⚡ 30秒でわかる答え

  • FSC認証は「適切に管理された森林」から来た木材・紙であることを保証する国際的な制度で、紙ストローや紙カップの原料にも使われ始めている。
  • 外食大手のすかいらーくグループは2022年1月から国内約3,000店でFSC認証紙ストローを導入し、プラ製ストローの使用量を大きく減らした。
  • 一方で紙ストローの防水コーティングにPFAS(有機フッ素化合物)が使われている例が海外の調査で指摘されており、紙だからといって無条件に安全・環境に良いとは言えない面もある。
1億7,000万ha超
世界のFSC認証林の総面積(2026年時点)
89%削減
すかいらーくグループのプラ製ストロー使用量削減率(2018→2020年比)
90%
欧州で調査した紙ストローからPFASが検出された割合(アントワープ大学2023年研究)

コーヒーショップやファミリーレストランのドリンクバーで、プラスチックのストローが紙製に置き換わり、パッケージの端に緑色の木のロゴ「FSC」を見かけることが増えた。この認証マークは何を保証しているのか、紙にすれば海の問題は解決するのか——気になっても、なんとなく素通りしている人が多いのではないだろうか。

この記事では、FSC認証という国際的な森林認証制度の仕組みと、紙ストロー・紙カップが広がってきた社会的な背景、実際に導入している企業の事例を整理する。日本とEUで規制の対象や進み方がどう違うのかも見ていく。加えて、紙製品に対して近年指摘されている課題(PFASコーティングやリサイクルのしにくさ)についても、中立な立場で紹介する。

「プラから紙に変えたから安心」という単純な話ではなく、森林資源の管理・海洋プラスチック対策・製品としての機能性という複数の視点から、紙ストロー・紙カップを見つめ直すための材料を提供したい。

この記事で学べること

  • FSC認証が保証している内容と、FM認証・CoC認証という2種類の仕組みの違い
  • 紙ストロー・紙カップが広がった背景にある海洋プラスチック問題と、日本・EUの法規制の違い
  • すかいらーくグループなど、実際にFSC認証紙製品を導入した企業の実例
  • 紙製品にも指摘されているPFASコーティングやリサイクルの難しさという課題
  • デンマーク・EUで進むPFAS規制の動きと、日本の現状の違い
  • 買い物や外食でFSC認証マークを見分け、選ぶときに意識したいポイント

なぜ紙ストロー・紙カップが広がっているのか

紙ストローや紙カップが目立つようになった直接のきっかけは、海洋プラスチックごみ問題への社会的な関心の高まりと、それに続く国内外の法規制の強化だ。

世界と日本の海洋プラスチックごみの規模

使い捨てプラスチック問題の象徴として世界的に広まったきっかけの一つに、2015年に生物学者クリスティン・フィゲナー氏が撮影した動画がある。コスタリカ沿岸でウミガメの鼻の穴に深く刺さったプラスチックストローを、痛がるウミガメから抜き取る様子を記録したもので、動画はインターネット上で拡散され、企業や自治体がプラスチックストローの廃止・代替を検討する大きな後押しとなった。

英国のエレンマッカーサー財団が2016年に発表した報告書では、世界全体で少なくとも年間800万トンのプラスチックごみが海に流出していると推計されている。環境省が2023年度に行った推計では、日本国内から海洋へ流出するプラスチックごみの量は、発生源・品目別の積み上げ方式で約1万1,000〜2万7,000トン、マクロ統計を用いた方式で約2,300〜2万4,000トンとされ、調査手法によって幅があるものの、決して小さくない量が流出していることが分かる。ストローやカトラリーはこのうちの一部に過ぎないが、飲食店で日常的かつ大量に配られる使い捨て品であるため、対策の入り口として取り上げられやすい。

  • 世界全体の海洋プラスチック流出量:年間800万トン以上(エレンマッカーサー財団, 2016年)
  • 日本からの流出量推計:約2,300〜2万7,000トン/年(環境省, 2023年度推計)
  • 使い捨てストローはこのうち一部だが、飲食店で日常的に配られる点で目に触れる機会が多い

