⚡ 30秒でわかる答え

  • ECOALFは、漁師が網にかかった海のごみを港へ持ち帰る仕組みを作り、再生糸『Ocean Yarn』に変えてアパレルや雑貨にしているスペインのブランドです。
  • 2015年に漁師3人から始まり、公式ページでは4,000人超、2026年10月のEuronewsでは約5,000人・累計2,000トン超と報じられています。
  • 再生PETは従来のポリエステルより水約20%・エネルギー約50%・温室効果ガス60%超の削減とされますが、数値は同社による自己申告です。
  • 回収した海洋ごみのうちペットボトルは約5%で、残りは漁網やタイヤなど多様です。再生だけでなく、そもそもごみを出さない対策が不可欠です。
2015年
漁師3人から始まったUpcycling the Oceansの開始年
2,000t超
Euronews(2026年10月)が報じた累計の海洋ごみ回収量
約70本
ペットボトルがおよそ生地1メートル分になる目安

漁船の網には、魚だけでなく空き瓶やペットボトル、古い漁網、ロープなどが一緒に上がってきます。これまでは多くが海へ戻されていましたが、スペイン発のファッションブランド「ECOALF(エコアルフ)」は、これらを港へ持ち帰ってもらい、糸にして服や靴、バッグへ生まれ変わらせる取り組みを続けています。

その仕組みが「Upcycling the Oceans(アップサイクリング・ジ・オーシャンズ)」です。2015年に地中海に面したスペインの港町ビジャホヨサで、漁師3人と始まったこのプロジェクトは、いまや複数の国と数十の港に広がっています。「海のごみを減らす」と「服の原料を作る」を一つの流れにした点が特徴です。

この記事では、公式ページや報道、公的機関の紹介資料などの公開情報をもとに、ECOALFの仕組み、素材の環境負荷、日本での展開、そして冷静に見ておきたい課題までを整理します。数値は資料や時期によって異なるため、出典と時点を併記しています。

この記事で学べること

  • ECOALFとUpcycling the Oceansの成り立ちと目的
  • 海底のごみが漁師の手で回収され、糸になるまでの流れ
  • 再生PET・再生漁網の環境負荷が従来素材とどう違うか
  • 回収量や漁師数が資料ごとに違う理由と、数字の読み方
  • 日本での展開と、購入する側が気をつけたい見方
  • アップサイクルだけでは解決しない課題と、私たちにできること

ECOALFとは何か:2009年生まれのスペインのブランド

ECOALFは2009年に創業したスペインのサステナブルファッションブランドです。創業者兼会長はハビエル・ゴジェネーチェ(Javier Goyeneche)氏とされ、ブランドの標語は「There is no Planet B(地球に代わりはない)」です。2026年10月のEuronewsは、年間売上およそ6,500万ユーロ、従業員約300人、世界各地に店舗を持つ規模と伝えています。

リサイクル素材を中心にした服づくり

同社は、ペットボトル、使われなくなった漁網、タイヤ、綿やウールの端材などを原料にした再生素材を使うことを特色としています。日本での展開を伝える2019年の報道では、ナイロン、コーヒーかす、ペットボトル、コットン、ウール、タイヤなどの廃棄物から作るリサイクル素材が紹介されていました。

Pitti Immagineのブランド紹介には、同社がこれまでに開発した再生素材の生地は600種類以上とあります。新素材の研究開発を継続していることがわかります。

ブランドと財団の役割分担

海のごみを集める活動の運営は、非営利団体の「ECOALF財団(Ecoalf Foundation)」が担います。財団は、プラスチックごみが地域社会に与える影響への理解を広げるための活動も行っています。ブランドの売上の一部が財団に回る仕組みで、Pitti Immagineの紹介では、販売した商品1点につき10%が財団へ、1ユーロの寄付で海のごみ1キログラムを回収できると説明されています。

押さえておきたい基本情報

  • 創業:2009年(スペイン・マドリード本社)
  • プロジェクト開始:2015年(ECOALF財団とともに)
  • 回収した素材から作る再生糸の名称:Ocean Yarn(オーシャンヤーン)
  • 出典の多くは企業・財団の公表情報で、第三者による検証値ではない点に留意

Upcycling the Oceansの仕組み:漁師が海底のごみを持ち帰る

このプロジェクトの出発点は、「漁師は毎日、海底に最も近い場所で作業している」という気づきです。底引き網などで海底付近を探ると、魚と一緒に大量のごみが上がってきます。ECOALF財団の公式ページは、海のごみの約75%は海底にあると紹介し、漁師が1日12時間以上を海上で過ごすことを背景に、その協力を得る意義を説明しています。

