⚡ 30秒でわかる答え

  • Sealand Gearは2015年創業。ケープタウンで、ヨットの帆・テント・広告幕などを手仕事でバッグに作り替えるブランドです。
  • 素材は使用済みの廃材から、B級品・端材などの製造段階の余剰へと重心が移っています(公式ブログ)。
  • 漁網や海洋ごみを直接再生するブランドではありません。この点は他社製品と混同しないよう注意が必要です。
  • 生涯保証と修理で長く使う設計が特徴。環境効果の数字は自社公表として読むのが適切です。
2015年
ケープタウンで創業
年約5t
埋立を避けた廃棄物(会社公表)
24人
フルタイム従業員(記事掲載時点)

ヨットの帆がバッグになる――南アフリカ・ケープタウンのSealand Gear(シーランド・ギア)は、屋外で使われて役目を終えた丈夫な布を、一点ものの鞄に作り替えるブランドです。

素材は帆・テント・広告幕・幌・シートベルトなど。創業当初は使用済みの廃材が中心でしたが、現在はB級品や端材が主力になっています。

この記事では、公開情報にもとづいて素材・作り方・数字・注意点を整理します。漁網由来の製品との違いもあわせて確認します。

この記事で学べること

  • Sealand Gearとはどんなブランドか
  • バッグに使われる素材(帆・テント・広告幕)
  • 素材調達が使用済みからB級品・端材へ移った理由
  • 生涯保証と修理という長く使う設計
  • 公表されている数字の読み方と限界
  • 漁網由来製品との違い

Sealand Gearとは|ケープタウン発の再利用アウトドアブランド

2015年に創業した南アフリカのブランド

Sealand Gear(シーランド・ギア)は、南アフリカ・ケープタウンを拠点とするアウトドアバッグ・アクセサリーのブランドです。創業者はサーファーでもあるマイク・シュレバック(Mike Schlebach)氏と、プロダクトデザイナーのジャスパー・イールズ(Jasper Eales)氏の2人。デザイン情報サイトDesign Indabaの紹介記事によると、ブランドは2015年初頭に立ち上がり、同年12月1日に製品を発売しました。

最大の特徴は、新しい素材から作らず、すでに役目を終えた(または使われないまま余った)丈夫な布を集めて鞄にする点です。代表的な素材は、ヨットの帆、ストレッチテント、広告用のビルボード幕、トラックの幌(ほろ)、シートベルトなど。屋外で風雨や紫外線に耐えてきた素材なので、もともと強く、防水性にも優れています。

本記事は、商品紹介として実在の取り組みを中立的に整理するものです。購入をすすめる広告ではなく、素材・作り方・数字・注意点を公開情報にもとづいて解説します。

「アップサイクル」とは何か

リサイクルが「素材をいったん溶かしたりほぐしたりして作り直す」ことだとすると、アップサイクルは元の形や質感を活かしたまま、別の価値ある製品に作り替えることです。再加工のためのエネルギーや薬品が少なくて済む一方、素材の大きさや状態が一定でないため、量産や品質管理が難しいという課題もあります。

考え方加工の程度Sealandでの例
リサイクル素材を分解・再生する(主軸ではない)一部でPETボトル由来の再生繊維「Recover」を使用した例がある
アップサイクル形・質感を活かして作り替えるヨットの帆・テント生地をそのまま鞄の外装にする
ダウンサイクル品質の低い用途へ転用する(Sealandは耐久性重視のため逆の方向を目指す)
リサイクル・アップサイクル・ダウンサイクルの違い

この節のポイント

  • Sealandは2015年創業、ケープタウン拠点
  • 素材は帆・テント・広告幕など、屋外用の丈夫な布
  • 新品の素材を使わず、形を活かして作り替える「アップサイクル」が中心

