⚡ この記事の要点

無印良品が衣料品や雑貨に使う再生ポリエステルは、使用済みペットボトルからどう作られるのか。「素材に還るフリース」の単一素材設計や衣料品回収の歴史、海洋プラスチック問題との関わりまで、公式発表と統計データをもとに解説する。

85.1%
日本のPETボトルリサイクル率(2024年度・PETボトルリサイクル推進協議会)
PET100%
「素材に還るフリース」の身生地からボタン・縫製糸まで全パーツの使用素材
2015年〜
無印良品が衣料品回収を始めてからの年数(2025年に10周年)

無印良品の店頭で「再生ポリエステル」「PET100%」といった表示を見たことがある人は多いはずだ。その原料の多くは、私たちが日常的に捨てている使用済みペットボトルである。フレーク状に砕かれたペットボトルが、ペレットを経て糸になり、フリースやTシャツの生地として生まれ変わる——この一連の流れは、資源循環という言葉を最も身近な形で体感できる仕組みのひとつだ。

株式会社良品計画は2024年に「素材に還るフリース」シリーズを発売し、2025年には10アイテムへと展開を広げた。身生地だけでなくボタンや縫製糸に至るまで全パーツをPET100%の単一素材にそろえたこの商品は、着終えたあとの分解・分離工程を不要にする「易リサイクル設計」を目指したものだ。さらに無印良品は2015年から衣料品の回収を続けており、2025年3月からは「ReMUJI」がその資源循環の取り組み全体を指す名称になっている。

この記事では、再生ポリエステルがペットボトルからどう作られるのか、なぜ無印良品が単一素材にこだわるのか、そして日本のPETボトルリサイクル率や海洋プラスチック問題とどうつながっているのかを、公式発表と統計データに基づいて整理する。

この記事で学べること

  • 使用済みペットボトルが再生ポリエステルの生地になるまでの工程
  • 無印良品「素材に還るフリース」がPET単一素材にこだわる理由
  • 無印良品の衣料品回収・ReMUJIの歴史と広がり
  • 日本のPETボトルリサイクル率が世界的に見ても高い理由と内訳
  • 海洋プラスチックごみとペットボトルリサイクルの関係
  • リサイクル素材の商品を選ぶときに消費者ができること

無印良品が「再生素材」にこだわる理由

無印良品を展開する株式会社良品計画は、サステナビリティ方針の柱のひとつに「資源循環」を掲げている。衣料品・生活雑貨・パッケージのそれぞれで、使い終えたものを再び資源として活かす仕組みづくりを進めており、再生ポリエステルの活用はその代表例のひとつだ。無印良品はもともと「これでいい」という思想のもと、素材を無駄なく使い、過剰な加工や装飾を省いた商品づくりを続けてきたブランドであり、再生素材の採用は目新しい方針転換というより、創業以来の姿勢の延長線上にあるとも言える。原料の選定から製造、販売後の回収までを一連の流れとして設計する姿勢は、単に「環境に配慮した商品を1つ出す」というより、ビジネスの仕組みそのものを循環型に近づけていく取り組みと言える。

「もったいない」から生まれた商品開発

無印良品は2020年春夏シーズンから、肌着などインナー商品のパッケージを紙を中心としたものへ切り替え、ファスナーや台紙を削減した。この取り組みだけで半期あたり26トンのプラスチック削減につながっている。パッケージの簡易化と、生地そのものを再生素材へ置き換える取り組みは、同じ「資源循環」という方針の中で並行して進められてきた。パッケージのような目に見えやすい部分から着手し、生地の原料構成という見えにくい部分まで踏み込んでいる点が、無印良品の資源循環の特徴だと言える。

