約800万トン
世界で1年間に海へ流れ出るプラスチックごみの推計量(環境省 環境白書)
65.8%
日本の海岸漂着ごみに占めるプラスチック類の割合(個数ベース・環境省調査)
1,100円〜
buøyのコースター1枚の価格。回収地の情報が刻印される

拾い集めた海岸のごみが、鮮やかなマーブル模様のトレーやコースターに生まれ変わる——。そんな一点ものの日用品を生み出しているのが、神奈川県横浜市のプラスチック加工会社・株式会社テクノラボが手がけるブランド「buøy(ブイ)」です。原料は、日本各地の砂浜に流れ着いたプラスチックごみ。着色料を一切加えず、ごみそのものが持っていた色を生かして成形するため、同じ模様は二つと生まれません。

海洋プラスチックごみは、いまや世界共通の環境課題です。環境省の環境白書によれば、世界では1年間に約800万トンものプラスチックごみが海へ流れ出ているとされ、対策が進まなければ2050年には海のプラスチックごみの重量が魚を上回るという試算まで示されています。回収された漂着ごみの多くは、これまで埋め立てか焼却で処分されるほかありませんでした。

この記事では、そんな『行き場のない海のプラごみ』を価値ある日用品へと変えるbuøyのしくみを、海洋プラスチック問題の全体像とあわせて、はじめての人にもわかるように解説します。何を買えばいいのか、そして買うことにどんな意味があるのかまで、いっしょに見ていきましょう。

この記事で学べること

  • buøy(ブイ)がどんなブランドで、ふつうのリサイクル品と何が違うのか
  • 海岸に漂着するプラスチックごみが、なぜこれまで捨てるしかなかったのか
  • 異なる種類のプラスチックを分別せずに成形するテクノラボの特許技術のしくみ
  • 製品の色や模様が『どこの海から来たのか』を示すトレーサビリティの考え方
  • コースターやトレーなど、暮らしにアップサイクル品を取り入れる具体的な方法
  • アップサイクルにできること・できないこと。海のプラ問題を減らす本当の近道

buøy(ブイ)とは?『顔のあるプラスチック』というアイデア

buøy(ブイ)は、横浜のプラスチック加工会社・株式会社テクノラボが2020年7月に立ち上げた、海洋プラスチックごみのアップサイクルブランドです。名前は、海に浮かぶ「ブイ(浮標)」に由来します。海面に漂うブイのように、行き場を失っていたプラスチックごみを、暮らしのなかで愛される日用品として『浮かび上がらせる』——そんな思いが込められています。

buøyの最大の特徴は、原料の海洋プラごみに着色料を一切加えないことです。トレーやコースターに現れる青や白、赤が混ざったマーブル模様は、すべて回収されたごみが元々持っていた色。ペットボトルのキャップ、洗剤の容器、漁業用の浮きなど、さまざまな色のプラスチックが溶け合うことで、二つと同じもののない模様が偶然に生まれます。テクノラボはこれを『出来上がりが予測できない、顔のあるプラスチック』と表現しています。

リサイクルとアップサイクルはどう違う?

似た言葉に「リサイクル」がありますが、両者は少し異なります。リサイクルは、使い終わった製品を細かく砕いたり溶かしたりして、多くの場合はもとより価値の低い素材へと戻す再生を指します。これに対してアップサイクル(upcycle)は、廃棄物を素材の個性を生かしながら、より価値の高いものへと作り替える考え方です。buøyは、ごみとして扱われてきた漂着プラスチックの色や質感そのものを『魅力』へと転換している点で、まさにアップサイクルの好例といえます。

buøyを一言でいうと

  • 日本各地の海岸で回収された漂着プラスチックごみが原料
  • 着色・分別をせず、ごみ本来の色でマーブル模様を作る
  • 同じ模様は二つとない一点ものの日用品ブランド
  • 手がけるのは横浜のプラスチック加工会社・テクノラボ
回収された色とりどりのプラスチック片が溶け合ってマーブル模様になる様子のクローズアップ
着色せず、さまざまな色のプラスチックが溶け合って偶然の模様をつくる