日本の12品目規制とEUの10品目禁止、対応の違い

日本では2020年7月にレジ袋の有料化が始まり、2022年4月には「プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律(プラスチック資源循環促進法)」が施行された。この法律は、ストロー・スプーン・フォーク・ナイフ・マドラー・ヘアブラシ・くし・剃刀・歯ブラシ・シャワーキャップ・ハンガー・衣類カバーの12品目を「特定プラスチック使用製品」として指定し、年間5トン以上使用する事業者に対し、有料化・代替素材への切り替え・提供の見直しなど使用の合理化を求めるものだ。禁止ではなく、事業者が自主的に工夫して減らすことを求める仕組みである点が特徴といえる。

一方でEUは2019年に「使い捨てプラスチック指令(Single-Use Plastics Directive)」を採択し、2021年7月3日から全加盟国で適用を開始した。ストローやマドラー、皿、カトラリーなど10品目について、プラスチック製品そのものの販売を禁止する、より強い規制だ。これらの品目はヨーロッパの海岸で見つかるごみの約70%を占めるとされ、代替可能な使い捨て製品を市場から締め出す形で対応している。日本の「合理化を促す」規制と、EUの「販売を禁止する」規制という違いを踏まえると、日本の外食・小売各社が紙製ストローへ切り替えているのは、法律の直接の強制ではなく、事業者側の自主的な取り組みという色合いが強いことが見えてくる。

コンビニ・小売業界の脱プラの流れ

ストロー以外にも、レジ袋の有料化を皮切りに、コンビニのおにぎり包材やペットボトルのラベルレス化、フォーク・スプーンの木製・バイオマス素材への切り替えなど、小売・外食の現場では使い捨てプラスチックを見直す動きが広がってきた。紙ストロー・紙カップの導入は、こうした一連の脱プラ施策の中の一つの取り組みとして位置づけられる。

カフェのドリンクバーで紙ストローが並んでいる様子
外食チェーンのドリンクバーでは紙製ストローへの切り替えが進んでいる

FSC認証とは何か|森を守るための国際的な仕組み

FSC(Forest Stewardship Council:森林管理協議会)は、1993年にカナダで設立された国際的な非営利組織で、「適切に管理された森林」から生産された木材・紙製品を認証する制度を運営している。違法伐採や森林破壊につながる木材の流通を防ぎ、生態系や地域社会に配慮した森林管理を広げることを目的とする。

世界の森林はどれくらい減っているのか

FSCが生まれた背景には、世界的な森林減少への危機感がある。国連食糧農業機関(FAO)が公表している「世界森林資源評価(Global Forest Resources Assessment)」によると、世界の森林は2015〜2025年の間、年平均412万ヘクタールのペースで純減少している。1990〜2000年の年平均1,070万ヘクタールに比べると減少速度は長期的に緩やかになってきているものの、依然として毎年、日本の森林面積の6分の1に近い広さの森が失われ続けている計算になる。地域別では南米が年平均422万ヘクタール、アフリカが345万ヘクタール、アジアが202万ヘクタールと、森林減少は特定の地域に偏って進んでいる。こうした状況を受け、「木材や紙をどこの森から、どのように調達するか」を可視化する仕組みとして、FSCのような森林認証制度が重要な役割を担っている。

FM認証とCoC認証の違い

2種類の認証を組み合わせて成り立つ仕組み

  • FM認証(Forest Management):森林そのものの管理が、生態系保全・地域社会への配慮・法令遵守などの基準を満たしているかを審査する認証
  • CoC認証(Chain of Custody):FM認証を受けた森林から出た木材が、加工・流通の過程で認証外の木材と混ざらないよう管理されているかを認証する仕組み
  • 紙ストローや紙カップにFSCマークが付くのは、原料の森林(FM認証)から工場・製品化(CoC認証)まで、両方の認証がつながっているため

