30%
「サントリー天然水」のボトルに使われる植物由来素材の比率
200億本
サントリーの100%リサイクルペットボトル累計販売本数(2025年8月末時点)
37.7%
日本のボトルtoボトル比率(2024年度・2030年度に50%目標)

コンビニの棚から1本の「サントリー天然水」を取り出したとき、そのボトルが何でできているかを考える人は多くないだろう。だがこの透明な容器には、廃糖蜜からつくられた植物由来の原料、国産最軽量クラスの薄さ、そして「飲み終わったあとに小さくたためる」という設計思想が詰め込まれている。

一方で、しばしば混同されるのが「100%リサイクルペットボトル」との違いだ。サントリーの100%リサイクルペットボトルは2025年8月末時点で累計200億本を突破したが、それが使われている代表商品は「サントリー烏龍茶」や「GREEN DA・KA・RA やさしい麦茶」であり、「サントリー天然水」の主力ボトルとして公表されているのは植物由来素材を30%使用したペットボトルである。同じ「環境にやさしいボトル」でも、素材の出どころはまったく違う。

この記事では、公式リリースと業界統計という一次情報だけを頼りに、天然水のボトルの正体、容量別の設計、ラベルレスの仕組み、そして分別という日常の行為が海洋プラスチック問題とどうつながっているのかを、誇張なく整理していく。買う人・飲む人の目線で「何を選び、どう出すか」が判断できる状態を目指す。

この記事で学べること

  • 「サントリー天然水」のペットボトルが実際には何でできているのか(植物由来素材30%の中身)
  • 「植物由来ボトル」と「100%リサイクルペットボトル」はどう違い、どの商品に使われているのか
  • 375ml・550ml・2Lなど容量別の容器スペックと、軽量化・たたみやすさの工夫
  • ラベルレス商品がケース販売中心になっている、食品表示上の理由
  • 日本のPETボトル回収率・リサイクル率・ボトルtoボトル比率の最新実績(2024年度)
  • 分別の一手間が、川から海へ流れ出るプラスチックをどう減らすのか

「サントリー天然水」のボトルは何でできているのか

はじめに、ペットボトルという容器そのものの成り立ちを押さえておきたい。ここを理解すると、「植物由来30%」という数字がなぜ30%なのかが一気に腑に落ちる。

PET樹脂は「30%+70%」でできている

ペットボトルの原料であるPET樹脂は、大きく2つの化学物質からつくられる。ひとつがモノエチレングリコール(MEG)で、重量比でおよそ30%を占める。もうひとつがテレフタル酸で、残るおよそ70%を占める。テレフタル酸の前駆体(原料の一段手前の物質)がパラキシレンである。

つまり、ペットボトルを「石油からつくらない」ようにするには、この2つをそれぞれ石油以外の原料に置き換えていく必要がある。そして、技術的に先に置き換えが実現したのが、比率の小さいほうのモノエチレングリコールだった。

なぜモノエチレングリコールが先だったのか。理由は単純で、植物から取り出しやすかったからである。モノエチレングリコールは、サトウキビやトウモロコシに含まれる糖からエタノールを経て合成できる。発酵という、人類が何千年も使ってきた技術の延長線上にあるのだ。一方のパラキシレンは芳香族と呼ばれる環状構造を持つ化合物で、植物由来の原料からこの骨格を効率よくつくるのは長らく難題とされてきた。「30%が先、70%が後」という順序は、化学の難易度がそのまま表れた結果である。

構成成分重量比のめやす石油以外への置き換え状況
モノエチレングリコール(MEG)約30%廃糖蜜由来の植物性素材で置き換え済み(2013年〜、サントリー天然水に導入)
テレフタル酸(パラキシレン由来)約70%使用済み食用油由来のバイオパラキシレンを2024年11月から商品導入(世界初)
PET樹脂の構成と、サントリーが進めてきた脱石油化の順序。比率の小さいMEGが先行し、大きいテレフタル酸が後を追う形になっている。