衣料品・生活雑貨・パッケージの三方向から

再生ポリエステルは衣料品に使われるだけでなく、収納用品やダストボックス、スツールといったプラスチック製品にも展開されている。2020年7月には使用済みの化粧水・乳液ボトルや、自分で詰める水のボトルの回収がスタートし、2023年2月には対象アイテムがプラスチック製の収納用品や家具にまで拡大された。回収したPET素材のボトルは、ポリエステル原料としてリサイクルされている。つまり「服を再び服の原料に」というだけでなく、「日用品のボトルを衣料品の原料に」「衣料品を再び衣料品に」という複数のルートが同時に走っている点が、無印良品の資源循環を単発のキャンペーンではなく仕組みとして機能させている理由だ。

無印良品の資源循環、3つの入り口

  • 衣料品の回収(2015年〜):着られなくなった服を店頭で回収し、ReMUJIとして再生・再販売
  • PETボトルの回収(2020年7月〜):化粧水・乳液ボトルや詰め替え水のボトルを回収しポリエステル原料へ
  • パッケージの簡易化(2020年春夏〜):インナー商品の紙化でプラスチック使用量を削減
このページを見る無印良品 こだわりの再生素材ペットボトルからつくる再生ポリエステルなど、衣料品に使う再生素材の取り組みを紹介🔗 muji.com

ペットボトルはどうやって生地に生まれ変わるのか

再生ポリエステルの原料になるのは、私たちが飲料を飲んだあとに資源ごみとして出すペットボトルだ。回収されたペットボトルは、ラベルとキャップを外され、粉砕・洗浄されたのち、次のような工程を経て生地になる。

フレークからペレット、そして糸へ

  1. 回収・選別:市町村や店頭で回収されたペットボトルを、色や材質で選別する
  2. 粉砕・洗浄:ラベルとキャップを外し、細かく砕いて「フレーク」と呼ばれる砕片にする
  3. ペレット化:フレークを溶かし、粒状の「ペレット」という原材料に戻す
  4. 溶融紡糸:ペレットを再び溶かし、細い糸状に押し出して繊維(再生ポリエステル糸)にする
  5. 織り・編み:糸を織ったり編んだりして生地に仕上げ、フリースやTシャツなどの製品になる

この工程は「マテリアルリサイクル(機械的リサイクル)」と呼ばれる方式にあたる。ペットボトルの主成分であるPET樹脂は、熱を加えれば溶かして再び糸に紡げる性質を持っており、この性質を利用することで、一度製品になった樹脂を繰り返し別の形へ作り替えることができる。ただし溶融・紡糸を繰り返すたびに樹脂の分子量がわずかに低下し、強度や透明感が落ちていくため、無制限に同じ品質で再生し続けられるわけではない。

石油由来ポリエステルとの違い

通常のポリエステルは原油由来のナフサを原料に一から合成されるのに対し、再生ポリエステルはすでに一度製品として使われたPET樹脂を再利用する。原料調達の段階で新たな化石由来原料の使用量を抑えられる点が、環境負荷低減の観点での利点とされている。生地としての質感や耐久性は生産方法によって差があり、無印良品の「素材に還るフリース」のように、軽さや柔らかな着心地を保ちながら再生素材100%を実現する製品開発が続けられている。

「カスケードリサイクル」という位置づけ

ペットボトルを繊維に作り替えるリサイクルは、業界では「カスケードリサイクル」と呼ばれることが多い。もとの製品(ボトル)よりも品質要求が緩やかな別の用途(繊維)へ形を変える再生方法という意味で、後述する「ボトルtoボトル」(同じ用途への水平リサイクル)とは区別される。繊維になった再生ポリエステルは、その後さらに他の製品へ作り替えることが難しくなる場合が多く、リサイクルの「出口」のひとつとして扱われている。無印良品のような衣料品ブランドが再生ポリエステルの受け皿になることは、ペットボトルという資源に新たな行き先を与える意味を持つ。