認証マークの見分け方

FSCのラベルには主に3種類があり、原料の由来によって使い分けられている。

  • FSC 100%:原料のすべてがFSC認証林由来の木材
  • FSC Mix:FSC認証材とリサイクル材・その他の管理された木材を混合
  • FSC Recycled:原料のすべてが再生(リサイクル)材

紙ストローや紙カップのパッケージ、包装紙の隅に木をかたどった緑のロゴと「FSC」の文字、その下に認証コード(ライセンスコード)が入っているのが目印だ。なお森林認証にはFSCのほかにPEFC(Programme for the Endorsement of Forest Certification)という国際的な制度もあり、日本国内では「SGEC」という国内認証がPEFCと相互承認されている。紙製品を選ぶ場面ではFSCの緑のロゴを見かける機会が多いが、いずれも森林管理の適切さを第三者が審査する点は共通している。

紙ストロー以外に広がるFSC認証製品

FSC認証は紙ストロー・紙カップに限った制度ではない。書籍やノート、コピー用紙、ティッシュペーパー、紙製の食品パッケージ、さらには住宅建材や家具に使われる木材まで、幅広い製品にFSCマークが付けられている。日常的に目にする機会が多いのは出版物や紙製の包装だが、建築・インテリア分野でもFSC認証材を指定して使う企業が増えており、紙ストロー・紙カップはそうした広がりの中の一分野という位置づけになる。

世界と日本のFSC認証面積を数字で見る

FSC認証がどれくらい広がっているのかを、面積の数字で確認しておきたい。

世界のFSC認証林

FSCジャパンが公開している集計によると、2026年4月時点でFM認証は89カ国・約1,800件にのぼり、認証林の総面積は1億7,000万ヘクタールを超える。これは日本の国土面積(約3,780万ヘクタール)のおよそ4.5倍にあたる広さだ。

日本国内の認証林はなぜ少ないのか

一方、日本国内のFSC-FM認証林は約41万ヘクタールで、件数は30件台にとどまる。日本の森林面積は約2,500万ヘクタールで国土の約67%を占めるが、そのうちFSC認証を受けているのは1.6%程度にすぎない。背景には、日本の森林の多くが小規模な民有林として分散所有されており、審査・維持にかかるコストや手続きの負担が、面積の小さい森林所有者にとって重くなりやすいという事情がある。国産材のFSC認証はまだ限られた範囲にとどまっており、紙製品の原料は輸入材の認証林に依存する部分も大きい。

実際にFSC認証を取得するには、初期審査費用として数十万円〜100万円程度、その後も年次監査費用として年20万〜50万円程度がかかり、さらに売上規模に応じたライセンス料(年会費)が発生する。加えて、社内の管理体制づくりや記録の整備といった間接的な負担も続くため、小規模な森林所有者や事業者にとっては単独での取得・維持のハードルが高い。この課題への対策として、近隣の小規模森林所有者が共同で1つの認証をまとめて取得する「グループ認証」の仕組みも用意されており、認証取得・維持にかかる費用を全体で分担して抑える工夫が進められている。

この記事の要点となる3つの数字をまとめた図版
数字で見る:本文で扱う3つの指標
面積森林全体に対する割合
世界のFSC認証林(FM認証)1億7,000万ha超
日本のFSC認証林(FM認証)約41万ha国内森林の約1.6%
日本の森林面積(全体)約2,500万ha国土の約67%
FSC認証林の面積比較(FSCジャパン等の公表資料をもとに作成)

この数字が示すのは、紙ストローや紙カップに付くFSCマークの裏側にある森林の多くが、日本国内ではなく海外の認証林から来ているという現実だ。原料の調達先が遠い分、輸送に伴うエネルギー消費という別の環境負荷も生じる。森林を守るという意味では前向きな仕組みである一方、国産材の認証をどう広げていくかも、今後の課題として残っている。

紙ストロー・紙カップの作られ方と素材の違い

紙ストロー・紙カップは、木材パルプを主原料とした紙を、飲み物が漏れないよう加工して成形する。CoC認証を通じて、原料の紙がどの認証林から来たかをたどれる仕組みになっているのが、一般の紙製品との違いだ。