天然水が使う「植物由来素材30%」ペットボトル

サントリーは2013年、「サントリー天然水」550mlペットボトルに、廃糖蜜(サトウキビから砂糖をつくる際に出る副産物)を原料としたモノエチレングリコールを採用した。これが「植物由来素材30%使用ペットボトル」である。石油から新しく掘り出した原料の代わりに、すでに存在する農業副産物を回してくる、という考え方だ。

ここで「廃糖蜜」という原料選択には意味がある。もし食用のサトウキビや穀物をそのまま容器の原料に使えば、食料と資源が競合してしまう。廃糖蜜は砂糖を絞り出したあとに残る糖蜜で、飼料や発酵原料として使われてきた副産物だ。食べるための作物を容器に変えるのではなく、すでに出ている副産物に新しい用途を与える――この設計が、植物由来素材への批判のひとつである「食料との競合」をかわしている。

この植物由来ボトルは、その後大容量にも広がった。2Lペットボトルには2023年4月から順次導入が始まり、同年9月の製造分から全数への導入が完了している。550mlから10年かけて2Lへ、という歩みだ。

さらに550mlボトルは、素材だけでなく重さでも工夫がある。ボトル重量は11.9gで、これは国産の500〜600mlペットボトルとしては最軽量水準(2020年4月末時点の同社調べ、自動販売機対応商品を除く)。植物由来素材の採用と軽量化を合わせることで、従来品と比べて石油由来原料の使用量を1本あたり約4割削減したと公表されている。

「100%リサイクルペットボトル」とはまったくの別物

ここが最も誤解されやすい点だ。「植物由来ボトル」と「100%リサイクルペットボトル」は、素材の出どころが違う。前者は農業副産物という「新しくつくられた資源」、後者は使用済みペットボトルという「すでに世の中を回っている資源」である。

サントリーが公表している資料を見るかぎり、「サントリー天然水」のペットボトルは植物由来素材30%使用ボトルとして紹介されている。一方、100%リサイクルペットボトルの導入事例として名前が挙がるのは、2012年に業界で初めて導入された「サントリー烏龍茶」2Lや、全数で採用された「GREEN DA・KA・RA やさしい麦茶」600ml・680mlなどだ。「サントリーの環境ボトル=すべて再生PET」と一括りにするのは、事実と異なる。

どちらが優れているという話でもない。植物由来素材は「石油を新しく掘らない」ことに効き、リサイクル素材は「すでにある資源を捨てない」ことに効く。ボトルtoボトルは回収量に上限があり、集まった分しかつくれない。植物由来は原料の作付けや副産物の量に左右される。二つを組み合わせなければ、すべてのボトルを賄うことはできない。サントリーが両方の道を同時に走らせているのは、そういう事情による。

混同しないための3つの言葉

  • 植物由来ボトル:廃糖蜜など植物由来の原料を使ったボトル。天然水は30%使用。
  • 100%リサイクルペットボトル:使用済みペットボトルを原料に戻してつくったボトル(ボトルtoボトル)。
  • 100%サステナブルボトル:上の2つを合わせた総称。石油から新しく掘り出した原料をゼロにした状態を指す。
このブランドを見るサントリー天然水 公式サイト水源・商品ラインアップ・容器の環境配慮についての公式情報。容量別の商品情報や「天然水の森」の活動も掲載されている。🔗 suntory.co.jp

100%リサイクルペットボトルの現在地――累計200億本という数字

天然水そのものの素材が植物由来だとしても、サントリーというメーカー全体の資源循環を知らなければ、この商品を評価することはできない。ボトルtoボトルの実績を数字で押さえておこう。

2025年8月末、累計200億本を突破

サントリー食品インターナショナルは2025年9月29日、100%リサイクルペットボトルの累計販売本数が2025年8月末時点で200億本を突破したと発表した。前の節目である150億本の発表は2024年6月3日(2024年5月末時点の実績)だったから、およそ1年3か月で50億本を積み増した計算になる。