原料調達で化石由来資源への依存を減らす

通常のポリエステル生産は、原油からナフサを取り出し、そこから化学合成でPET樹脂を作るところから始まる。これに対して再生ポリエステルは、すでに合成済みのPET樹脂(使用済みペットボトル)を溶かして紡ぎ直すだけでよく、原料をゼロから合成する工程を省略できる。この違いから、再生ポリエステルの活用は新たな化石由来原料の使用量を抑える手段のひとつとして位置づけられている。ただし、回収・洗浄・溶融・紡糸のそれぞれの工程にもエネルギーが必要であり、「再生素材だから環境負荷がゼロになる」わけではない点には注意が必要だ。あくまで「新たに原油から作るポリエステル」と比べた場合の相対的な負荷低減として理解するのが実態に近い。

石油由来ポリエステル再生ポリエステル
主な原料原油由来のナフサ使用済みペットボトル(PET樹脂)
原料調達の起点化学合成で一から樹脂を作るすでにある樹脂を溶かして紡ぎ直す
化石由来原料の使用新たに必要相対的に抑えられる
繰り返し再生できる回数溶融・紡糸のたびに品質がわずかに低下するため限りがある
石油由来ポリエステルと再生ポリエステルの違い(一般的な特徴の比較)

無印良品だけでなく広がりつつある採用

使用済みペットボトル由来の再生ポリエステルは、無印良品に限らず、アウトドアブランドやスポーツブランドを含む幅広いアパレル企業で採用が進んでいる素材だ。フリースやTシャツ、バッグなど、比較的シンプルな構造の製品から採用が広がってきた背景には、単一の樹脂で作りやすく、再生ポリエステル糸への置き換えがしやすいという製品特性がある。無印良品の取り組みは、こうした業界全体の流れの中に位置づけられる一例と言える。

ペットボトルが砕かれてフレークになり、ペレット、糸、生地へと変化していく工程の図解
使用済みペットボトルが再生ポリエステルの生地になるまでの5つの工程

「素材に還るフリース」という発想

無印良品は2024年9月、「素材に還るフリース」シリーズを発売した。2025年9月には紳士・婦人・キッズを合わせて10アイテムへとラインアップを拡大している。このシリーズの最大の特徴は、生地だけでなく製品を構成するすべてのパーツをPET100%の単一素材でそろえた点にある。

身生地からボタン・縫製糸まですべてPET100%

良品計画の発表によれば、身生地はペットボトルを主原料とした再生PET100%素材を使用し、ボタンなどの付属品や縫製糸に至るまで、すべての製品パーツにPET(ポリエチレンテレフタレート)100%の原料を採用している。婦人・紳士向けはカーディガン・プルオーバーがそれぞれ税込2,990円、キッズ向けはカーディガンが税込2,490円で展開されている。生地の風合いも重視されており、軽量で程よい膨らみと柔らかな着心地を持つフリース素材に仕上げられている。

なぜ単一素材にこだわるのか

衣料品には一般的に、生地・裏地・ボタン・ファスナー・縫製糸など複数の異なる素材が組み合わされている。素材が混在していると、リサイクルの際に手作業での分解・分離が必要になり、コストと手間がリサイクルの障壁になりやすい。「素材に還るフリース」は全パーツをPET単一素材にそろえることで、この分解・分離工程を不要にし、使用後に再資源化しやすい設計を実現した。あわせて、洗濯時に繊維くずが流出しにくい専用の洗濯ネットも開発・販売されている。

マイクロプラスチック対策までを一体で設計

再生ポリエステルの衣料品をめぐっては、洗濯のたびに微細な繊維くず(マイクロファイバー)が排水を通じて流出し、河川や海のマイクロプラスチック汚染の一因になりうるという指摘がある。「素材に還るフリース」で繊維くずを通しにくい洗濯ネットが同時に開発・販売されたのは、この課題を意識した対応と見ることができる。原料の入り口(ペットボトルの回収)と出口(着用後の洗濯・廃棄)の両方に目を向けた設計思想が、このシリーズの特徴だと言える。