2015年、ビジャホヨサの漁師3人から

公式ページによると、活動は2015年にスペイン東部の港ビジャホヨサ(Villajoyosa)で漁師3人とともに始まりました。漁師は網にかかったごみを海へ戻さず、港の専用コンテナに集めます。

分別から再生糸までの流れ

Circle Economyの事例紹介とEuronewsの記事を合わせると、流れはおおむね次のとおりです。

  1. 漁師が漁の最中に、網にかかったペットボトルや漁網などのごみを魚と分けて持ち帰る
  2. 港に集めたごみをECOALF側が回収し、素材ごとに仕分ける
  3. ペットボトルは細かく砕いてフレーク(薄片)にし、さらにペレット(粒)に加工して、再生ポリエステルの糸にする
  4. 漁網は再生ナイロンの糸にする
  5. 糸や綿・ウールなどの再生素材を、マドリード本社で生地にして、衣類・靴・バッグへと仕立てる
漁師が回収した海洋ごみが港で仕分けされ、フレーク、ペレット、糸、生地へと変わる工程を示した流れ図
海のごみが衣服になるまでの流れ(Circle Economy・Euronewsの紹介をもとに作成)

回収物の中身は「ペットボトルだけ」ではない

Euronewsによると、回収した廃棄物のうちペットボトルは約5%で、これがOcean Yarnの原料になります。そのほかには、廃棄された漁網、タイヤ、綿やウールといった再生天然繊維も素材として使われます。海の問題をペットボトルだけで語ると全体を見誤ります。

数字で見る広がり:漁師数・回収量は資料ごとに違う

ECOALFの取り組みに関する数値は、公表された時期や媒体によって差があります。これは活動が拡大し続けているためで、数字が矛盾しているというよりは、「いつ時点の数字か」を揃えて読む必要があるということです。

出典漁師数回収量・規模備考
Circle Economy 事例紹介3,000人超(54港)700トン超古い時点の数値と考えられる
Impress Watch(2019年)約3,000人記載なし日本進出の説明会報道
Ecoembes 紹介ページ約2,600人1,196トン古めの時点
ECOALF財団 公式ページ4,000人超(のちに4,500人超とも)1,000トン超(海底から)スペイン、タイ、ギリシャ、イタリア、フランスに展開
Pitti Immagine ブランド紹介記載なし1,700トン超ブランドの出展者プロフィール
Euronews(2026年10月)約5,000人(約80港)2,000トン超(約トラック100台分)フランス、イタリア、ギリシャ、エジプト、タイに拡大
ECOALFの取り組み規模に関する各資料の記載(時点・媒体により異なる)

目標として掲げられている数値

公式ページには、2025年までに1万人超の漁師の参加を目指し、地中海から毎年1,000トンのごみを回収するという目標が書かれています。一方、Euronewsは2026年10月の時点で「地中海全体で1万人の漁師を集めること」を目標として伝えており、当初の目標年に対しては達成途上にあると読み取れます。

数字を読むときの注意

  • 回収量・漁師数の多くは企業・財団の自己申告であり、第三者の監査値とは限らない
  • 「海から回収した量」と「素材化できた量」は別物。回収物には再生に向かないものも含まれる
  • 拡大中の数字のため、記事・資料の発行時期を必ず確認する
この記事の要点となる3つの数字をまとめた図版
数字で見る:本文で扱う3つの指標

再生素材の環境負荷:従来素材と何が違うのか

回収した素材を糸にするとき、気になるのは「結局、環境に良いのか」という点です。Circle Economyの事例紹介には、ECOALFが示している比較値が載っています。

再生PET(ペットボトル由来)の場合

一般的なポリエステルと比べて、再生PETでは水の使用量が約20%、エネルギー使用量が約50%少なく、温室効果ガスは60%以上少ないとされています。

再生漁網(ナイロン)の場合

バージン(新規)素材と比べて、天然資源を25%以上節約でき、温室効果ガスは約28%少ないとされています。

素材水エネルギー温室効果ガス資源
再生PET(対 通常ポリエステル)約20%減約50%減60%超減—
再生漁網ナイロン(対 バージン素材)——約28%減25%超の節約
ECOALFが示す環境負荷の比較(Circle Economy事例紹介より。企業提供値)

同じ紹介では、ペットボトル約70本、または漁網135グラムで生地1メートル分に相当するとされています。身近な本数に置き換えると、イメージしやすい数字です。

再生PETと再生漁網の環境負荷削減の目安を並べて比較したイメージ図
再生素材による削減効果のイメージ(数値は企業の公表値)

この比較値をどう読むか

  • 比較条件(算定範囲・年・手法)は企業の紹介ページだけでは詳細がわからない
  • 削減効果は「素材」単位であり、服として作る工程や輸送、洗濯、廃棄までは含まない可能性がある
  • それでも、バージン原料を新たに作る場合より負荷が小さいという方向性は、一般にリサイクル素材で期待される効果と整合する