この累計により、化石由来原料の新規使用量は40万トン超削減されたとされる(150億本時点では30万トン超)。ペットボトル1本あたりの重さは十数グラムから数十グラムだが、数十億本という規模になると、削減量は都市規模の資源量に達する。

起点は2012年にさかのぼる。この年、サントリーは「サントリー烏龍茶」2Lペットボトルに、国内飲料業界で初めて100%リサイクルペットボトルを導入した。当時、使用済みボトルを再び飲料容器に戻すという発想は日本ではほとんど実績がなく、衛生面と品質面のハードルは高かった。それから十数年で200億本という規模に届いたことになる。

なお、この数字は「サントリーがすごい」という話に閉じるものではない。日本のペットボトルが世界的に見ても高い水準で回収されているという前提があってこそ、原料としての使用済みボトルが安定的に手に入る。メーカーの技術と、家庭・自治体の分別が噛み合わなければ、200億本という数字は成立しない。

国内では「2本に1本以上」が100%リサイクル

本数だけでなく比率も見ておきたい。サントリーは国内清涼飲料事業において、2023年から全ペットボトル商品の2本に1本以上を100%リサイクルペットボトルとしている。当初は「2025年までに全ペットボトル重量の50%以上をサステナブル素材にする」という中期目標だったが、これを3年前倒しして2022年中に達成する形で前進させてきた。

同社が掲げる長期目標は明快だ。2030年までに、グローバルで使用するすべてのペットボトルにリサイクル素材あるいは植物由来素材等を使用し、化石由来原料の新規使用をゼロにする。天然水の植物由来ボトルも、他ブランドの100%リサイクルボトルも、この一点に向かう二本の道である。

使用済みペットボトルが再び新しいペットボトルへ戻る水平リサイクルの循環イメージ
使用済みボトルを再びボトルに戻す「水平リサイクル」。素材の質を落とさずに循環させるのが特徴だ。

この水平リサイクルを支える技術と、サントリーが取水地の森を守る「天然水の森」の活動については、別記事で詳しく扱っている。メカニカルリサイクルとFtoPダイレクトリサイクルの違い、ケミカルリサイクルへの挑戦まで踏み込みたい方はサントリー天然水のボトルtoボトル水平リサイクルと「天然水の森」の全貌も参照してほしい。

公式の取り組みを見るRecycle:「ボトルtoボトル」水平リサイクルの推進|サントリーグループのサステナビリティ100%リサイクルペットボトルの累計販売本数、メカニカルリサイクル・FtoPダイレクトリサイクルの技術、2030年の「ペットボトル100%サステナブル化」目標を公表している公式ページ。🔗 suntory.co.jp

容量別に見る「天然水」の容器――375ml・550ml・2L

商品を選ぶ立場からすると、素材の話より先に気になるのは「どのサイズを買うか」だろう。実は、容量ごとに容器の設計思想がはっきり違う。

375ml――飲みきりサイズという新しい選択肢

2026年3月10日、「サントリー天然水」に375mlペットボトルが全国発売された。開発のきっかけは「550mlだといつも残してしまう」「小さいバッグにペットボトルはかさばる」という消費者の声だという。スリムな形状で持ちやすく、カバンに入れやすいことを狙った、いわゆるパーソナルサイズだ。

環境の観点からも、飲みきりサイズには意味がある。中身を残して捨てれば、その水も容器も無駄になる。適量を選ぶことは、それ自体がリデュース(発生抑制)である。

550ml――11.9gという国産最軽量クラス

主力の550mlは、前述のとおりボトル重量11.9g。同じ容量帯の国産ペットボトルとしては最軽量水準であり(500〜600ml対象、2020年4月末時点の同社調べ、自動販売機対応商品を除く)、植物由来素材30%と合わせて石油由来原料を約4割削減している。手に持つと、キャップを外した瞬間にボトルが軽くたわむのが分かる。あの「頼りなさ」は、実は削減された樹脂の重さそのものだ。