ブランド名の『buøy』は、英語の buoy(ブイ、浮標)にちなんだ造語で、『ブイ』と読みます。ロゴでは『o』の中央に斜めの線が入り、海に浮かぶブイと、水面の下に隠れた本体を同時にイメージさせます。私たちがふだん目にする海のごみは、氷山と同じで水面に浮かぶ一部にすぎず、その下や海底にはもっと多くのごみが沈んでいます。ブランド名には、そうした『見えていない問題』にも目を向けてほしいという願いが重ねられています。

このブランドの公式サイトbuøy(ブイ)公式サイト|株式会社テクノラボ海洋プラをアップサイクルしたインテリア雑貨ブランド。コンセプトや製品づくりを詳しく見られます。🔗 buoy.yokohama

buøyは、単に『エコな雑貨』を売るブランドではありません。手にした人が『この鮮やかな色は、もとは海に漂っていたごみだった』と気づく瞬間そのものを大切にしています。美しさを入り口に海洋プラスチック問題へ関心を向けてもらう——それがbuøyの根っこにある発想です。海辺の環境そのものを守る取り組みとしては、干潟の保全など生き物の生息地を守る活動もあり、buøyはその『出口』側からごみ問題にアプローチしているといえます。

こうしたコンセプトは国内外で評価され、メディアやデザイン系の媒体でたびたび取り上げられてきました。『ごみを隠すのではなく、ごみだったことを堂々と見せる』という潔さが、多くの人の共感を呼んでいます。プラスチックを扱う会社が、あえてプラスチックの負の側面と正面から向き合い、それを美しさに転じてみせる——このねじれた誠実さこそが、buøyが単なる流行のエコ雑貨と一線を画す理由といえるでしょう。

なぜ海岸のプラスチックは行き場を失うのか

buøyの意義を理解するには、まず海洋プラスチックごみがどれほど深刻な課題なのかを知る必要があります。プラスチックは軽くて丈夫で安いという長所ゆえに、20世紀後半から爆発的に普及しました。しかしその『丈夫さ』は、自然界でほとんど分解されないという弱点の裏返しでもあります。海に流れ出たプラスチックは、何十年、何百年と環境中に残り続けます。

世界で年間約800万トンが海へ

環境省の環境白書によれば、世界では毎年約800万トンものプラスチックごみが海洋へ流出していると推計されています。これはジャンボジェット機に換算すると数万機分にもなる膨大な量です。さらに、このまま有効な対策がとられなければ、2050年には海洋中のプラスチックごみの重量が、海にすむ魚の重量を上回るという試算も示されています。プラスチックの主な発生源は東アジア・東南アジア地域とされますが、これは特定の国だけの問題ではなく、大量にプラスチックを使う私たち全員に関わる課題です。

波打ち際に打ち上げられたペットボトルや漁具などのプラスチックごみが散乱する海岸
砂浜に漂着するさまざまなプラスチックごみ。回収しても行き場が課題になる

日本の海岸ごみの多くもプラスチック

日本も例外ではありません。環境省が全国の海岸で行っているモニタリング調査では、漂着ごみを個数ベースで見ると、プラスチック類が約65.8%と最も高い割合を占めています。内訳には、ペットボトルや食品容器のほか、漁網・ロープ・ブイ(浮き)といった漁業由来のごみも多く含まれます。漁具に由来するプラスチックごみへの対策は各地で進められており、たとえば使い終えた網を資源として回収する漁網のリサイクルの取り組みも広がっています。また日本の陸域から海へ流出するプラスチックごみは、2023年度の環境省推計で年間1.1万〜2.7万トンとされています。

数値内容出典
約800万トン世界で1年間に海へ流出するプラごみの推計量環境省 環境白書
2050年海のプラごみ重量が魚を超えると試算される年環境省 環境白書
65.8%日本の海岸漂着ごみに占めるプラ類の割合(個数)環境省 海洋ごみ調査
1.1万〜2.7万トン日本の陸域からの年間流出量(2023年度推計)環境省
海洋プラスチックごみをめぐる主な数値