素材の正体|帆・テント・広告幕・シートベルト

鞄の各パーツは何でできているか

ケープタウンのメディアの紹介によると、Sealandの鞄は部位ごとに異なる廃材を使い分けています。外側にはテントの帆布(キャンバス)やヨットの帆、内側のライニング(裏地)には広告用のバナー、持ち手にはシートベルトのストラップ。アップサイクル専門メディアUpcycleThatのインタビューでは、さらに1トン入りの砂糖袋のウェビング(帯状の織物)も持ち手に使われていると紹介されています。

パーツ使われる素材もとの用途
外装ヨットの帆・ストレッチテント・トラックの幌風雨や日射にさらされる屋外用
内張り広告用バナー・ビルボード幕店頭や屋外の広告
持ち手・ストラップシートベルト・砂糖袋のウェビング荷重に耐える帯
Sealandのバッグを構成する主な素材(公開情報より)

なぜ帆やテントが鞄に向くのか

ヨットの帆は、強風を受け止め、海水や紫外線にさらされ続けても形を保つ必要があります。そのため引き裂き強度や耐候性が高く、繰り返し使う鞄の素材としても理にかなっています。テントやトラックの幌も、雨風をしのぐために作られた防水性の高い布です。

  • 強度:屋外で張力を受け続ける設計のため、ほつれにくい
  • 防水・耐候性:雨・潮風・紫外線を前提にしている
  • 色柄の個性:帆のロゴや縫い目、退色がそのままデザインになる
ヨットの帆やテント生地、広告幕が作業台の上に並び、鞄の型に切り出されていくイメージ
帆やテント生地などの廃材を選び、鞄の部品に切り出すイメージ(AI生成)

「漁具を使っている」わけではない点に注意

「海の廃材を再利用したバッグ」と聞くと、廃棄された漁網(ナイロン)を再生した製品を思い浮かべる人もいます。しかし、今回確認できたSealandの公開情報(Design Indaba、UpcycleThat、同社ブログ、Cape Town Magazineなど)では、素材として漁網や漁具が挙げられているものは見当たりません。主な素材はヨットの帆・テント・広告幕・幌・シートベルトなど、陸上や海上で使われた布製品です。漁網由来の製品については、ECONYLとは|廃棄漁網が水着やバッグになる仕組みなどをあわせて読むと違いがわかります。

混同しないために

  • Sealandの主素材は「帆・テント・広告幕・幌」で、漁網・漁具ではない
  • 海洋プラスチックを直接回収した製品という公表もない
  • 「海に関係する素材=海洋ごみ由来」とは限らない

素材調達の変化|使用済みの廃材からB級品・端材へ

創業当初は「使用済み」が中心だった

Sealandの公式ブログ「Where Does Our Waste Come From?」によると、創業当初の素材は消費後(ポスト・コンシューマー)の廃材が中心でした。具体的には、ヨットの帆、ビルボード、トラックの幌、ストレッチテント、広告バナー、古いシートベルトなどです。

ただし同ブログは、使用済みの帆にはカビや汚れ、しみが残っていて、できる限り洗っても完全には落ちないことがあったと説明しています。鞄という毎日使う製品の素材として、品質を安定させるのが難しい面があったということです。

現在は「B級品・端材」が主力に

同ブログによれば、現在の主力は製造段階で生じる余剰素材(プレ・コンシューマー)です。具体的には、傷・しわ・染めムラなどでB級とされたヨットの帆、帆メーカーの端材(オフカット)、ナイロンのリップストップ生地、キャンバス生地、過剰生産による在庫、用途に使うには小さすぎる生地の残りなどが挙げられています。提携先は「屋外用途に適した高品質な素材を作る工場・繊維メーカー」とされ、社名は公開されていません。

区分内容特徴
消費後(ポスト・コンシューマー)使用済みの帆・テント・看板幕・幌など個性は出るが、汚れやカビなど品質のばらつきが大きい
製造段階(プレ・コンシューマー)B級品・端材・余剰在庫・小さな生地残り品質が安定し、量を確保しやすい
Sealandの素材調達の2系統(公式ブログの説明にもとづく)