2L――29.8gから、たためるボトルへ

家庭用の主役である2Lボトルも、軽量化の歴史を持つ。2013年2月には国産最軽量となる29.8gの2Lペットボトルを導入した。2Lという容量で30gを切るというのは、それだけ薄い樹脂で強度を確保しているということでもある。

軽量化には、単純な足し算では見えにくい効果がある。樹脂が減れば原料の使用量が減るのはもちろんだが、同時にボトル1本あたりの輸送重量が下がり、トラックが同じ台数で運べる本数が増える。原料の製造から輸送、廃棄までを通したCO2排出量にも効いてくる。「たった数グラム」の削減が、数十億本という規模で意味を持つのはこのためだ。

そして2023年4月上旬から順次発売された新容器では、設計思想がさらに一歩進んだ。飲み終わった空容器を、約6分の1のサイズまで小さくたためる形状にしたのだ。これは軽量化と違い、消費者が「捨てるとき」の負担に踏み込んだ設計である。たたんで小さくなれば、家庭内の保管もごみ集積所での容積も減り、回収の効率が上がる。

サントリー天然水のペットボトルは何でできている?植物由来30%と100%リサイクルPETの違いの要点となる3つの数字をまとめた図版
数字で見る:本文で扱う3つの指標

ラベルレス――はがす手間そのものをなくす

「サントリー天然水550mlペット ラベルレス」「同2Lペット ラベルレス」など、ラベルレス商品も通信販売(EC)チャネルを中心に展開されている。ラベルレスは見た目の話ではなく、分別の手間を設計段階でなくすという発想だ。剥がす作業がなければ、ラベルが付いたまま捨てられるリスクも減る。

なお、ラベルの軽量化も進んでいる。2014年には国産最薄となる12μm(マイクロメートル)のロールラベルを導入しており、ラベルを付ける場合でも樹脂の使用量を抑える工夫がなされている。12μmは髪の毛の太さの10分の1以下という薄さだ。

ラベルレスにはもうひとつ、見落とされがちな効果がある。ラベルが残ったまま回収されたボトルは、再資源化の工程で選別・除去する手間がかかり、除去しきれなければ再生PET樹脂の品質に影響する。最初からラベルがなければ、この工程そのものが不要になる。消費者の手間を減らす設計が、そのまま再生現場の負担軽減につながっている。

容量主な特徴環境配慮のポイント
375ml2026年3月10日全国発売。スリムな飲みきりサイズ適量選択による飲み残し・廃棄の抑制
550ml主力サイズ。ボトル重量11.9g植物由来素材30%+軽量化で石油由来原料を約4割削減
2L家庭用。2023年4月から新容器2013年に29.8gの国産最軽量を実現/空容器が約6分の1にたためる
ラベルレス(550ml・2L)EC(通信販売)チャネル中心ラベルをなくし、分別の手間と樹脂使用量を削減
「サントリー天然水」の主な容量と容器面の特徴。公表資料に基づく。

ラベルレスはなぜ「箱買い」でしか売られていないのか

ラベルレス商品を探した人の多くが、ある壁にぶつかる。コンビニやスーパーの棚に、ラベルレスの単品がほとんど並んでいないのだ。これはメーカーの怠慢ではなく、食品表示のルールに理由がある。

「1本で情報が完結する」ことが求められる

飲料には食品表示法に基づき、品名・原材料・栄養成分表示などを表示する義務がある。現行制度の考え方の本質は「ラベルレス禁止」ではなく、単品で流通するボトルは、その1本だけで必要な情報が完結していなければならないという点にある。

逆に言えば、ケース販売・箱売りであれば、その外装(段ボール)に必要事項を印字することで、中の一本一本はラベルレスでも成立する。ラベルレス商品がECの箱買い中心になっているのは、この構造による。段ボールに「ケース販売専用商品 お店で開封しないでください」と書かれているのも、箱から出した瞬間に表示情報が失われることを防ぐためだ。