良品計画は発表の中で、単一素材化のねらいについて「使用後に再資源化しやすいように」という趣旨を説明している。分解や分離といった手作業の工程を挟まずに済むことは、リサイクル事業者にとってのコスト面のハードルを下げることにもつながる。

この記事の要点となる3つの数字をまとめた図版
数字で見る:本文で扱う3つの指標

無印良品の資源循環の広がり:衣料品回収からReMUJIへ

再生素材を使った新商品の開発と並行して、無印良品はすでに着られなくなった衣料品を回収する取り組みを長年続けてきた。その歴史は「素材に還るフリース」の発売より10年以上さかのぼる。

2010年のFUKU-FUKUプロジェクトから

無印良品の衣料品回収の起点は2010年にさかのぼる。当初は「FUKU-FUKUプロジェクト」として、回収した綿製品をバイオエタノールへ再生する取り組みが行われた。2015年10月までに全国約350店舗で回収が実施され、約60トンの繊維製品がエネルギーとして再生されたと報告されている。ここでの回収を通じて、実際には着用可能な状態の衣料品が数多く含まれていることが分かり、これが次のステップである「ReMUJI」誕生のきっかけになった。

2015年に始まった「ReMUJI」と2025年の10周年

こうした経緯から2015年、古着を染め直したり、破れた部分に日本古来の刺し子文化を着想源にした補強を施したりして再販売する「ReMUJI」プロジェクトが始まった。回収量・販売数量は年々増加しており、取り扱い店舗数は2025年8月末時点で43店舗まで拡大している。2025年は衣服リユース商品の販売開始からちょうど10周年にあたり、記念企画が実施された。そして2025年3月からは、ReMUJIという名称そのものが、衣料品回収だけでなく生活雑貨・家具の再販も含めた、無印良品の資源循環の取り組み全体を指す総称として使われるようになっている。

生活雑貨・家具にも広がる再販

ReMUJIは当初、衣料品の染め直しや補強修理を中心とした取り組みだったが、現在は生活雑貨や家具の再販にも対象が広がっている。回収した什器やプラスチック製の収納用品を点検・清掃したうえで再び店頭に並べる仕組みが加わり、「回収して原料に戻す」ルートと「回収してそのまま再び使う」ルートの両方が、資源循環の選択肢として用意されている状態になっている。どちらのルートを選ぶかは、回収された製品の状態によって振り分けられる。

回収したPET素材はポリエステル原料へ

衣料品だけでなく、プラスチック製品の回収と再生素材化も進んでいる。2020年7月からは使用済みの化粧水・乳液ボトルや、店頭で詰め替える水のボトルの回収を開始し、回収したPET素材のボトルをポリエステル原料にリサイクルする仕組みを構築した。2023年2月には対象アイテムをプラスチック製の収納用品やダストボックス、スツールにまで広げている。こうした回収網の広がりが、再生ポリエステルを使った新商品の原料供給を下支えしている。

同じようにリサイクル素材を軸にした衣料品ブランドの取り組みとして、モンベルのリサイクル素材ウェアも参考になる。長く使える設計と再生ポリエステルを組み合わせるアプローチは、無印良品とも共通している。

商品を見る無印良品「素材に還るフリース」シリーズ 10アイテム発売身生地からボタン・縫製糸まで全パーツをPET100%にした易リサイクル設計のフリース🔗 ryohin-keikaku.jp

なぜ海と関係があるのか:ペットボトルとプラスチックごみ

衣料品のリサイクルは一見すると海とは縁遠い話に思えるかもしれない。しかし、原料であるペットボトルは、適切に回収・リサイクルされなければ、河川を通じて海に流出しうるプラスチックごみの代表格でもある。