この変化をどう読むか

「使い終わった廃棄物を拾う」というイメージからは少し離れますが、製造現場で捨てられる前の素材を救うという意味で、廃棄物削減には依然として意義があります。一方、読者としては「どの素材が使用済みで、どれが端材か」が製品ごとに違う点を理解しておくと、ブランドの説明を正確に受け取れます。

注意して見たい点

  • 「廃材」には使用済みと、製造段階の余剰の2種類がある
  • 提携する工場名や供給量は公表されておらず、第三者検証の情報は確認できない
  • 環境効果の数字は会社側の公表値として読む
この記事の要点となる3つの数字をまとめた図版
数字で見る:本文で扱う3つの指標

手仕事のものづくり|ハウトベイの工房と「一点もの」

ケープタウン郊外の工房で手作業

Cape Town Magazineによると、鞄はケープタウン南部のハウトベイ(Hout Bay)にある同社の工房で作られています。UpcycleThatの紹介では、裁断室のスタッフが生地を選び、縫製スタジオの縫い子たちが組み立てるという、手仕事を軸にした工程が描かれています。

素材は、色や柄を見て一つずつ選ばれます。そのため、同じ型の鞄でも、二つとして同じ見た目のものはないとされます。Design Indabaの記事にも「すべてのアップサイクル製品は100%ユニーク」という創業者の言葉が載っています。

「直して使う」という思想

Sealandは、アップサイクル製品に生涯保証(ライフタイム・ギャランティ)を付けています。Cape Town Magazineには「私たちは交換ではなく修理を信じる」という趣旨の考え方が紹介され、傷んだ製品を送れば修理を受けられる仕組みがあります。環境面では、素材を再利用するだけでなく、製品自体を長く使えるようにすることも同じくらい重要です。

  • 裁断:生地の色柄・状態を見て部位ごとに選ぶ
  • 縫製:縫い子のチームが手作業で組み立てる
  • 保証・修理:生涯保証と修理対応で買い替えを減らす
工房で縫い子が帆の生地を使ってバッグを縫い上げている様子
手仕事で1点ずつ縫い上げるイメージ(AI生成)

雇用とコミュニティへの効果

Green Economy Mediaの記事によれば、同社は記事掲載時点で24人のフルタイム従業員を抱えていました。廃材の再利用が、現地の縫製・裁断の雇用を生み出している点も、アップサイクル事業の特徴です。

ロゴや縫い目が「デザイン」になる

帆には、セールナンバーや船体のロゴ、補強用の縫い目が入っていることがあります。Sealandのように廃材を活かす鞄では、こうした痕跡がそのままデザインの一部になります。工業製品のような均一さはありませんが、「この鞄は何だったのか」を想像できることが、愛着を生む理由にもなります。

購入者として知っておきたいこと

  • 色ムラ、小さな擦れ、折りじわなどは、素材の特徴であり不良ではない場合がある
  • 写真の個体と届く個体が異なる可能性があるので、購入前に説明を読む
  • 生地の厚みや硬さはやや強い傾向があり、軽さよりも耐久性を重視した設計である
  • 気になる点は、購入前に販売元へ問い合わせる

「完璧に均一」であることを求める人には向かない一方、使い込むほど味が出ることを価値と感じる人には合うでしょう。こうした「不完全さを受け入れる」姿勢は、廃棄を減らす消費の一つの形です。

コラム:アップサイクル製品のよくある誤解

  • 「廃材を使っている=必ず環境にいい」とは限らない。新品の鞄を増やすより、すでにあるものを使い切るほうが負荷は小さい
  • 「手作り=高品質」とも限らない。保証や修理の体制も見て判断する
  • 「海に関係する素材=海洋ごみを回収している」とは限らない

製品ラインアップと使い方

リュック、トート、ダッフルからポーチまで

UpcycleThatの紹介などによると、主な製品には次のようなものがあります。製品名は時期によって入れ替わる可能性があるため、最新のラインアップは公式サイトで確認してください。