海の側から見た意義:ゴーストギアと海底ごみ

ECOALFが原料とする廃棄漁網は、海の現場では「ゴーストギア(幽霊漁具)」と呼ばれる問題とつながります。海に残された漁網やロープは、魚や海鳥、ウミガメなどが絡まる事故の原因となり、長期間にわたり海洋生物に被害を与え続けます。

ごみを海岸で拾うビーチクリーンは広く行われていますが、海底に沈んだごみは通常の清掃では手が届きません。毎日海に出る漁師が、日常の漁の延長で持ち帰る仕組みは、海底ごみに対する現実的なアプローチの一つです。

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漁師にとっての意味

公式ページは、漁師が日々目にする海の様子を伝える短編ドキュメンタリーとデジタル展示「Ode to Our Ocean Heroes: The Fishermen」も公開しています。ビジャホヨサをはじめ、フランスやイタリア、タイなど各地の漁師がインタビューに登場し、海の変化を語る内容です。漁師を「ごみを集める作業者」ではなく、海の状態を最もよく知る当事者として位置づける姿勢がうかがえます。

一方、漁師にとって持ち帰りは余計な作業にもなります。持続的な運営には、回収の手間への対価や港での受け入れ体制、費用負担の仕組みが不可欠です。この点は公開資料からは詳細が見えにくく、今後の情報公開が望まれる部分です。

どんな商品になるのか:服・靴・バッグ

Ocean Yarnをはじめとする再生素材は、アウター、シャツ、ボトムスなどの衣類のほか、シューズ、バッグ、小物などに使われます。日本での展開を伝える報道では、メンズ、レディース、キッズ、シューズ、アクセサリー、ヨガといったカテゴリーが紹介されていました。

日本での展開

Impress Watchの報道によると、三陽商会とECOALF社は2019年9月に新会社「エコアルフ・ジャパン」を設立し、2020年春から日本で事業を展開する計画を発表しました。2020年3月に渋谷区神宮前で旗艦店を開き、初年度に20店舗、2025年度に年間60億円の売上を目指すとされていました。ただし、これは当時の計画であり、現在の店舗数や実績は公式サイトで確認が必要です。

PR TIMESの発表では、海洋ごみのペットボトルを使ったシューズやバッグなどの「UTOコレクション」も紹介されています。

製品の例

  • コート・アウター:当時の報道では24,000〜36,000円の価格帯
  • シャツ:15,000〜19,000円前後
  • シューズ:スニーカー、サンダル、ビーチサンダルなど
  • アクセサリー:小物入れ、財布、バッグなど

価格は当時の報道値

上記の価格帯は2019年の説明会時点の報道であり、現在の販売価格とは異なる可能性があります。購入時は必ず最新の公式情報を確認してください。

同社は、衣服を追加の加工なしに分解できるよう設計しているとEuronewsは伝えています。使い終わった後に素材として再び循環させやすくするための工夫です。

ほかのブランドとの違いと位置づけ

海洋プラスチックや漁網を使った衣料・雑貨は、ECOALFだけではありません。当サイトでは、パタゴニアやBureoの漁網由来素材「NetPlus」を使った製品、アディダスとParleyの海洋プラスチックシューズなども取り上げています。

漁網由来素材やペットボトル由来素材を使った製品の種類を並べたイメージ
海洋ごみ由来の素材から作られる製品のイメージ

ECOALFの特徴

ECOALFの特徴は、製品ラインの多くを再生素材で構成するブランド設計と、回収そのものを非営利の財団が担い、漁師を中心に置いた運営を前面に出している点にあります。資材の一部だけを再生素材に置き換えるのではなく、ブランド全体をその前提で作っているところが個性です。

ただし、どのブランドの素材が優れているかは、使用する製品の性能、トレーサビリティ(追跡可能性)、認証の有無など複数の観点で見る必要があります。公開情報だけで優劣を断じることはできません。

冷静に見ておきたい課題:アップサイクルは万能ではない

Euronewsの記事は、この取り組みを称賛するだけでなく、論点も紹介しています。同社のマーケティング責任者は、最大の問題は大量消費と過剰生産だと述べ、サステナブルなカプセルコレクション(限定的な商品群)や単一素材への注力にとどまらず、最初からエコデザインを取り入れるべきだとしています。

リサイクルだけでは追いつかない問題

記事は、リサイクルが新たに生まれる廃棄物を相殺できるのかという問いも投げかけています。年間約800万トンのプラスチックが海に流入するとされる中で、累計2,000トンの回収はごく一部にすぎません。もちろん、回収が無意味という意味ではなく、流入を減らす上流対策とセットで初めて効果が出るということです。