ボトルへの直接刻印を可能にした2020年の制度変更

もうひとつ、ラベルレス普及を後押しした制度がある。2020年、資源有効利用促進法に基づく識別表示(プラスチック製容器包装であることを示すマークなど)の制度が変更され、表示マークをボトル本体に直接加工することが認められた。ラベルレスボトルの肩の部分に、うっすらと浮き彫りのマークが入っているのはこのためだ。以降、ラベルレスを採用する企業は急速に増えた。

ラベルレスを買うときの注意

  • ケース販売専用の商品は、店頭で開封してばら売りすることが想定されていない。
  • 贈答や配布に使う場合、外装から出した1本には表示情報がないことを理解しておく。
  • アレルギーや原材料の確認が必要な人と共有するときは、外装の表示を控えておくと安心。

店頭でどう見分けるか――ボトルに書かれたサインを読む

ここまで読んで「では買うときにどう判断すればいいのか」と思った方も多いだろう。結論から言えば、店頭で素材の由来を完全に見分けるのは難しい。だが、手がかりはいくつかある。

「ボトルは資源!」のロゴマーク

サントリーは2022年1月、ペットボトルが資源として何度も循環できることを伝える新しいロゴマークを発表し、国内のペットボトル全商品へ順次展開すると公表した。「ボトルは資源!サステナブルボトルへ」というメッセージを、パッケージそのものを媒体にして伝える取り組みである。ラベルやボトルにこの表示があれば、そのメーカーが資源循環を明示的に打ち出している商品だと分かる。

同じタイミングで同社が掲げたのが「国内では今年、2本に1本が100%サステナブルボトルへ」という目標だった。マークは単なる装飾ではなく、達成状況を消費者に見せるための宣言でもある。

識別表示マークとボトルへの直接刻印

もうひとつの手がかりが、資源有効利用促進法に基づく識別表示マークだ。従来はラベルに印刷されていたが、2020年の制度変更でボトル本体への直接加工が認められた。ラベルレスボトルの肩や胴の部分に、光の角度を変えると浮かび上がる小さなマークがあるのはこのためである。ラベルがなくても、そのボトルがPET製の資源であることは容器自身が示している。

「原材料名」欄では素材の由来は分からない

率直に書いておきたい限界もある。飲料の原材料名や栄養成分表示は「中身」の情報であって、「容器」の素材由来までは示していない。「このボトルは再生PETか、植物由来か、石油由来か」を確実に知るには、メーカーの公式サイトやニュースリリースを確認するしかないのが現状だ。

だからこそ、この記事のような情報の整理に意味がある。逆に言えば、容器の素材を店頭で一目で判別できるような表示が普及すれば、消費者の選択はもっと機能するようになる。ここは制度と業界の今後の課題である。

店頭で確認できること/できないこと

  • 確認できる:資源循環を訴えるロゴマークやメッセージの有無。
  • 確認できる:ラベルレスかどうか、ボトルがたためる形状かどうか。
  • 確認しにくい:そのボトルが再生PETか植物由来か石油由来か(公式情報の確認が必要)。
  • 確認できない:原材料名・栄養成分表示は中身の情報であり、容器の素材由来は書かれていない。
ペットボトルの表面に刻まれたリサイクル識別マークのクローズアップ
ラベルがなくても、ボトル自身が「これは資源だ」と示している。

数字で見る日本のペットボトル循環(2024年度実績)

1本のボトルの素材がどれだけ優れていても、それが回収され再生されなければ循環は完結しない。日本全体の実力を、PETボトルリサイクル推進協議会の公式統計で確認しよう。以下はいずれも2024年度の実績である。

回収率91.9%、リサイクル率85.1%

2024年度の指定PETボトル販売量は652,294トン。これに対し、市町村による回収が313,337トン、事業系の回収が286,274トンで、合計599,611トンが回収された。回収率は91.9%で、前年度の92.6%からわずかに低下している。

リサイクル率は85.1%。国内で445千トン、海外で110千トン、合計555千トンが再生され新たな製品に生まれ変わった。推進協議会の自主行動計画目標である「リサイクル率85%以上の維持」は達成されている。熱回収まで含めた有効利用率は98.6%だ。