回収した後の『出口』がなかった

各地のビーチクリーン活動によって、海岸のごみは日々拾われています。しかし、ここに大きな壁がありました。海岸に漂着したプラスチックは、長期間の紫外線や塩分、砂による摩耗で劣化し、汚れ、複数の種類が入り混じった状態になっています。通常のプラスチックリサイクルは、素材の種類ごとにきれいに分別することが前提のため、こうした『混ざって劣化したごみ』はリサイクルに回すのが難しく、その大半は埋め立てか焼却で処分されてきました。せっかく拾っても、行き着く先はやはり『ごみ』だったのです。

そもそも、海のプラスチックごみはどこから来るのでしょうか。実は、その多くは陸で使われたものが川を通じて海へ流れ出たものだと考えられています。ポイ捨てされたペットボトルやレジ袋、屋外に放置された農業・漁業用の資材、風で飛ばされたごみなどが、雨や川に運ばれて海にたどり着きます。つまり、海のごみ問題は海だけの問題ではなく、私たちの日々の暮らしと地続きなのです。海から遠い街に住んでいても、けっして無関係ではありません。

川から海へとつながる水辺に、ペットボトルやレジ袋などのプラスチックごみが漂う様子
海のプラごみの多くは、陸で使われ川を通じて流れ出たもの

海洋プラスチックが引き起こす問題

  • ウミガメや海鳥、魚がえさと間違えて誤飲・誤食してしまう
  • 漁網などに海の生き物がからまる『ゴーストフィッシング』
  • 5mm以下に砕けた『マイクロプラスチック』が食物連鎖に入り込む
  • 景観の悪化や、観光・漁業への経済的な打撃

砕けて『マイクロプラスチック』になる前に

海に残ったプラスチックは、時間とともに紫外線や波の力で細かく砕けていきます。大きさが5mm以下になったものを『マイクロプラスチック』と呼びます。ここまで小さくなると回収はほぼ不可能で、プランクトンや魚がえさと一緒に取り込み、食物連鎖を通じてめぐりめぐって私たちの食卓にも戻ってくる可能性が指摘されています。プラスチックに含まれる添加剤や、海水中で表面に付着した有害物質が、生き物の体内に蓄積するおそれもあります。つまり、砕けて手に負えなくなる前に、浜辺で回収できる大きなうちに拾い上げることが決定的に重要なのです。

こうした海の汚染は、生き物の多様性にも影響します。日本近海は世界的にも豊かな海として知られますが、日本の海の生物多様性を守るうえでも、漂着ごみをどう減らし、回収後にどう活用するかは避けて通れないテーマです。buøyは、まさにこの『回収した後の出口がない』という壁に、ものづくりの技術で挑んだブランドなのです。回収したごみに製品という行き先を用意することで、拾う人のやりがいを支え、砕ける前のごみを社会に留める——buøyの循環は、この二重の意味で予防的な役割を果たしています。

テクノラボという会社と『プラステックプロジェクト』の誕生

buøyを生み出した株式会社テクノラボは、もともと海洋ごみとはまったく縁のない会社でした。神奈川県横浜市に拠点を置き、通信機器や医療機器などの外装(筐体=きょうたい)のデザイン設計から少量生産までを手がける、プラスチック成形のプロフェッショナル集団です。代表を務めるのは林光邦(はやし てるくに)さん。長年、プラスチックという素材と向き合ってきた技術者たちが、buøyの担い手です。

『プラスチックとどう付き合うべきか』という問い

buøyの出発点になったのは、社内の研究開発活動『プラステックプロジェクト(Plas+tech project)』でした。プラスチックを扱うことを生業にしているからこそ、テクノラボは環境問題が大きくなるなかで『これからの社会はプラスチックとどう付き合っていくべきか』という問いに正面から向き合いました。プラスチックは悪者にされがちですが、本来は軽く、腐らず、加工しやすい優れた素材です。ならば、その特性を『使い捨て』ではなく『長く使う工芸品』の方向に生かせないか——そう考えたのです。