論点内容
規模の比較年間約800万トンの流入に対し、累計回収は2,000トン超(公式の引用値とEuronewsの報道値)
ファストファッションサステナブルな服が、大量生産・大量廃棄型の服に置き換わるには遠い道のりとEuronewsは指摘
透明性回収量・漁師数は自己申告が中心。第三者検証の公開があるとより信頼しやすい
繊維由来のごみ再生ポリエステルやナイロンの服も、洗濯でマイクロファイバーを出す可能性がある
ECOALFの取り組みを見るときの論点

洗濯で出るマイクロファイバー

再生素材であっても、合成繊維の衣類は洗濯のたびに微細な繊維くずを出すことが知られています。再生か新規かにかかわらず、洗濯ネットや専用フィルターの活用、洗う頻度の見直しは有効です。詳しくは洗濯で出るマイクロファイバーと海洋汚染を参照してください。

この記事のポイントを箇条書きでまとめた図版
この記事のポイント。詳しくは各章で解説している

私たちにできること:買う前、使う間、手放す時

海洋ごみ由来の服を選ぶことは、一つの選択肢です。ただし、最も環境負荷が小さいのは「今ある服を長く着ること」です。再生素材の商品を検討する場合も、次の点を意識すると、取り組みの価値をより生かせます。

買う前に確認すること

  • 必要かどうか、手持ちの服で代用できないかを考える
  • 素材の何%が再生素材か、どの工程の説明が公開されているかを公式サイトで確認する
  • 長く使える品質・デザインか、修理や回収の仕組みがあるかを確認する

使っている間の工夫

  • 洗濯は必要な頻度に抑え、洗濯ネットを使う
  • お気に入りの服は修繕して長く着る
  • プラスチックごみそのものを減らす行動(マイボトル、詰め替え)も合わせて行う

手放すときの選択肢

着なくなった服は、リユース、リサイクル回収、譲渡などの選択肢があります。衣料の循環については海洋プラスチックを再生した製品の記事も参考にしてください。

今日からできる3つのこと

  • 手持ちの服を1着、修繕するか着回しを増やす
  • 洗濯ネットを使い、洗濯の頻度を見直す
  • 気になるブランドの公式サイトで、素材と回収の情報を読む

まとめ:海と服をつなぐ試みを、どう受け取るか

ECOALFのUpcycling the Oceansは、漁師の日常の作業を起点に、海底のごみを回収し、糸、生地、製品へとつなぐ仕組みです。2015年に漁師3人で始まった活動は、各国の港に広がり、2026年10月の報道では累計2,000トン超の回収が伝えられています。

一方で、数字の多くは企業・財団の公表値であり、年間約800万トンとされる海へのプラスチック流入を考えれば、回収と再生だけで問題が解決するわけではありません。上流での発生抑制、衣服を長く使う文化、素材の透明性という3つの視点をあわせて持つことが重要です。

この記事のまとめ

  • ECOALFは2009年創業。2015年にUpcycling the Oceansを開始し、漁師が海底ごみを持ち帰る仕組みを作った
  • 回収物はペットボトルが約5%、漁網やタイヤなども含み、再生糸Ocean Yarnなどになる
  • 再生PETや再生漁網は従来素材より環境負荷が小さいとされるが、数値は企業提供値
  • 回収量・漁師数は時期や媒体で異なるため、時点を確認して読む
  • 再生素材の服でも、長く着る・洗濯を工夫する・ごみを減らすことが基本

参考文献・出典

  1. ECOALF Foundation|Upcycling the Oceans(公式デジタル展示) – 活動開始(2015年)、漁師数、回収量、目標値
  2. Euronews|From ocean waste to fabric: inside Spain's sustainable fashion revolution – 2026年10月の報道。累計2,000トン超、約80港、製造工程と課題
  3. Circle Economy|ECOALF: Upcycling the Oceans project designs out waste with the help of fishermen – 分別・再生工程、環境負荷の比較値
  4. Pitti Immagine|ECOALF ブランドプロフィール – 再生生地600種類超、財団への10%拠出、1,700トン超
  5. Ecoembes|Upcycling the Oceans – プロジェクト紹介(1,196トン、約2,600人の時点)
  6. Impress Watch|三陽商会、スペイン発「ECOALF」を日本展開 – エコアルフ・ジャパン設立、日本展開計画、製品カテゴリー
  7. PR TIMES|ECOALF 海洋ごみ由来のペットボトルを使ったコレクション – Ocean Yarnと製品紹介(日本)
  8. BuzzFeed Japan|ECOALF 海のごみを服にする – プロジェクトの流れ・漁師の役割(日本語解説)

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