ボトルtoボトル比率は37.7%まで上昇

注目すべきは水平リサイクルの比率だ。使用済みPETボトルから再びPETボトルに戻すボトルtoボトル比率は37.7%で、前年度の33.7%から4.0ポイント上昇した。ボトルtoボトルに利用された再生PET樹脂の量は246千トンで、前年度より14.7%増えている。

目標はさらに先にある。全国清涼飲料連合会が「2030年ボトルtoボトル比率50%宣言」を発表し、PETボトルリサイクル推進協議会も同じ目標を掲げている。2030年度までにボトルtoボトル比率50%――残る12ポイント強をどう埋めるかが、これからの10年の課題だ。

指標2024年度実績目標
回収率91.9%(前年度92.6%)
リサイクル率85.1%85%以上の維持
ボトルtoボトル比率37.7%(前年度比+4.0ポイント)2030年度までに50%
有効利用率98.6%2030年度までに100%
軽量化率(2004年度比)28.1%(削減効果量254千トン)25%以上の軽量化
出典:PETボトルリサイクル推進協議会「PETボトルリサイクル年次報告書2025」(2024年度実績)
参考・出典PETボトルリサイクル年次報告書2025(PDF)2024年度の回収率91.9%、リサイクル率85.1%、ボトルtoボトル比率37.7%など、日本のPETボトル循環の公式統計。🔗 petbottle-rec.gr.jp

国際比較――日本の85%は世界的にどう見えるか

この85.1%という数字は、国際的に見ると突出して高い。サントリーが公表資料で引用している比較では、欧州のリサイクル率は42.7%(2021年度)、米国は18.0%(2020年度)である。日本の水準はその2倍から4倍以上ということになる。

背景には、家庭ごみの分別が生活習慣として定着していること、自治体による資源回収の網が全国に張り巡らされていること、そして自動販売機やコンビニの横に回収ボックスが置かれていることがある。日本の消費者が当たり前にやっている「キャップを外して、すすいで、資源の日に出す」という行為は、国際的には当たり前ではない。

ただし「9割回収できている」という数字は、裏返せば約1割は回収の輪から外れているということでもある。この1割が、後の章のテーマにつながる。

「植物由来」はどこまで進んだか――廃糖蜜からバイオパラキシレンへ

話を素材に戻そう。天然水が2013年に採用した植物由来素材30%は、PET樹脂のうちモノエチレングリコール部分の置き換えだった。では、残る約70%のテレフタル酸はどうなったのか。

2024年11月、使用済み食用油由来のボトルが世界初導入

サントリーホールディングスは2024年10月28日、使用済み食用油(廃食油)由来のバイオパラキシレンを使用したペットボトルを、世界で初めて商品に導入すると発表した。導入開始は2024年11月からである。

経路はこうだ。回収された使用済み食用油からバイオナフサを製造し、そこからバイオパラキシレンを、さらにバイオテレフタル酸を得て、PET樹脂にする。これまで石油から取り出していた70%側の原料を、揚げ物に使われたあとの油に置き換えたことになる。プロジェクトには三井化学、ENEOS、三菱商事が関わっている。

規模はまだ「約0.5%」――正直に見るべき現在地

ただし、この技術の導入規模を誇張してはいけない。発表時点の導入量は飲料用ペットボトル約4,500万本、重量にして約765トン。これは同社の国内ペットボトル流通量の約0.5%にあたる。4,500万本という数字は大きく見えるが、全体から見ればまだ試験的な段階だ。

また、廃食油という原料には供給量の上限がある。家庭や飲食店から出る使用済み食用油は無限ではなく、すでにバイオディーゼル燃料や航空機向けの持続可能燃料(SAF)といった用途とも取り合いになっている。容器の原料として大量に確保できるかは、今後の回収網の広がりにかかっている。「植物由来だから無制限に増やせる」という話ではない点は、冷静に押さえておきたい。