工房でプラスチック成形の作業をする職人の手元のクローズアップ
プラスチック成形の技術を、海のごみの再生へと転用した

『大量生産』から『一点もの』への発想転換

プラスチック製品といえば、金型で同じものを大量に、均一に作るのがふつうです。しかしテクノラボは、あえて逆の発想をとりました。混ざって劣化した海洋ごみを原料にすれば、色も質感も一つひとつ違ってあたりまえ。ならばその『ばらつき』を欠点ではなく個性として肯定し、一点ものの工芸品として仕立てる——この発想の転換が、buøyという独自のブランドを成立させました。工業製品の会社が、あえて『同じものは作れない』ものづくりへ舵を切ったのです。

偶然生まれる色と模様は、回収された漂着ごみによって決まる。だからこそ、二つと同じものはない。

― buøy(テクノラボ)ブランドコンセプトより

この方向性は、単なるビジネスにとどまりません。買った人が製品を通じて『自分の地域の海のごみ』を身近に感じ、環境への行動を始めるきっかけになる。テクノラボは、buøyを『海の今を伝えるアップサイクル工芸品』と位置づけ、社会課題の解決とものづくりを両立させる社会的事業として育ててきました。

クラウドファンディングから始まった

buøyが世に出るきっかけとなったのは、クラウドファンディングでした。海洋プラごみを原料にした工芸品というアイデアに、多くの人が共感し支援を寄せたことで、プロジェクトは製品化にこぎつけます。町工場の技術者たちがコツコツ試作を重ねてきた挑戦が、応援購入というかたちで社会に受け入れられた瞬間でした。この成功体験は、『社会に必要とされている』という確かな手ごたえとなり、その後の継続的なブランド展開の土台になっています。

テクノラボが拠点を置く横浜は、近年『サーキュラーエコノミー(循環経済)』を積極的に推進する都市としても知られます。作って、使って、捨てるという一方通行の経済から、資源を循環させ続ける経済へ——buøyは、まさにその理念を体現するローカルな実践例として、地域の環境活動やデザインコミュニティともつながりながら育ってきました。ものづくりの町工場が地域の海と結びつき、循環の輪をつくる。buøyの物語は、日本各地の中小企業にとってのヒントにもなっています。

テクノラボとbuøyの基本情報

  • 会社名:株式会社テクノラボ(神奈川県横浜市)
  • 代表:林光邦さん
  • 本業:通信・医療機器などの外装のデザイン設計と少量生産
  • buøy立ち上げ:2020年7月(クラウドファンディング成功を経て始動)
  • 起点:社内研究開発『プラステックプロジェクト』

混ぜて生かす — buøyの特許技術と製造工程

buøyのものづくりを支えるのは、テクノラボが独自に開発し特許を出願した成形技術です。前の章で触れたとおり、海岸の漂着プラスチックは種類がバラバラで、汚れて劣化しています。通常のリサイクルなら『まず種類ごとに分別する』のが大前提。ところがbuøyは、その常識をひっくり返しました。

『分別しない』という型破りな選択

buøyの技術のキモは、異なる種類のプラスチックを混ざったまま成形するという点にあります。プラスチックには、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン(PS)など多くの種類があり、それぞれ溶ける温度や性質が異なります。ふつうは混ぜると品質が安定しないため避けられますが、テクノラボは加工条件をコントロールすることで、混在したまま一つの製品として成形する方法を確立しました。これにより、これまで『分別できないから捨てるしかなかった』海岸ごみを、そのまま原料として使えるようになったのです。

洗浄・粉砕された色とりどりのプラスチックフレークが成形前に混ざり合っている様子
洗浄・粉砕されたプラスチック片。分別せずに混ぜたまま成形するのがbuøyの特許技術

回収から製品になるまでの流れ

buøyの製品は、おおまかに次のような工程を経て作られます。ビーチクリーン団体などによって集められた漂着ごみが原料の起点となり、洗浄・選別・粉砕を経て、テクノラボ独自の成形技術で日用品へと形づくられます。

  1. 全国の海岸でビーチクリーン団体などが漂着プラスチックごみを回収する
  2. テクノラボがそのごみを『原料』として買い取る
  3. 付着した砂や汚れを洗い落とし、リサイクルに適さない異物を取り除く
  4. プラスチックを細かく粉砕してフレーク状にする(種類は分別しない)
  5. 着色料を加えず、混ざった状態のまま加熱・成形する
  6. 偶然生まれた色と模様を生かし、トレーやコースターなどに仕上げる
  7. 回収地の情報を記載・刻印し、一点ものの製品として販売する