原料と製造工程

ストローは紙を筒状に巻いて接着し、内側・外側に食品用の接着剤やコーティングを施して作られる。カップは、紙を型に沿って成形したうえで、内側に防水のための薄いフィルムをラミネート(貼り合わせ)加工するのが一般的な作り方だ。

紙・竹・バイオマス・プラ、代替素材の使用感を比較

使い捨てプラスチックの代替としては紙のほかに、竹、植物由来のバイオマス素材、生分解性素材なども使われている。それぞれ耐久性やコスト、環境面での特徴が異なり、一長一短がある。

素材耐久性の傾向主な課題
湿気に弱くふにゃつきやすいが改良製品も増加PFASコーティングの有無、リサイクルのしにくさ
比較的丈夫だが口当たりが硬いPFAS検出例あり、洗浄・繰り返し使用が前提の製品も多い
バイオマス素材(植物由来プラ等)プラスチックに近い使用感「生分解性」表示でも実際に分解される条件は限定的な場合がある
プラスチック(従来品)最も丈夫で安価自然分解されず海洋プラスチックの主要な原因の一つ
使い捨てストローの代替素材ごとの傾向(各種公開情報をもとに作成)

「生分解性」と表示された素材でも、実際に分解が進むのは高温・高湿度の工業コンポスト施設のような特定の条件下であることが多く、自然の海水中や一般的な埋め立て地では想定通りに分解が進まない場合がある。バイオマス素材や生分解性素材を選ぶ際は、どのような条件で、どのくらいの期間で分解されるのかを確認する視点も欠かせない。

耐久性・使用感の実際

紙ストローの弱点としてよく挙げられるのが「ふにゃふにゃになる」という使用感だ。日本製紙が展開する紙ストロー製品「シルフィール」のように、口当たりの良さや、長時間使っても機能を保つ耐久性を打ち出した製品も登場しており、飲料の種類や使用時間に応じて素材・厚みを選べるようになってきている。

紙ストローの製造ラインで紙が筒状に巻かれていく様子
紙を筒状に巻いて成形するのが紙ストローの基本的な製法

実際に導入している企業・お店の事例

FSC認証紙製品は、外食・製紙業界で具体的な導入事例がある。

すかいらーくグループの全店導入

すかいらーくホールディングスは2022年1月から、ガストやジョナサンなど国内約3,000店のドリンクバー・持ち帰り用として提供するストローを、FSC認証の紙製ストローに切り替えた。スムージーやタピオカドリンクなど太い口径のストロー(大)も含めて対応している。同社はプラスチック使用量を2018年比で89%削減(2018年の約1億本から2020年には約1,100万本まで減少)しており、2026年までに使い捨てプラスチック使用量を2020年比で50%削減する目標を掲げている。

プレスリリースを見るバイオマスストローをFSC®認証の紙製ストローに変更すかいらーくホールディングスのプレスリリース。国内約3,000店での導入を発表。🔗 prtimes.jp

製紙メーカーの紙ストロー・紙カップ製品

日本製紙グループは、口当たりの良さと耐久性を両立させたという紙ストロー「シルフィール」や、紙カップ製品を展開している。映画館やゴルフ場、飲食店など幅広い業種で採用が進んでおり、国内の製紙メーカー各社もFSC認証紙を含めた紙製品のラインアップを広げている。ストロー1本の単価はプラスチック製より高くなる傾向があり、大量に使用する外食チェーンほどコストの影響を受けやすいが、企業イメージやブランド価値の向上という側面も、切り替えを後押しする要因になっている。

製品情報を見る紙ストロー シルフィール|日本製紙グループ口当たりの良さと耐久性を打ち出した紙ストロー製品の紹介ページ。🔗 nipponpapergroup.com

セブン-イレブンのFSC認証段ボール什器

セブン-イレブン・ジャパンは、店頭でセブンカフェの焼菓子を販売する什器を、FSC認証を受けた段ボールを使ったものに順次切り替えている。発表時点で全国約1万9,076店が対象とされ、什器の側面にはFSCラベルが掲示されており、顧客がレジ横で目にする機会も多い。紙ストローや紙カップだけでなく、店舗の陳列什器のような目立たない部分にもFSC認証材が使われ始めていることが分かる例だ。