海洋ごみの多くを占めるプラスチック類

環境省が実施した海洋ごみ調査では、容積・個数ベースでプラスチック類が最も高い割合を占めることが報告されている。また海岸で回収されたペットボトルの製造国別割合を見ると、奄美では外国製が8割以上、対馬・種子島・串本・五島でも外国製が4〜6割を占める地点がある一方、根室・函館・国東では日本製が5〜7割を占めるなど、地域によって流出元の傾向が異なることも分かっている。つまり日本の海岸に漂着するペットボトルごみは、国内で処理されなかったものだけでなく、海流に乗って周辺国から流れ着いたものも多く含まれている。

陸で捨てられたペットボトルが海へ向かう経路

海洋プラスチックごみの多くは、海で直接捨てられるのではなく、陸上で適切に処理されなかったごみが河川などを通じて海へ流れ出すことで発生するとされる。ペットボトルを含むプラスチック製品を確実に回収し、資源として再利用するリサイクルの仕組みを機能させることは、海に流出するプラスチックの絶対量を減らすための土台となる。無印良品のようなアパレル企業が使用済みペットボトルを積極的に生地の原料として引き受けることは、この回収・再利用のサイクルに新たな出口を作る意味を持つ。

分解されにくいというプラスチックの性質

PET樹脂を含むプラスチックは、自然環境の中では微生物によって速やかに分解される素材ではなく、紫外線や波の力で徐々に細かく砕けていくだけで、長期間にわたり環境中に残り続けることが知られている。そのため、一度海に流出したペットボトルを回収・除去することは容易ではなく、そもそも海に流出させないための「入り口」対策として、陸上での回収・リサイクル体制の整備が重視されている。無印良品を含む企業の再生素材活用は、この入り口対策の一部として位置づけられる。

衣料品メーカーの再生素材活用が海の話題である理由

「衣料品の素材」と「海洋プラスチック問題」は別々の話題に見えるが、両者をつなぐのは原料であるペットボトルそのものだ。ペットボトルが正しく回収され再生素材として使われるルートが増えるほど、廃棄されて自然環境に流出する量は相対的に減っていく。逆に言えば、回収されたペットボトルの行き先を広げる取り組み——今回取り上げた無印良品の衣料品のような「出口」の拡大——は、海洋プラスチック対策の裏方として機能している。海の学習という切り口から見たとき、店頭に並ぶフリース1枚も、資源循環という大きな仕組みの一部として捉えることができる。

河川から海へプラスチックごみが流出していく様子を俯瞰した図解イラスト

日本のPETボトルリサイクルは世界でもトップクラス

無印良品が再生ポリエステルの原料を安定して確保できる背景には、日本のペットボトル回収・リサイクル体制の高さがある。

リサイクル率85.1%の内訳

PETボトルリサイクル推進協議会が公表した年次報告書によると、2024年度の使用済みPETボトルのリサイクル率は85.1%だった。指定PETボトルの販売量652千トンに対し、市町村と事業系を合わせた回収量は600千トン(回収率91.9%)。総回収量723千トンのうち570千トンが国内でリサイクルされ、残りは海外へ輸出されている。前年度にあたる2023年度もリサイクル率85.0%、軽量化率28.4%と、いずれも協議会の目標水準を上回る結果になっている。

指標2024年度の実績
指定PETボトル販売量652千トン
回収量(市町村+事業系)600千トン(回収率91.9%)
リサイクル率85.1%
総回収量723千トン
国内利用量570千トン
PETボトルリサイクル推進協議会「PETボトルリサイクル年次報告書2025」より

「ボトルtoボトル」という水平リサイクル

使用済みペットボトルを再びペットボトルとして再生する「ボトルtoボトル」(水平リサイクル)の比率は2023年度時点で33.7%に達している。この仕組みについてはボトルtoボトル水平リサイクルとはで詳しく解説している。一方、無印良品の再生ポリエステルのように、ペットボトルを繊維など別の製品に再生する経路は前述の「カスケードリサイクル」にあたり、ボトルtoボトルとは別の重要な受け皿になっている。