重要なのは、原料に新品のプラスチックや着色料をほとんど加えないことです。だからこそ、製品の色はその海岸のごみの構成そのものを映します。ある浜のトレーは青が強く、別の浜のものは白っぽい——そんな違いが自然に生まれます。プラスチックの『水に強い』という特性を生かして、植木鉢やソープディッシュなど、水回りで使える製品が多いのも特徴です。

『予測できない』ことと向き合う職人技

種類の違うプラスチックを混ぜて成形するのは、実は技術的にとても難しいことです。プラスチックはそれぞれ溶ける温度や固まり方、縮み方が違うため、混ぜると気泡が入ったり、割れやすくなったり、思わぬ反りが出たりします。テクノラボは、長年の少量生産で培った加工のノウハウをもとに、温度や圧力、混ぜ方を細かく調整して、混在した素材でも実用に耐える強度と質感を引き出しています。『出来上がりが予測できない』素材と根気よく向き合う——そこにあるのは、まさに職人の技です。

また、原料となるごみは回収されるたびに構成が変わるため、毎回まったく同じ条件で作ることはできません。同じ『青いトレー』を大量に注文されても、都合よく青いごみばかりが集まるとは限らないのです。この『思いどおりにならなさ』こそが、buøyを一点ものたらしめている本質でもあります。効率と均一性を追い求めてきた工業製品の世界から見れば、これは常識外れの発想ですが、だからこそ他にはない価値が生まれています。

buøyの技術がすごい理由

  • 種類を分別せず、混ざったまま成形できる(特許出願技術)
  • 従来はほぼ100%捨てるしかなかった劣化ごみを原料にできる
  • 着色料を使わないので、ごみ本来の色がそのまま模様になる
  • 工業製品の少量生産技術を、社会課題の解決に転用している

こうして『混ぜて生かす』ことで、buøyは埋め立てや焼却に回るはずだったプラスチックを製品として社会に留めます。焼却されればCO2として大気に出ていくものを、長く使う日用品として固定する——この考え方は、資源を循環させ続けるブルーカーボンのような『炭素を海や陸に留める』発想とも通じるところがあります。

どこの海から来たのか — 産地トレーサビリティのしくみ

buøyがほかのアップサイクル雑貨と一線を画すのが、『この製品の原料はどこの海から来たのか』を明らかにするトレーサビリティです。食品の産地表示のように、buøyの製品にも『生まれ故郷』が記録されています。

産地シールとQRコード

buøyの製品には、原料となったプラスチックごみの回収地の情報が付けられて販売されます。製品によっては産地を示すシールが貼られ、コースターのように、裏面に回収地の情報が刻印されているものもあります。さらにQRコードを読み取ると、どこの海岸で、どの団体が回収したごみなのかがわかるしくみも取り入れられています。手にした人は、ただの雑貨ではなく『◯◯海岸の物語を持ったもの』として製品と向き合えるのです。

コースターの裏面に回収地の情報とQRコードが刻印されている様子のクローズアップ
製品の裏面に刻まれた回収地の情報。『どこの海から来たか』をたどれる

ビーチクリーン団体との協働

buøyの原料は、日本全国の海岸でビーチクリーンに取り組む団体から集められます。テクノラボはそのごみを買い取るため、清掃活動をする人たちにとっては、拾ったごみが『処分費のかかる厄介もの』から『価値ある資源』へと変わります。これは、ボランティア活動の持続可能性を高めるうえでも大きな意味を持ちます。回収する人、加工する人、買う人——それぞれがつながって、はじめてbuøyの循環は成り立ちます。

