です。海洋ごみや廃漁具という「素材の産地」で製造することで、物流の無駄を減らし、地域の中で資源を回す循環をつくろうとしました。

とはいえ、最初から歓迎されたわけではありません。漁師からは「そんなものが金になるか」と一蹴され、心が折れかけたこともあったといいます。それでも間瀬さんは地域に入り込み、漁師と酒を酌み交わし、牡蠣養殖の手伝いまでしながら、海の現場が抱える本当の課題を学んでいきました。素材の話の前に、まず人との関係を築く。その泥くさい積み重ねが、今の連携を支えています。

鳥羽の牡蠣養殖のいかだと、積み上げられた牡蠣殻
牡蠣養殖が盛んな鳥羽。殻の処理もまた、地域の資源循環の課題だ。

牡蠣殻もまた、地域の『資源』

牡蠣の町には、牡蠣ならではの循環課題があります。それが牡蠣殻です。日本では牡蠣殻が年間およそ14万〜20万トン発生するとされ、その多くが処理に困る廃棄物となってきました。殻を捨てるには費用がかかり、堆積場が満杯になる地域もあります。一方で、牡蠣殻は炭酸カルシウムを豊富に含み、肥料や家畜の飼料、土壌改良材、水質浄化材などへの資源化が進んでいます。牡蠣殻の循環については、牡蠣殻リサイクルの取り組みでも詳しく紹介しています。

廃プラと牡蠣殻——素材こそ違えど、「海の営みから出る不要物を、いかに資源として地域に戻すか」という問いは共通しています。REMAREが牡蠣の町から生まれたことは、決して偶然ではありません。海の恵みを受け取る場所は、同時に海のごみと向き合う場所でもある。その現場感覚が、REMAREのものづくりを地に足のついたものにしています。

地域を巻き込むワークショップ

REMAREは素材づくりにとどまらず、地域の人や企業を巻き込む場も生み出しています。2025年からは、企業向けにアップサイクルを体験できるワークショップを展開。自分たちが出したごみが目の前で素材に変わる体験は、環境問題を「自分ごと」として捉える強力なきっかけになります。海辺の町の資源循環は、干潟や藻場を守る取り組みとも地続きであり、干潟の保全のような自然環境の保全ともつながっています。

地域に根ざすことは、素材の安定確保という点でも理にかなっています。海洋ごみや廃漁具は、いつ・どこで・どれだけ出るかが読みにくい素材です。地域の漁師や自治体と信頼関係を築いておけば、良質な素材を継続的に集められます。ごみの回収ルートそのものが、事業の基盤になるのです。だからこそREMAREは、機械やお金の前に、まず『人との関係づくり』に時間をかけました。循環型のものづくりは、技術だけでなく、地域コミュニティとの結びつきの上に成り立っています。

地域資源循環の考え方

  • ごみは『素材の産地』の近くで処理し、輸送の無駄を減らす
  • 廃プラも牡蠣殻も、地域に戻すべき『資源』として捉える
  • 地域との信頼関係が、良質な素材の安定確保につながる
  • ワークショップで住民・企業を巻き込み、循環を文化にする

REMAREの製品と使い道:暮らしと空間に海のごみが還る

REMAREの素材は、実際にどんなかたちで私たちの暮らしや街に入り込んでいるのでしょうか。板材という素材の性質を活かし、その用途は年々広がっています。

家具・内装から、小さな雑貨まで

REMAREの板材は、テーブルの天板やカウンター、店舗の壁面や什器といった建材・内装材として使われるほか、時計やボールペン、アクセサリーといった小さな雑貨・プロダクトにも展開されています。大きな面から手のひらサイズの小物まで、同じ素材が幅広くかたちを変えられるのは、加工しやすい板材ならではの強みです。

とりわけ空間デザインの分野では、マーブル模様の一点物としての価値が高く評価されています。「このカウンターは、この地域の海から出たごみでできています」という物語は、ホテルや店舗、オフィスにとって、ブランドのメッセージそのものになります。素材が語るストーリー性こそ、REMARE製品の大きな魅力です。

REMAREの再生板材で作られたカフェのカウンターとテーブルのイメージ
海のごみから生まれた板材が、上質な空間の主役になる。

企業との協業から生まれるプロダクト

REMAREは、さまざまな企業との協業でも素材を活かしています。オフィス家具メーカーの株式会社オカムラとは天板の開発に取り組み、菓子メーカーのカンロ株式会社とは、自社の菓子包装材を素材として活かす取り組みを行っています。「自社から出る廃プラを、自社の製品や什器として蘇らせる」——この循環は、企業にとって環境対応とブランドづくりを同時に実現する手段になります。

用途カテゴリ具体例活かされる特長
建材・内装材壁面、カウンター、什器石のような質感・一点物のデザイン性
家具テーブル天板、オフィス家具軽さと加工のしやすさ
プロダクト・雑貨時計、ボールペン、アクセサリー小ロットでの多様な表現
空間・アート店舗・ホテルの空間演出素材が持つ物語性・メッセージ性
REMARE素材のおもな用途と、活かされる特長。