製品名(例)種類用途のイメージ
Dune Duffelダッフルバッグ(複数サイズ)旅行・ジム・週末の小旅行
Jolla Backpackバックパック通勤・通学・日帰りのアウトドア
Tommy Toteトートバッグ日常の買い物・ビーチ
Toastie Pouchesポーチ(S/M/L)小物・洗面用具の整理
Choob Medium筒型バッグ(帆生地のバージョンあり)ウォータースポーツ・ジム
Sealandの代表的な製品(UpcycleThatの紹介より。ラインアップは変更される場合あり)

Cape Town Magazineは、このほかにTシャツ、キャップ、フェイスマスク、サーフボードなども扱っていると紹介しています。サーファーである創業者らしく、海辺やアウトドアでの使用を想定した製品が多いのが特徴です。

使うときの注意

  • 色柄は個体差が大きい:写真と同じ個体を買えるとは限らない
  • 防水性は素材に依存:完全防水をうたう製品でない限り、長時間の豪雨では中身が濡れる可能性がある
  • お手入れ:洗い方は素材や製品ごとに異なるため、公式の手入れ案内に従う
  • 重い荷物:丈夫な素材でも、持ち手や底の縫い目に負荷が集中しないよう詰め方を工夫する

購入前のチェックリスト

  • 公式サイトで素材・サイズ・保証内容を確認する
  • 個体ごとの色柄の写真を見て選べるかを確認する
  • 国際送料・関税・修理の出し方(海外発送)を事前に調べる

数字で見る効果と限界

会社が公表している数字

Green Economy Mediaが、ケープタウンのV&Aウォーターフロントに新店舗(Dock Road Junction内)が開いたことを伝えた記事には、次の数字が載っています。いずれも同社が公表した数値を報じたもので、算定方法の詳細や第三者による検証は、今回確認できた範囲では公開されていません。

項目公表内容
埋立を避けた廃棄物年間およそ5トン
CO2排出の抑制年間108トン
従業員数フルタイム24人(記事掲載時点)
売上の伸び年平均25%増
輸出比率12か月で売上の5%から40%へ拡大
Sealandが報じられた主な数字(Green Economy Media記事)

数字をどう読むか

年間5トンという量は、国全体の廃棄物量から見れば小さなものです。南アフリカでは、年間の廃棄物発生量が約1億トン規模とされ、埋立地の多くが基準を満たしていないとの報道もあります(2023/24年度の検査で60%が不適合と報じられた)。その中で、ブランド1社が動かせる量には限りがあります。

ただ、こうした事業の価値は量だけでは測れません。①廃材に「まだ使える素材」という価値を与える、②雇用を生む、③消費者に「捨てられる前の素材」という視点を伝える、といった波及効果があります。数字は「過大にも過小にも見ない」姿勢で読むのが適切です。

埋立地に積まれる布の廃材と、そこから選び出された帆生地が鞄になるまでの流れを示す図
廃材が製品になるまでの流れのイメージ(AI生成)

限界と課題

  • 素材の供給が不安定で、大量生産には向かない
  • 使用済み素材は汚れ・カビなど品質のばらつきがある(そのためB級品・端材へ比重が移った)
  • 環境効果の数字は自社公表で、第三者検証の情報が乏しい
  • 海外発送では輸送による環境負荷も発生する

小さな工房から海外展開へ

Green Economy Mediaの記事によれば、同社は店舗を持たずオンラインや高級小売店の取り扱いで売ってきたのち、ケープタウンのV&Aウォーターフロントに初の直営店を構えました。同記事は、輸出の売上比率が12か月で5%から40%に増えたこと、売上が年平均25%で伸びていることも伝えています。