ビーチクリーンで集めたごみは、そのまま製品になるわけではありません。砂や貝殻、流木、金属や布などの異物が混ざっているため、洗って、選り分けて、プラスチックだけを取り出す手間がかかります。この地道な下処理があってこそ、混ぜて成形する技術が生きてきます。清掃団体の『拾う力』と、テクノラボの『生かす技術』が噛み合うことで、これまで捨てられていた資源に新しい価値が生まれるのです。buøyは、特定の誰かの努力ではなく、こうした協働のネットワーク全体で支えられています。

拾ったごみが売れる資源になる。その実感が、次の清掃活動へのモチベーションになる。

― 海岸清掃とアップサイクルをつなぐ考え方

『顔が見える』ことがなぜ大切か

産地がわかることには、二つの効果があります。ひとつは信頼性。『海洋プラ由来』をうたう製品は増えていますが、実際にどこのごみをどれだけ使ったのかが曖昧なものも少なくありません。回収地を明示することは、その製品が本当に海のごみから作られている証しになります。もうひとつは自分ごと化。自分の住む地域や、旅行で訪れた海岸のごみから作られた製品だと知れば、海洋プラ問題は一気に身近になります。産地トレーサビリティは、buøyが単なる『エコ商品』を超えて、人と海をつなぐメディアであろうとしている表れなのです。

この『顔が見える』しくみは、教育の場でも力を発揮します。学校の授業や海のワークショップで、自分たちが清掃した海岸のごみからコースターができあがる過程を体験すれば、子どもたちにとって海洋プラ問題は教科書の中の話ではなくなります。『拾う→生かす→使う』という一連の流れを目の当たりにすることは、環境について自分で考え、行動する力を育てます。buøyのトレーサビリティは、モノの信頼性を保証するだけでなく、人と海の関係を学び直すための入り口にもなっているのです。

トレーサビリティの3つのポイント

  • 製品に回収地の情報が付く(シールや裏面への刻印)
  • QRコードで、回収した団体や場所の背景をたどれる
  • テクノラボがごみを買い取ることで、清掃活動を経済的に支える

buøyの製品ラインナップと暮らしへの取り入れ方

ここまで背景を見てきましたが、実際にbuøyにはどんな製品があるのでしょうか。難しく考えなくても、まずは『気に入った一点を暮らしに迎える』ところから始められます。

定番はコースターとトレー

buøyの入り口として親しまれているのがコースターです。価格は1枚1,100円(税込)ほどから。2枚入りのギフトボックスは2,200円、5枚セットは5,500円といったラインナップもあります。ほかにも、丸いラウンドトレイ、葉っぱの形をしたデスクトレイ(leafシリーズ)、ペントレーやクリップトレー、ソープディッシュ、植木鉢(プランター)などがあり、水に強いプラスチックの特性を生かした水回りアイテムが充実しています。より大きなものでは、フォトフレーム、花瓶、ランプ、スツール(腰かけ)、時計といったインテリア製品まで展開されています。

葉っぱの形をした『leaf(リーフ)』シリーズは、デザイナーが海洋ごみに『自然のかたち』を与えることで、ごみと自然の対比を表現した意欲作です。ごみでできているのに、手のひらに載る一枚の葉のようにやさしい——そんな逆説が、見る人にプラスチックと自然の関係を静かに問いかけます。このように、buøyの製品は実用品でありながら、それぞれが海のメッセージを運ぶ小さな作品にもなっているのです。

製品カテゴリー使い方の例価格の目安
コースター来客用・日常のカップ置きに。ギフトにも1枚1,100円〜
トレー各種(丸・leaf・ペン・クリップ)小物・文具・鍵の一時置きにおおむね1,000円台〜
ソープディッシュ・植木鉢水回りやグリーンに(水に強い)製品による
花瓶・フォトフレーム・時計・ランプインテリアのアクセントにサイズにより数千円〜
buøyの主な製品カテゴリーと使い方(価格は目安。詳細は公式ストアを参照)
デスクの上でクリップやペンを整理するのに使われているマーブル模様のトレー
デスクの小物整理に。日常で自然に使えるサイズ感
棚に並んだ色や模様の異なる複数のbuøyのトレーとコースター
同じ製品でも一枚ずつ模様が違う。『選ぶ楽しさ』もbuøyの魅力