企業取り組み内容規模・時期
すかいらーくホールディングスFSC認証紙ストローへの切り替え国内約3,000店(2022年1月〜)
セブン-イレブン・ジャパンFSC認証段ボール製の什器への切り替え全国約1万9,076店(発表時点)
日本製紙グループFSC認証を含む紙ストロー・紙カップ製品の展開映画館・ゴルフ場・飲食店など多業種
紙製品にFSC認証を取り入れている企業の取り組み例

紙ストローに指摘されているPFASの課題

紙製品はプラスチックに比べて環境負荷が小さいと単純に語られがちだが、近年の調査では紙製品側にも見過ごせない課題が指摘されている。

アントワープ大学の調査結果

ベルギー・アントワープ大学のThimo Groffenらの研究チームは、紙・竹・ガラス・ステンレス・プラスチックの5素材、39ブランドのストローを分析し、2023年8月に学術誌『Food Additives and Contaminants』で結果を発表した。それによると、紙ストローの90%、竹ストローの80%、プラスチックストローの75%、ガラスストローの40%からPFASが検出され、ステンレス製ストローからは検出されなかった。紙ストローの検出濃度は最大7.5ng/g、竹ストローは最大4.47ng/gだったという。研究チームは、撥水性を持たせるコーティング剤としてPFASが使われている可能性が高いと指摘している。この研究について、スペイン・グラナダ大学のマリアナ・F・フェルナンデス・カブレーラ教授は「堅実なデータと方法に支持された研究であり、研究グループには実績がある」と評価しつつ、「PFASは低濃度であっても、すでに人体に存在する化学物質の負荷に加わることになる」と懸念を示している。

PFASとは

PFAS(有機フッ素化合物)は水や油をはじく性質を持つ化学物質群の総称で、自然界でほとんど分解されず「forever chemicals(永遠の化学物質)」とも呼ばれる。日本では食品安全委員会がPFOS・PFOAなど一部物質について健康影響評価を行い、通常の食生活(飲料水を含む)を通じた摂取では大きな健康影響は想定されないとの見解を示しているが、評価や規制の議論は国内外で続いている。

素材PFAS検出割合
紙ストロー90%
竹ストロー80%
プラスチックストロー75%
ガラスストロー40%
ステンレスストロー0%
アントワープ大学の調査(2023年)による素材別PFAS検出割合

デンマーク・EUで進むPFAS規制の動き

こうした調査結果を受け、規制の動きも進んでいる。デンマークは紙・段ボールなどの食品用途へのPFAS使用を2020年7月1日から禁止しており、欧州各国の中でも早い対応となった。さらにEUでは、包装および包装廃棄物に関する新しい規則(PPWR)が2025年2月11日に発効し、2026年8月12日からEU全域で食品包装材へのPFAS使用が制限される予定だ。一方、日本では紙ストロー・紙カップに特化したPFAS規制はまだ整備されておらず、食品安全委員会による評価や国際的な規制動向を踏まえた今後の対応が注目される分野といえる。すべての紙ストローにPFASが使われているとは限らず、撥水コーティングの方法や素材によって差があるが、「紙だから安全」と決めつけず、企業の情報開示を確認する姿勢が大切になる。

アメリカでも広がる規制の動き

アメリカでも州単位での対応が始まっている。カリフォルニア州は紙・板紙・植物由来素材を使った食品包装や食器、紙ストローへのPFAS使用を禁止する州法(AB1200)にニューサム知事が署名し、成立させた。フロリダ州でも、健康リスクへの懸念を理由に紙ストローの提供を制限しようとする動きが州当局から出ている。カリフォルニア州司法長官は、食品包装や紙ストローのメーカーに対してPFASの使用状況を開示する義務があることを通知するなど、行政側からの働きかけも強まっている。