とはいえ、「技術的に可能であることを商品で実証した」意味は小さくない。ペットボトルの脱石油化は、比率30%のMEGを2013年に、比率70%のパラキシレンを2024年に――と、10年以上かけて段階を踏んできた。2030年の「化石由来原料の新規使用ゼロ」という目標は、この積み上げの延長線上にある。

サントリーの「2R+B」という考え方

  • Reduce:使う樹脂の量そのものを減らす(軽量化・薄肉化・ラベルレス)。
  • Recycle:使用済みボトルを再資源化して使う(ボトルtoボトル水平リサイクル)。
  • Bio:植物由来の資源を使う(廃糖蜜由来MEG、廃食油由来パラキシレン)。

分別という一手間が、海のプラスチックを減らす

ここまで容器の話をしてきたが、海の視点から見ると、最も効くのは高度な技術ではなく、飲み終わったあとの数十秒の行動である。

回収されなかったボトルはどこへ行くのか

回収率91.9%ということは、約8%――重量にして5万トン前後が、回収の輪から外れているということだ。道端に置かれたボトル、公園のごみ箱からあふれたボトル、風で飛ばされたボトルは、雨のたびに側溝から用水路へ、用水路から河川へと移動する。世界では年間およそ200万トンのプラスチックが川を通じて海へ流れ出しているとされる。この流れについては川から海へ流れ出すプラスチックごみで詳しく扱った。

いったん海に出たプラスチックは、紫外線と波で細かく砕けてマイクロプラスチックになり、回収はほぼ不可能になる。ペットボトルの循環は、海に出る前の陸上で勝負が決まる

ペットボトルという容器の厄介さは、軽くて丈夫で、空になると浮くという性質にある。飲みきったボトルは中が空気で満たされ、水に浮く。だから雨水と一緒にどこまでも運ばれていく。しかもPETは自然界ではほとんど分解されない。数十年前に捨てられたボトルが、いまも形を保ったまま海岸に打ち上がる例は珍しくない。

逆に言えば、ペットボトルは回収さえできれば最も再生しやすいプラスチックのひとつでもある。素材が単一で、色がつかず透明なものが多く、形も規格化されている。日本のリサイクル率85.1%という数字は、この扱いやすさと分別習慣の掛け算で成り立っている。「海に流れ出る厄介者」と「最も循環に向いた資源」は、同じ容器の裏表なのだ。

きれいに分別されないと、水平リサイクルは回らない

もうひとつ重要なのは、回収されればそれでよいわけではないという点だ。ボトルtoボトルの水平リサイクルは、原料の純度に対する要求が高い。異物が混入していると、再生PET樹脂を製造する際に作業効率が落ち、品質にも影響する。PETボトルリサイクル推進協議会も、キャップやラベルをできるだけ取り外し、簡易洗浄して分別排出することを自治体や消費者に啓発している。

  1. 中身を飲みきる(残った液体は異物混入と同じ扱いになりうる)。
  2. キャップとラベルを外す(キャップはPET樹脂ではなく、別素材のことが多い)。
  3. 軽く水ですすぎ、水気を切る。
  4. つぶす・たたむ(自治体のルールに従う。たたんではいけない地域もある)。
  5. 自治体の資源回収か、店頭の回収ボックスへ出す。

この5ステップは特別なことではない。だが、この一手間が入るかどうかで、そのボトルが「もう一度ボトルになる」のか、「繊維になって最後は燃やされる」のか、「海に出る」のかが分かれる。循環型の経済への転換全体についてはサーキュラーエコノミーとはもあわせて読んでほしい。

空のペットボトルをキャップとラベルに分けて資源回収に出す様子
分けて、すすいで、出す。水平リサイクルの品質は、この一手間に支えられている。

キャップやラベルをできるだけ取り外し、簡易洗浄して分別排出することを、Webサイトや広報誌などで自治体ならびに消費者へ広く啓発活動を行った。

― PETボトルリサイクル推進協議会「PETボトルリサイクル年次報告書2025」

まとめ――買うとき・捨てるときのチェックリスト

「サントリー天然水」のペットボトルは、100%リサイクルPETではなく植物由来素材30%使用のボトルである。この事実を正確に押さえたうえで、同社が100%リサイクルペットボトルを累計200億本まで積み上げ、2030年には化石由来原料の新規使用ゼロを目指していることを併せて理解すると、この商品の位置づけが立体的に見えてくる。