選ぶときのポイント

buøyは一点ものなので、同じ製品名でも一つひとつ色や模様が違います。だからこそ、『模様で選ぶ』のがいちばんの楽しみ方です。青が強いもの、白っぽいもの、赤や黄色が差し色になったもの——写真をよく見て、自分の部屋や贈る相手に合う一点を選びましょう。裏面の産地情報を確認して、思い入れのある海岸のものを選ぶのもおすすめです。

  • まずはコースターやトレーなど、手頃で使いやすいものから
  • 一点ものなので、写真で色・模様をよく見て選ぶ
  • 産地(回収地)で選ぶと、より愛着がわく
  • ギフトにすると、贈る相手に海のストーリーも一緒に届けられる

どこで買える?

buøyは公式オンラインストアのほか、雑貨店やセレクトショップ、企業とのコラボレーション企画などを通じて手に入れられます。企業のノベルティや記念品として、自社に関わる海岸のごみからbuøy製品を作る取り組みも行われており、環境への姿勢を『かたち』で示す手段としても注目されています。購入を検討する際は、最新の在庫や価格、産地の情報を公式ストアで確認するのが確実です。

製品を見る・購入するbuøy 公式オンラインストア(STORES)定番のコースターやトレーなど一点ものの製品を販売。最新の在庫・価格・産地情報はこちら。🔗 buoy.stores.jp

長く使うための手入れ

buøyの製品はプラスチックなので、基本的には水に強く、汚れても水拭きで簡単にきれいになります。ただし、混ざった素材でできているため、極端な高温には注意が必要です。熱い鍋を直接置いたり、火のそばや炎天下の車内に長時間置いたりするのは避けましょう。丁寧に扱えば何年も使い続けられ、『使い捨てないプラスチック』というbuøyのコンセプトを、暮らしのなかで実践できます。長く使うこと自体が、実は最も効果的な環境行動でもあるのです。

アップサイクル品は、ギフトとしても優れています。誕生日や記念日、引っ越し祝いなどに贈れば、モノと一緒に『海を思う気持ち』や『環境への配慮』というメッセージも届けられます。産地情報が付いているので、『これは◯◯の海岸のごみから生まれたんだよ』と物語を添えて渡すこともできます。安さや便利さでは測れない、受け取った人の心に残る贈り物になるでしょう。

今日からできる一歩

  • buøyのコースターを1枚、来客用に迎えてみる
  • 次に海へ行ったら、5分だけビーチクリーンをしてみる
  • 『これは何のごみから来たんだろう』と製品の産地を確かめる
  • SNSや家族に、海洋プラ問題とアップサイクルの話をシェアする

アップサイクルにできること・できないこと

buøyのような取り組みは、海洋プラスチック問題に対してとても意義深いものです。しかし、アップサイクルだけで海のプラごみ問題がすべて解決するわけではありません。ここは冷静に、できることとできないことを整理しておきましょう。

アップサイクルにできること

buøyの大きな功績は、『回収した後の出口』を作ったことです。これまで埋め立てや焼却に回るしかなかった劣化した漂着ごみに、製品という行き先を与えました。さらに、ごみを買い取ることでビーチクリーン活動を経済的に支え、美しい製品を通じて多くの人に海洋プラ問題を『自分ごと』として伝える力があります。ごみを減らす直接効果だけでなく、人の意識と行動を変える『入り口』としての価値が大きいのです。

親子で海岸のごみを拾いながら笑顔で会話するビーチクリーンの様子
アップサイクルは、清掃活動と人の関心をつなぐ『入り口』になる

アップサイクルの限界

一方で、正直に見ておくべき限界もあります。第一に、量の問題です。世界で年間約800万トンも海へ流出するプラスチックに対して、工芸品として製品化できる量はごくわずか。アップサイクルだけで流出量を帳消しにはできません。第二に、すでに5mm以下に砕けてしまったマイクロプラスチックは回収がきわめて困難で、製品の原料にもできません。だからこそ、根本的な解決には『そもそも海にごみを流さない』上流での対策が欠かせないのです。