『買うこと』が循環に参加すること

REMAREの製品を選ぶことは、単なる買い物ではありません。海から回収されたごみが素材になり、それを誰かが使うことで、はじめて循環は完成します。使う人がいてこそ、ごみは資源として社会に定着するのです。REMAREは、再生素材を特別なものではなく、木や石と同じように「当たり前に選ばれる普通の素材」にすることを目指しています。

こうした『物語のある素材』は、環境意識の高まりとともに、企業のブランド戦略の中で存在感を増しています。かつては『リサイクル素材=安っぽい・妥協』というイメージもありましたが、REMAREの製品はそれを完全に覆します。むしろ、一点物のマーブル模様と、その背景にある海の物語ゆえに、通常の素材より高い価値を持つ。『環境にいいから使う』ではなく、『美しいし、格好いいから使う。しかも環境にもいい』——この順番の逆転こそ、アップサイクルが本当に社会へ広がるための鍵だと言えます。

海洋プラスチックを、ただのゴミではなく最高の素材として捉える。

― REMARE創業者・間瀬雅介さんの発想より

空間デザインの現場では、REMAREの板材が持つ『説明したくなる魅力』も重宝されています。来店した人が思わず「この壁、なんの素材ですか?」と尋ねる。そこから『実はこの地域の海から出たごみなんです』と会話が生まれる。素材そのものが、環境への想いを伝えるコミュニケーションの入り口になるのです。飲食店やホテル、オフィスにとって、こうした対話のきっかけは、どんな広告よりも強くブランドの姿勢を伝えてくれます。

REMAREのビジネスモデル:ごみ処理を『価値づくり』へ反転させる

REMAREが注目される理由は、素材やデザインの魅力だけではありません。ごみを扱うことが、そのまま企業や社会の課題解決につながるビジネスの仕組みにこそ、この会社の本質があります。

産業廃棄物の費用を『不要』にする

企業が不要になったプラスチックを処分するには、通常、産業廃棄物としての処理費用がかかります。REMAREのモデルでは、その廃プラを素材として引き取り、活用するため、企業側の処分費用を減らせる可能性があります。さらに、焼却されるはずだったプラスチックを燃やさずに素材化することで、その分のCO2排出を抑えられるという環境価値も生まれます。

つまり、企業にとってREMAREと組むことは「コスト削減」「CO2削減」「ブランド向上」を一度に狙える選択肢になり得ます。廃棄物を減らして温室効果ガスを抑える取り組みは、ブルーカーボンのように海の力で炭素を蓄えるブルーカーボン生態系の保全とともに、海と気候の両面から地球を守る動きの一部と言えます。

廃プラが素材になり製品として社会に戻る循環をあらわしたフラット図解
回収→素材化→使用→再回収。REMAREが描く資源の輪。

有価買取という、逆転の関係

REMAREのユニークさは、廃漁具などを「有価で買い取る」点にもあります。これまで漁師や地域が費用を払って処分していたごみが、逆にお金を生む資源に変わる。この関係の逆転こそ、循環型経済のわかりやすい成功例です。REMAREは現在、年間およそ100トン規模のプラスチックを処理しており、将来的にはこれを2000トン規模へと拡大することを見据えています。

全自動プラントで、世界へ

REMAREが描く未来像は、さらにその先にあります。「廃プラを入れたら板材が出てくる」全自動のプラントを開発し、各地に展開していく構想です。計画では、2026年に岐阜県で試験稼働を始め、2027年に全国展開、2028年には海洋プラスチック問題が深刻な東南アジアへの進出を目指すとしています。ちなみに、海のごみを再生する工場設備は、その仕組みとデザインが評価され、2023年にグッドデザイン賞を受賞しています。

この構想が実現すれば、意味はとても大きくなります。海洋プラスチック問題がとくに深刻なのは、ごみの回収や処理のインフラが整っていない地域です。もし『廃プラを入れれば板材が出てくる』小さなプラントを、そうした地域に設置できれば、ごみを現地で価値ある素材に変え、雇用と収入まで生み出せます。ごみ問題の解決と、地域経済の活性化を同時に進める——REMAREが描くのは、単なる素材ビジネスを超えた、循環型経済のインフラそのものです。日本の一企業の挑戦が、世界の海の未来につながっています。

REMAREモデルの3つの価値

  • 企業:産廃費用の削減 × CO2削減 × ブランド向上
  • 地域:廃漁具の有価買取で、ごみが収入に変わる
  • 社会:全自動プラント構想で、循環を世界へ広げる
  • 未来:ごみ問題の解決と地域経済の活性化を同時に実現

私たちにできること:海のごみと『よい関係』を結ぶ

REMAREのような企業の挑戦は心強いものですが、海のごみ問題は、作る側だけでは解決しません。使う側、つまり私たち一人ひとりの選択が、循環を回す最後のピースになります。