紙カップのリサイクルの難しさと新しい技術

ラミネート加工がリサイクルを難しくする理由

紙カップは飲み物が漏れないよう、内側にポリエチレンなどのプラスチックフィルムをラミネート加工しているものが多い。この紙とプラスチックが強く貼り合わされているため、機械的に分離するのが難しく、従来は古紙リサイクルの「禁忌品」として扱われ、多くが可燃ごみとして処理されてきた。使用後の飲み残しによる汚れも、リサイクルを難しくする要因の一つだ。

紙容器専用リサイクル技術の広がり

こうした課題に対応するため、日本製紙は静岡県の富士工場に紙容器専用のリサイクル設備を設け、2022年10月28日から稼働を開始した。紙と樹脂を分離し、高品質・高白色度の古紙パルプを取り出せる設備で、紙・板紙・家庭紙など幅広い分野で製紙原料として再利用することを目指している。

この設備を活用した具体的な事例として、2024年6月に日本航空(JAL)・日本製紙・東罐興業の3社が、使用済みの飲料用紙コップを新たな紙コップへ再生する「紙コップto紙コップ」の水平リサイクルを実現したと発表している。JAL機内で分別回収した紙コップを富士工場のリサイクル設備で古紙パルプ化し、東罐興業が新たな紙コップとして製造、羽田発の国内線で提供するという一連の循環を国内で初めて確立した事例だ。ただし、こうした専用回収・処理は対応している事業者や施設がまだ限られており、多くの地域では依然として可燃ごみとして扱われているのが実情だ。

店舗単位の紙コップ回収の取り組み

全国一律の制度としてはまだ限られているものの、コンビニチェーンの中には、店舗や地域を限定してリサイクル紙コップの実証実験を行う動きもある。回収した紙コップを新たな紙製品の原料として再利用できるかどうかを検証する取り組みで、消費者がどれだけ分別・持ち帰りに協力できるかも含めて、実用化にはまだ検証が必要な段階にある。

使用後の紙カップが分別回収ボックスに入れられている様子
紙カップは防水加工のためリサイクルの難易度が高く、専用回収の取り組みも進む

プラスチックと紙、どちらを選ぶべきか

紙ストロー・紙カップの実情を踏まえると、「プラから紙に変えれば解決」という単純な話ではないことが見えてくる。

CO2排出量で見ると紙が有利とは限らない

2022年にアメリカで発表された報告書では、紙ストローとプラスチックストローのCO2排出量を処分方法別に比較しており、焼却処分の場合で紙ストローはプラストローの約1.4倍、埋め立て処分の場合は約3.1倍のCO2を排出するという結果が示されている。紙は同じ本数あたりの重量がプラスチックより重くなりやすく、製造時のエネルギーや水の使用量、輸送・廃棄までを含めたライフサイクル全体で見ると、必ずしも紙の方がCO2排出量が少ないとは言えないという指摘だ。同じ報告書では、植物由来のバイオマスプラスチック製ストローは、焼却処分の場合で紙ストローの33%程度のCO2排出量にとどまるとも紹介されている。「プラから紙へ」という単純な切り替えだけでなく、素材ごとのライフサイクル全体を見て選ぶ視点も欠かせない。

「使い捨てを減らす」という大前提

素材が何であっても、1回使って捨てる製品である以上、資源の消費と廃棄は発生する。マイストローやマイカップ、そもそもストローを使わない選択など、使い捨てそのものを減らす工夫が、素材選び以前の大前提になる。バイオマス素材のストローや生分解性素材の可能性については、生分解性ストローが海で溶けるのかを検証した記事でも詳しく扱っている。スターバックスが紙ストローからバイオマス素材のストローへ移行してきた経緯はスタバのストロー廃止の5年間をたどった記事を参照してほしい。

選ぶときのチェックポイント

こうした複数の視点を踏まえると、消費者としてできることは「素材の見た目だけで判断せず、根拠を確認する」という姿勢に尽きる。以下のポイントを参考に、日々の買い物や外食での選択に活かしてほしい。