同時に、過度な期待も禁物である。廃食油由来のボトルはまだ国内流通量の約0.5%、ボトルtoボトル比率も37.7%であり、2030年目標までには相応の距離がある。「エコなボトルを選んだから大丈夫」と考えるのではなく、そもそも使う本数を減らすという一段上の選択肢を持っておくほうが確実だ。マイボトルを持ち歩く日と、ペットボトルを買う日を使い分ける。それだけで、循環の輪に入れるべき容器の数そのものが減る。

大切なのは、どのブランドが偉いかという比較ではない。ひとつの容器が、素材・軽量化・たたみやすさ・ラベルレス・分別・再生という長い連鎖のどこに立っているかを知り、自分が担える部分を担うことだ。メーカーがどれだけ良い素材を使っても、回収されなければ意味がない。逆に、私たちがどれだけ丁寧に分別しても、素材が石油由来のままでは新規採掘は減らない。

今日からできる5つのこと

  • 容量を選ぶときは「飲みきれるサイズ」を選ぶ(375mlという選択肢が増えた)。
  • 箱買いするならラベルレスを検討する(剥がす手間がゼロになる)。
  • キャップとラベルを外し、すすいでから資源回収に出す。
  • 外出先では、ごみ箱があふれている場合は持ち帰る(風で飛べば川へ、川から海へ)。
  • マイボトルと使い分ける――そもそも使わない選択がいちばん軽い。
この記事のポイントを箇条書きでまとめた図版
この記事のポイント。詳しくは各章で解説している

この記事の要点

  • 「サントリー天然水」のペットボトルは植物由来素材30%使用。550mlは11.9gで石油由来原料を約4割削減。
  • 100%リサイクルペットボトルは烏龍茶・やさしい麦茶など他ブランド中心で、累計200億本(2025年8月末)。
  • 2Lは2023年4月から約6分の1にたためる新容器、375mlは2026年3月10日に全国発売。
  • 日本の2024年度実績は回収率91.9%・リサイクル率85.1%・ボトルtoボトル比率37.7%(2030年度50%目標)。
  • 廃食油由来バイオパラキシレンのボトルは2024年11月に世界初導入。ただし規模は国内流通量の約0.5%。

参考文献・出典

  1. PETボトルリサイクル推進協議会 – PETボトルリサイクル年次報告書2025(2024年度実績:回収率91.9%、リサイクル率85.1%、ボトルtoボトル比率37.7%)
  2. PETボトルリサイクル推進協議会 – 統計データ「回収率推移など」
  3. サントリー食品インターナショナル – 100%リサイクルペットボトルの販売本数が累計200億本突破!(2025年9月29日)
  4. サントリーホールディングス – 使用済食用油由来のバイオパラキシレンを使用したペットボトルを世界で初めて商品に導入(2024年10月28日)
  5. サントリービバレッジ&フード – 「サントリー天然水」2Lのペットボトル全数に植物由来素材を30%導入(2023年9月1日)
  6. サントリービバレッジ&フード – 「サントリー天然水」2Lペットボトル 新容器開発! 約6分の1サイズまで“小さく、たたみやすい”ボトルへ(2023年4月5日)
  7. サントリービバレッジ&フード – スリムで持ち歩くのにちょうどいい“飲みきり”サイズ!「サントリー天然水」375mlペットボトルが新発売
  8. サントリーグループ – サステナビリティ Recycle:「ボトルtoボトル」水平リサイクルの推進
  9. サントリー天然水 – 環境に配慮したボトルと包装(550ml 11.9g・植物由来素材30%・石油由来原料約4割削減)
  10. 三井化学 – ペットボトルの100%サステナブル化に向けたサントリーの挑戦(PET樹脂の構成と脱石油化)

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