観点アップサイクルにできることアップサイクルだけでは難しいこと
ごみの量回収済みごみに『出口』を与える年間数百万トンの流出量を相殺する
対象目に見える漂着プラを製品化する砕けたマイクロプラスチックの回収
効果の性質意識を変える『入り口』になる発生そのものを止める『上流対策』
アップサイクルの役割と限界を整理する

本当の近道は『減らす・流さない』

海洋プラスチック問題の根本的な近道は、やはり3R(リデュース・リユース・リサイクル)、とりわけ最初のR=『そもそも使う量を減らす(リデュース)』にあります。マイバッグやマイボトルを使う、使い捨てプラスチックを避ける、ごみをきちんと分別して自然界に流さない——こうした一人ひとりの行動の積み重ねが、実は最も効果的です。海の環境問題は互いにつながっており、たとえば栄養分の流入で起きる赤潮と富栄養化のように、陸での暮らしが海に影響を与える構図はプラごみと共通しています。buøyを入り口に関心を持ったら、ぜひ『減らす』行動にもつなげてみてください。

国際社会でも、プラスチック汚染を根本から断つための取り組みが進んでいます。プラスチックの生産から廃棄までの全体を対象にした国際的なルールづくりの議論が国連の場で続けられており、使い捨てプラスチックの削減や、再利用・再生の仕組みづくりが世界共通の課題として位置づけられつつあります。国のレベルでも、日本ではレジ袋の有料化やプラスチックに関する法律の整備が進み、企業には設計段階からごみを減らす工夫が求められるようになりました。buøyのような『出口』の取り組みと、こうした『上流』の政策や国際ルールが両輪で回ってはじめて、問題は前に進みます。

誤解しないためのポイント

  • アップサイクル製品を買えば流出したごみが帳消しになる、わけではない
  • 『海洋プラ由来』表示には産地が曖昧なものもある。信頼できる製品を選ぶ
  • 最も効果が大きいのは、そもそもプラを『減らす・流さない』こと
  • アップサイクルは万能薬ではなく、意識を変える『きっかけ』ととらえる

まとめ:美しさを入り口に、海とつながる

buøy(ブイ)は、横浜のプラスチック加工会社・テクノラボが、独自の特許技術で海岸の漂着プラスチックごみを一点ものの日用品へと変えるアップサイクルブランドです。着色せず、分別せず、ごみ本来の色を生かす発想は、『捨てるしかなかったごみ』に新しい価値と物語を与えました。産地トレーサビリティによって、手にした人は『どこの海から来たか』をたどることができます。

同時に、アップサイクルは万能ではありません。年間約800万トンという海洋流出の現実の前では、製品化できる量はわずかであり、砕けたマイクロプラスチックは回収すらできません。だからこそ、buøyのような取り組みを『美しさという入り口』として受けとめ、そこから『減らす・流さない』という根本の行動へとつなげていくことが大切です。1枚のコースターが、海を思う気持ちの出発点になる——それがbuøyの本当の価値なのだと思います。

窓辺に飾られたマーブル模様のbuøy製品と、その向こうに広がる穏やかな海
海のごみが、暮らしのなかで海とつながる小さな窓になる

この記事のまとめ

  • buøy(ブイ)は、テクノラボが海岸の漂着プラごみを再生するアップサイクルブランド(2020年立ち上げ)
  • 着色・分別をせず、混ざったまま成形する特許技術で、捨てるしかなかったごみを一点ものの日用品に変える
  • 製品には回収地の情報やQRコードが付き、『どこの海から来たか』をたどれる
  • コースター(1,100円〜)やトレーなど、暮らしに取り入れやすい製品が中心
  • 世界では年間約800万トンのプラが海へ流出。アップサイクルは意義深いが量には限界がある
  • 根本的な近道は『減らす・流さない』こと。buøyはその関心の入り口になる

海の環境を守る取り組みは、ごみ問題だけではありません。生き物のゆりかごとなる場所を守り育てる藻場の再生など、さまざまな角度からの活動があります。この記事をきっかけに、あなたなりの『海とつながる一歩』を見つけてもらえたらうれしいです。

参考文献・出典

※ 信頼性の高い順に配列:政府機関・学術機関 > 査読済み論文 > 専門機関 > 信頼できるメディア