紙ストロー・紙カップを選ぶときに意識したいこと

  • パッケージにFSCマークがあるか(森林管理の裏付けになる)
  • 可能な場面ではリユース(マイボトル・マイストロー)を優先する
  • PFASコーティングの有無を企業が開示しているかを確認する(開示が進んでいない企業も多い)
  • 紙カップは自治体・施設の回収ルールに従い、可燃ごみか専用回収かを確認する
  • 「生分解性」「バイオマス」といった表示だけで判断せず、実際の処理条件も調べる

まとめ|森と海をつなぐ認証ラベル

FSC認証は、紙ストローや紙カップの原料となる森林が、適切に管理されていることを保証する仕組みだ。すかいらーくグループのように大規模に導入する企業が現れたことで、「森を守る」という視点が海洋プラスチック対策の議論に加わってきたのは前向きな動きといえる。

この記事のポイントを箇条書きでまとめた図版
この記事のポイント。詳しくは各章で解説している

この記事のまとめ

  • FSC認証はFM認証(森林管理)とCoC認証(流通管理)の2段階で、森林から製品までのつながりを保証する制度
  • 世界のFSC認証林は1億7,000万ヘクタール超、日本国内は約41万ヘクタール(国内森林の約1.6%)
  • 日本の規制(プラ資源循環促進法)は事業者の自主的な合理化を求める内容で、EUの販売禁止型の規制とは強さが異なる
  • すかいらーくグループなどが紙ストローを大規模導入し、プラ使用量削減を進めている
  • 紙製品にもPFASコーティングやリサイクルの難しさといった課題があり、デンマーク・EUでは規制も進み始めている

森を守る認証の仕組みは、水源の森を守るサントリーの取り組みなど、飲料メーカーの水資源保全とも接点がある。サントリー天然水のボトルtoボトルと「天然水の森」を解説した記事もあわせて読むと、企業が森と水をどうつないで守っているかがより見えてくるはずだ。

紙ストロー・紙カップを手に取ったとき、包装の隅にあるFSCマークにふと目を止めてみてほしい。その小さなロゴの向こうには、遠い国の森林で行われている管理の取り組みや、規制のあり方を巡る国内外の議論がつながっている。素材を一つ選ぶという日常の行動が、森と海のどちらにもつながっているということを意識するきっかけになれば幸いだ。

参考文献・出典

  1. 環境省 – 環境ラベル等データベース:FSC®認証(森林認証制度)
  2. 環境省 – 海洋プラスチックごみ流出量の推計
  3. FSCジャパン(日本森林管理協議会) – 公式サイト
  4. WWFジャパン – 森を守るマーク 森林認証制度FSC®について
  5. すかいらーくホールディングス – バイオマスストローをFSC®認証の紙製ストローに変更(プレスリリース)
  6. 日本製紙グループ – 紙ストロー製品情報(シルフィール)
  7. Food Additives & Contaminants: Part A – Assessment of PFAS in commercially available drinking straws(2023年)
  8. 食品安全委員会 – 「有機フッ素化合物(PFAS)」の評価に関する情報
  9. 日本経済新聞 – 使い捨てプラ、4月から削減義務 ストローなど12品目
  10. FSCジャパン – セブン-イレブン・ジャパンがFSC認証の段ボールを活用した什器を採用
  11. 国連食糧農業機関(FAO) – Global Forest Resources Assessment(世界森林資源評価)
  12. Environmental Working Group – California AG notifies food packaging and paper straw makers of duty to disclose PFAS
  13. DIAMOND online – 紙ストロー化の波、本当にエコなのか?“プラストローよりもCO2排出”の調査結果も
  14. 日本製紙グループ – 富士工場における食品・飲料用紙容器リサイクル設備の稼働開始/JAL・東罐興業との「紙コップto紙コップ」水平リサイクル
  15. ナショナルジオグラフィック日本版 – 【動画】鼻にストローが刺さったウミガメを救助

※ 信頼性の高い順に配列:政府機関・学術機関 > 査読済み論文 > 専門機関 > 信頼できるメディア