高いリサイクル率を支える仕組みと残る課題

日本のPETボトルリサイクル率の高さは、家庭ごみの分別収集や店頭回収、自動販売機横の回収ボックスなど、消費者の分別行動を前提とした回収インフラが全国に整備されていることに支えられている。市町村による分別収集と、飲料メーカーや小売店による事業系の店頭回収という2つのルートが並行して機能している点も、回収率91.9%という高い水準を支える要因のひとつだ。一方で、色付きボトルやラベル・キャップの混入、複数素材が組み合わさった容器などは選別・再生のコストを押し上げる要因になり、すべてのペットボトルが高品質な再生原料になるわけではない。無印良品のような衣料品向けの需要は、こうした再生原料の「出口」を広げる役割も担っている。

日本のPETボトルリサイクル率の推移を示す棒グラフ風のインフォグラフィック

ペットボトルを回収する側の取り組みとの違い

無印良品は再生ポリエステルを「使う」側の企業だが、原料であるペットボトルを「集めて元のボトルに戻す」側の企業も存在する。両者の役割の違いを知ると、ペットボトル1本がたどる道筋がより立体的に見えてくる。

飲料メーカーによる「ボトルtoボトル」の取り組み

たとえばコカ・コーラは一部商品で100%リサイクルPETボトルを採用し、使用済みボトルを再びボトルとして再生する「ボトルtoボトル」の仕組みを進めている。この取り組みはコカ・コーラの100%リサイクルPETボトルとはで詳しく解説している。飲料メーカーはボトルのまま循環させることを目指す一方、無印良品は同じ原料をあえて別の用途である衣料品に振り向けている点で、資源の使い道が異なっている。

「ボトルtoボトル」と「ボトルto衣料品」は補完関係にある

回収された使用済みペットボトルは、品質やコストの条件が合えば同じボトルへ再生する「ボトルtoボトル」に回され、条件が合わない、あるいは繊維向けの需要がある分は無印良品のような衣料品メーカーによる「カスケードリサイクル」に回される。どちらか一方だけでは、回収されたすべてのペットボトルを受け止めきれない。飲料メーカーの水平リサイクルと、アパレルメーカーの繊維リサイクルが並走することで、はじめて回収したペットボトルの大部分を国内で資源として使い切る体制が成り立っている。

商品を選ぶときに消費者ができること

再生ポリエステルの生地は、原料となるペットボトルが正しく回収されて初めて成り立つ。回収から生地への加工、商品化までのすべての工程は、もとをたどれば一人ひとりがペットボトルをどう捨てるかという、日常のちょっとした選択の積み重ねの上に成り立っている。

「PET100%」「リサイクル素材」の表示を見る

衣料品を選ぶとき、タグや商品説明にある「再生ポリエステル」「リサイクルPET」といった表示を確認する習慣は、再生素材を使う企業への後押しになる。無印良品に限らず、こうした表示を採用するブランドは増えており、選ぶ側の意識が需要を作っていく側面がある。「素材に還るフリース」のように税込2,000円台という比較的手に取りやすい価格帯で展開されている商品もあり、再生素材だからといって特別に高額になるとは限らない点も選択のハードルを下げている。

長く使う・正しく手放すという循環への参加

再生素材を使った商品であっても、短期間で使い捨てにしてしまえば資源循環としての効果は限定的になる。まずは今持っている衣料品を長く大切に使うこと、そのうえで着られなくなったら家庭ごみとして捨てるのではなく、資源回収や店頭回収に出すことが、循環の輪を閉じるうえで重要になる。「新しく再生素材の服を買う」ことと「今ある服を長く着る・正しく手放す」ことは、どちらか一方ではなく両方がそろって初めて、資源循環という言葉が意味を持つ。