まずは『素材の物語』に触れてみる

難しく考える必要はありません。まずは、REMAREのようなアップサイクル素材や製品に実際に触れてみることが第一歩です。展示やポップアップ、鳥羽の拠点、あるいは提携企業の製品を通じて、「これは海のごみからできている」と知って選ぶ。その体験が、ごみに対する見方を静かに変えてくれます。素材の背景にある物語を知ることは、環境教育としても大きな意味を持ちます。

アップサイクル素材の展示に触れて学ぶ親子のイメージ
『これは海のごみからできている』と知ることが、行動の第一歩。

暮らしの中でできる小さな選択

アップサイクル製品を選ぶこと以外にも、私たちにできることはたくさんあります。大切なのは、無理なく続けられる小さな選択を積み重ねることです。

  • 使い捨てプラスチックを減らし、繰り返し使えるものを選ぶ
  • 海や川のごみ拾い(ビーチクリーン)に参加してみる
  • 再生素材・アップサイクル製品を『あえて選ぶ』
  • ごみを正しく分別し、資源として回るルートに乗せる
  • 海のごみ問題について知り、家族や友人と話してみる

『捨てる』の前に、一度立ち止まる

REMAREの物語が教えてくれるのは、「ごみ」と「資源」を分けているのは、実は私たちの見方そのものだということです。同じ一枚の漁網も、見方を変えれば厄介なごみにも、美しい素材にもなります。捨てる前に一度立ち止まり、「これは本当にごみなのか」と問い直す。その小さな習慣が、海と私たちの関係を、少しずつよいものに変えていきます。

海のごみ問題は、あまりに大きく見えて、「自分ひとりが何をしても変わらない」と感じてしまいがちです。けれどREMAREの歩みは、たった一人が海のごみを『素材だ』と思ったところから始まりました。見方が変われば、行動が変わる。行動が変われば、まわりの人にも伝わっていく。私たちが再生素材の製品を一つ選ぶこと、ごみを一つ正しく分別すること——その小さな一歩が集まって、はじめて海のごみは『資源』として社会に根づいていきます。完璧である必要はありません。まずは、できることから始めてみましょう。

今日からできる3アクション

  • 身のまわりで、再生素材・アップサイクル製品を一つ選んでみる
  • 近くのビーチクリーンや環境イベントの情報を調べてみる
  • この記事をシェアして、海のごみが『資源』になる話を広める

まとめ:海のごみを『最高の素材』に変えるという希望

三重県鳥羽市から生まれた株式会社REMARE(リマーレ)は、海洋プラスチックや廃棄漁具という、これまで燃やすか埋めるしかなかった海のごみを、石のような質感とマーブル模様を持つ100%リサイクルの板材へと蘇らせています。選別しすぎずに混ぜるという逆転の発想、素材の産地である地域に根ざす姿勢、そして処分費用とCO2を減らすビジネスモデルが、この会社を唯一無二の存在にしています。

世界で毎年およそ800万トンが流れ込む海のごみ問題は、あまりに大きく、目を背けたくなるほどです。しかしREMAREの物語は、その巨大な課題を「悲劇」ではなく「素材の宝庫」として捉え直す視点が、確かに存在することを教えてくれます。ごみと資源を分けているのは、私たちのまなざしにほかなりません。

海のごみから生まれた製品を手に、明るい海を見つめる人のイメージ
見方を変えれば、ごみは希望になる。REMAREが示す未来。

この記事のまとめ

  • REMAREは海洋プラや廃漁具を、石のような質感の100%リサイクル板材に変える三重発の素材メーカー
  • 『選別しすぎず混ぜる』発想が、二つと同じもののないマーブル模様を生む
  • 漁具再生素材『GYOG』でゴーストギア問題に、牡蠣の町・鳥羽で地域資源循環に取り組む
  • 産廃費用とCO2を減らし、廃漁具を有価買取。全自動プラントで世界展開も構想
  • 『捨てる前に一度立ち止まる』——ごみと資源を分けるのは、私たちの見方そのもの

参考文献・出典

  1. 環境省 – 海洋プラスチックごみ流出量の推計(令和6年度検討結果)
  2. 環境省 – 令和6年度検討結果 日本の海洋プラスチックごみ流出量の推計(PDF)
  3. 環境省 – 漁業系廃棄物処理ガイドライン(改訂・令和2年5月)
  4. WWFジャパン – 海洋プラスチック問題について
  5. WWFジャパン – 深刻な海洋プラスチック問題の原因『ゴーストギア』を無くそう
  6. 株式会社REMARE – 公式サイト(会社概要・マテリアル・製品)
  7. 鳥羽商工会議所(toba.or.jp) – サステナビリティ:リマーレが導く循環経済
  8. WORK MILL – 遊びから生まれた事業で世界を変える。海洋プラスチックに新たな価値を見出すREMAREの冒険
  9. フィッシャーマン・ジャパン – REMAREとの業務提携に関するニュース

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