環境に配慮した製品が、デザインや品質を評価されて海外の市場に広がることは、「環境にいい」だけでなく「欲しい」から選ばれるという好循環の例です。一方で、輸出が増えれば輸送による環境負荷も増えるため、事業の拡大とサステナビリティのバランスは常に問われます。

中小ブランドが抱えやすい課題

  • 廃材・端材の仕入れは量や品質が読みにくい
  • 手仕事のため、需要が増えても生産量を急に増やせない
  • 環境効果の算定や第三者認証にはコストがかかる
  • 模倣品やグリーンウォッシュ(実態より環境にいいと見せる宣伝)と区別されにくい

購入者としては、ブランドの説明をうのみにせず、素材・数字・保証の3点を自分の目で確認することが大切です。

海との接点|帆・海洋プラ・漁具アップサイクルとの違い

なぜ「海の学習」の視点でも紹介するのか

ヨットの帆は、海の上で働く布です。これを鞄に変える取り組みは、海で使われた素材を、陸上で長く使う製品に循環させる例と言えます。創業者の一人が、サーフィンを愛するスポーツ愛好家であることも、ブランドの世界観に海が深く関わっている理由です。

ただし、繰り返しになりますが、Sealandは海洋ごみや廃漁網を直接回収するブランドではありません。海の環境問題との関係を正しく理解するために、近い分野の取り組みと並べて整理しておきます。

取り組み主な素材海との関係
Sealand Gearヨットの帆・テント・広告幕など海で使われた帆も素材だが、海洋ごみの回収が目的ではない
ECONYL(再生ナイロン)廃棄漁網など海に流出する漁網を回収して再生する
REMARE海洋プラ・廃棄漁具など海洋ごみを建材・雑貨へアップサイクル
パタゴニア NetPlus廃棄漁網漁網を回収して帽子のつばなどに再生
海関連のアップサイクル事例の比較

詳しくは REMARE(リマーレ)とは?三重発・海洋ごみを蘇らせるアップサイクル素材 や パタゴニアNetPlus徹底解説 も参考になります。

布や繊維と海の問題のつながり

衣類や布製品の廃棄量は世界的に増えています。国連環境計画(UNEP)などの資料では、繊維廃棄物は年間約9,200万トンとされ、そのうち新しい衣類に再生される割合はごくわずかと言われます。合成繊維は洗濯や摩耗でマイクロファイバーを出し、それが最終的に海へ流れ込むことも問題視されています。

布を長く使い、廃棄を減らすことは、マイクロプラスチックの発生源を減らすという観点でも、海の保全につながる可能性があります。ただし、特定の製品がどれだけ海の環境に貢献するかを示す公的な数字は乏しく、過大評価は禁物です。

この節のまとめ

  • Sealandは海洋ごみ回収型ではなく、帆など「海で使われた布」の再利用型
  • 漁網・海洋プラ系ブランドとは出発点が異なる
  • 布を長く使うことは、廃棄と繊維由来のマイクロプラスチックを減らす方向に働く

帆はなぜ役目を終えるのか|素材の「第二の人生」を考える

セーリングの帆の寿命

ヨットの帆は、風を受けて形を保つことが性能の核心です。使い続けると、紫外線で生地が劣化したり、繰り返しの張力で生地が伸びて本来の曲面(シェイプ)が崩れたりします。形が崩れた帆は、見た目は使えても、レースや効率のよい帆走には向かなくなります。そのため、まだ破れていなくても「帆としての役目」を終えることがあります。

一般に帆の素材には、ポリエステル系の織物(ダクロンなど)や、フィルムと繊維を貼り合わせた積層素材が使われます。こうした素材は軽くて強く、水をはじくので、鞄や小物の素材としても再利用しやすい性質をもっています。ただし、積層素材は層がはがれやすいなど、素材ごとに向き不向きがあり、どの帆でも鞄にできるわけではありません。