回収ボックスの見つけ方

無印良品の店舗では、衣料品回収やプラスチック製品の回収の対象・受付場所が店舗ごとに案内されている。回収キャンペーンの実施時期や対象アイテムは変更されることがあるため、持ち込む前に公式サイトや店頭掲示で最新の対象品目を確認しておくと確実だ。自治体の資源ごみ収集を利用する場合も、ペットボトルはラベル・キャップを外し、中をすすいでからつぶして出すことで、選別・再生の工程がスムーズになる。

循環に参加する3つの行動

  • ペットボトルはラベル・キャップを外し、つぶしてから資源ごみとして正しく分別する
  • 着られなくなった衣料品は自治体の資源回収や店頭の衣料品回収ボックスに出す
  • 「再生素材」「PET100%」などの表示がある商品を選択肢のひとつに入れる

こうした行動そのものは小さくても、リサイクル率85.1%という日本の実績は、一人ひとりの分別と、企業側の回収・製品化の努力が積み重なって成立している数字である。

まとめ:小さな衣料品選びが循環をつくる

無印良品の再生ポリエステルは、使用済みペットボトルという身近な資源を、フレーク・ペレット・糸という工程を経て衣料品の生地に変える取り組みだ。「素材に還るフリース」が示す単一素材へのこだわりは、着終えたあとの再資源化のしやすさまで見据えた設計思想であり、2010年のFUKU-FUKUプロジェクトから2015年の衣料品回収開始、そして2025年のReMUJIへと続く歴史とあわせて、無印良品の資源循環方針を体現している。1枚のフリースの裏側には、原料の回収網、加工の工程、販売後の再回収という3段階の仕組みが積み重なっている。

そしてその原料であるペットボトルは、正しく回収されなければ海洋プラスチックごみになりうる存在でもある。85.1%という日本のPETボトルリサイクル率は世界的にも高い水準だが、この数字を維持し、さらに再生素材の用途を広げていくには、分別という消費者側の小さな行動の積み重ねが欠かせない。飲料メーカーによる「ボトルtoボトル」と、アパレルメーカーによる衣料品への再生は、どちらか一方が欠けても回収されたペットボトルの受け皿は狭くなる。次に衣料品を選ぶとき、タグに書かれた「PET100%」の文字に少し目を留めてみてほしい。

この記事のポイントを箇条書きでまとめた図版
この記事のポイント。詳しくは各章で解説している

この記事のまとめ

  • 無印良品の再生ポリエステルは使用済みペットボトルが主原料。フレーク→ペレット→糸→生地の工程で生まれ変わる
  • 「素材に還るフリース」は身生地からボタン・縫製糸まで全パーツをPET100%にした易リサイクル設計
  • 無印良品は2010年のFUKU-FUKUプロジェクト、2015年の衣料品回収を経て、2025年からReMUJIが資源循環の総称に
  • 日本のPETボトルリサイクル率は2024年度で85.1%、世界的にも高水準
  • ペットボトルの正しい分別が、海洋プラスチックごみの抑制にもつながる

参考文献・出典

  1. 環境省「海洋プラスチックごみ流出量の推計」 – 水・土壌・地盤・海洋環境の保全
  2. 環境省「令和元年度海洋ごみ調査の結果について」 – 報道発表資料
  3. PETボトルリサイクル推進協議会「PETボトルリサイクル年次報告書2025」 – 2024年度実績データ
  4. 株式会社良品計画「無印良品『素材に還るフリース』シリーズ 10アイテム発売」 – ニュースリリース 2025年9月17日
  5. 株式会社良品計画「無印良品『素材に還るフリース』シリーズ 発売のお知らせ」 – プレスリリース 2024年9月
  6. 株式会社良品計画「衣服リユース商品の販売開始10周年を記念して『ReMUJI』」 – ニュースリリース 2025年9月19日
  7. 株式会社良品計画「資源循環」 – サステナビリティ
  8. 無印良品「こだわりの再生素材」 – 特集ページ

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