捨てられる前に拾う、という発想

使われなくなった帆は、多くの場合、ヨットクラブの倉庫や船の隅で眠るか、廃棄物として処理されます。大きくて重く、素材の特性上リサイクルの仕組みも整っていないため、処理に手間がかかる廃棄物です。帆をそのまま材料にするSealandの方法は、分解・再生のための工程を省きつつ、素材の強さをそのまま活かせる点が特徴です。

観点帆をそのまま使う(アップサイクル)素材を分解して再生する(リサイクル)
必要なエネルギー裁断・縫製が中心で少ない溶融・紡糸などで多い傾向
素材の品質もとの強さ・耐候性を維持再生工程で品質が変わることがある
量産性生地の大きさ・状態に左右される原料を集めれば量産しやすい
デザイン一点ごとに個性が出る均質にそろえやすい
アップサイクルとリサイクルの比較(一般的な整理)

ここまでのポイント

  • 帆は「破れる前」に役目を終えることが多い
  • 形を活かすアップサイクルは加工の負荷が小さいが、量産には不向き
  • どの帆でも鞄にできるわけではない

日本で選ぶときの視点|サーキュラーな買い物のコツ

購入のしかた

Cape Town Magazineは、Sealandが英国、フランス、ニュージーランド、日本などでも取り扱われていると紹介しています。取扱店や在庫は変わるため、最新情報は公式サイトや各店で確認してください。

「環境にいい」を見極める5つの問い

  • 素材は何か:使用済みか、端材か、新品か
  • どれだけ長く使えるか:保証・修理の有無
  • 数字の根拠は何か:第三者検証か、自社公表か
  • 本当に必要か:買う前に手持ちで足りないか
  • 手放すときはどうするか:修理・譲渡・回収の方法

アップサイクル製品は、買うこと自体が環境にいいわけではありません。すでに持っているものを使い切ったうえで、必要なときに長く使えるものを選ぶことが、循環型の消費の基本です。より広い考え方は サーキュラーエコノミーとは|3Rを超える設計思想と海洋プラ削減・日本の実践例 でも解説しています。

まとめ

Sealand Gearは、ヨットの帆・テント・広告幕といった丈夫な布を、手仕事で一点もののバッグに作り替える南アフリカのブランドです。素材は使用済みの廃材から、B級品や端材へと重心が移っています。漁網や海洋ごみを直接再生するブランドではない点、環境効果の数字は自社公表である点に注意しつつ、「長く使い、直して使う」という考え方を学ぶ事例として参考になります。

この記事のまとめ

  • Sealandは2015年創業、ケープタウン拠点の帆・テント再利用ブランド
  • 素材は帆・テント・広告幕・幌など。漁具は確認できない
  • 生涯保証と修理で長く使う設計
  • 数字は自社公表。読み手は中立に確認する
この記事のポイントを箇条書きでまとめた図版
この記事のポイント。詳しくは各章で解説している

参考文献・出典

  1. Design Indaba|Sealand products are made from old stretch tents and boat sails – 創業時期(2015年)・素材・生涯保証
  2. Sealand Gear 公式ブログ|Where Does Our Waste Come From? – 素材の調達元(使用済み/B級品・端材)
  3. UpcycleThat|Meet The Upcyclers: Sealand – 素材・製品名・工程
  4. Cape Town Magazine|Sealand – ハウトベイの工房・修理思想・取扱地域
  5. Green Economy Media|Sealand brings its upcycled outdoor gear to new V&A precinct – 廃棄物5トン・CO2 108トン・従業員数(会社公表値)
  6. 国連環境計画(UNEP)|The environmental costs of fast fashion – 繊維廃棄物・ファッションと環境
  7. 南アフリカ 森林・漁業・環境省(DFFE)|National Waste Management Strategy 2020 – 南アフリカの廃棄物管理
  8. Mr Porter Journal|How South African Brand Sealand Is Crafting Outdoor Gear From Upcycled Waste – ブランド紹介

※ 信頼性の高い順に配列:政府機関・学術機関 > 査読済み論文 > 専門機関 > 信頼できるメディア